”注目点多い臨時国会” 開会 コロナ 新政権

臨時国会が10月26日に開会した。6月の通常国会閉会から4か月ぶり、ようやく論戦再開になる。26日に菅首相の初めての所信表明演説が行われた後、各党の代表質問、続いて予算委員会で一問一答方式の詰めた質疑が行われる運びだ。

この臨時国会は「注目点の多い国会」だ。新型コロナは一進一退状態だが、感染拡大防止をどうするか、生活・経済支援で新たな対応策は打ち出されるのか。

また、安倍首相から菅首相へ8年ぶりの首相交代、”菅政治”とは何か。焦点の学術会議の任命拒否はどのような形で決着をつけるのか。国民にとっても、聞きたい点、知りたい点が多い。

菅新政権発足後初めての国会論戦の注目点は何か、何を議論すべきなのか、具体的にみていきたい。

 コロナ感染防止 ”備えはできたか”

臨時国会冒頭の所信表明演説で、菅首相は「新型コロナウイルス対策と経済活動再開の両立をめざす。コロナ対策では、爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と訴える方針だ。

菅首相は9月の総裁選に立候補した時以来、コロナ対策を最重点に取り組む決意を繰り返し表明してきた。但し、感染拡大防止のために何に取り組むかについて、具体的に言及していない。

政府の感染防止対策については、安倍首相が8月28日に辞任表明をした際に1日当たり20万件の検査体制をめざすことや、経営が厳しい医療機関や大学に万全の支援を行う方針を明らかにしたが、その後、具体的な説明がない。

◇1日20万件の抜本的検査体制拡充の進み具合はどうなっているのか。◇コロナと同時にインフルエンザの流行が重なった場合、検査体制の備えはどうか。東京都の場合、現在の7.5倍の検査能力・体制が必要だとする試算も公表されたが、現状ではとても対応できないのではないか。

◇10月から始まった入国制限の緩和に伴う空港での検査体制。検査のすり抜け防止や、14日間待機の担保は大丈夫か、知りたい点は多い。

要は「コロナ対策の備えはできているか」。検査、入院・重症者治療などを総点検して結果を公表し、全体状況を国民に理解してもらうことが必要だ。

また、特別措置法の見直し=感染抑止のための休業要請と、応じた場合の”補償”、知事の権限強化などが宿題として残されている。政府のコロナ対応の検証と特措法の早期見直しが必要だと考えるが、この点についても国会で詰めた議論を行ってもらいたい。

 生活・経済支援の追加策はどうするか

次に大きな問題は、コロナ感染拡大で大きな打撃を受けた人たちや事業者に対する生活・事業支援。年末に向けて、雇い止め・休業・失業、中小事業者の廃業・倒産が増えることが懸念されている。

これまで国民1人10万円給付をはじめ、事業継続のための持続化給付金、雇用継続のための雇用調整助成金の支給、さらには、GoToトラベルなど各種事業の支援を行ってきた。今後、こうした事業追加策はどうするのか。

政府は予備費10兆円のうち、7兆円が残っており、この活用で手当すると同時に、不足すれば第3次補正予算案を編成すると説明している。

また、政府はコロナ対策として総額234兆円にものぼる、世界でも有数な経済対策を実施してきた。予算に匹敵する効果を上げているのか、どの分野をテコ入れしていくのか、早期に方針を打ち出す必要がある。

 学術会議問題、菅政権の政治姿勢は

日本学術会議の新たな会員候補6人について、菅首相が任命を拒否した問題も大きな論点になる見通しだ。

野党側は「菅首相やその周辺が、勝手に法解釈をねじ曲げており、任命拒否を撤回すべきだ」と追及する方針だ。これに対し、政府・与党側は「10億円の予算が使われており、学術会議の在り方や組織の見直しは必要だ」として対立している。

この問題は「菅新政権の政治姿勢に関係する問題」でもある。日本学術会議法では「学術会議の推薦に基づき首相が任命する」と規定されている。任命しない場合は「なぜ任命しないのか、誰が実質的に決めたのか」を明確にする必要がある。その上で、学術会議の在り方に問題があれば議論すればいい。

