高市政権 ”補正予算案とナフサ不安”への対応

高市首相は25日、中東情勢を受けた物価高に対応するため、7月から9月の電気・ガス料金の支援を実施するとともに、3兆円余りの補正予算案を編成する考えを記者団に明らかにした。

このうち、電気・ガス料金の支援については26日の閣議で、今年度の当初予算の予備費から5135億円支出することを決めた。補正予算案については今後、編成作業を進め、6月第1週に国会に提出する方針だが、電気・ガス料金とガソリン価格への支援継続が主な内容になる。

経済界などからは、石油を精製して作るナフサと石油関連製品の品不足に加えて、石油関連製品の価格高騰を懸念する声が広がっている。これに対して政府は、原油やナフサ、それに石油関連製品の供給は年を越えても継続できるとしており、双方の認識にズレがある。

一方、私たち国民にとって6月は、ナフサ不足による影響で包装用資材など生活用品の値上げが相次ぐほか、納豆・即席麺・食用油・缶詰など食料品の数多くの品目で値上げの波が押し寄せる。

高市政権の今回の補正予算案は、こうした石油関連製品や食料品などの値上げに対して、国民生活を守るために有効な対応策を盛り込んでいるのか点検してみたい。

補正予算 電気・ガスとガソリン支援が柱

まず、新年度の補正予算案の内容を確認しておきたい。政府は、中東情勢の長期化に伴うエネルギー価格上昇に対応するため、電気・ガス料金について、標準家庭で7月から9月までの3か月の合計で5000円程度を支援する方針だ。この財源は、今年度当初予算の予備費から5000億円を充てる。

また、3兆円余りの補正予算案を編成し「中東情勢等対応予備費」を創設するとともに、ガソリン価格を抑制するため、現在行っている支援策を継続する方針だ。

さらに、プロパンガス利用者を支援するため、重点支援地方交付金も追加する方針だ。つまり今回の補正予算案は、電気・ガス料金、ガソリン価格、プロパンガス料金の3つの支援が主な柱になっている。

財源については、赤字国債を追加発行するが、予定していた今年度の赤字国債のうち、税収や税外収入の増加で3兆円分が発行不要となる見通しのため、総額は増やさずに対応できるとしている。

一方、中東情勢による原材料不足が懸念されている原油については、6月のホルムズ海峡を経由しない代替調達の見通しが8割程度まで上がっているため、「来年春までの安定供給が確保できる見通し」だとしている。

注目のナフサについても中東以外からの代替調達が回復しており、ナフサ由来の石油関連製品についても「年を越えて供給継続が可能だ」としている。

一方、過度な懸念による買いだめや売り惜しみが現場で発生し「目詰まり」が起きているのも事実だが、政府がきめ細かく対策を進め、混乱の回避に全力で取り組むと強調している。

ナフサ不足、石油製品の価格高騰に不安

イラン情勢の混迷が長引くにつれて企業や生産現場からは、製品の原料となるナフサの不足を訴える声が相次いでいる。原油を精製してできるナフサを経由して、さまざまな製品が作られる過程は多岐にわたる。

ナフサ由来のプラスチックや塗料、合成ゴムなどを基に、包装資材やインク、衣類、洗剤などの商品ができていく。先日、食品メーカーのカルビーが「ポテトチップス」などの包装を、カラー印刷から白黒印刷に変える発表があり、石油関連製品のひっ迫状況を認識させられた。

また、さまざまな生産現場から、原材料の品不足や価格の急騰で、生産ができなくなるのではないかといった不安や、経営の見通しが立たないなど深刻な声を聞く。

政府は「ナフサや石油関連製品は年を越えても確保できる」と繰り返し強調するが、企業や生産現場との認識のズレは大きい。

値上げラッシュ、経済のかじ取りが焦点

さらに6月は、食料品の値上げが相次ぐ見通しだ。以前からの値上げの予定に加えて、ナフサ不足の影響が広がり、包装用資材の値上がりによって商品本体が値上げとなるケースもある。例えば納豆、パン、菓子類などだ。

こうした包装用資材の値上げも含めて、6月は日常生活でよく購入する納豆、即席麺、スナック菓子、食用油、缶詰など値上げラッシュとなる見込みだ。これに加えて、電気・ガス料金も値上げされる。

政府の電気・ガス料金の支援によって家計は助かるのは事実だが、電気・ガス料金の支援は富裕層を含め一律で行われる。一方、子育て中の世帯のうち、特に低所得の世帯では夏休みで学校給食がないことは負担が重くのしかかる。

電気・ガス料金の一律支援は止めて、低所得や中所得層に対象を絞って現金給付を行うなどの工夫が必要だとの指摘もある。

また、政府が続けているガソリン価格の抑制に補助を行う政策については、原油不足の事態に逆行していることに加えて、1か月に5000億円もの巨額な費用がかかる。このため、与党や野党の一部からはガソリン補助の縮小や、資源の節約を呼びかけるなど新た取り組みが必要だといった意見が出ている。

さらに補正予算の財源として赤字国債が発行されることに関連して、財政の信頼性をどのように確保していくかも論点になっている。高市政権は、食料品の消費税率を2年間ゼロにする案の導入を検討しているが、財源確保のめどが立たない場合は、こうした案の見送りも検討すべきだといった指摘も聞かれる。

このように補正予算案をめぐる論点は多い。このうち、ガソリン価格への支援について高市首相は「物価動向や経済に与える影響を注視しながら、必要な検討を進めていく」との考えを示している。

一方、ガソリンや資源などの節約の呼びかけなどについて、高市首相は「経済活動にブレーキをかけるような踏み込んだ節約を要請する段階にはない」と慎重な姿勢を示している。

「強い経済」や「責任ある積極財政」を掲げる高市首相としては、節約などの動きで経済活動にマイナスの影響が出ることを強く警戒しているものとみられる。

一方、石油関連製品の不足や価格高騰が長期化する事態に備えて、日本経済をどのように運営していくのかといった観点からの議論も必要だ。補正予算案の審議にあたっては、高市首相が経済・財政運営の基本方針を明確に打ち出し、与野党との間で掘り下げた議論を行ってもらいたい。(了)

★追記(5月29日21時)民間の調査会社「帝国データバンク」の調査によると6月に値上げが予定されている食品は1078品目にのぼることがわかった。1000品目を超えるのは今年4月以来か2か月ぶりで、調味料や納豆、即席めんなどが中心。値上げの理由は原材料価格の上昇のほか、中東情勢に伴うナフサ不足の影響で、包装用資材の値上げも広がっている。7月の値上げは2269品目と値上げラッシュがさらに続く見通し。

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後半国会 ”イラン情勢と外交・経済対応”が焦点

大型連休が終わって国会は、衆議院を通過した国家情報局設置法案の審議が8日、参議院本会議で審議が始まった。また、裁判のやり直しの制度を見直す法案の国会提出に向けて、自民党内で条文の調整が続いているほか、衆議院では防災庁設置法案など重要法案の審議も本格化する見通しだ。

