3党の合流断念 ”野党 多弱化と険しい再建の道”

中道改革連合、立憲民主党、公明党の3党党首が31日夕方、国会内で会談し、これまで進めてきた3党の合流を断念することを確認した。

これを受けて、衆議院議員で構成する中道改革連合は、立憲民主党系と公明系に分裂する見通しで、分党など具体的な方法の検討に入った。

中道の小川代表は会談後の記者会見で「中道勢力の拡大と政権交代に向けて党に集まった仲間が再軌道していくための新たな形態を見いだしたい」として、衆議院での統一会派の結成をめざすを示した。

秋の臨時国会を前に衆議院の野党第1党である中道が分裂すると、野党の多党化と弱体化がさらに進む。私たち国民は、こうした野党の現状と政治のあり方をどのようにみたらいいのか考えてみたい。

衆院選1千万票の重みと政党の責任

中道、立憲民主、公明の3党代表は党首会談終了後に記者会見に応じたが、3党の代表の発言内容に納得した国民は少なかったのではないか。

中道の小川代表は、その後の会見も含めて記者団から「これからめざす新たな形態とは何か」「衆院の統一会派は実現可能か」などの質問に対して、「今の体制のままではない。具体的なことは申し上げられない」との説明を繰り返した。

立憲民主党の水岡代表は「3党の協力・連携のスタートにしたい」とのべたほか、公明党の竹谷代表は「中道の対応を見守りたい」などとのべるに止まった。3党合流が頓挫した後、それぞれの党がどのような方向に踏み出すのかを聞きたかったが、3党の代表からは踏み込んだ言及はなかった。

中道改革連合は、中道勢力の結集と政権交代を掲げて先の衆院選に挑戦したが、選挙前の172議席から49議席へ激減・惨敗した。だが、比例代表選挙でみると1043万票を獲得した。自民党の2102万票次いで、2番目に多い得票だ。中道に1票を投じた有権者の思いにどのように応えるのか政治家の責任は極めて重い。

また、新党結成から衆院選を経てわずか7か月で瓦解することになったことは、政党として国民の期待に応えることができず、国民の政治に対する不信感を一段と強めたことも重く受け止める必要がある。

少数野党分立と野党弱体化の加速

それでは野党の陣営は今後、どのようになるのだろうか。まず、今の衆議院の勢力は野党第1党が中道で49人、次いで国民民主28人、参政15人、みらい11人、共産4人などとなっている。

中道が分かれると公明系が28人、立憲民主党系11人となる。野党第1党は、国民民主と公明となるが、いずれも30人を下回る小規模野党第1党だ。これまで想定していなかったような少数野党の分立国会となる。

自民党は316議席、単独で衆議院の3分の2を上回り、戦後最も多くの議席を獲得した。連立を組む維新は36人で、与党の自民・維新で352人と全体の4分の3を占める。衆議院は「自民1強・弱小野党」の構図が一段と進むことになる。

中道の小川代表は、将来の中道勢力の結集と衆院で野党第1会派をめざして、公明系などと合わせて統一会派の結成をめざしている。公明党は参議院では立憲民主党との統一会派の結成に応じなかったが、衆議院ではどのような方針で臨むか、注目される。

参議院は衆議院と異なり、自民党は101人で、維新の19人を合わせても120人に止まり、総定数248の過半数に達しない。これに対して、野党は立憲民主が40人、国民民主25人、公明21人、参政15人、共産7人、いのち5人、保守2人、みらい2人などと続く。

衆院は巨大与党、参議院は与党過半数割れで、「衆参ねじれ国会」となっているが、3党合流断念をとらえて自民党が今後、参院で多数派工作などを強めることが予想される。

政権監視の”しっかりした野党”が必要

これからの政権と野党はどのような役割が求められるのだろうか。国民の考え方も、強い政権が思い切った政策を次々に断行する政治を期待する人もいるだろうし、支持する野党を中心に政権交代を望む人もいるだろう。

ただ、国民の考え方は多様化していることと、どの政党が政権を握るようになっても公正な政治を進めるためには、政権を監視し政策をチェックする野党が必要だ。そうした野党がいない場合、強力な政権ができたとしても次第に緩みが生じて、国民の期待に反するような政治に逸脱するおそれもある。

今回は中道勢力を結集する試みは失敗したが、政権や政策をチェックする野党の必要性とは別の問題だ。政権監視などができる、しっかりした野党の存在は必要だ。そして政権交代可能な政治体制についても必要と考える国民は多いのではないか。そのための野党勢力の結集が問われているということだろう。

さて、衆議院では中道が分裂した場合、公明系の議員は公明党に復党する可能性が大きいとみられる。その場合、公明党が与野党のどの政党と連携を深めていくのか、今後のカギを握る。

一方、中道の立憲民主系の議員は、新党を結成することになるのか、あるいは離党する議員が出てくるのかどうか、さらには落選中の議員がどの程度参加するかも問われる。

野党の陣営は、中道や国民民主、公明、参政、共産など各党が乱立し、それぞれ党の理念と独自の政策を主張し合う中で、野党の勢力が小異を残して大同につくことができるのか、野党勢力の結集や再建は険しい道が予想される。

一方、高市政権にとっては、中道の分裂は野党勢力に楔を打ち込むことができ、有利に働くものとみられる。高市首相は秋の臨時国会で、悲願の食料品の消費税率を1%に引き下げる法案を成立させるとともに、「責任ある積極財政」などを掲げて、高市カラーの濃い政策を強力に展開していくものとみられる。

これに対して野党陣営は、消費減税などに対案をまとめて対峙していくことになるのか、それとも野党陣営が切り崩されて守勢に回ることになるのか。秋の政治は、経済・財政の動向とも絡んで、複雑で波乱含み展開になるのではないかと予想している。(了)

★追記(3日13時)内閣改造と自民党役員人事は今月中旬にも行われるとの見方が自民党内で強まっている。政府・与党は食料品の消費税率を1%に引き下げる制度設計を進めているが、これを実施するための税制改正大綱が15日までに閣議決定されれば、高市首相は直後に内閣改造と自民党役人事を行うとの見方。このうち、党役員人事では麻生副総裁と鈴木幹事長を続投させるかどうかが焦点。内閣改造では、維新から新たに閣僚を起用するものとみられている。

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秋の政局 “消費減税法案がカギ 高市政権”

高市政権は今年2月の衆院選挙で圧勝し、長丁場の特別国会を終えたが、報道各社の世論調査によると7月半ばに内閣支持率が急落した。8月に入っても横ばいか、低下が続いており、支持率の下落傾向に歯止めがかかっていない。

高市政権は去年秋の発足から間もなく1年を迎えることから、高市首相は9月中旬以降にも初めての内閣改造・自民党役員人事を行う見通しだ。秋の政治はどこかポイントになり、どのような展開になるのか、探ってみたい。

秋の日程、臨時国会と外交・安保2本柱

まず、秋の政治日程から見ていきたい。2つ大きな柱があり、1つは臨時国会の召集だ。その臨時国会への対応と来年秋の自民党総裁選挙をにらんで、高市首相は9月に内閣改造・自民党役員人事に踏み切る見通しだ。また、衆院選挙の公約に掲げた食料品の消費減税の関連法案を国会に提出し、成立をめざす方針だ。

2つ目は外交で、9月22日から秋の国連総会がニューヨークで開幕し、各国首脳の演説が行われる。11月にはAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で、12月にはG20サミットがアメリカのマイアミでそれぞれ開かれる。

11月3日はアメリカの中間選挙の投開票日で、結果はトランプ政権の命運を左右するだけでなく、日本を含む世界の経済・外交関係に大きな影響を及ぼす。一連の外交日程の中で米中首脳会談が行われるほか、高市首相にとっても緊張関係が続く中国の習近平主席との首脳会談が行われるかどうかなど注目点は多い。さらに年末には日本の安全保障三文書の改定と防衛力整備の問題が控えている。

