真冬の超短期決戦となった衆院選挙は投票日が8日に迫り、各党とも党首を先頭に重点区を絞り込んで、最後の働きかけに懸命だ。
各党の勝敗はどのようになるだろうか?報道各社の情勢調査の結果が相次いでおり、「自民、単独過半数うかがう」「自民・維新300議席超うかがう」などと自民党の優位な情勢が伝えられている。
こうした選挙情勢の報道は私たち有権者にとっても、投票に当たって重要な判断材料になる。最終盤に入った選挙情勢と、最後にカギを握るのはどういった点があるのか探ってみたい。
内閣支持率は高く、自民党支持率横ばい
選挙情勢を判断するうえで、内閣の支持率や各党の政党支持率がどのようになっているのか、前提条件として重要なポイントだ。NHKの世論調査(1月30日から2月1日実施)の結果が2日にまとまったので、このデータからみておきたい。
高市内閣の支持率は58%で、1週間前の調査から1ポイント下がった。不支持率は26%で、前の調査と変わらなかった。前回・2024年衆院選では、当時の石破内閣の支持率は44%から41%へと下がったが、高市内閣の支持率の水準は高く、選挙戦に入っても高い水準をほぼ横ばいのまま保っている。
一方、自民党の政党支持率は35.7%で、前回調査の35.9%とほぼ同じだった。自民党の支持率はこの10年余り、概ね30%台後半から40%前後の水準を維持してきたが、依然として低迷状態から脱しきれていない。
但し、前回の衆院選では裏金問題が響いて、自民党の支持率は35.1%から31.3%へと4ポイント近くも急落した。前回は自民党にとって最も厳しい状況にあったが、それに比べると今回は状況が改善している言えそうだ。
野党各党の政党支持率は◇中道は10.3%で、前回調査の7.9%から増加した。2か月前の12月調査では立憲民主党6%、公明党は3.4%だったので、両党を合わせた水準にようやく達したが、無党派層から支持を集めるなどの勢いはみられない。
◇維新は3.7%となっているほか、◇国民民主は4.1%、◇参政は3.5%と参院選の時のような勢いはみられない。◇共産2.1%、◇れいわ1.1%、◇みらい1.1%、◇保守1.0、◇社民0.6%、◇減税・ゆう0.3%と続く。◇無党派は27.2%だった。
このように高市内閣は高支持率を保っているが、自民党の支持率は横ばい状態だ。対する中道をはじめとする野党各党とも、政権を脅かすような勢いがみられない。
中盤情勢 自民は優位、中道は不振
それでは、与野党の選挙情勢はどのようになっているのだろうか。報道各社の情勢調査をみると選挙が公示された直後の序盤の情勢については、読売新聞が1月29日朝刊で「自民、単独過半数うかがう」「中道伸び悩み」などと報じた。日経、共同、毎日も同じような内容だった。
朝日新聞は2月2日朝刊で「自民・維新300議席超うかがう」「中道ふるわず半減も」「国民民主横ばい、参政・みらい勢い」などと伝えた。
こうした情勢調査をどう読むかだが、新聞各社の情勢調査の方法で共通しているのは、携帯電話・固定電話とインターネット調査とを組み合わせた世論調査を実施するようになったことだ。但し、調査対象者の選び方や、電話とインターネット調査を比例代表や小選挙区の調査にどのように使うかなどには違いがある。
インターネット調査は、朝日新聞が先行する形で2021年の衆院選挙から本格的に導入し過去2回の衆院選では選挙結果が予測の範囲内に収まった。精度は高いとみられるので、ここでは朝日新聞の情勢調査を中心に情勢をみていきたい。なお、朝日新聞は小選挙区はネット調査、比例代表は固定電話と携帯電話電話で得たデータを使用しているとしている。
情勢調査の結果で、最も大きなポイントは、自民党の獲得議席数をどう読むかだ。朝日新聞は、①自民党は単独で過半数(233)を大きく上回る勢いで、日本維新の会と合わせて与党として300議席超をうかがうとしている。そして自民党の獲得議席の予測として、下限が278、中心値が292、上限が306としている。
②中道改革連合はふるわず、公示前勢力(167)から半減する可能性もある。 ③国民民主党はほぼ横ばい。④参政党、チームみらいは躍進との見方だ。
そこで自民党の獲得議席の予測だが、中心値として278議席を挙げている。公示前議席が186議席だから、92議席増やすことになる。民主党政権当時の野田首相が衆院を解散、自民党が政権復帰したときの獲得議席が294議席。首相に復帰した後、安倍首相が2014年に奇襲解散したときの獲得議席が290議席だった。それに近い水準だ。
他の読売、日経などの予測でも描かれたグラフを見ると270議席から290議席程度も想定しているとみられる。つまり、270から290程度の獲得がありうるかどうかということになる。
こうした予測をめぐって、根拠となるインターネット調査について、調査対象者の選び方をはじめ、得られたデータの蓄積量や分析、データの修正の仕方などについて議論があると思うが、筆者は調査方法などの専門知識もないので、こうした点については触れない。
選挙取材の一員として、こうした予測をどのようにみているかという観点から、実現可能性などを探ってみたい。
