国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。
一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。
イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。
重要法案審議入り、野党の協力がカギ
後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。
また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。
さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。
日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。
このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。
こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。
衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。
このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。
高市首相と自民に溝、相互不信の芽も
高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。
具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。
こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。
また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。
こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。
高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。
後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。
イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も
ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。
アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。
一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。
さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。
このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。
13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。
イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)
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