臨時国会の具体的な召集日などは調整中だが、高市首相は9月22日開会の国連総会に出席するとみられることから、内閣改造などの人事は出発前の9月中旬以降、臨時国会は帰国後の9月下旬以降に召集する方向で検討しているものとみられる。

内閣改造、自民党の幹事長人事が焦点

さて、高市首相は内閣改造と自民党役員人事について、具体的な人事構想を周辺にも明らかにしていないが、与党の関係者は「自民党の党運営の要である鈴木幹事長を続投させるのかどうかが最大の焦点」との見方をしている。

また、内閣改造では閣外協力の日本維新の会から閣僚を起用するほか、去年の自民党総裁選を争った小泉、林、小林、茂木の各氏を引き続き閣内や党役員として処遇するのか否かも焦点だ。

このうち、自民党役員人事をめぐって高市首相は、麻生副総裁の義理の弟である鈴木幹事長を交代させ、旧安倍派の萩生田幹事長代行を据えたいとの見方が取り沙汰されている。

これに対して麻生副総裁は、鈴木幹事長の続投を強く求めているとされる。政府や自民党関係者の間では「幹事長を交代させた場合、高市・麻生関係に亀裂が入り、政権運営にも支障が出てくる」として鈴木氏続投の見方が強い一方、「高市首相は自らの考えを貫くのではないか」との見方もある。

自民党長老は「今の党内をみていると肝心なことは高市総理・総裁が独りで決めており、周囲があれこれ言っても意味がない」と語る。高市首相は25日、麻生副総裁と首相官邸で昼食をともにしたが、こうした会談以外の人事情報は、ほとんどが憶測の域を出ないとみてよさそうだ。

消費減税法案がカギ、財源含め論戦へ

それでは、秋以降の政治に大きな影響を及ぼすのは何かと言えば、食料品の消費減税法案の扱いだろう。

政府や8月5日の臨時閣議で、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げるなどした基本方針を決定した。これに合わせて、中低所得層に1%相当分を給付することで、実質ゼロを実現するとしている。

政府は、与党で食料品の消費減税を盛り込んだ税制改正大綱をまとめるのを受けて、必要な法案を秋の臨時国会に提出し、早期の成立をめざす方針だ。

この消費減税法案に対して野党側は「食料品に限定した減税の効果には疑問があるほか、農家や外食産業に多大な負担が生じる」として反対する姿勢を変えていない。自民党内にも「財源のめどがついていない」として慎重論も依然として残っている。

このため、秋の臨時国会では消費減税法案をめぐって与野党の意見が真っ向から対立する見通しだ。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案が成立するのかどうか見通しは立っていない。仮に参議院で法案が否決されたりした場合、衆議院に回付して3分の2以上の賛成多数で再可決することもありうるとの見方もある。

政府が、社会保障の財源となっている消費税率を引き下げるのは今回が初めてで、5兆円程度の財源をどのように確保するのかはっきりしない。新年度予算の財源としては、高市首相が重視する危機管理投資や成長戦略投資、さらには防衛力強化のための財源と合わせて、どのように確保するかは難題だ。

一方、秋に向けて石油由来の化学製品の値上げや、円安に伴う輸入物価の値上がりにどのような対策をとるのか、高市政権の経済・財政運営の在り方を含めて激しい論戦が交わされる見通しだ。国会審議を通じて、政府が説得力のある説明をできるかどうか、法案の成否を左右することになりそうだ。

税は鬼門、試される首相の政権運営能力

2月の衆院選挙で自民党は戦後最も多い316議席を獲得し、歴史的圧勝を収めたが、税制は政権にとって鬼門だ。これまでも衆院選挙で圧勝したケースとして、中曽根、小泉、鳩山、第2次安倍の各政権と高市政権がある。

圧勝した政権は、選挙後の政権運営も順調に運んだケースもあるが、失敗に終わったケースもある。高市政権のケースを考える際、参考になるのは中曽根政権のケースだ。

中曽根政権は昭和61年、衆参ダブル選挙で300議席を獲得し、その功績で自民党の総裁任期が1年延長となり、絶頂期を迎えた。政権後半の政治目標に売上税導入を打ち出し、法案を閣議決定、国会提出へと突き進んだ。

ところが、野党の反対に加えて、足元の自民党内、小売店などの関係団体にも反対が広がり、内閣支持率は急落、統一地方選にも敗北、ついに法案は廃案に追い込まれ失敗した。

高市政権とは法案の内容も異なるし、中曽根政権は増税に対し、高市政権は減税という違いもある。だが、税制は影響を受ける様々な業界・団体の利害調整、自らの党内はもちろん、野党への働きかけ、国民への説明や説得など地道な努力を幅広く展開する必要がある。政権全体の総合的な調整力や実行力が必要だ。

中曽根首相は元々、派手な雄弁で鳴らし、サミットなどの国際舞台で存在感をアピールするタイプの政治家だ。税制など地味な仕事は不得手だったことも影響したのではないか。

さて、高市首相はどのように対応するだろうか。これまでの活動をみると選挙の街頭演説などは得意のようだが、国会での質疑や国民に向けた記者会見などは好きではないように見える。

また、税制や財政も得意分野とは言えないようだ。首相はすべての分野に精通している必要はない。政権の最高責任者として、それぞれの分野に優秀な人材を配置し、指揮・調整していけばよい。それだけに9月に行われる予定の内閣改造と自民党役員人事でどのような布陣にするかが大きなポイントだ。

内閣と与党の人事から、臨時国会へと首相の政権運営能力が試されることになる。具体的には、首相官邸と自民・維新の与党側との調整、次に参院自民党との連携、それに霞ヶ関の官僚とも連携を図り、法案や政策が実行できるかが問われている。

先の特別国会での高市首相の言動を見る限り、高市首相が自ら調整力を発揮するのは相当、困難とみているが、政治家は大変身することもある。秋の臨時国会での首相の答弁内容や対応を注視したい。(了)

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高市内閣支持率 発足以降最低 “無党派層の支持離れ”

先の衆院選で自民党が歴史的圧勝を収めたのを受けて召集された特別国会は、先月25日に閉会した。また、焦点の食料品の消費減税について高市政権は5日、来年4月から2年間に限って消費税率を1%にまで引き下げる方針を閣議決定した。

一方、報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は先月半ば以降、急落しているが、8月に入って歯止めがかかるのかどうか。また、食料品の消費減税について国民はどのようにみているのか。NHKの8月の世論調査がまとまったので、そのデータを基に分析してみたい。

結論を先に言えば、高市内閣の支持率は53%で先月調査から5ポイント下がり、去年10月に発足して以降、最も低い水準となった。これは最も多い無党派層の支持離れが進んだためだ。

また、特別国会で成立した皇室典範の改正については国民の理解が得られていないほか、消費減税についても支持に広がりがみられないことが影響しているものとみられる。

特に消費減税をめぐっては秋の臨時国会で本格的な議論が行われることから、高市政権は厳しい政権運営を迫られる公算が大きい。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的にみていきたい。

 無党派層・女性・高齢層の支持離れ

NHKの世論調査(8月7~9日実施)によると、高市内閣の支持率は53%で、7月調査から5ポイント下落した。一方、不支持率は33%で、6ポイント増えた。高市内閣の支持率は衆院選が実施された2月は65%と高かったが、それ以降は下降傾向が続いている。8月の53%は去年10月の政権発足以降、最も低い水準になった。

報道各社の世論調査では7月半ば以降、内閣支持率が急落している。NHKの8月の調査でも下落傾向が続いていることから、支持率下落の流れには歯止めがかかっていないと言える。

