高市首相が先の衆議院選挙の後、当選した全ての自民党の衆議院議員側にカタログギフトを配っていたことが明らかになった。この問題はさっそく、25日の参議院の代表質問でも取り上げられ、高市首相は事実関係を認めたうえで「法令上、問題はない」との認識を示した。
衆院選挙で当選した自民党所属議員は300人を上回る。その全員にカタログギフトを配るとなると多額の政治資金が必要で、現職の総理・総裁がそうした行動をとったことに驚きを禁じ得ない。
この問題は政治リーダーの「政治倫理」の基本認識と関係するほか、衆院選で圧勝した高市首相のこれからの政治姿勢を占うでも注目してみていく必要がある。
1人約3万円、議員315人に配付
この問題は週刊文春の電子版が24日、高市首相の事務所が当選祝いとしてカタログギフト配り、自民党の衆院議員が受領を認めたと報じたのをきっかけに表面化した。
24日夜には、高市首相が自らのXに投稿し「衆院選後、自民党衆議院議員の全員宛てに、今回のたいへん厳しい選挙を経て当選したことへのねぎらいの気持ち込め、品物を寄付させていただいた」と事実関係を認めた。
これを受けて25日の参議院の代表質問で、立憲民主党の田名部幹事長が配付の目的や原資について質した。
高市首相は「品物は本体価格と送料などで1人およそ3万円、合計315人になる。私が支部長を務める奈良県第2選挙区支部の政治資金からの支出だ。政党支部から議員個人への寄付として、法令上も問題ないと認識している」と釈明した。
首相官邸の関係者は「社会通念上、認められる行為だ。法令上も問題はない」と高市首相を擁護する。
政治資金規正法では、個人が公職の候補者の政治活動に関して寄付を行うことを禁止している。一方、支部を含む政党から公職の候補者への物品による寄付は認められている。
このように法令上は違反ではない。但し、自民党議員全員に配った経費の総額は945万円に上る。「政党交付金からの支出ではない」とされるが、1千万円近い多額の政治資金の支出であり、こうした行動をどのようにみるかという問題は残る。
政治とカネ、問われる首相の政治倫理
総理・総裁が当選祝いとして金品を配ったケースとしては去年3月、当時の石破首相が自民党衆院議員の当選1回生15人に、1人10万円の商品券を配り、批判を浴びた。石破首相は陳謝し、商品券は返却された。
今回は配った品物はカタログギフトで金額も異なるが、配った人数が300人を上回るのだから驚く。私も長い間、政治取材を続けているが、総理・総裁が党所属議員全員に当選祝いの品物を配ったというのは記憶にない。前代未聞と言えるのではないか。
日本の政界は1970年代のロッキード事件、80年代のリクルート事件などを教訓に「カネのかからない選挙と政治」をめざしてきた。こうした「カネのかからない政治」の考え方からすれば、自民党は未だに古い政治を続けているのかとあきれる国民も多いのではないか。
今回の高市首相のギフト配付は、前任の石破首相の失敗を繰り返し、国民の政治不信を強めているように見える。また、カネのかからない政治の実現、「政治倫理」の観点からも首相の対応は大きな問題を抱えていると考える。
衆院選圧勝の緩み・慢心はないか
今回の問題をめぐって気になるのは、自民党は衆院選で316議席という結党以来最多の議席を獲得したが、こうした圧勝に伴う気の緩みはないかという点だ。
野党の幹部の1人は「高市首相には選挙に大勝したことによる慢心があるのではないか」と懸念を示す。
今回の問題が深刻なのは、国会前半戦の最大の難所となる衆議院予算委員会が始まってもいない段階で、世論の不信を買う恐れがある行動が起きたという点だ。
歴代政権の多くは予算成立までは、閣僚の失言や議員の不祥事などが起きないよう細心の注意を払いながら政権運絵を続けるのが常だった。そうした取り組みと比べると、今回の高市首相の対応は余りにも緊張感に欠けており、選挙大勝の緩みが現れたと厳しく指摘されても否定できないのではないか。
野党側は衆院選挙で大敗したこともあって、政権を追及するような動きにはなっていないようにみえる。問題は、世論がどのように受け止めるかだ。高市内閣の支持率は選挙後も高い水準を維持してきたが、政治とカネの問題には厳しい。今回の問題で支持率に陰りが出るか、影響は出ないのか注目点の1つだ。
首相 強気の政権運営に踏み出すか
18日に召集された特別国会は、高市首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が26日に終わり、27日からは衆院予算委員会に舞台を移して新年度予算案の審議が始まる。衆院解散・総選挙の影響で、例年に比べて1か月遅れの審議入りになる。
新年度予算案の審議について、代表質問に立った中道改革連合の小川代表は「必要な審議日程は削るべきでない」として、暫定予算案の編成を求めるともに提出されれば、野党としても協力する考えを表明した。
これに対して高市首相は、暫定予算案には一切触れずに「国民生活に支障が生じないよう年度内成立をめざしたい」と野党側に年度内成立への協力を呼びかけた。
これより先、高市首相は自民党の衆参幹部を首相官邸に呼び、予算案の年度内成立を指示した。衆院選圧勝で高市首相の力が強まったとされ、自民党執行部としても審議日程の大幅な短縮を検討しているとされる。
高市首相は「責任ある積極財政」を掲げ、食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにすることや超党派の国民会議の設置、さらにはインテリジェンス機能強化のため、「国家情報局」を創設する法案の成立などにも強い意欲を示している。
高市首相は「さまざまな声に謙虚に、真摯に耳を傾ける」としながらも、「熟議の後に決めるべき時は決めなければならない。それが民主主義のルールだ」と強気の姿勢をのぞかせている。
巨大与党が復活した中で、新年度予算案の審議はどのような形で進められるのか、少数に転じた野党の力量も問われる。また、カタログギフトの配付など政治とカネの問題をめぐっても、高市政権と与党の政治姿勢が問題になることも予想される。
特別国会は当面、27日から始まる衆院予算委員会で、高市首相と野党側の論戦がどのような展開になるか注目したい。(了)
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