後半国会ではこうした重要法案をめぐって、与野党の審議と攻防が活発になる。一方、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃のゆくえと、原油や石油関連製品の供給不足や価格高騰がどうなるのか、各国にとって最大の関心事項だ。

原油輸入の9割を中東に依存している日本にとって、イラン情勢の緊張が長期化した場合、石油関連製品の高騰が続き、企業や産業、国民生活に大きな影響が避けられない。

このためイラン情勢によって、後半国会の展開はガラリと変わり、高市政権も新たな対応を迫られる。その後半国会で高市政権は、具体的にどのような点が問われることになるのか探ってみたい。

イラン情勢、経済・暮らしに影響広がる

さっそく、イラン情勢からみていきたい。アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は合意が近いとの見方が伝えられるが、ホルムズ海峡の開放やイランの核濃縮の扱いをめぐって双方の主張には隔たりがあり、先行きは不透明な状況が続いている。

日本政府は、備蓄原油の2回目の放出を5月1日に行ったほか、ホルムズ海峡以外からの原油調達を進めている。その結果、原油や、原油を精製してつくるナフサの供給は「年を越えて継続できる見込みとなった」と盛んにアピールしている。

こうした一方で、国内では原油やナフサの供給不安による影響がさまざまな分野で広がっている。ナフサはプラスチック製の資材や医療機器、食品の包装、ゴム製品など幅広い用途に使われているため、さまざまな業界で「物が手に入らない」との悲鳴が上がっている。

イラン情勢の悪化が長期化すれば、石油関連製品の品不足が深刻化するほか、夏から秋にかけて価格高騰の波が押し寄せ、国民生活がさらに圧迫される事態も予想される。

強い経済路線、高市首相 節約に消極的

こうしたイラン情勢の悪化に伴う石油関連製品の不安や価格高騰を受けて、与野党からは、原油価格高騰対策を盛り込んだ補正予算案を早期に編成すべきだという意見が相次いでいる。

これに対して高市首相は、原油は備蓄の放出と調達先の多角化で、原油とナフサ、石油関連製品についても「年を越えて供給を維持できる」と強調している。

補正予算案についても「今年度予算の予備費が活用できる」として、現時点では補正予算案の編成は必要な状況ではないとの考えを示している。

さらに与野党から「中東情勢の長期化に備えて、エネルギーの節約など需要抑制を呼びかけてはどうか」との提案が出されているが、高市首相は「あらゆる可能性を排除せず、臨機応変に対応していく」として、明確な態度表明を避けている。

高市首相は「強い経済」を掲げて高い支持率を維持してきたことから、景気に冷や水を浴びせかねない節約の要請は避けたいというのが本音だとみられる。

野党各党は連休明けに再び、原油高騰を受けた経済対策を盛り込んだ補正予算案編成の要求を強める構えだ。国民民主党は、中低所得者層を対象に5万円の給付や電気・ガス料金の負担軽減などを求めていく方針で、高市首相の対応が注目される。

6月に懸案集中、決断迫られる高市首相

それでは、これからの政治の動きはどのような展開になるだろうか。外交面では、今月14日から2日間の日程で、トランプ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と米中首脳会談を行う。米中の貿易・経済関係や台湾問題、それに中東情勢についても意見が交わされる見通しで、各国の外交政策に多大な影響を及ぼす。

また、6月15日から3日間の日程でG7=主要国首脳会議がフランスで開かれる。ホルムズ海峡の航行をめぐっては、アメリカと、イギリス・フランスなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ安全航行の枠組みづくりを進めている。米欧の間で日本はどのような役割を果たすのか高市首相の外交手腕が試される。

一方、内政では6月には、政治判断を伴う重要な懸案が相次ぐ。まず、高市首相が「悲願」と位置づける「食料品の消費税率ゼロ」について、国民会議が6月に「中間とりまとめ」を行う予定だ。国民会議では有識者や与野党から、レジの改修などの実務的な問題点が数多く指摘され、消費減税には慎重論や反対論が強まっている。

高市首相は衆院選で公約した政策であることから、当初の方針通り消費税率ゼロの方針を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案の提出をめざす考えとみられる。こうした高市首相の方針と国民会議の議論にはズレが目立っており、調整力が問われる。

また、国民会議との関係では中低所得者層の負担軽減を図る「給付付き税額控除」の扱いも問題で、食料品の消費税率ゼロ政策と合わせてどのようなタイムスケジュールで実施していくかも焦点だ。

さらに、6月は高市内閣にとって初めての中長期の経済・財政の方針となる「骨太方針」を決定する予定だ。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、給付付き税額控除や防衛力の抜本強化を実現するための財源を含めて、説得力のある将来像を提示できるかが問われる。

こうした懸案に加えて、イラン情勢の緊迫化に伴う補正予算案を編成するか否かの問題を抱えている。今の国会の会期末は7月中旬であり、これから6月にかけて判断をせまられる。このように6月には、数多くの重要な政治課題が押し寄せる見通しだ。

その際、物価高騰対策の補正予算に踏み切る場合、与党内からは「食料品の消費減税は取り止めて、給付付き税額控除先行に切り替えるべきだ」といった意見も出されている。

これに対して、自民党の閣僚経験者は「高市首相は、選挙公約を取り下げるような選択はしないのではないか」との見方をしており、主要政策の調整が問題になる見通しだ。

高市政権は政権発足から半年が経過しても高い支持率を維持しているが、外交面では、日本経済にとって死活的に重要な「ホルムズ海峡の安全航行」をどのように実現していくのか、高市政権の外交力が厳しく問われることになる。

また、内政面では、イラン情勢に伴う石油関連製品の価格高騰対策など当面の対応策と、中長期の主要政策についても優先順位をつけながら決定できるのかどうか、高市政権は正念場を迎えている。(了)

★追記(5月11日21時)高市首相は11日の参院決算委員会で「日本全体として、原油も石油関連製品も必要な量は確保できている」として、現時点で国民に対し踏み込んだ節約を呼びかける段階ではないという考えを示した。また、現時点では補正予算案の編成は必要ではないという認識を示した。

★追記(5月18日21時)中東情勢を受けて、高市首相は18日に開かれた政府与党連絡会議で、今年度の補正予算案の編成を含め、検討を行うよう片山財務相に指示したことを明らかにした。また、与党に対し、今年7月から9月までの電気・ガス料金の支援策をまとめるよう要請した。

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高市内閣 発足半年 ”経済・イラン情勢対応”がカギ

高市内閣が発足してから、今月21日で半年を迎えた。内閣発足当初は衆参両院とも与党は過半数割れしていたが、2月の衆院選挙で自民党単独で3分の2を上回る316議席を獲得して圧勝を収めた。内閣支持率も発足から半年経った今も60%台と異例の高い水準を維持している。