次に高市内閣の支持層を党派別にみると自民支持層では85%、横ばい状態で変わっていない。一方、有権者全体の4割を占めて最も多い無党派層では36%で、先月に比べて8ポイントも減少した。ここが大きく影響しているものとみられる。

男女別では男性が6ポイント下がって56%、女性は2ポイント下がって48%だった。女性の支持が半数を割り込んだのは、今回が初めてだ。

年代別では、18歳から20代・30代では62%、30代で65%が支持しているほか、50代でも59%と高い水準を保っている。これに対し、60代と70代、それに80歳以上では4割台に止まっている。特に60代は支持が14ポイントも減っており、50代を境に高齢層の支持離れも目立っているのが特徴だ。

皇室典範改正、消費減税の政策も影響

高市内閣の支持率が発足以降、最低水準に落ち込んだ背景としては、どのような背景があるのだろうか。

まず、高市内閣を支持する理由と、支持しない理由からみておきたい。支持する理由としては、①「実行力があるから」が33%、②「他の内閣より良さそうだから」が31%、③「政策に期待が持てるから」17%で、順位は7月調査と変わっていない。

一方、支持しない理由は、①「政策に期待が持てないから」が43%、②「人柄が信頼できないから」が23%、③「支持する政党の内閣でないから」11%となっている。

先月は「人柄が信頼できないから」が35%で最も多かったが、今回は「政策に期待が持てないから」が最多で入れ替わった。人柄というやや漠然とした理由から、支持しないのは政策だと理由を明確にしている点がこれまでと異なる点だ。

そこで、国会終盤で大きな争点になり、成立した改正皇室典範についてみると「国民の理解を得られていると思うか」という問いに対し、「得られている」は29%に止まった。「得られていない」は64%に上り、大幅に上回った。

皇室典範改正の審議時間は衆参両院を合わせても6時間余りと極めて短かった。また、政府案は皇位継承は男系・男子の皇族に限定し、女系・女性天皇を認めない点などに問題があると感じた国民が多かったことも影響したのではないか。

また、政府が来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、中低所得層に1%相当分を給付するとした方針を閣議決定したことへの賛否を聞いたところ、「賛成」は49%、「反対」は39%、「わからない・無回答」は12%だった。

さらに、この減税がもたらす国の財政への影響について聞いたところ「大いに懸念している」は30%、「ある程度懸念している」は37%の合わせて67%に上った。これに対して「あまり懸念していない」は19%、「まったく懸念していない」は9%の合わせて28%だった。

物価高が続く中での減税には、国民の多くが歓迎するのではないかとの見方がある中で、「賛成」が半数程度に止まったことは、減税の是非を慎重に考えようとする国民が多いことをうかせる。

また、減税に伴う国の財政への影響を懸念する人が67%、3人に2人の割合にも上ったことは減税に必要な財源をどのように確保するのか、高市政権の取り組みを見極めようとする国民の慎重な姿勢も読み取れる。

経済のかじ取り・無党派層の動向がカギ

さて、高市政権の今後の政権運営と秋の政治の展開はどのようになるだろうか。今回の世論調査で、熊本地震への政府に対応について、「評価する」は「大いに評価」と「ある程度」を合わせて67%に上り、「評価しない」の27%を大きく上回った。

大きな震災や事故などが起きた場合、危機管理に当たる政府の評価が高くなる傾向がある。逆に言えば、この震災対応がなければ、高市内閣の支持率は5ポイント減に止まらず、大幅に下落したのではないかと推測している。

一方、無党派層について、高市内閣を支持する割合などを詳しくみてみると「支持」は36%に対し、「不支持」は42%に達し、不支持が支持を上回った。これは石破政権末期とほぼ同じ水準にあたる。つまり、無党派層については、不支持が多数を占めて、政権にとっては危険水域に達しているとみることができる。

こうした無党派層に大きな影響を及ぼすのは、暮らしや経済政策だ。消費税減税をめぐって無党派層をはじめとする国民は、財源の確保は本当にできるのか、財政に対する市場の信認は得られるのか、歴史的な円安への対応はどうするのかといった点を見極めようとしている。

したがって、秋の臨時国会で高市首相は、消費税減税をはじめとする経済・財政政策全体のかじ取りについて、説得力のある方針と具体策を打ち出せるのかが問われている。

説得力のある方針が示されない場合、無党派層の支持離れはさらに進み、高市首相は一段と厳しい状況に立たされることが予想される。高市首相の経済運営のかじ取りと無党派層の動向、この2つが秋の政治の大きなカギを握っている。(了)

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消費減税の基本方針 閣議決定”秋の臨時国会で徹底審議を”

消費減税をめぐって、政府は5日午後に臨時閣議を開き、来年4月から2年間に限って食料品の消費税を1%に引き下げるなどとした基本方針を正式に決定した。政府は具体的な制度設計を進め、9月に税制改正大綱を決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。

閣議決定された基本方針によると食料品の消費税について、来年4月から2年間税率を1%に引き下げるとともに、中低所得の人に1%相当分を給付することで実質ゼロを実現するとしている。

財源は、市場の信認を損なうことがないよう赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、それに税外収入などを通じて確保するとし、来年度の予算編成プロセスで結論を得るとしている。

こうした2年間の減税を経たうえで、2029年度には「所得に連動したきめ細かな給付」を毎年度、継続的に実施する新たな制度として導入するとしている。

1989年に消費税が導入されてから37年になるが、政府が消費税率引き下げの方針を決定したのは、今回が初めてだ。政府の方針をどのようにみたらいいのか、また政治の対応として何が必要なのか考えてみたい。

多くの疑問・懸念は残されたまま

さっそく政府の基本方針の内容からみていきたい。まず、食料品に課税される消費税率が8%から1%に引き下げられるが、専門家は「国民が期待するほどの引き下げ効果はないのではないか」との見方を多く聞く。

イラン情勢悪化に伴う原材料や包装の価格上昇、それに輸送費、人件費も上がっていることから、減税分がそのまま価格に反映されるとは限らない。消費減税の効果は、思ったほどないのではないかというわけだ。

次に減税などを実施するためには1年で5兆円程度の財源を必要とするが、基本方針では財源の具体的な内訳は示されておらず、来年度予算編成の中で検討していくことになる。

税制に詳しい議員に聞くと「1年に5兆円程度は赤字国債に頼らずに何とかかき集められるが、他にも首相肝いりの危機管理投資や防衛力強化の予算にも必要だ」として、財源確保の難しさを認めている。

高市政権の下で財政拡張がさらに進むとみられると市場の信認を失い、円安・債券安が一段と進むリスクを抱えている。

さらに懸念されるのは、2年後に食料品の消費税率を元の8%に戻せるかだ。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説する。

だが、どうだろうか。消費税率引き上げの時期は2029年4月。その前年・2028年夏には参議院選挙が実施される。選挙を間近に控えた政権は、選挙への影響を恐れて引き上げを先送りすることはありうるのではないか。安倍政権も2回にわたって引き上げを延期したことがある。

このほか、食料品の消費税が実質ゼロになると、利用客の減少が予想される外食産業や免税農家に対する支援策の検討もこれからだ。このように食料品の消費減税には数多くの疑問や懸念が出されたが、ほとんど手つかずで残されたままだ。

首相 ”力で押し通す政治”の危うさ

今回の消費減税にあたって危惧されるのが、高市首相が進める政治手法だ。高市首相は衆院選での自民圧勝後、超党派の「国民会議」で給付付き税額控除の検討を進めたが、食料品の消費減税については与野党の合意を取りつけることに失敗し、結局、自民党の方針をそのまま政府方針として決定した。

また、政権与党・自民党の最終的な意見集約も、首相の方針を最初に党役員に提示して賛同を得た後、党所属議員の意見を聞いて集約する手法を採った。党所属議員の意見集約もわずか2日間だった。