菅氏が官房長官を務めた安倍政権では、内閣法制局長の交代や、東京高検の検事長の定年延長をめぐって”強引な人事”が批判を浴びた。菅新政権はどのような考え方で人事や政権運営を行うのか、国民に十分わかる説明と議論を強く求めておきたい。

 ”菅カラー” 独自政策と全体像は

菅政権は、安倍政権の路線を継続する一方で、”菅カラー”とも言える独自政策を次々に打ち出している。携帯電話料金の値下げ、デジタル庁の新設、不妊治療への保険適用が”菅首相の三大案件”とされている。

こうした国民目線、国民の利益に直結するような政権の取り組みを高く評価する意見がある一方で、社会保障や少子化対策などの政策全体の取り組み方も示さないと、政権の人気取りに終わってしまうと懸念する声も聞く。

一方、地球温暖化対策として、菅首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする方針」を所信表明演説で表明する方向で調整している。これまでより踏み込んだ目標で、エネルギー基本計画や企業の生産活動にも影響する。

菅政権の政策をめぐっては、目先の個別政策が多いため「どんな社会をめざすのかわかりにくい」。あるいは「中長期の政策も含めて、政策の全体像を示してもらいたい」といった指摘が出されており、政権の主要政策の全体像や基本構想を明らかにして議論を深めてもらいたい。

外交・安全保障分野についても、米中間の覇権争いが激化する中で、日本外交の舵取りをどのように行っていくのか基本的な考え方を明らかにして欲しい。

 コロナ激変時代 制度設計・構想を

日本の政治は、7年8か月に及ぶ安倍長期政権が幕を閉じ、代わって菅新政権が登場し、向こう1年以内に衆議院の解散・総選挙が行われる。

国民の側も”コロナ激変時代、どんな将来社会をめざすのか”、これまで以上に政治の動向に関心を持つともに、次の選挙はどんな基準・物差しで1票を投じるかを考え始めているようにみえる。

それだけに政府・与党、野党各党の双方には、新しい日本社会の制度設計としてどんな構想と政策、実現への道筋を考えているのかしっかり打ち出してもらいたい。その上で、注目点の多い臨時国会、国民が知りたい点に真正面から応える国会論戦を是非、みせて欲しい。(※備考:10月26日に国会が召集されましたので、冒頭の文章の表現を一部を過去形に手直しにしました)

菅内閣支持率 下落 学術会議問題が影響

菅新政権が発足して16日で1か月が経過した。政権発足直後は高い支持率を記録、順調な滑り出しだったが、NHKの10月の世論調査によると内閣支持率が大幅に下落している。

この理由は、日本学術会議の新しい会員候補の一部について、菅首相が任命を拒否、その理由を説明していないことが影響していると見られる。

菅内閣を支持しない理由として「首相の人柄が信頼できない」が急増。「女性の支持率」が大幅ダウン。最も多い「無党派層」の不支持も増加している。

菅新政権の支持率下落の理由、背景を以下、詳しく分析してみる。

 菅内閣支持率 7ポイント下落

NHKが10月9日から11日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は◆「支持する」が55%、◆「支持しない」が20%だった。

政権発足直後の9月の世論調査では◆支持が62%、◆不支持が13%だったので、支持率が7ポイント減少、逆に不支持が7ポイント増加したことになる。

政権発足直後は、いわゆる”ご祝儀相場”もあって高い支持率となり、その後、減少していくことが多いが、2回目の調査で大幅に下がるケースは少ない。◇菅直人内閣の22ポイント、◇小渕内閣14ポイントに次ぐ水準で、野田内閣と同じく大幅な下げ幅だ。

(備考:9月調査=21・22日、10月調査=9~11日実施。データは「NHK NEWS WEB」から)