知人の自民党の選挙関係者に聞いてみると「獲得議席がどこまで増えるかという点よりも『今の自民党の勢い』を現したものとみた方がよい。今の自民党の勢いは2024年の前回衆院選・石破政権の時を上回っている。2021年の前々回衆院選・岸田政権の時の水準にあるのではないか。この時の獲得議席をベースに『261+α』、260議席以上の勢いがある」との見方を示す。
この自民党関係者の見方は、どこまで議席を伸ばせるか上限は見通せいないが、「絶対安定多数である261議席」は確保する勢いがあるとの見方だ。17の常任委員長を確保した上で、各委員会でも多数を占めることができ、国会運営の主導権を確保することができる水準だ。
筆者は、自民単独過半数の公算は大きいことと、次ぎ②260議席以上に達する華道家が焦点になるのではないかとの見方をしている。単独で280議席以上を獲得するような熱気は感じられ内ので、困難ではないかとの見方をしている。
一方、自民党と維新と合わせて310議席以上を確保すると衆議院の3分の2を占める。衆議院から送られた法案が参議院で否決されても、衆議院で再可決すれば成立させることができる。憲法改正を発議できる勢力を確保することになり、大きな意味を持つ。
過去の衆院選挙で自民党が大勝したケースとしては、昭和61年・1986年中曽根首相が「死んだふり解散」で衆参同日選挙を断行、300議席を獲得した。2005年の小泉首相は郵政解散・刺客選挙を展開し、296議席を得て大勝した。あらゆる事態に備えておく必要があるので、こうした圧勝の再現があるのかどうかも考えておく必要がある。
公明票・無党派・ 投票率がカギ
自民党が優位に選挙戦を展開しているのは高市首相が奇襲解散を仕掛け、野党側が不意を突かれて対応できていないことと、高市首相の高い人気を自民党議員増につなげる戦略に成功しているためだ。
これに対して、野党側は、選挙直前に立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合が国民に浸透していないことと、国民民主党や参政党などが候補者擁立を倍以上に増やし野党乱立状態が自民党に有利に働いていることもある。
こうした野党側の事情があるにしても、このまま自民優位で圧勝することになるのだろうか。「選挙は投票箱が閉まるまで何が起きるかわからない」との格言があるように選挙の先行きはわからない。情勢調査通りの展開になることもあるし、大きく変わることもありうる。
今後の変動要素として1つは、公明・創価学会票が最終盤でどのように動くかがある。公明党は小選挙区からは撤退し比例代表で戦うことになり、中道では比例代表の上位を占めることになった。その代わりに小選挙区では、立民出身候補の支援に回ることになった。その支援がどこまで徹底して行われ、威力を発揮するかどうかだ。
また、無党派層の投票行動がどのようになるか。報道各社の世論調査では、無党派層の比例代表の投票先としては自民党が最も多い。高市人気が奏功している。
一方、高市首相の言動によっては無党派層の支持離れも起こり得る。例えば、高市首相が遊説で手を痛めたことを理由に与野党党首が出演する予定になっていたNHKの討論番組を急遽キャンセルしたへの批判は根強くある。
また、街頭演説で円安容認発言とも受け取れる発言をしたことに、見識を疑う声も強い。こうした問題行動や配慮に欠ける発言が続けば、信頼を一挙に失うこともありうるのではないか。
さらに、真冬の選挙なので、投票率が大幅に低下する可能性が懸念されている。全国平均の投票率も問題だが、特に大雪が続いている北海道や東北、北陸など日本海側の雪国では投票率が大幅に低下することが懸念されている。
衆院選の投票率が戦後最も低かったのは、2014年の52.66%だ。安倍元首相が奇襲解散を仕掛け、自民党は290議席を獲得、連立を組んでいた公明党と合わせ与党で325議席を獲得して大勝した。だが、戦後最低の投票率という不名誉な記録を後世に残した。
こうした3つの不確定要素が最終盤にどのような形で現れるのか注視していく必要がある。
高市政権の評価が最大の焦点
衆院解散から投開票日まで16日間という戦後最短の総選挙も8日、投票日を迎える。最大の焦点は、高市政権が国民の信任を得て自民・維新の連立政権の継続するのか、それとも中道など野党側が支持を広げて新しい政治へめざすことなるかどうかだ。
高市首相は強い経済や防衛力の強化、それに維新との連立政権の合意文書に盛り込んだ保守色の濃い政策を推進するものとみられる。国民がこれをどのように評価するか。
また、内外情勢が激しく揺れ動く中で、強い政権・政党を形成して権限を委ねていくのか、それとも政権与党と野党が競い合う形の政治を求めていくのか、政治のあり方も考えていく必要がある。
こうした政権の評価、重要政策、政党・政治のあり方などをじっくり考えて、国民がどのような審判を下すか、選挙結果を注視したい。(了)
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