従来の自民党であれば、党税調の意見を踏まえて方針のとりまめに活かしたり、”平場の議論”は当事者が疲れ果てるまで続けたりしたが、今やトップダウンの上意下達、”力で押し通す政治”の党に変わったように見える。

特別国会閉会後の記者会見で高市首相は「316議席、衆院選挙で国民の皆さまから頂戴した大きな、大きな負託。その責任の重さを毎日噛みしめながら公務に向き合っています」「何かを成し遂げようとすれば大きな抵抗もあるでしょうが、『公約実現』への私の思いは決して揺らぐことはありません」と強調した。

選挙公約を何としても実現したいとの首相の思いは理解できる。他方で、政治家、特に首相は選挙後に起きた内外情勢の変化、今年で言えば米・イスラエルによるイラン攻撃などの影響なども勘案し、大局的で現実的な政権運営が必要だ。

また、”力で押し通す政治”が前面に出すぎると大きな政治目標を達成することは難しくなる。首相は政治姿勢や手法を再考することが必要ではないかと考える。

消費減税を含む基本政策 徹底論戦を

消費減税の問題は、今回の閣議決定によって政府・与党の基本方針が決まったことになる。今後は秋の臨時国会で、関連法案の審議に焦点が移る。

そこで、消費税の意義と経緯をみておくと消費税は、急速な人口減少と超高齢化社会が進行する中で、社会保障を整備する新たな税制として導入された。若い世代だけでなく、高齢者も消費を通じて税を負担して社会保障を支える税制であることから、その意義を認める国民は多いとみていいのではないか。

こうした観点に立って今回の政府の基本方針をみると2年間に限定された「つなぎ」の措置のために基幹税である消費税の税率を引き下げることには疑問を抱かざるを得ない。別に財源を求めるか、給付に切り替える方策も考えられる。

秋の臨時国会では法案の成否の駆け引きでなく、人口急減時代の税と社会保障の整備について与野党が掘り下げた議論を行ってもらいたい。

また、今の日本が直面している政治課題も待ったなしだ。物価高騰対策をはじめ、日米が28年ぶりに円買いの協調介入を行った円安への対応、さらに市場が懸念を抱いているとされる政府の財政政策など取り組むべき課題は多い。

さらに今回の消費減税に必要な5兆円の財源確保をはじめ、首相が強い意欲を示す危機管理投資と防衛力の抜本強化を図るための防衛財源について、全体像を明らかにする必要がある。

秋の臨時国会は、こうした日本が直面している金融・財政、防衛力整備と社会保障などの基本政策について、政府・与党と野党側が真正面から徹底して議論を深めることが必要だ。

一方、国会の運営面では、高市政権は衆院では圧倒的多数の勢力を確保しているが、参議院では過半数割れしている。このため、先の特別国会で明らかになったように力で押し切るような国会運営は困難だ。加えて足元の自民党内では、消費税減税には慎重・反対論が根強く、高市政権の政治基盤は万全とは言えない。

一方、野党陣営は少数政党に分かれたままで、高市政権に対して本格的な論戦も挑めない状態で、国民の失望を買っている。

こうした状況から、高市政権と与野党がやるべきことは明らかだ。消費減税を含む基本政策について真正面から議論を戦わせて、結論を出していくことだ。私たち国民も高市政権と与野党がどこまで役割を果たせるか、秋の国会をしっかり見届けていく必要がある。(了)

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食料品消費税1%方針 ”前途多難な高市政権”

長丁場の特別国会を終えた高市首相は30日、自民党の臨時役員会に出席し、食料品の消費税率を来年4月から2年間、1%に引き下げる方針を正式に表明した。そのうえで、この方針で党内の意見を集約するよう指示した。

これを受けて自民党執行部は31日、党の税制調査会や全ての議員が参加できる会議を開いて意見集約を始めたが、異論が噴出したため、引き続き意見を聞くなどの調整を進めることになった。

自民党執行部は首相の方針通り党内の意見を取りまとめ、これを受けて政府は8月上旬に消費税率引き下げ方針を閣議決定する公算が大きい。

ただ、今回の消費減税をめぐっては、政策面で数多くの問題点を抱えているほか、高市首相の政権運営面でもさまざまな影響が出てくることが予想される。

端的に言えば、高市政権は政策と政権運営の両面で、前途多難な情勢にある。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的に説明したい。

食品消費税1%、財源確保 説明できず

食料品の消費税減税をめぐって、高市首相は30日記者団に対し、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、合わせて中低所得の人への給付を行い、実質ゼロとする方針について説明するとともに「衆院選挙で掲げた公約の実現を重視し、最善の方法を選択した」として、国民の理解を得ていく考えを強調した。

この方針については、既に超党派の「国民会議」で野党や有識者から、さまざまな疑問や懸念が示されたほか、自民党内の意見集約でも多くの慎重論や反対意見が出された。

国民にとっては物価高騰の中で、消費減税はありがたいのだが、一方で経済が混乱したり、社会保障に穴が開いたりするのではないかと懸念している人は多いのではないか。具体的な疑問点や懸念を挙げると次のような点だ。

まず、食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げた場合、本当に食料品の価格が期待したほど下がるのかは疑問だ。イラン情勢を経て、石油由来の包装や材料が値上げされており、業者が税率の引き下げ分をそのまま価格に反映させるかどうかわからないからだ。インフレ時に食料品に限定した減税には限界がある。

また、肝心の財源をどのように確保するのか、高市首相の説明でも具体策を示すことはできなかった。食料品の実質ゼロを実現するためには、年間5兆円の財源が必要になるが、税収の上振れや税外収入が見込めるといっても高市首相が力を入れる投資や防衛力の抜本強化の予算とも重なり、調整のめどはついていない。

さらに「2年後に消費税率を元に戻すのは無理だ」との見方が自民党内でも聞かれる。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説するが、2年後には参議院選挙が予定されており、実質増税を実施できるかと言えば難しいのではないか。

振り返ると消費税は社会保障を支える主要な税として、1989年に初めて税率3%で導入され、10%に引き上げるまで30年を要し現在に至る。この間、幾つもの政権が倒れながらも社会保障と税制の安定に尽力してきた歴史を思い起こす必要がある。

消費税率の引き下げは今回初めてになるが、疑問や問題点が多すぎる。社会保障の安定という観点からも再考した方が賢明だと考える。早期に物価高対策を行うのであれば、中低所得層に絞って大胆な給付を行う方がはるかに効果があると考える。

衆院選公約との関係どう考えるか

消費減税の是非を考える際、「衆院選挙の公約」として掲げていたこととの関係をどう考えるかという問題がある。

確かに高市首相と自民党は、消費税減税を衆院選の公約として掲げ、「検討を加速する」としてきた。選挙の公約として掲げた以上、選挙後、実現をめざすのは当然で、その責任がある。有権者が、政策の実行を期待するのも当然だ。

一方、選挙後に予測していなかった事態が起きた場合、公約の内容を見直すことはありうるのではないか。現実の政治では公約の修正もありうるし、その場合、政権・政党が説明し納得してもらうことが必要不可欠だ。

先の衆院選を思い起こすと、高市首相は今年1月、突然の衆院解散を表明した記者会見で食料品の消費税ゼロは「私の悲願だ」と強調し、党の公約に盛り込んだ。だが、党内でこの問題をめぐり突っ込んだ議論を行うことはなかった。

また、選挙戦で高市首相が消費減税を取り上げ、自らの考えを訴える場面はほとんどなかったと記憶している。選挙で公約が取り上げられ、争点になったのかどうか実態も踏まえて考える必要があるのではないか。