 支持率下落 与党、無党派、女性

支持率下落の中身をみると◆「与党支持層」が、9月の85%から10月の80%へ減少。◆最も多い「無党派層」が50%から43%へと下落している。

◆男女別では、特に「女性の支持」が、9月62%から10月51%に11ポイントと大幅な下落が目立つ。男性は9月63%から10月59%へとは対照的だ。

 「首相の人柄信頼できない」倍増

次に菅内閣を支持する理由としては◆「他の内閣より良さそう」26%、◆「人柄が信頼できる」24%、◆「実行力がある」18%と続く。

これに対して、菅内閣を支持しない理由としては◆「人柄が信頼できない」32%、◆「政策に期待が持てない」31%、◆「他の内閣の方が良さそう」13%となっている。

つまり、菅内閣を支持する人の中で「人柄が信頼できる」と答えた人は、菅首相は世襲ではなく、秋田の農家出身の”たたき上げ”といった点を評価しているものとみられる。

一方、支持しないと人たちの中で「人柄が信頼できない」と答えた人は、日本学術会議の問題が影響しているものとみられる。9月は15%だったのが、10月は32%へと倍増、支持しない理由のトップに跳ね上がっているからだ。

 学術会議任命拒否 ”納得できない”

その日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅首相が「法に基づいて適切に対応した結果だ」などと説明していることをどのように受け止めているかを聞いている。

◆「納得できる」は38%、◆「納得できない」は48%となっている。支持政党別にみてみると◇与党支持層でも「納得できる」は55%に止まっている。◇野党支持層と◇無党派層では「納得できる」は2割台後半で、「納得できない」は野党支持層の7割、無党派層の6割と多数を占めている。

年代別では、どの年代でも「納得できる」は3割から4割程度で、「納得できない」は、50代以降、60代、70歳以上でいずれも半数を上回っている。

女性は「納得できる」は33%に対し、「納得できない」が46%と大幅に上回っている。男性は、43%と48%で拮抗している。

 新政権の信頼度、政権の行方に影響

学術会議の問題は、日本学術会議法で「会議側の推薦に基づいて首相が任命する」と規定されている。推薦制を導入した中曽根政権以降、歴代政権は学術会議の推薦を尊重してきた。菅政権では一部の任命を拒否したが、「誰が判断したのか、任命しなかった理由は何か」といった肝心な点を説明していない。

国民の側は、こうした政府の対応に疑念を抱いており、新政権の政治姿勢、政権の信頼度に関わる問題として受け止めていることがうかがえる。この問題は、10月26日から始まる秋の臨時国会でも与野党の攻防の焦点になる見通しだ。

菅政権は、デジタル庁の新設や携帯電話料金の引き下げなどを打ち出し、世論の高い支持を得たが、学術会議問題が思わぬ影響を与えている形だ。政府側が説得力のある説明を行えないと、さらなる支持率低下につながる可能性もある。

菅政権としては、学術会議問題にどのような方針で臨むのか、軌道修正を図る考えはないのかどうか。今後の政権運営や次の衆議院選挙の選挙情勢にも影響を及ぼすだけに注意して見ていく必要がある。

 

任命拒否の事実関係 早急に解明を!学術会議問題

日本学術会議の会員人事をめぐる問題が、菅新政権にとって大きな政治問題になりつつある。野党側が、菅首相の任命拒否の撤回を要求すれば、政府・自民党側はこれを突っぱね、学術会議の在り方そのものを見直していく方針を打ち出し、与野党の対立が深まっている。

一方、この問題は、国際的な科学誌として知られる「ネイチャー」が社説で取り上げ「科学と政治の関係が危機にさらされている。黙ってみていることはできない」と懸念を表明、国際的にも注目を集めることになりそうだ。

この問題をどうするか。様々なレベルの問題が整理されないまま議論されているが、肝心な事実関係がはっきりしていない。「学術会議側が出した105人の推薦候補のうち、6人を任命しない判断は誰が行ったのか、その理由は何か」。

この点が「今回の問題の核心」であり、事実関係をはっきりさせること。その上で、任命拒否の是非、学術会議の在り方などについても議論すればいいのではないか。以下、今回の問題をさらに詳しくみていきたい。

