国会は17日に会期末を迎え、参院本会議で皇族数の確保に向けた皇室典範改正の採決が行われ、自民・維新両党と国民民主党、公明党、参政党などの賛成多数で可決・成立した。また、国旗を損壊した行為を罰する法律や、再審制度を見直す改正刑事訴訟法も可決・成立した。
一方、「副首都」法案は参議院での審議入りのめどがつかないことから、与党は今月25日までの8日間会期を延長することを議決した。与党は参議院で過半数を割り込んでいることから、無所属の議員などの賛成を取りつけて過半数を確保できるかが焦点だ。
ここまでの国会全体を振り返ると高市政権は、既に成立している国家情報会議設置法案などに加えて、後半国会で本丸と位置づけていた皇室典範改正の実現にこぎ着けた。衆院選の歴史的圧勝を受けて高市政権は、保守色の濃い「高市カラー法案」の多くを成立させたのが特徴だ。
一方、終盤国会では圧倒的多数を占める衆議院でも皇室典範改正案や、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案などをめぐって、混乱や迷走が目立ったのも大きな特徴だ。
このように今の国会には、二つの相反するような特徴があるが、今回は圧倒的な衆院での勢力を背景に高市政権は、余裕のある政権運営ができたはずなのに、なぜできなかったのか、終盤国会の動きを中心に政権の課題や問題点を点検してみたい。
”拙速・浅慮・粗雑さ”目立つ国会運営
終盤国会を象徴するような動きとして、会期延長をめぐる政府・与党の対応がある。過去の多くの国会では会期を延長する場合、与党の幹事長が党内の意見や野党の意向も水面下で探ったりするなどして延長幅を決め、会期末の前日の夕方には衆院議長に申し入れをするのが多かった。
ところが、今回は前日どころか、会期最終日の当日朝の時点でも会期幅を表に出せない有り様だ。17日当日は各委員会で可決済みの法案が参議院本会議に上程され、こうした法案の処理が終わった後、夕方の衆院本会議でようやく会期延長が議決された。
終盤国会での与党の国会運営をみると、6月下旬の衆参予算委員会の集中審議では、高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選で、他の候補を中傷する動画のSNS投稿に関わったとする報道が取り上げられ、高市首相は「秘書の陳述書を提出することで、答弁に代えたい」と異例の答弁を行い、野党の強い反発を招いた。
皇室典範改正案をめぐっては、政府・与党は「静謐な環境の下で議論を進めたい」と強調する一方、法案の審議入りが始まっていない段階で、連立政権合意書に盛り込んだ衆議院議員の定数削減と「副首都」法案について、委員長職権で審議入りを強行し、野党の強い反発を招いた。
この問題は7月7日に高市首相と維新の吉村代表との党首会談で、議員定数削減法案は今国会での成立を断念し、秋の臨時国会で成立をめざすよう方針転換し、事態の収集を図った。
皇室典範改正案の実質審議は衆議院で3時間、参議院でも3時間20分だった。政府・与党は「衆参両院議長の下で長い間議論を続けてきた」と釈明するが、こうした議論は非公開で行われ、国民には伝わっていないのが実態だ。
このように与党側の国会の運営は、十分時間をかけて審議を行うところが極めて短く、拙速だ。法案の優先順位が徹底しておらず、野党や国民への配慮も浅い。さらに、委員会運営などで粗雑な対応が目立ったと言わざるを得ない。
与党内調整不足、首相の姿勢に問題も
それでは、こうした国会運営の迷走は、どこに原因があるのだろうか。終盤国会では皇室典範改正と、自民・維新の連立政権合意に盛り込まれている衆議院議員の定数削減法案、それに「副首都」構想の関連法案の3つの扱いが最大の焦点になった。
高市政権の問題は皇室典範改正と、連立合意関連2法案の扱いに乱れが生じたことだ。連立を組む維新は連立の「センターピン」と2法案を位置づけたのに対し、自民党内は皇室典範改正を最優先とする意見が強かった。
高市首相は政権発足にあたって公明党の連立離脱という危機的状況に助け船を出してくれた恩義もあってか維新の主張に一貫して理解を示してきた。端的に言えば、与党内は高市首相・維新グループ対、自民という構図が続いた。
こうした背景もあって、法案審議にあたって皇室典範改正法案が審議入りもしていない段階で、野党の反発が強い定数削減法案などの審議を強行したことから、野党側の猛反発を引き起こした。
さらに、高市首相は終盤国会の最中、しかも平日にインド訪問の外交日程を入れるという異例の行動を取った。首相の出発当日、今度は森・衆院議長が与野党の幹事長を招いて皇室典範改正法案を最優先で成立させるとともに、首相出席の集中審議などの実現に努力するよう自民党に要請する動きも重なった。
集中審議などは、野党側が強く求めていたもので、これに難色を示す首相官邸と衆院議長、自民党執行部などとの対応の違いが露わになり、改めて政権与党内の調整不足を印象づけた。
自民党議員の一人は「高市首相と党の司、司の幹部が十分、話ができていないのではないか。そうした関係を改め、意見の違いを誰がが調整し、指示を出すようにしないと同じ失敗を繰り返すのではないか」と懸念を示す。
また、党の長老は「首相は、国会運営・対策の基本がわかっているのかどうか。議員定数などはこれまでの経緯、先輩議員の意見なども取り入れながら対応しないと思うような成果を上げることはできないのではか」と指摘する。
一方、野党や国民の間では、高市首相は自らの秘書が中傷動画や暗号資産「サナエトークン」の問題に関与していたのではないかとの報道について、説明責任を果たしていないとの意見は多い。また、国会での集中審議の出席が歴代首相に比べて少なすぎるといった声も聞く。国会にどう向き合うのか、首相の政治姿勢が問われている。
内閣支持率下落、世論に変化の兆候も
高市内閣の支持率は高い水準が続いているが、ここに来て内閣支持率が下落し、5割を切る世論調査のデータが出るようになった。具体的には、時事通信の世論調査(7月10から13日実施)だ。
それによると高市内閣の支持率は49.0%で、前月から5.3ポイント下落し、2か月連続で大幅に低下、去年10月の政権発足以降、初めて5割を切った。この調査の有効回答率は57.1%で、他の世論調査に比べて有効回答割合が高い。それに個別面接方式なので、個人的に時事通信の調査結果を注目している。
この調査によると無党派層の支持率が39.6%で、先月に比べて7.8ポイントと大幅に下落したとされる。この間、自民・維新の与党が法案審議を強行したことや、国会で取り上げられた首相陣営の中衝動画問題などが影響したのではないかとみられる。
国会は25日まで8日間延長されることになり、高市首相の国会運営や政策面の対応が焦点になる。具体的には1つは、延長国会で「副首都」法案が成立するのか、国民の支持が得られるのかどうかだ。
2つ目は、超党派の国民会議で検討が続いている給付付き税額控除と食料品の消費減税がどのようにとりまとめられるのか。そして高市首相が8月上旬に当初の方針通り、消費減税に踏み出すのかが、大きなポイントだ。
3つ目は、高市首相がこの国会で相次いで成立させた保守色の濃い法案について、国民がどのような評価をするのか、高市政権のゆくえを左右する見通しだ。(了)
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