政権の安定度や政治の展開を左右

さて、食料品の消費税減税が政権与党内でどのような形で決着がつくかは、高市政権の安定度や今後の政権運営、秋の政治動向に大きな影響を及ぼす。

自民党は3日も党の税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、議員の意見を聞くなどの調整を行うが、麻生副総裁や鈴木幹事長ら党執行部は高市首相の方針を了承するものとみられる。

これを受けて政府は、8月上旬には閣議決定する公算が大きい。その場合、秋の臨時国会に食料品の消費税率を1%に引き下げる関連法案を提出することになる。

今後の政権運営を考えると高市内閣の支持率が7月半ば以降、急落していることをどのように考えるかが問題になる。この背景には、皇室典範の改正も影響しているとみられるが、高市政権の物価高対策などの経済政策が十分ではないという不満があるのではないか。

今月の飲食料品の値上げは2311品目で、去年8月と比べると8割も増えている。9月は4531品目とさらに値上げラッシュが続く(帝国データバンク調査)。イラン情勢悪化に伴う包装や資材価格上昇が影響しているためだ。

高市首相が消費減税の決定にこぎ着けても実施は来年4月からで、かなり先の話だ。今回の方針決定が支持率回復につながるとは限らない。高市政権は内閣支持率が高いことが政権運営の原動力になっていたが、その力が揺らぐ可能性がある。

高市政権として対応が迫られているのは、当面の物価高対策と経済運営の基本方針を明らかにすることだろう。為替水準は1ドル=164円に迫る歴史的円安で、日米通貨当局が円買いの協調介入を行った。物価高対策には、歴史的円安に歯止めをかけられるか、経済運営全体の方針を明らかにする必要がある。

次に秋の臨時国会で食料品の消費減税法案をめぐっては、日本保守党を除いて全ての野党が反対の立場だ。与党が過半数割れしている参議院では、法案審議は難航必至で、高市政権は膨大なエネルギーを費やすことになる。先の衆院選で得た膨大な政治資産を消費減税に投入するのが賢明な選択かという問題でもある。

先の特別国会で、高市政権の国会運営は、政権与党内の連携がうまく機能しなかった。その対策は手つかずのままなので、次の内閣改造・自民党の役員人事で体制が強化されない限り、不安定な国会運営が続くことになる。

さらに年末には、国家安全保障3文書の改定と、防衛力の抜本強化に向けた防衛財源確保の具体的な方策が問われる。

このように高市政権の政権運営は、最優先で取り組む必要がある経済政策をはじめ、重要政策の具体化、秋の臨時国会に向けた体制強化など課題は多いが、いずれも難題で前途多難な情勢にある。(了)

★追記(8月3日20時)自民党は3日、税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、高市首相が表明した食料品の消費減税の方針について、今後の対応を小野寺税制調査会長に一任した。党執行部は5日の総務会で了承を取りつけ、党内手続きを終えたい考え。これを受けて政府は5日の閣議決定をめざしている。

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高市政権”国会対応 機能不全” 特別国会閉会

国会は「副首都」構想関連法案をめぐり与野党の対立と混乱が続いた末、24日夜に採決が行われ、同法案が自民・維新両党とみらいの賛成多数で可決・成立した。これによって衆院選の自民圧勝を受けて2月に召集された特別国会は、25日に閉会した。

この国会は、異例ずくめの国会だった。衆院解散・総選挙で新年度予算の審議入りが遅れたが、高市首相が年度内成立にこだわり、審議日程が大幅に圧縮された。憲法と同列の重い位置づけの皇室典範の改正は、衆参合わせてわずか6時間余りの短い審議で、可決・成立した。

一方、終盤国会は自民・維新の連立合意関連の法案をめぐって与野党が対立し、国会審議が空転・迷走した。そして報道各社の世論調査によると、これまで高い水準を維持してきた高市内閣の支持率が急落している。

この国会をどのようにみたらいいのか。また、高市政権の国会・政権運営をどのように評価すべきか、国会閉会のタイミングで点検・分析してみたい。

首相肝入り法案成立、自民圧勝が影響

まず、国会や政権の評価に当たっては、提出法案がどの程度成立したかが判断のベースになる。首相が出席して審議をする「重要広範議案」には、国家情報会議設置法案や防災庁設置法案など4本が指定されたが、いずれも成立した。

また、新年度予算と補正予算のほか、政府が提出した改正皇室典範など64の法案は全て成立した。成立率が100%となるのは、臨時国会以外では2022年の通常国会以来だ。高市政権は法案処理の面では成果を上げたとみることができる。

一方、国会後半では自民・維新の連立政権合意に盛り込まれた衆議院議員の定数削減法案など議員立法の扱いが大きな焦点になった。このうち、定数削減法案はこの国会での審議を断念、秋の臨時国会に先送りになった。

定数削減法案以外の国旗損壊処罰法や「副首都」関連法は成立にこぎ着けた。皇室典範の改正や国家情報会議設置法などと合わせて、高市首相の肝入りで保守色の濃い法案が相次いで成立したのが大きな特徴だ。

こうした背景には、衆院選で自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得し、与野党の勢力図を大きく塗り替えたことが挙げられる。また、高市1強体制が影響している。

一方、国民生活に直結する物価高対策は真正面から取り上げられることはなく、与野党が選挙で公約した給付付き税額控除の導入などの取り組みも後退した。

国会審議は形骸化、首相出席も大幅減

この国会では、予算案や法案の審議時間が大幅に減少し、国会審議の形骸化が目立ったのが特徴だ。

衆院解散・総選挙のため、新年度予算の審議入りは例年に比べ1か月も遅れて始まったが、高市首相が年度内成立を強く主張した結果、衆院での審議時間は大幅に圧縮された。

終盤国会の焦点になった皇室典範の改正は、衆参両院の正副議長の取りまとめの作業があったとはいえ、法案の審議が衆院で3時間、参院で3時間15分という極めて短い時間で成立した。

また、高市首相は衆参両院の集中審議に出席することが少なく、27日に閉会中審査となる集中審議を含めても36時間半で、歴代首相と比べて半分以下に落ち込んだ。

国会の役割の一つは、首相と与野党議員の間で緊張感のある議論を行うことによって、国民に政治課題の現状や今後の対応策などを理解してもらうことにある。

ところが、この国会で高市首相は、国民が強い関心を持っている物価高対策や経済のかじ取り、イラン情勢など外交方針、安定した皇位継承のあり方などについて、自らの考えを積極的に説明する場面はみられなかった。国会や国民に対する説明責任を十分果たしたとはいい難く、極めて大きな問題だ。

国会運営に難点、政権与党の機能不全

国会のあり方をめぐっては首相との関係、高市政権の国会運営の実態についても点検しておく必要がある。

政権の対応が問われたのは、6月下旬から7月上旬にかけて国会終盤だった。皇室典範の改正と、自民・維新連立政権合意に盛り込まれた衆院議員の定数削減法案と「副首都」構想関連法案の合わせて3つの法案の審議入りをめぐって、与野党の意見が対立し、国会が1週間余り空転した。

この時は、高市首相の公設秘書が中傷動画の投稿に関与した疑いがあるとして、野党側が首相出席の集中審議と党首討論を要求した問題の扱いとも重なった。そして首相側は、集中審議への出席に消極姿勢を示し、野党が強く反発していた。

この場面では与野党の対立もあったが、それよりも政権与党内に意見の違いがあり、この調整が進まなかったことが根本の問題だった。端的に言えば、維新と高市首相は、3法案の中で連立合意関連の2法案を重視していたのに対し、自民党側は皇室典範の改正を最優先に位置づけていた。

詳細な経緯は省略するが、政権与党内では、法案の優先順位について政権与党内の調整が進んでいなかった。連立関連2法案の審議入りを強行したが、野党側が強く反発し、審議中断に追い込まれた。首相官邸と自民党執行部、参院自民党、それに衆院議長らの対応がバラバラで、対応が混乱した。