 菅首相「推薦リストは見ていない」

菅首相が9日に行った内閣記者会とのインタビューが、波紋を広げている。この中で、菅首相は今回の任命は自ら判断したとした上で、9月28日の決裁の直前には、任命する99人のリストは見ていたこと。但し、任命されなかった会員候補6人を含む105人の学術会議側の推薦リストは「見ていない」と説明した。

この説明では「誰が、学術会議側の推薦名簿を見て、除外したのか」が問題になる。また、除外した理由は何か。さらに日本学術会議法の「学術会議の推薦に基づいて首相が任命する」という法律の規定にも違反する可能性がある。

一方、学術会議の元幹部によると、今回の任命拒否以外に少なくとも過去4回、首相官邸が人事に難色を示し、定員を上回る名簿の提出を求められたことなども明らかになった。

したがって、まずは、問題の「核心部分の事実関係」を確認した上で議論する必要がある。政府は、早急に事実関係を調査・確認し、説明する責任がある。

 歴代内閣の方針転換ではないか

もう1つの問題は、「歴代内閣の方針との関係」がある。今回の問題に関連して、政府は一昨年、政府内で学術会議の会員の任命を巡って、政府内でまとめていた文書を明らかにした。

それによると、学術会議は、国の行政機関であることから、首相は任命権者として、人事を通じて一定の監督権を行使することができると明記している。

一方、今の推薦制を導入した際、当時の中曽根首相は、国会の答弁で「政府が行うのは、形式的な任命にすぎない」として学術会議側の推薦を尊重する考えを表明し、歴代内閣も踏襲してきた。

ところが、安倍内閣と今の菅内閣は、中曽根内閣との方針とは異なるのではないか。また、政府の方針を変える場合は、公表し説明する必要があるのではないか。こうした点についても政府の説明が必要ではないか。

 過ちては改むるに、はばかることなかれ

今回の問題は、菅政権の政治姿勢を判断する面でも注目してみている。というのは、菅氏が官房長官として務めてきた安倍政権は、森友、加計問題、桜を見る会、さらには、東京高検の黒川検事長の定年延長など政治・行政の透明性、首相の信頼性に関わる問題が相次いだからだ。

菅新政権が発足し、これから新型コロナ対策をはじめ、デジタル庁の新設など独自の政策に取り組んでいく上でも、菅首相の政治姿勢や政権の透明性などが問われる。

今回、任命されなかった6人の学者については、いずれも政府の集団的自衛権の行使や安全保障法制などに批判的な立ち場であることから、任命から除外したのではないかとの疑念が持たれている。菅首相はそうした見方を否定しているが、任命しなかった理由については、説明をしていない。

こうしたことから、事実関係を調べる中で、仮に選考に問題があった場合は、官僚や政権のメンツなどにはこだわらず、是正した方がいい。”過ちては改むるに、はばかることなかれ”と言われる。政権発足で世論の高い支持を得ており、こうした政治資源は有効に使った方がいい。

いずれにしても、まずは事実関係を明確にし、その上で、任命しなかったことの是非を判断するのが、順序だと考える。

さらに学術会議の在り方、運営などに問題があれば、議論、検討すればいい。その前に事実関係を明確にし、人事問題をはっきりさせておく必要がある。問題を曖昧にせず、国民にわかりやすい議論と結論を出してもらいたい。(了)

 

”負の路線”も継承か 菅政権の学術会議人事

アメリカのトランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスに感染したという驚きのニュースが週末に飛び込んできた。一方、国内でも日本学術会議が推薦した新会員の候補について、菅首相が一部任命をしないことが明らかになり、波紋が広がった。

この問題は「学問の自由との関係」もあるが、菅政権発足直後の出来事なので、「新政権の政治姿勢」を占う点でも注目している。

そこで、今回の問題、政権のあり方も含めて、どのように考えたらいいのか見ていきたい。

 学者の代表機関 独立性を保障

最初に日本学術会議とは何か、手短に整理しておきたい。

「学者の国会」とも呼ばれ、人文・科学、生命科学、理学・工学のおよそ87万人の科学者を代表する機関で、210人の会員などで構成されている。

太平洋戦争に科学者が協力したことを反省し、1949年に設立された。内閣総理大臣が所管し、経費は国費で負担。年間10億円支出されているが、政府から独立して職務を行う機関と位置づけられている。