今の国会では、新年度予算は暫定予算を経て、短期間で成立にこぎ着けた。高市首相肝いりの「国家情報会議の設置法案」などの重要法案も審議が順調に続いている。

高市政権のこれからの政権運営はどのようになるのだろうか。ポイントは、衆院選で掲げた食料品の消費税率ゼロなどの経済政策と、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が沈静化に向かうのかどうか、先行きが読めない中での対応になる。今後の政治の展開を探ってみたい。

発足半年でも高支持率、安倍政権以来

去年10月21日に発足した高市内閣は、去年12月に補正予算を成立させたのに続いて、今月7日には新年度予算を成立させた。但し、高市首相は新年度予算案の年度内成立にこだわり、衆院では強引な審議を押し通したが、野党多数の参院では跳ね返されて年度内成立を断念し、批判をあびた。

一方、外交面では2度にわたって日米首脳会談を行い、トランプ大統領と信頼関係を強める一方、台湾有事をめぐる存立危機事態の国会答弁で、中国側の反発を招き日中関係は悪化した状態が続いている。

政権発足から半年、国民は高市政権の政権運営をどのようにみているか、NHKの4月の世論調査(10~11日実施)によると次のようになっている。

高市内閣の支持率は61%に対し、不支持率は22%だった。内閣発足時の支持率は66%で、3月に59%に下がったが、4月に再び60%台に戻した。読売新聞の調査(17~19日)では支持率は66%、朝日新聞の調査(18・19日)では支持率は64%で、いずれも高い水準を保っている。

このように内閣発足時の高い支持率を半年後も保っているのは、2012年に発足した第2次安倍内閣を除けば、それ以降で初めてのケースだ。安倍内閣の場合、発足時が64%で、半年後も62%で高い水準を維持した。

その後の歴代内閣の発足時と半年後の支持率はそれぞれ次のようなデータだ。◇菅内閣62%⇒40%、◇岸田内閣49%⇒53%、◇石破内閣44%⇒35%。

支持率が高い政権の場合、50%を割り込むのがいつになるのかを政界関係者は注目するが、安倍政権の場合は、政権発足から1年7か月後だった。

安倍、高市両政権を単純に比較できないが、高市政権の支持率が高いのは、初の女性首相という効果と期待値によるところが大きいとみられる。ただ、内閣支持率はどの政権でもいずれ下降に転じる。下降局面がいつになるのか不明だが、50%ラインを割り込むと、政治・政局が動き出す一つの目安になる。

今国会、政府提出法案の多くが成立か

さて、新年度予算が成立した後の後半国会はどのように展開するだろうか。衆議院の与野党が最も重視し、首相の出席を求めて法案の趣旨説明などを行う「重要広範議案」には、次の4つの法案が決まった。

◇政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能を強化する「国家情報会議」設置法案、◇「防災庁」の設置法案、◇市販の「OTC類似薬」で患者に追加負担を求める健康保険法改正案、◇再審制度見直しの刑事訴訟法改正案の4法案だ。

このうち再審制度見直し法案を除いて、いずれも衆院で審議が始まっており、特に高市首相が「国論を二分する政策」として重視している「国家情報会議」設置法案について、与党側は今週24日までの衆院通過をめざしている。

このほか、この国会では連立を組んでいる維新が重視している◇副首都構想法案、◇衆議院議員の定数を削減する法案、◇日本国旗の損壊罪を制定する法案の提出が予定されている。

衆院は与党が圧倒的多数の議席を確保していることから、多くの法案の審議が与党ペースで進む見通しだ。

一方、参院では野党が多数を占めていることから、与党側がどこまで丁寧に審議を働きかけ、野党の理解を得て成立にまでこぎ着けられるかが焦点になる。今国会の会期末は7月17日と時間的な余裕があるので、与野党対決法案を除いて、かなりの数の政府提出法案が成立する可能性が大きい。

夏から秋、経済・外交への対応がカギ

高市首相にとって難題は、自ら「私の悲願」と位置づける食料品の消費税率ゼロと「給付付き税額控除」の政策をどのような道筋で実現にこぎ着けられるかだ。

食料品の消費減税について、有識者と与野党で構成する「国民会議」で議論が進められている。高市首相は6月に中間報告を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出し、2026年度中の実施に言及したこともある。

これに対し、「国民会議」の関係者や野党側から「消費税減税は、どこまで食料品の値下がりにつながるかわからない」「外食産業や農業などへの影響や問題点が多すぎる」など慎重論や反対論も相次いでいる。

自民党の幹部の一人は「高市首相は衆院選の公約として掲げたこともあり、規定方針通り突き進む可能性の方が大きいのではないか」との見方を示している。

一方、イラン情勢の悪化に伴う原油の確保について、政府は「ホルムズ海峡を通らない代替ルートで原油の調達が進み、年明けまで必要な量を確保できるメドがついた」と強調しているほか、流通の目詰まりへの対策も強化していると説明している。

問題は、石油関連製品などの価格高騰への対応だ。自民党内からは「原油の量は確保できても、原油価格の高騰や石油関連製品の値上げは確実で、中小企業や農林水産業など幅広い分野に影響が出ることが予想される」として、補正予算の編成を急ぐべきだとの意見が広がり始めた。

このようにこの夏から秋にかけては、国会終盤での重要法案をめぐる与野党の攻防と、高市首相肝いりの食料品の消費減税などの重要政策の制度設計、それにイラン情勢の影響が長期化した場合の対応が重なる事態が予想される。

その際、高市首相は内政と外交全般にわたって、どこまで指導力を発揮することができるのか。また、首相官邸と自民党との意見調整と連携がうまく機能するのかが焦点になる。その結果によっては、国民の高市政権に対する評価に変化が予想され、この二つの焦点が政治のゆくえを読むうえで大きなポイントになるとの見方をしている。(了)

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後半国会 ”高市カラー法案”続々、足元に不安も

国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。

一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。

イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。

重要法案審議入り、野党の協力がカギ

後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。

また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。

さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。

日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。

このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。

こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。

衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。

このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。

高市首相と自民に溝、相互不信の芽も

高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。

具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。

こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。

また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。

こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。

高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。

後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。

イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も

ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。

一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。

さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。

このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。

13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。

イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)

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予算の年度内成立 断念 “高市首相に参院の壁”

新年度予算案をめぐり政府・与党は、高市首相が強い意欲を示してきた予算案の年度内成立を断念した。これに伴い予算成立までのつなぎとなる「暫定予算」が30日成立した。衆議院では自民・維新の与党と中道、国民民主、参政の各党が賛成、参議院では立民、公明両党も賛成した。

続く31日には、4月から実施予定の高校授業料無償化や税制改正関連法案などについても与野党の賛成多数で可決・成立した。「暫定予算」を組むのは2015年以来、11年ぶりだ。こうした措置よって新年度予算案は成立していないものの、国民生活に直接支障が出るような事態は避けられている。

一方、この国会では衆院選挙で圧勝した高市政権がどのような政権運営を行うのかも焦点の1つだった。最初のテーマになった新年度予算案をめぐって高市首相は「数の力」を背景に予算案の年度内の成立を押し通そうとしたが、最終的には野党が多数を占める「参議院の壁」に押し返された。