自民党の歴代政権は、国会運営は幹事長の下で”国対委員長”が取り仕切り、官邸や参議院自民党、さらに霞ヶ関とも連携を取りながら、法案の提出から野党との交渉、成立までを一元的に管理・運営してきた。

公明党との連立政権になってからは「二幹・二国」(自民と公明の幹事長と国対委員長で構成)と呼ばれる幹部会合を週1回定期的に開き、濃密な人間関係を築くとともに組織的な国会運営を積み重ねた。

こうした歴代政権と比べると高市政権の体制づくりと対応は見劣りする。高市政権の難点は国会運営にあり、政権与党内では関係部署の連携・調整ができておらず、機能不全状態にあったと言っても言い過ぎではない。

政権与党、特に最大与党の自民党は、議院内閣制で首相を支える立場にあるが、首相の独善先行などがあれば、物申す姿勢が不可欠だ。今の高市政権では、選挙に大勝したことが影響して首相が圧倒的に強い立場にあり、党内は上意下達、党の幹部も首相の顔色を伺うばかりとも聞く。

自由・闊達な党風こそ、自民党の良さで、首相と党の関係も再考してはどうか。難題の定数是正法案は秋の臨時国会に先送りされたが、今のような政権運営が続けば同じことの繰り返しとなり、政権運営は不安定化するのではないだろうか。

支持率急落、世論の風向き変化の兆し

報道各社の7月の世論調査で、高市内閣の支持率が急落している。◇時事通信の調査(10日から13日実施)で49.0%、5.3ポイントの下落、◇毎日新聞の調査(18・19日実施)は10ポイント減の41%、不支持率44%が支持を上回り逆転した。◇朝日新聞は(18・19日実施)7ポイント減の53%、政権発足以来、最低を更新した。

各社の調査結果には幅はあるが、世論調査は傾向を読み取ることが重要だ。各社のデータは下落傾向にあり、いずれも大幅に下落している点でも共通している。

急落の原因は、調査時期からすると皇室典範の改正問題が影響していることが考えられる。一方、国民の関心が高い物価高対策に、高市政権が対応できていないことが響いているとの見方も聞く。

いずれにしても高市政権に対する世論の風向きに変化が現れているのは事実だ。高市首相は8月上旬までには、食料品の消費減税に踏み切るのかどうか決断するとみられており、その判断が政権のゆくえを大きく左右する見通しだ。

最後に野党の対応についても触れておきたい。野党各党は小党分立の状態が続いており、国会で政権をチェックする役割が果たせていない。緊張感のある国会を実現するためにも野党側は連携・協力関係を強め、政権と対峙できるような体制作りを進めてもらいたい。

私たち国民も国会のあり方についてどのような姿が望ましいのか、与野党双方の動きをみながら、考えていく必要がある。(了)

★追記(27日22時)国会閉会を受けて高市首相は午後6時から記者会見し、食料品の消費減税について「国民会議」の取りまとめを受けて速やかに法案を提出する考えを示した。◆内閣支持率が下落していることについては「一喜一憂しない」とのべたほか、特別国会について「反省すべきことはない」とのべた。◆今後の政権運営については「何かを成し遂げようとすれば抵抗もあるだろうが、公約実現への思いは決して揺らぐことはない」と強調した。

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国会残り1か月 懸案集中、高市政権の対応は?

アメリカとイランが戦闘終結に向けた覚書を19日に正式に署名する見通しになったのを受けて、各国とも原油輸送の要路であるホルムズ海峡の安全航行が実現するかどうかに強い関心を寄せている。G7サミットも15日からフランスで開かれ、中東情勢の安定に向けた取り組みを強めることを確認した。

日本国内では国会の残り会期が1か月となり、自民党と日本維新の会が連立合意文書に盛り込んだ3法案のゆくえが焦点になっている。衆院議員の定数削減、「副首都構想」、国旗損壊罪の3つの法案で、与野党の攻防が激化する見通しだ。

高市政権にとって6月は、皇族数の確保策を盛り込んだ皇室典範の改正案のとりまとめのほか、超党派でつくっている「国民会議」で食料品の消費税率ゼロと給付付き税額控除の取りまとめも控えている。

こうした内外の懸案が集中する中で、高市首相は重要案件にどのような姿勢で臨むのか、優先順位を含めた政権の対応力が試されることになる。

終盤国会、自・維連立合意3法案が焦点

今の国会では、えん罪をなくすため裁判の再審制度を見直す刑事訴訟法改正案が野党・参政党の賛成を得られることになり、改正案は16日に衆議院を通過、会期内に成立する見通しになった。この法案を含め、首相が質疑に出席する「重要法案」は4法案いずれも既に成立、もしくは成立のめどが立った。

政府・与党が次に成立をめざしているのが、高市政権が発足する際に自民・維新連立政権の合意文書に盛り込んだ3つの法案だ。具体的には、衆議院議員の定数削減法案と「副首都構想」法案、それに日本の国旗を損壊する行為を罰する法案だ。

▲このうち、国旗損壊罪法案については、自民党と国民民主党、参政党との間で修正協議がまとまったことから、16日に法案を国会に提出した。参院では与党は過半数割れしているが、国民民主党と参政党の賛成で成立する見通しだ。

▲衆議院議員の定数削減法案は、与野党の協議で選挙制度改革の結論が1年以内に出なかった場合、比例代表のみで45議席を削減するとした内容で、与党は近く法案を提出する。

ただ、野党各党は比例代表のみの削減に強く反発している。また、企業・団体献金の見直しや、SNS上の偽情報対策などの法案審議を優先させるべきだという意見もあり、成立の見通しは立っていない。

▲維新が重視している「副首都構想」法案については、自民党内で批判が相次ぎ、与党内で議論が続いている。この法案では、維新がめざしている「大阪市を廃止して複数の特別区に分割する大阪都構想」を実現する場合、是非を問う住民投票の対象を大阪市から、大阪府全体に広げることが盛り込まれていることから「住民自治の観点から問題が多い」とする反対意見が根強く出されている。

この「副首都構想」と議員定数削減法案をめぐっては高市政権の発足時に自民党内の議論がなされないまま、高市首相と維新首脳との会談で連立政権の合意文書に盛り込んだ経緯がある。このため、野党の反対だけでなく、自民党内の幅広い支持が得られるのかどうか危ぶむ声も聞かれる。

皇族数の確保、食料品消費税実質ゼロ案

安定的な皇位継承をめぐり衆参両院の正副議長が10日、各党派の代表と協議し、皇族数の確保に向けた「立法府の総意」を取りまとめた。

女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧皇族の男系男子を養子として迎える案を「いずれも了」とする内容で、政府は月内にも皇室典範の改正案を今国会に提出し、成立をめざす方針だ。

この「立法府の総意」を読むと女性皇族が結婚後も皇室に残ることは賛同できるが、女性皇族の夫や子どもの身分の扱いは明記されていない。また、皇室が養子を取ることに国民の理解が得られるのか疑問を感じる。

この問題をめぐって高市首相は12日、日本維新の会の藤田共同代表と官邸で会談し「自民党と維新の連立政権なので、まずは制度設計の細かいところまで両党でつめてほしい」と要請した。

これに対し、野党からは「こうしたやり方では、『立法府の総意』は無視することか」と反発や批判が相次いでいる。

この問題の背景には、高市首相など保守派の議員の間では「皇位の継承は、男系男子に限るという伝統を守るべきだ」との考えが強く、「皇族数の減少が続く中では、女系女性天皇も認めるべきだ」とする考え方との間で大きな違いがある。

「立法府の総意」はこうした違いを踏まえて取りまとめただけに、政府の改正案の取りまとめ方によっては与野党の意見の違いが表面化し、終盤国会の運営に影響する事態も予想される。