会員は昭和59年の法律改正で、学者間での選挙で選ぶ方法から、研究分野ごとに候補者を推薦し、その推薦に基づいて総理大臣が任命するという形式に変わった。

その際、所管していた総理府・総務長官は国会答弁で「学会からの推薦者を拒否はしない」と独立性を保障する考えを表明した。

 6人任命せず 政府側の説明なし

今回、日本学術会議は8月31日に、新たに会員となる105人の候補を推薦するリストを提出した。これに対し、加藤官房長官は10月1日の記者会見で、推薦候補のうち6人を任命しなかったことを明らかにした。

歴代政権は学術会議の推薦を尊重してきており、学術会議が推薦した候補が任命されなかったのは、初めての事態だ。

加藤官房長官は「会員の人事などを通じて、一定の監督権を行使することは、法律上可能だ」と強調した。

菅首相も「法に基づいて適切に対応にした結果だ」とのべたが、任命しなかった理由の説明は避けている。

これに対して、学術会議側は、任命しなかった理由の説明を求めるとともに、6人の任命を求める要望書を提出することを決めた。

 学問の自主・自立性が損なわれる

そこで、この問題をどう見るか。憲法の専門家の1人は「今回、人選のルールが解釈で変更され、任命権者の判断でどうにでもなると、学問の自主性・自立性が損なわれる」と批判している。

その上で「一定の方向でしか学問ができないことになれば、社会全体も政治的に多数派ではない意見が言えなくなるおそれがある」と指摘している。

野党側は「学問の自由に対する国家権力の介入だ」として、臨時国会で追及する方針だ。

この問題に関連して、国が補助金を出していることや、学術会議の運営のあり方に問題があるのではないかとの指摘も出されている。指摘の点は改善の必要があると思うが、問題の核心は、政治権力と学術団体との関係をどうするかにあると考える。

 新政権の政治姿勢 任命拒否の背景

今回の問題、私個人は「菅新政権の政治姿勢」を世論がどのように評価するかという点を注目している。

菅首相は、安倍政権の路線を継承する考えを表明するとともに、デジタル庁の創設や携帯電話の通話料の値下げなど独自色を打ち出そうとしている。これまでのところ、菅内閣の支持率も高い水準を示している。

こうした中で、任命されなかった6人の研究内容や経歴をみると次のような共通点がある。

まず、6人は憲法や政治学、行政法、日本近代史などいずれも法文系の研究者だ。また、安倍政権が打ち出した集団的自衛権の行使容認や安全保障法制、テロ等準備罪の新設などに批判的な立ち場を表明している点でも共通点がみられる。

政府が任命拒否の理由に言及していないので断定的に言えないが、6人の共通点から判断すると「政権との距離」、政府の方針に批判的な研究者は任命できないとの判断が働いているのではないかと推測せざるをえない。

 負の路線継承 百害あって一利なし

安倍政権は、森友、加計問題をはじめ、桜を見る会などで、首相の政治姿勢や説明責任が大きな問題になった。

また、集団的自衛権の憲法解釈などに当たった内閣法制局長官の交代や、検察当局のNo2 黒川・前東京高検検事長の定年延長をめぐっても、強引な人事ではないかとの批判も浴びた。

今回の学術会議の問題は、安倍政権の末期から菅政権誕生の交代時期に重なっている。菅新政権の今回の対応は、安倍政権の人事や説明の仕方などをそのまま引き継いでいるように見える。世論の側は、”負の路線継承”と受け止める可能性が大きいのではないか。

このように見てくると、学者の世界に”対立”を持ち込むことは、新政権にとっても”百害あって一利なし”ではないか。

今、国民の多くが新政権に期待しているのは、コロナ危機乗り切りと経済再生を着実に進めることにある。学術会議の問題は、任命しなかった理由を明らかにすると同時に、問題ありと判断した場合、早急に是正した方が賢明だと考える。