ここまでの高市首相の政権運営をどのようにみるか。後半国会ではどのような対応が問われることになるのか、国会や政権の運営のあり方などについて点検しておきたい。

 ”国会運営に疎い首相”との見方も

今回、新年度予算案をめぐって与野党が対立した理由・論点は極めてわかりやすい。野党側は1月に衆院選挙が行われたことから、年度内の成立は日程的に困難だとして、早い段階から政府・与党側に暫定予算案を編成するよう求めてきた。

自民党内も当初、予算案の成立は4月末の大型連休前を想定する見方が多かった。ところが、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、自民党は急遽、年度内成立へとカジを切った。

衆議院で予算案の実質審議入りしたのが2月27日で、例年より1か月遅れだった。予算審議をめぐっては坂本予算委員長が職権で日程を次々に決定した。例年70時間から80時間かけて審議してきたが、今年は59時間と2000年以降最短に圧縮して予算案は衆院を通過した。

政府・与党は参議院でも年度内成立をめざしたが、参議院は野党が多数を占めており、参院自民党も強行路線をとらなかったことから、予算案の年度内成立は見送りとなり、暫定予算を編成することになった。

こうした政府・与党の対応について、野党側は「予算案の年度内成立が無理なことは、通常国会の冒頭解散になった時から明らかだった。選挙に圧勝したことで高市首相は自信過剰となり、国会の見通しにも甘さが出たのではないか」と厳しい評価をしている。

自民党執行部からは衆院選を圧勝に導いた高市首相を直接、批判するような意見は出ていないが、党内には参院の情勢を判断できず最後まで年度内成立にこだわり続けた高石首相に冷ややかな見方もある。

また、「首相官邸と、衆議院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間の意思疎通並びに連携がとれていないのが一番の問題」といった意見も聞かれる。

さらに別の自民党関係者は「高市首相は政策には精通しているが、国会の運営や党内調整、参議院自民党の立ち位置などの基本認識に疎いところがある。党執行部も首相と率直に話ができる関係にならないと安定した党運営は難しいのではないか」と指摘する。

予算成立後も試される首相の力量

それでは4月以降の国会の動きはどうなるだろうか。参院予算委員会で審議が続いている新年度予算案は、4月1日と2日に分野別に各委員会で審議する委嘱審査が行われることが決まっている。

自民党は一日でも早く予算案を成立させる必要があるとして、4月3日までに成立させるよう求めているが、野党側は高市首相の出席を求めて集中審議を行うことを主張している。このため、4月第1週の採決は難しく、第2週にずれ込むのではないかとの見方が出ている。

新年度予算案は既に衆議院で可決されていることから、憲法の規定で参議院で採決が行われなくても11日には自然成立する。このため、参議院の与野党とも11日の前までには採決を行うものとみられる。

4月以降の後半国会で政府・与党は、インテリジェンス(情報収集・分析)政策の司令塔となる「国家情報会議」設置法案を推進することにしているほか、連立を組む維新が強く求めている副首都法案や、衆議院議員の定数削減法案など与野党の対決色が強い法案の扱いが焦点になる見通しだ。

その際、高市首相は予算審議の教訓を踏まえて、野党側の協力を得るためにどのような姿勢で臨むのか、また自民党執行部との関係を強化できるかが問われることになりそうだ。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は低下している調査結果はあるものの、全体として高い水準を維持している。ただ、イラン情勢の悪化が長期化するとエネルギー価格の高騰と供給量の確保、物価高や企業支援などの難題が政権を直撃することも予想される。

その結果、高市政権がめざしている食料品の消費税率ゼロや、危機管理投資、防衛力の抜本強化といった高市カラーの政策に影響が出ることも予想される。

自民党の長老に高市政権について聞くと「内閣支持率は高いが、実績の評価というよりも期待値だろう。高市首相は首相官邸に閉じこもることが多いと聞くが、イラン中東の危機に的確に対応できるか、重要法案を着実に成立にこぎ着けられるか、本当の力量が試されるのはこれからだ」との見方を示す。

ここまでみてきたように高市首相は衆院選の圧勝で自民党内の基盤を強化した一方で、与党の過半数割れが続く参議院では依然として不安定な状況に立たされていることが浮き彫りになった。後半国会では衆参ねじれの状況を克服できるのかどうか、高市首相の力量が試される。(了)

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”虎の尾踏まず、されど展望開けぬ”日米首脳会談

イラン情勢の緊張が続く中で、訪米中の高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談が日本時間の20日未明、行われた。日本にとって最大の焦点になっていたホルムズ海峡に艦船を派遣する問題については、高市首相が「日本の法律でできることとできないことがあり、可能なことは対応する」などと説明した。

これに対しトランプ大統領から、艦船の派遣など具体的な要求を突きつけられることはなかった模様で、高市首相は難しい首脳会談を何とか乗り切ることができたようだ。

政府関係者は「会談は成功だった」と成果を強調する。だが、イラン戦争をめぐる停戦への道筋、ホルムズ海峡の安全航行、重油の確保と価格高騰の抑制などの根本問題は手つかずのままだ。今回の日米首脳会談をどのようにみたらいいのか会談内容を点検してみたい。

虎の尾を踏まず、艦船派遣は回避

高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談は、日本時間の20日午前0時40分から1時間半にわたって行われた。

この中で、高市首相はイラン情勢について、事態を沈静化することが必要だとしたうえで、イランによる周辺国への攻撃やホルムズ海峡の実質的な封鎖を非難する日本の考えを伝えた。

また、トランプ大統領が意欲を示すホルムズ海峡への艦船の派遣について、高市首相は「日本の法律の範囲内でできることとできないことがあり、可能なことは対応する」などと説明した。

そして両首脳は、中東地域の平和と安定の実現に向けて緊密に意思疎通を続けていくことで一致した。

会談終了後、高市首相はホルムズ海峡への艦船の派遣について「機微のやり取りではあるが、ホルムズ海峡の安全確保は非常に重要だということだった。ただ、日本の法律の範囲内でできることとできないことがあるので、これについては詳細にきっちりと説明をした」とのべた。

これに対してトランプ大統領がどのような反応を示したか、高市首相は言及しなかった。一方、会談に同席した政府関係者は「一言で言うと会談は成功裏に進み、成功裏に終了した。対面では2度目の会談だが、2度目とは思えないほどの信頼の絆を感じた」とのべ、一定の理解を得られたとの認識を示した。

今回の首脳会談をめぐって日本側は、トランプ大統領からホルムズ海峡への艦船派遣や、予想のつかないような要求が飛び出すのではないかと警戒していた。加えて高市首相についてもトランプ大統領の注文を請け負ったりするのではないかと懸念する声も聞かれた。

こうした中で行われた日米首脳会談の冒頭、メデイアに公開された場面で高市首相は「私は世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っており、諸外国に働きかけてしっかりと応援したい。きょうはそれを伝えに来た」とトランプ大統領を持ち上げた。