高市政権にとっては6月にはもう一つ、首相肝いりの政策について重要な判断を迫られる。超党派の「国民会議」で議論が続いている食料品の消費税率ゼロと、給付付き税額控除の取りまとめを受けて、政府としてどのような方針を打ち出すかという問題だ。

食料品の消費減税をめぐっては17日、「国民会議」の議長案が示された。それによると来年4月から税率を1%に引き下げ、給付と組み合わせることで「消費税率を実質ゼロ」にするとしている。

これに対し、野党からは「国民会議の議論は給付付き税額控除が中心で、消費税率の議論は行っていない」として強く反発している。また、消費減税で本当に価格が下がるのか、2年後に税率を元に戻せるのか、財源の確保はできるのかといった多くの問題を抱えており、国民会議のとりまとめは難航が必至の情勢だ。

中傷動画含め懸案集中、政権・与野党は

今の国会では、高市首相の陣営が自民党総裁選や衆院選で他陣営を中傷する動画を拡散したとする週刊文春の報道が取り上げられ、首相と野党側の応酬が続いている。

この問題をめぐっては共同通信も動画を作成した男性のインタビューを報道し、首相の秘書から総裁選で相談を受けたことや、衆院選では首相を含む与野党約50人の陣営から対立候補に関する動画の作成を頼まれ、うち20人に協力したと証言した。

この問題は、最高権力者である首相の信頼性に関わるとともに、SNS時代の選挙のあり方・公正さに関わる重要な問題だ。

それだけに、まずは「事実関係」を明確にすることが不可欠だ。高市首相が率先して事実関係を説明するとともに、秘書についても国会に招致するなどして事実関係を解明してもらいたい。

このほか、中東情勢はアメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名式典が19日に行われ、1つの節目を迎える。日本外交は同盟国のアメリカだけでなく、友好関係にあるイランへの働きかけが十分に行えたのか、戦闘終結後のホルムズ海峡の安全航行にどのような役割を果たしていくのか掘り下げた点検が必要だ。

このように国会の残り会期は1か月となり、重要法案の扱いをはじめ、首相陣営の政治倫理、ホルムズ海峡の安全航行、物価高騰や社会保障のあり方などさまざまな懸案が集中して目白押しの状況だ。

こうした中で、気になるのは野党陣営の対応で、衆院選で大敗した影響が残っているとはいえ、政権をチェックする機能を果たせているようにはとても思えない。法案をめぐって与党に協力することはあるにしても、徹底した議論を尽くすことが必要だ。

国会の会期末に向けて私たち国民も、衆院選で歴史的圧勝を収めた与党・高市政権が内外の懸案に真正面から取り組んでいるのかどうか、特に政治課題の優先順位などの判断が適切になされているか見極めていく必要がある。(了)

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“食料品 消費税1%案”の見方・読み方

国会は、中東情勢への対応に備えて予備費を増額するなど総額3兆円余りの補正予算が5日、参議院本会議で自民・維新の与党と国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。

一方、衆議院選挙で自民党が公約に掲げた食料品の消費税減税について、政府内ではレジの改修にかかる時間を短縮し、早期に実施するために消費税率をゼロではなく、「1%」として来年4月から実施する案が浮上している。

高市首相は、与野党と政府で作っている「国民会議」で議論がまとまれば、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出する考えを表明した。この食料品の消費税率1%案は効果が期待できるのかどうか、高市政権の今後の政権運営にどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみたい。

食料品 消費税1%・来年4月実施案

今年2月の衆議院選挙で争点の1つになった食料品の消費税減税と給付付き税額控除をめぐっては、政府と与野党で作っている「国民会議」で議論が続いている。

このうち、食料品の消費減税についてはレジの改修期間が問題になり、経済産業省が関係業界から聞き取り調査を行った。その結果、自民党の公約通り消費税率をゼロとした場合、レジの改修期間が「最大10か月から1年程度」かかる一方、1%であれば「最大5~6か月程度」と半分程度で済むことがわかった。

このため、政府内では食料品を対象にした2年限定の消費税を行う場合、税率は「1%」とし、来年4月から実施する案が有力になっている。

この問題は4日の衆院予算委員会で取り上げられ、高市首相は「国民会議で結論が出れば次の国会で、できるだけ早く法案を出したい」とのべ、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出したいとの考えを表明した。

高市首相は具体的な税率や実施時期については「私は結論を先取りはしない」と明言を避けたが、国民会議の議論を踏まえて6月下旬に判断を示す見通しだ。

 1%案とりまとめ 野党の対応が焦点

政府内で食料品の消費税1%案が検討されていることについて、野党側は「国民会議では給付付き税額控除を中心に議論しており、消費税減税についてはほとんど議論されていない」として、政府側の対応に強く反発している。

このうち国民民主党は、賃金上昇率が物価上昇率プラス2%に安定するまで消費税を5%に減税すべきという方針で、食料品に限った消費税減税には否定的な立場をとっている。そして、住民税の控除と社会保険料の還付で手取りを増やすよう求めている。

中道改革連合は、衆院選では恒久的な食料品の消費税率ゼロを掲げたほか、立憲民主党は「原則1年間ゼロ」、公明党は「恒久的な引き下げ」を訴えた。このように中道など3党は食料品の消費減税には賛成だが、終盤国会で高市政権と対決姿勢を強めるねらいもあって、最終的な方針をまだ決めかねている。

チームみらいは野党で唯一、衆院選でも消費税減税を掲げておらず、代わって年収に応じて現金を給付する「所得連動型給付」を行うべきだと主張している。一方、日本保守党は、消費税1%を認める方針だ。

このように国民会議に参加している野党のほとんどは、消費税1%案には反対か、態度を決めていないため、国民会議の意見のとりまとめがどのような内容になるか見通しはついていない。

衆議院は与党が圧倒的多数を占めるが、参議院では与党は過半数に達していない。このため、野党から消費税1%案を許容する党が出てくるのかどうかも焦点だ。

減税と給付の制度設計・優先順位がカギ

食料品の消費税減税については具体的な制度設計に加えて、「給付付き税額控除」との関係をどうするかといった問題を抱えている。高市政権は食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにした後、「給付付き税額控除」を本丸と位置づけて導入するのを基本方針にしている。

ただ、消費税率を今の8%からゼロ、または1%に引き下げたとしても、その効果が価格の引き下げにつながるか疑問だとする指摘がある。原材料費や運送費など他の費目の価格上昇が影響するからだ。

また、小規模の農家では、肥料や資材などの消費税額を農家が一時的に負担したり、消費税分の収入が減ったりする事態が予想されるほか、外食産業では利用者が減るのではないかと懸念されている。

さらに消費減税を2年限定で行った後、元の税率に戻せるのかという問題や、4兆円から5兆円程度は必要とされる財源をどのように確保するのかといったさまざまなな問題が残されている。

このため、「国民会議」の中からも消費税減税を取り止めて、本丸の「給付付き税額控除」ついて、低・中所得層への給付から先行させる案も出されている。

一方、自民党内では元々、社会保障の主要財源になっている消費税の税率を引き下げることに慎重な意見が根強くあるほか、幹部の中からは「さまざまな問題を抱える制度設計を誰が中心になって取りまとめるのかがはっきりしない」として政府・与党の態勢が整っていないことを不安視する声も聞かれる。

このように食料品の消費税減税や「給付付き税額控除」をめぐっては、それぞれの制度の具体的な内容をはじめ、優先順位やタイムスケジュールをどのように設定するのか詰めるべき問題は多く、紆余曲折が予想される。

世論の評価、政権の運営にも影響

それでは国民は、食料品の消費税減税などをどのようにみているだろうか。NHKの世論調査によると▲衆院選直後の2月調査では、消費税減税に「賛成」が57%、「反対」が30%、「わからない・無回答」が14%だった。

