今の臨時国会の最大の焦点になっている食料品の消費税減税関連法案は6日、衆議院の財務金融委員会と本会議でそれぞれ採決が行われ、野党各党はそろって反対したのに対し、自民・維新両党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。
衆議院のこれまでの審議では消費税率を1%まで引き下げた場合、商品価格の引き下げ効果がどの程度あるのか見方が分かれたほか、必要な財源の確保策や、新たに始める所得に応じた支援金制度の具体的な内容はほとんど明らかにならなかった。
つまり、国民が知りたいと思っている肝心な点についてはほとんど明らかになっておらず、消費税減税法案は多くの疑問点を残したままの衆議院通過となった。
衆議院での法案審議の問題点などを点検するとともに、週明けの11日から始まる参議院での審議ではどういった点が問われることになるのか探ってみたい。
制度設計や財源、肝心な点は不明なまま
食料品の消費税率を来年4月から2年間に限って今の8%から1%へ引き下げるとともに、新たに収入に応じて支援金を支給する消費税減税関連法案については、野党各党から「法案の具体的な内容を明らかにするよう求める」意見が強く出され審議が続いた。
6日の衆院財務金融委員会では、採決に先だって高市首相が出席して審議が行われた。野党議員は「新たな支援金については誰が、いくらもえるかもわからない。政府は諸外国を参考にすると勤労者のおよそ3割、2000万人程度が対象になると説明しているが、少なすぎる」と対象者を広げるよう重ねて迫った。
これに対して、高市首相は「対象者は現段階で決定したものではない。少なくとも諸外国並みである3割と同程度以上とする方向で検討していく」とのべた。また、政府が支給対象者の年収の上限として、350万円を参考の値として示していることについて「350万円という金額を定めたわけでなく、もう少し幅広く考えている」と答えた。
このように政府の答弁は、先月20日に審議入りした後も「最新のデータで精査する必要があり、年末の予算編成過程で決定したい」と繰り返し、制度の内容については具体的な説明を避け続けた。
こうした結果、法案が衆議院を通過する節目の段階になっても△2年間に限定した消費減税に必要な10兆円の財源をどのように確保するのか。△支援金について、対象者の年収の下限と上限、さらには支給の額などもはっきりしない。
このように肝心な点がいずれも明らかにならないのは、この法案では支援金の対象となる所得の基準や支給額などは明記されておらず、いずれも法案の成立後に「政令」で定めることにしていることが大きく影響している。
高市首相 委員会出席は1回1時間のみ
法案の審議時間も与野党の間で、議論になった。与党は「重要法案の審議時間としては、衆議院では30時間が目安となっており、今回はこの時間数を達成した」として、法案の早期成立を野党側に働きかけた。
確かに審議時間は一定の要件を満たしたが、充実した審議には高市首相の委員会審議への出席も影響する。先月23日から委員会で実質審議入りして以降、野党側は首相出席を強く求めたが、実際に出席したのは採決当日・6日の1日だけで、しかもわずか1時間だけだった。
高市首相は国会で野党議員と意見を戦わすのが苦手とされ、その消極姿勢は与野党議員に広く知られている。だが、社会保障の財源となる消費税の税率引き下げは今回が初めてで、賛否をめぐって国民の意見も分かれている重要なテーマだ。
政権与党の最高責任者として国会審議を通じて国民に説明し、異例の引き下げに理解を求めるのがあるべき姿だと思うのだが、そうした姿勢はみられなかった。
このほか、衆院本会議では採決が行われる前に、石破前首相、小渕・元選挙対策委員長らベテラン議員4人が議場を退席し、自民党内は異論を抱えていることが改めて浮き彫りになった。
参院で国会審議本番、内容提示は大前提
さて、参院での法案審議だが、衆議院では巨大与党のペースで進んだのに対し、参院では与党が過半数割れしており、これからが国会審議本番とも言える。
参院では衆院とは違って、特別委員会を設置しての審議になる。40人の特別委員会は委員長を自民党が取ったので、与党19人、野党20人と野党多数の委員会となり、与党主導といかないのが特徴だ。
国民の立場からすると、国会審議でやるべきことははっきりしている。衆議院で不明だった点を明確にして審議を行うことだ。具体的には、物価高対策として消費税減税は有効なのか。減税の財源の内訳はどうなるのか。細かな数字でなくてよいので、税収や基金、税外収入など赤字国債に頼らない根拠を提示すべきだ。
支援金制度については、対象者が勤労者の3割、およそ2000万人からどの程度増やす方針か。勤労者全体6000万人のうち、外れた人はどうするのか、年金生活者や、働きたくても働けない人の手当をどうするかも明確にする必要がある。
以上のような点は、審議の大前提だ。消費税減税の基本方針を決定したのが8月5日、与党の税制大綱を閣議決定したのが9月15日、検討時間は十分にあったと考える。
政府から十分な説明がない場合、野党は前提条件が整うまで審議入りを待つなど強い姿勢で臨む必要があるのではないか。野党の足並みがそろうかどうかも問われる。
次に、財源の確保のあり方や制度設計の内容について、与野党で突っ込んだ協議を行い、法案の修正が可能なのかどうか議論を尽くすべきだ。
自民党も衆議院で譲歩しなかったのは「参議院での審議に備えてのため」との話も聞く。国民民主党や公明党を意識しているものとみられるが、法案の修正が可能かどうかと、国民の支持が得られる内容かどうかも問題になる。
さらに、高市首相は「消費税減税は私の悲願」と考えているのであれば、審議に積極的に出席して野党議員と意見を戦わせるべきだ。特に財源は、消費税減税だけでなく、首相の肝入りの「成長戦略投資」や「防衛力強化」の財源とも関わる。「赤字国債発行」発行につながらないのかどうか明確に説明すべきだ。
アメリカの中間選挙で、トランプ大統領率いる共和党が大敗した影響を受けて、6日の東京株式市場は終値で3500円余り下落し、過去3番目の値下がり幅となった。トランプ大統領の対応によっては、国際社会や世界経済は大きく揺さぶられる事態が予想される。
高市首相は、内政では消費税減税法案をどのように決着させるのか。外交では、今月中旬に中国で開催されるAPEC首脳会議や、来月アメリかで開かれるG20サミットにどのような方針で臨むのか、高市首相の実力が試されることになる。(了)