この発言をめぐっては「世界に戦争と混乱をもたらしている人物を賛美するもので、適切な評価と言えない」といった指摘や批判が相次いでいる。

一方、日本にとってホルムズ海峡への艦船派遣は、死活的に必要なエネルギーの確保と、日本の憲法や現行法制の下での安全保障行動を両立させることができるのか、難問であることも事実だ。

それだけに今回の首脳会談のタイミングで、この問題を先送りするのはやむを得ない面があると個人的に考える。別の言い方をすれば「虎の尾を踏まずにリスクを回避するのも一法」ではある。ただ、それだけに終わってしまうと今後の展望が開けないので、停戦など将来に向けた布石を打っているのかも問われるところだ。

経済分野 米国産原油 生産拡大へ協力

今回の日米首脳会談で、日本側は経済分野で新たなプロジェクトを提案し、アメリカ側と取り組みを進めることで一致した。

エネルギー関係では、アラスカ州の原油を増産して日本に輸入する方針で、供給量を増やし原油市場を落ち着かせるねらいもある。日本にとって、アラスカ州の原油は輸送にかかる日数が中東より10日ほど短く、輸送上のリスクも少ないというメリットがある。

原子力発電では「SMR」と呼ばれる次世代型の小型原子炉を建設する案件が盛り込まれたほか、天然ガスの発電施設を建設する案件も入っている。こうしたプロジェクトの総額は、最終的に最大で730億ドル・日本円で11兆円を超える見込みだ。

こうした一連のプロジェクトは、去年日米両政府がまとめたアメリカへの「80兆円規模の投資計画の第2弾」として位置づけられ、日米首脳会談にあわせて共同文書として発表された。

こうした経済分野の協力が、イラン情勢への対応でトランプ大統領が日本に対し手柔軟な姿勢をみせた要因の一つになったことも考えられる。

ただ、アラスカ原油については増産が可能な時期や量、それに生産コストの問題を抱えている。次世代型の小型原子炉も実用化までの課題が多いのも事実だ。

残る根本問題 停戦・安全航行・原油高

今回の日米首脳会談でをめぐっては「成功した」との評価を政府関係者などから聞くが、イラン情勢の根本問題は依然として残されたままだ。

アメリカとイスラエルによるイランに対する軍事攻撃はいつ収束することになるのか、見通しははっきりしない。今回の日米首脳会談でどこまで踏み込んで意見交換がなされたのかも明らかではない。

また、日本は原油輸入の9割以上を中東に依存し、そのほとんどがホルムズ海峡を通過している。ホルムズ海峡の安全航行をどのようにして実現するのか、日本にとって死活的に重要な問題だが、事実上の封鎖が続いている。

日本はイランと歴史的にも友好な関係にあるので、高市政権としては同盟国アメリカとイラン双方に早期停戦と海峡の安全航行の実現を強く働きかけることが求められている。こうした点についてもアメリカ側への説明はなされたのだろうか。

さらに日本にとって原油価格が高騰するとガソリンなど値上げのほか、石油関連製品の価格上昇にみまわれる。原油輸入の減少が長期化すると日本経済そのものが直撃され、大きな影響を受ける。

このほか、今回の日米首脳会談はトランプ大統領の訪中を前に日米双方が対中政策をすり合わせることを目的にしていたが、イラン情勢への対応に焦点が移ってしまった。対中政策について、日米両国の調整は進んだのだろうか。こうした首脳会談の中身はどうだったのか肝心な点がはっきりしない。

週明けの国会では、参院予算委員会の集中審議で日米首脳会談をめぐって議論が交わされる見通しだ。高市首相をはじめとする政府は、日米首脳会談を踏まえてイラン情勢の収束と原油輸送の安全航行、原油高騰対策にどのような方針で臨むのか、注視している。要は、日本の外交力と政権の実行力が問われているのである。(了)

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予算案衆院通過”参院で続く攻防、年度内成立は不透明”

衆院選後の特別国会前半の焦点になっている新年度予算案は、13日夜の衆院本会議で自民党と日本維新の会の賛成多数で可決され、参議院へ送られた。

新年度予算案の審議は例年、衆参両院でそれぞれ1か月程度ずつ時間をかけて行われてきたが、今年の衆院審議は2週間余りに圧縮され、審議時間も59時間と今の審議方式となった2000年以降、最も短くなった。高市首相が予算案の年度内成立を強く求めたことが影響しており、予算審議のあり方に禍根を残した。

予算案の衆院通過を受けて、16日から参議院の予算委員会に舞台を移して審議が始まる。参議院は与党が過半数割れしていることから、与党が思うような委員会運営は困難とみられ、高市首相が強いこだわりをみせている予算案の年度内成立ができるかどうか不透明な情勢だ。

衆院選で圧勝した高市政権の国会運営や、参院で始まる予算審議のどこを注視していく必要があるのか、探ってみたい。

 職権決定連発、過去最短の予算審議

まず、新年度予算案の衆院通過をどのようにみるかだが、結論から先に言えば「質、量ともに内容が乏しく乱暴な予算審議」と言わざるを得ない。

「質」の面では、新年度の予算案は一般会計の総額が過去最大の122兆円に上るが、掘り下げた議論はほとんどみられなかった。高市首相は国民の関心が強い物価高対策として、食料品の消費税率ゼロを打ち出しているが、実現は早くても来年で、それまで具体策として何をするのか依然として不明なままだ。

防衛費は初めて9兆円を超えたが、今後の防衛力の抜本強化ではどのような分野に重点を置くのか、そのための財源をどのように確保するのか国民が知りたい点については明らかになっていない。

「量」の面では、新年度予算案の審議は高市首相が通常国会冒頭の解散に踏み切ったことから、例年に比べて1月遅れの2月27日から始まった。例年、衆院と参院で1か月ずつ審議を行うため、与野党とも予算案の成立は4月末までずれ込むとみていたが、高市首相は年度内成立に強い意欲を示した。

これを受けて与党は、衆院選で得た圧倒的な議席数を背景に審議日程を圧縮し、坂本予算委員長が職権で審議日程などを次々に決定した。

こうした結果、衆院の審議時間は59時間、2000年に今のような審議方式になって以降、最も短い。例年70時間から80時間、1か月かけて審議してきたが、大幅に縮小した。

予算審議が最短で終わった背景としては、高市首相が年度内成立に強いこだわりを示したことが大きく影響した。予算審議が始まる前には、首相が官邸に自民党の衆参幹部を呼び、年度内成立を指示した。

自民党内は、衆院選圧勝を導いた首相に異論を挟むのは難しいとの空気が強く、高市首相の指示をそのまま追認する状態が続いている。

一方、野党側も衆院選大敗で議席数を大きく減らしたこともあって、高市政権の政治姿勢などを厳しく追及することができていないのが実状だ。

このように今年の衆院の予算審議は、首相が年度内成立にこだわった結果、予算案の衆院通過の時期に与野党の関心が集中し、論戦も極めて不十分なまま終わってしまった。国民生活に直結する予算審議のあり方について、高市首相や与野党双方とも猛省が必要だ。