食料品の消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの質問には◇「ある」が47%、◇「ない」が46%と評価が分かれた。

▲3月調査で「給付付き税額控除」の導入については「賛成」が47%、「反対」が35%、「わからない・無回答」が18%だった。

▲5月調査で、消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの設問については「ある」が40%で、「ない」が53%だった。2月調査に比べると、消費税減税の効果については否定的な評価が増えて、肯定的な評価を上回った。

また、レジのシステム改修に1年ほどかかるとされるが、どのようにすべきか3つの選択肢から選んでももらった。◇「時間がかかっても税率ゼロを実現すべき」は18%、◇「早く減税できるなら、ゼロでなくてもよい」が48%、◇「減税する必要はない」が25%だった。

以上のデータから、国民の多くは食料品の消費税減税には賛成が多い一方で、減税の効果や税率については一つの方向に集約されるまでには至っていないようにみえる。 (★NHK世論調査6月のデータは文末に追記)

一方、高市首相は「食料品の消費税2年間ゼロの構想を『私自身の悲願』」と強調してきただけに減税の実施に道筋をつけ、来年春の統一地方選挙や、再来年の自民党総裁選挙の乗り切りにつなげる戦略とみられる。

高市首相はこのところ、総裁選や衆院選での自らの陣営の中傷動画問題で野党の追及を受けている。高市首相がこの問題と懸案の消費税減税に結論を出して、世論の支持を得られるのかどうか。その結果は、高市内閣の支持率や今後の政権運営にも大きな影響を及ぼすとみて注目している。(了)

★追記(6月8日21時)=NHK世論調査6月(5~7日実施)で、食料品の消費減税をめぐって、政府・与党内で「来年4月から1%に引き下げる案も検討されている」について、どう思うかを聞いた。「時間がかかっても税率ゼロにすべきだ」が22%、「来年4月から1%に引き下げるべきだ」が40%、「減税する必要はない」が31%だった。早期実施の答えと、減税の必要ないとの答えの差が縮まっている。

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後半国会 ”高市カラー法案”続々、足元に不安も

国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。

一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。

イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。

重要法案審議入り、野党の協力がカギ

後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。

また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。

さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。

日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。

このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。

こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。

衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。

このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。

高市首相と自民に溝、相互不信の芽も

高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。

具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。

こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。

また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。

こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。

高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。

後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。

イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も

ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。

一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。

さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。

このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。

13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。

イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)

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予算の年度内成立 断念 “高市首相に参院の壁”

新年度予算案をめぐり政府・与党は、高市首相が強い意欲を示してきた予算案の年度内成立を断念した。これに伴い予算成立までのつなぎとなる「暫定予算」が30日成立した。衆議院では自民・維新の与党と中道、国民民主、参政の各党が賛成、参議院では立民、公明両党も賛成した。

続く31日には、4月から実施予定の高校授業料無償化や税制改正関連法案などについても与野党の賛成多数で可決・成立した。「暫定予算」を組むのは2015年以来、11年ぶりだ。こうした措置よって新年度予算案は成立していないものの、国民生活に直接支障が出るような事態は避けられている。

一方、この国会では衆院選挙で圧勝した高市政権がどのような政権運営を行うのかも焦点の1つだった。最初のテーマになった新年度予算案をめぐって高市首相は「数の力」を背景に予算案の年度内の成立を押し通そうとしたが、最終的には野党が多数を占める「参議院の壁」に押し返された。

ここまでの高市首相の政権運営をどのようにみるか。後半国会ではどのような対応が問われることになるのか、国会や政権の運営のあり方などについて点検しておきたい。

 ”国会運営に疎い首相”との見方も

今回、新年度予算案をめぐって与野党が対立した理由・論点は極めてわかりやすい。野党側は1月に衆院選挙が行われたことから、年度内の成立は日程的に困難だとして、早い段階から政府・与党側に暫定予算案を編成するよう求めてきた。

自民党内も当初、予算案の成立は4月末の大型連休前を想定する見方が多かった。ところが、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、自民党は急遽、年度内成立へとカジを切った。

衆議院で予算案の実質審議入りしたのが2月27日で、例年より1か月遅れだった。予算審議をめぐっては坂本予算委員長が職権で日程を次々に決定した。例年70時間から80時間かけて審議してきたが、今年は59時間と2000年以降最短に圧縮して予算案は衆院を通過した。

政府・与党は参議院でも年度内成立をめざしたが、参議院は野党が多数を占めており、参院自民党も強行路線をとらなかったことから、予算案の年度内成立は見送りとなり、暫定予算を編成することになった。

こうした政府・与党の対応について、野党側は「予算案の年度内成立が無理なことは、通常国会の冒頭解散になった時から明らかだった。選挙に圧勝したことで高市首相は自信過剰となり、国会の見通しにも甘さが出たのではないか」と厳しい評価をしている。

自民党執行部からは衆院選を圧勝に導いた高市首相を直接、批判するような意見は出ていないが、党内には参院の情勢を判断できず最後まで年度内成立にこだわり続けた高石首相に冷ややかな見方もある。

また、「首相官邸と、衆議院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間の意思疎通並びに連携がとれていないのが一番の問題」といった意見も聞かれる。

さらに別の自民党関係者は「高市首相は政策には精通しているが、国会の運営や党内調整、参議院自民党の立ち位置などの基本認識に疎いところがある。党執行部も首相と率直に話ができる関係にならないと安定した党運営は難しいのではないか」と指摘する。

予算成立後も試される首相の力量

それでは4月以降の国会の動きはどうなるだろうか。参院予算委員会で審議が続いている新年度予算案は、4月1日と2日に分野別に各委員会で審議する委嘱審査が行われることが決まっている。

自民党は一日でも早く予算案を成立させる必要があるとして、4月3日までに成立させるよう求めているが、野党側は高市首相の出席を求めて集中審議を行うことを主張している。このため、4月第1週の採決は難しく、第2週にずれ込むのではないかとの見方が出ている。

新年度予算案は既に衆議院で可決されていることから、憲法の規定で参議院で採決が行われなくても11日には自然成立する。このため、参議院の与野党とも11日の前までには採決を行うものとみられる。

4月以降の後半国会で政府・与党は、インテリジェンス(情報収集・分析)政策の司令塔となる「国家情報会議」設置法案を推進することにしているほか、連立を組む維新が強く求めている副首都法案や、衆議院議員の定数削減法案など与野党の対決色が強い法案の扱いが焦点になる見通しだ。

その際、高市首相は予算審議の教訓を踏まえて、野党側の協力を得るためにどのような姿勢で臨むのか、また自民党執行部との関係を強化できるかが問われることになりそうだ。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は低下している調査結果はあるものの、全体として高い水準を維持している。ただ、イラン情勢の悪化が長期化するとエネルギー価格の高騰と供給量の確保、物価高や企業支援などの難題が政権を直撃することも予想される。

その結果、高市政権がめざしている食料品の消費税率ゼロや、危機管理投資、防衛力の抜本強化といった高市カラーの政策に影響が出ることも予想される。

自民党の長老に高市政権について聞くと「内閣支持率は高いが、実績の評価というよりも期待値だろう。高市首相は首相官邸に閉じこもることが多いと聞くが、イラン中東の危機に的確に対応できるか、重要法案を着実に成立にこぎ着けられるか、本当の力量が試されるのはこれからだ」との見方を示す。

ここまでみてきたように高市首相は衆院選の圧勝で自民党内の基盤を強化した一方で、与党の過半数割れが続く参議院では依然として不安定な状況に立たされていることが浮き彫りになった。後半国会では衆参ねじれの状況を克服できるのかどうか、高市首相の力量が試される。(了)

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