続く攻防、首相の政治姿勢と手腕は

さて、新年度予算案の論戦の舞台は参院に移り、16日と17日には高市首相と全ての閣僚が出席して基本的質疑が行われる。

予算案は憲法の規定で、参議院で採決が行われない場合でも衆議院を通過して30日経過する4月11日には自然成立する。だが、政府・与党はあくまで年度内成立をめざす方針を変えていない。

一方、野党側は、衆院で十分な審議日程がとられなかったことに強く反発しており、参議院では例年並みの審議日程を確保するよう求めていく方針だ。そして憲法の規定に沿って暫定予算を組むよう求め、この中にイラン情勢悪化に伴う緊急対策などを盛り込むように求めていく構えだ。

参議院では自民・維新の与党だけでは過半数に達していないことに加えて、野党側が慎重審議求めていることから、予算案の年度内成立は不透明な情勢だ。最終的には、政府が暫定予算を組むことになる可能性もある。

衆議院では予算案をめぐる掘り下げた議論ができなかったため、参議院では「再考の府」「熟議の府」として、国民が知りたい点について踏み込んだ議論を尽くす必要がある。

一方、高市首相は18日から4日間の日程で訪米し、トランプ大統領と日米首脳会談を行う。緊迫したイラン情勢への対応をはじめ、東アジアの安全保障、日本の対米投資のあり方など幅広いテーマで意見をが交わす見通しだ。

参議院予算委員会では日米首脳会談の報告を踏まえて、イラン情勢の悪化に伴う物価高騰対策や経済対策が焦点になる見通しだ。与野党は緊急に実施すべき対応策についても議論を深め、必要な対策を早期に実施していくことが必要だ。

NHKの3月の世論調査(3月6~8日実施)によると高市内閣の支持率が59%と前月に比べて6ポイント下落する一方、不支持率は26%で6ポイント増えた。世論の高市政権への視線は衆院選挙時の熱気が冷めて、政権の内外対応を冷静に見極めようとする姿勢がうかがえる。

衆院選で圧倒的多数を得た高市政権は、衆院段階の予算審議では”横綱相撲”ではなく、数にまかせた乱暴な姿勢が露わになった。参議院での予算審議ではこうした政治姿勢が修正できるのか、またイラン情勢など内外の激動に的確な対応ができるのかどうか、高市首相の手腕が問われることになる。(了)

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“猪突猛進、異例の予算審議”と高市政権

特別国会序盤の焦点になっている新年度予算案について、高市政権は年度内成立をめざして審議日程を圧縮するなど異例の国会運営を続けている。

こうした中で政府・与党は、土曜日の7日に予定していた衆院予算委員会の一般審議の提案を取り下げるとともに、野党側から要求のあった高市首相出席の集中審議を9日に行うことを受け入れた。

但し、衆院選で圧勝した高市政権は「数の力」を背景に、13日には予算案採決の方針は変えていないとの見方が政府・与党内では強い。

一方、衆議院で野党の反対を抑え込んで予算案の衆院通過を図っても参議院では与党が過半数割れしているため、年度内成立は困難になるとして、丁寧な国会運営をめざすべきだとの意見も聞かれる。来週以降の国会と高市政権の運営は、どのような展開になるのか探ってみたい。

異例の予算審議、与党の強硬決定続く

新年度予算案をめぐっては、衆院解散・総選挙の影響で例年に比べてほぼ1か月遅れの2月27日から実質審議が始まったが、異例の展開が続いている。

当初、与野党双方とも「新年度予算案は、3月末までの短期間で成立させるのは難しく、暫定予算案は避けられない」との見方が支配的だった。

ところが、衆院選に圧勝した高市首相は年度内の成立をめざす考えを示し、自民党執行部に指示するとともに予算委員会では野党側に繰り返し協力を要請した。

これを受けて自民党は衆院予算委員会冒頭の総括質疑が始まってから、わずか3日後に早くも採決の前提となる「中央公聴会」の開催を議題にすることを坂本予算委員長が職権で決定し、その日の予算委員会で与党多数で日程を議決した。

また、坂本委員長は一般質疑の日程を職権で決めたことなどから、野党側が強く反発し、衆院の森議長に「議会政治をないがしろにする横暴」などと非難し、充実した予算審議を行うよう申し入れた。

与野党の協議の結果、与党側が土曜日の7日に行うよう求めていた一般質疑を取り下げるとともに、9日の午前に一般質疑、午後に高市首相が出席して集中審議を行うことで合意した。

このように予算審議をめぐっては、与党側が審議日程などを強硬に決める場面が続いている。これでは「与党は予算案の中身の審議よりも、予算案の採決を優先させる対応に終始している」との批判は免れない。

国民生活に直結する新年度予算案の成立が遅れるのは、通常国会冒頭に衆院解散に踏み切ったことが根本原因だ。このため、高市首相は自らの行動を顧みると同時に、法律で規定されている通りに暫定予算案を組み、予算案の審議を十分に行うことが政権のあるべき対応だと考える。

同じように選挙で大勝した安倍元首相も暫定予算を編成して、予算審議を丁寧に行ったことを学ぶ必要がある。

予算案採決めぐり与野党の攻防激化へ

それでは、今後の動きはどのような展開になるだろうか。既に触れたように自民党と維新の与党側は年度内成立を確実にするため、13日には衆院予算委員会で採決をめざす方針を変えていないとみられる。

これに対して、野党側は「予算案の審議は尽くされていない」として、集中審議などをさらに求めていく方針で、与野党の攻防が激しくなる見通しだ。

9日に予定されている集中審議は今国会では初めてで、野党側は引き続き第2弾の集中審議を求めていく方針だが、実現できるかどうか野党側の力量も試されている。野党第1党の中道も単独で内閣不信任決議案を提出できる勢力51人にも達していないことから、攻め手を欠く状況に立たされている。

これに対して与党側は、衆議院全体の4分の3を占め圧倒的優位に立っていることから、新年度予算案を13日に衆院通過させることも可能だ。

しかし、参議院では与党だけでは過半数に達していないことから、衆議院で採決を強行した場合、参議院側で野党の反発を招いて審議入りが遅れ、年度内成立ができないジレンマを抱えている。最終的に高市首相がどのような判断をするのかが焦点になる。

また予算案の扱いは、高市首相が今国会での成立に強い意欲を示しているインテリジェンス機能を強化するための「国家情報局」の創設法案をはじめ、皇室典範の改正、さらに維新が強く働きかけている衆議院の議員定数削減法案などの重要法案の審議の進め方にも影響する。

さらに高市首相にとっては、世論の高い支持率を維持していくうえで、野党の反対を押し切ってでも強い姿勢で法案の成立をめざした方が支持されるのか、それとも野党側の要求の一部を取り入れたりしながら柔軟な姿勢で臨んだ方が得策なのか、政権運営への影響も考慮に入れて判断するものとみられる。

高市首相にとっては、新年度予算案の扱いと、食料品の消費減税などを検討する「国民会議」に国民民主や中道など野党が参加する問題、それに19日に迫ったトランプ大統領との日米首脳会談への対応が問われることになる。

私たち国民もこうした一連の結果を注視しながら、先の衆院選挙で高市政権と与党を大勝させたことが妥当だったのかどうか。また、これからの高市政権の政権運営や国会のあり方についてどのようなことを望むのか、再考することが大事ではないかと考える。(了)

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高市首相のギフト配付問題と政治姿勢

高市首相が先の衆議院選挙の後、当選した全ての自民党の衆議院議員にカタログギフトを配っていたことが明らかになった。この問題はさっそく、25日の参議院の代表質問でも取り上げられ、高市首相は事実関係を認めたうえで「法令上、問題はない」との認識を示した。

衆院選挙で当選した自民党所属議員は300人を上回る。その全員にカタログギフトを配るとなると多額の政治資金が必要で、現職の総理・総裁がそうした行動をとったことに驚きを禁じ得ない。

この問題は政治リーダーの「政治倫理」の基本認識と関係するほか、衆院選で圧勝した高市首相のこれからの政治姿勢を占うでも注目してみていく必要がある。

 1人約3万円、議員315人に配付

この問題は週刊文春の電子版が24日、「高市首相の事務所が当選祝いとしてカタログギフトを配り、自民党の衆院議員が受領を認めた」と報じたのをきっかけに表面化した。

24日夜には、高市首相が自らのXに投稿し「衆院選後、自民党衆議院議員の全員宛てに、今回のたいへん厳しい選挙を経て当選したことへのねぎらいの気持ち込め、品物を寄付させていただいた」と事実関係を認めた。

これを受けて25日の参議院の代表質問で、立憲民主党の田名部幹事長が配付の目的や原資について質した。

高市首相は「品物は本体価格と送料などで1人およそ3万円、合計315人になる。私が支部長を務める奈良県第2選挙区支部の政治資金からの支出だ。政党支部から議員個人への寄付として、法令上も問題ないと認識している」と釈明した。

首相官邸の関係者は「社会通念上、認められる行為だ。法令上も問題はない」と高市首相を擁護する。

政治資金規正法では、個人が公職の候補者の政治活動に関して寄付を行うことを禁止している。一方、支部を含む政党から公職の候補者への物品による寄付は認められている。

このように法令上は違反ではない。但し、自民党議員全員に配った経費の総額は945万円に上る。「政党交付金からの支出ではない」とされるが、1千万円近い多額の政治資金の支出であり、こうした行動をどのようにみるかという問題は残る。

政治とカネ、問われる首相の政治倫理

総理・総裁が当選祝いとして金品を配ったケースとしては去年3月、当時の石破首相が自民党衆院議員の当選1回生15人に、1人10万円の商品券を配り、批判を浴びた。石破首相は陳謝し、商品券は返却された。

今回は配った品物はカタログギフトで金額も異なるが、配った人数が300人を上回るのだから驚く。私も長い間、政治取材を続けているが、総理・総裁が党所属議員全員に当選祝いの品物を配ったというのは記憶にない。前代未聞と言えるのではないか。

日本の政界は1970年代のロッキード事件、80年代のリクルート事件などを教訓に「カネのかからない選挙と政治」をめざしてきた。こうした「カネのかからない政治」の考え方からすれば、自民党は未だに古い政治を続けているのかとあきれる国民も多いのではないか。

今回の高市首相のギフト配付は、前任の石破首相の失敗を繰り返し、国民の政治不信を強めているように見える。また、カネのかからない政治の実現、「政治倫理」の観点からも首相の対応は大きな問題を抱えていると考える。

 衆院選圧勝の緩み・慢心はないか

今回の問題をめぐって気になるのは、自民党は衆院選で316議席という結党以来最多の議席を獲得したが、こうした圧勝に伴う気の緩みはないかという点だ。

野党の幹部の1人は「高市首相には選挙に大勝したことによる慢心があるのではないか」と懸念を示す。

今回の問題が深刻なのは、国会前半戦の最大の難所となる衆議院予算委員会が始まってもいない段階で、世論の不信を買う恐れがある行動が起きたという点だ。

歴代政権の多くは予算成立までは、閣僚の失言や議員の不祥事などが起きないよう細心の注意を払いながら政権運営を続けるのが常だった。そうした取り組みと比べると、今回の高市首相の対応は余りにも緊張感に欠けており、選挙大勝の緩みが現れたと厳しく指摘されても否定できないのではないか。

野党側は衆院選挙で大敗したこともあって、政権を追及するような動きにはなっていないようにみえる。問題は、世論がどのように受け止めるかだ。高市内閣の支持率は選挙後も高い水準を維持してきたが、政治とカネの問題には厳しい。今回の問題で支持率に陰りが出るか、影響は出ないのか注目点の1つだ。

 首相 強気の政権運営に踏み出すか

18日に召集された特別国会は、高市首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が26日に終わり、27日からは衆院予算委員会に舞台を移して新年度予算案の審議が始まる。衆院解散・総選挙の影響で、例年に比べて1か月遅れの審議入りになる。

新年度予算案の審議について、代表質問に立った中道改革連合の小川代表は「必要な審議日程は削るべきでない」として、暫定予算案の編成を求めるともに提出されれば、野党としても協力する考えを表明した。

これに対して高市首相は、暫定予算案には一切触れずに「国民生活に支障が生じないよう年度内成立をめざしたい」と野党側に年度内成立への協力を呼びかけた。

これより先、高市首相は自民党の衆参幹部を首相官邸に呼び、予算案の年度内成立を指示した。衆院選圧勝で高市首相の力が強まったとされ、自民党執行部としても審議日程の大幅な短縮を検討しているとされる。

高市首相は「責任ある積極財政」を掲げ、食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにすることや超党派の国民会議の設置、さらにはインテリジェンス機能強化のため、「国家情報局」を創設する法案の成立などにも強い意欲を示している。

高市首相は「さまざまな声に謙虚に、真摯に耳を傾ける」としながらも、「熟議の後に決めるべき時は決めなければならない。それが民主主義のルールだ」と強気の姿勢をのぞかせている。

巨大与党が復活した中で、新年度予算案の審議はどのような形で進められるのか、少数に転じた野党の力量も問われる。また、カタログギフトの配付など政治とカネの問題をめぐっても、高市政権と与党の政治姿勢が問題になることも予想される。

特別国会は当面、27日から始まる衆院予算委員会で、高市首相と野党側の論戦がどのような展開になるか注目したい。(了)

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“高市1強体制”と特別国会が問われる点

衆議院選挙を受けた特別国会が18日に召集され、首相指名選挙で高市自民党総裁が第105代の首相に選出された。これを受けて高市首相は、政権発足から間もないことから全ての閣僚を再任し、18日夜に第2次高市内閣を発足させた。

特別国会初日の衆院本会議場は、議長席に向って左側から真ん中を経て右側の4分の3まで、自民党と連立を組む日本維新の会の与党席が大幅に張り出した。高市首相の選出が決まると与党席から大きな拍手があがり、衆議院選挙の自民圧勝と巨大与党の誕生を印象づけた。

特別国会の会期は7月17日までの150日間で、長丁場の国会が続く。衆院では自民党が単独で316議席という戦後最多の議席を確保し、この勝利は高市首相人気が大きかったことから、与野党の力関係だけでなく、自民党内でも首相の存在感が強まり、”高市1強体制の始まり”との見方が広がっている。

一方、国民からすると高市首相の強い指導力に期待する声がある一方で、政権が暴走したりする場合を危惧する見方もある。そこで、この”高市1強体制”と特別国会はどのような対応が問われているのかを探ってみたい。

高市政権、政策の全体像の提示が必要

さっそく特別国会の日程からみておくと、20日に高市首相の施政方針演説と政府4演説が行われた後、24日から3日間衆参両院で代表質問が行われ、27日から衆院予算委員会に舞台を移して、新年度予算案が審議入りする。

国民からすると最も知りたいのは巨大与党が誕生して、高市政権はどのような政治をめざそうとしているのかということだろう。

選挙戦で高市首相は「日本列島を強く豊かにする」「責任ある積極財政」「政策の大転換を図る」ことなどを訴えた。だが、選挙スローガンの域を出ず、与野党の政策論争もほとんどなかったことから、国民としては高市政権の主要政策と言われても判断材料が極めて乏しいのが実状だ。

特に経済政策については「責任ある積極財政」や「危機管理投資と戦略投資17分野」などが繰り返されるが、こうした政策によって日本経済がどの程度成長し、どのような経済社会をめざすのかといった説明はほとんどなされていない。

高市首相が政治の師と仰ぐ安倍元首相は、賛否は別にしてアベノミクスを掲げ、大胆な財政出動などの3つの矢と、物価安定目標を2%、2%以上の経済成長を2年程度で実現すると政権の目標などを明確に提示した。

高市政権も、こうした政権の目標や実現するための政策の組み合わせ、時期・道筋などを明確に打ち出すことが必要だと考える。

消費税減税、財源・時期の明示は?

次ぎに国民が知りたいのは、高市首相が選挙直前に打ち出した「2年間に限り飲食料品に対する消費税率をゼロ」にする方針はどうなるのかという点だ。

衆院選を終えた9日の記者会見で、高市首相は公約通りに超党派でつくる「国民会議」で検討を加速し、「夏前には中間とりまとめを行いたい」と表明した。そのうえで、次の国会以降に税制改正法案の提出を急ぐ方針だとみられている。

問題は、年5兆円規模の財源をどのように確保するのかという点と、実施時期、それに2年後には必ず税率を引き上げることはできるのかといった点だ。

高市首相は、財源については「赤字国債に頼らない」と強調しているが、市場は「高市政権の財政拡大策では、財政が悪化するのではないか」と警戒しているほか、社会保障制度への影響を懸念する見方もある。

一方、この飲食料品の消費税率ゼロを先送りした場合、世論の強い反発が予想される。それだけに高市政権としては、規定方針通り進めるものとみられるが、いずれにしても具体的に安定財源を示し、市場や国民の理解を得られるかどうかにかかっている。

国論二分の政策、 政権と世論にズレも

3つ目の問題として、高市首相が「国論を二分するような政策についても信任を得たい」とのべていたことから、この「国論を二分するような政策」とは何か、また、その優先順位などが議論になる見通しだ。

高市首相は「責任ある積極財政」の一環として、恒常的な補正予算編成からの決別、防衛力の抜本強化、インテリジェンス機能の強化として「国家情報局」の創設、外国から日本への投資の審査体制を強化する「対日外国投資委員会の設置法案」を今の国会に提出したいとの考えを示している。

また、政府・与党内では、スパイ防止法案をはじめ、国旗損壊罪の制定、皇室典範の改正、旧姓の通称使用の法制化、憲法改正に向けた議論の加速など保守色の強い政策が検討されている。

一方、こうした課題については、国民の理解がどこまで進んでいるかという問題がある。NHKが先の衆院選で投票した人を対象にした「出口調査」で、投票する際に最も重視した政策を尋ねている。

最も多かったのは◇「物価高対策・経済政策」で49%、次いで◇「年金・社会保障政策」16%、◇「子ども政策・少子化対策」10%、◇「外交・安全保障政策」8%などとなっている。

一方、「外国人に関する政策」は6%、◇「憲法改正」は3%、◇「原発などエネルギー政策」は1%などとなっている。

このように例えば「憲法改正」については、高市首相は強い意欲を示しているが、国民の優先順位は極めて低い。

高市首相は「選挙公約については国民の信任をいただいた」との認識を示していることから、保守的な政策を強力に推し進めるものとみられる。だが、進め方によっては、政権と国民の考え方に乖離,大きなズレが浮上してくることも予想される。

少数野党、 チェック機能を果たせるか

先の衆院選で大幅に勢力を減らした野党各党は、巨大与党にどのように向き合うかが問われている。

衆議院で野党第1党の中道改革連合は、選挙前の172議席から3分の1以下の49議席まで激減した。野党の最大の武器になってきた内閣不信任決議案の提出には51人が必要なので、単独では提出できない。衆院の野党第1党は、戦後最も小さな野党になった。

このほかの野党の勢力は、国民民主党28人、参政党15人、チームみらい11人、共産党4人、れいわ新選組1人、減税・ゆうこく1人にまで落ち込んでいる。衆院では、小規模な7つの党派に分散する厳しい状況に立たされている。

このように少数野党だが、論戦でどこまで政権に迫ることができるか試されている。政権に対するチェック機能を果たし、世論の支持と理解を広げていけるかどうかが問われているともいえる。

一方、参議院では与党は過半数を割り込んでいることから、野党としては衆参が連携し、国民の声を代弁しながら国会論戦を展開できるかどうかがカギを握る。

高市首相 消費税減税で法案提出めざす

第2次高市内閣の発足を受けて、高市首相は18日夜、記者会見した。この中で高市首相は、野党に協力を求めて新年度予算案の早期成立に取り組むとともに、食料品の消費税率を2年間ゼロにする自民党の公約実現に向けて「国民会議」で夏前に中間とりまとめを行い、税制関連法案の提出をめざす考えを表明した。

また、安全保障関連3文書の改定と、国家情報局を設置するための法案を今の国会に提出する方針を示した。そして、憲法改正や皇室典範の改正、議員定数の削減に挑戦し、「決断と前進、挑戦の内閣」として取り組んでいくと強調した。

巨大与党の勢力を背景に高市首相が、強い経済と防衛力の抜本強化、さらに保守色の強い政策の推進まで踏み込んでいけるかどうかは、この特別国会での与野党の論戦と、国民の幅広い支持が得られるかどうかにかかっている。

それだけにこれから始まる論戦に、多くの国民が関心を持ち、政権の姿勢やねらいをどのように評価するか、大きな注目点だ。(了)

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