首相肝いり法案 相次ぎ成立、”国会運営は混乱・迷走”

国会は17日に会期末を迎え、参院本会議で皇族数の確保に向けた皇室典範改正の採決が行われ、自民・維新両党と国民民主党、公明党、参政党などの賛成多数で可決・成立した。また、国旗を損壊した行為を罰する法律や、再審制度を見直す改正刑事訴訟法も可決・成立した。

一方、「副首都」法案は参議院での審議入りのめどがつかないことから、与党は今月25日までの8日間会期を延長することを議決した。与党は参議院で過半数を割り込んでいることから、無所属の議員などの賛成を取りつけて過半数を確保できるかが焦点だ。

ここまでの国会全体を振り返ると高市政権は、既に成立している国家情報会議設置法案などに加えて、後半国会で本丸と位置づけていた皇室典範改正の実現にこぎ着けた。衆院選の歴史的圧勝を受けて高市政権は、保守色の濃い「高市カラー法案」の多くを成立させたのが特徴だ。

一方、終盤国会では圧倒的多数を占める衆議院でも皇室典範改正案や、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案などをめぐって、混乱や迷走が目立ったのも大きな特徴だ。

このように今の国会には、二つの相反するような特徴があるが、今回は圧倒的な衆院での勢力を背景に高市政権は、余裕のある政権運営ができたはずなのに、なぜできなかったのか、終盤国会の動きを中心に政権の課題や問題点を点検してみたい。

”拙速・浅慮・粗雑さ”目立つ国会運営

終盤国会を象徴するような動きとして、会期延長をめぐる政府・与党の対応がある。過去の多くの国会では会期を延長する場合、与党の幹事長が党内の意見や野党の意向も水面下で探ったりするなどして延長幅を決め、会期末の前日の夕方には衆院議長に申し入れをするのが多かった。

ところが、今回は前日どころか、会期最終日の当日朝の時点でも会期幅を表に出せない有り様だ。17日当日は各委員会で可決済みの法案が参議院本会議に上程され、こうした法案の処理が終わった後、夕方の衆院本会議でようやく会期延長が議決された。

終盤国会での与党の国会運営をみると、6月下旬の衆参予算委員会の集中審議では、高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選で、他の候補を中傷する動画のSNS投稿に関わったとする報道が取り上げられ、高市首相は「秘書の陳述書を提出することで、答弁に代えたい」と異例の答弁を行い、野党の強い反発を招いた。

皇室典範改正案をめぐっては、政府・与党は「静謐な環境の下で議論を進めたい」と強調する一方、法案の審議入りが始まっていない段階で、連立政権合意書に盛り込んだ衆議院議員の定数削減と「副首都」法案について、委員長職権で審議入りを強行し、野党の強い反発を招いた。

この問題は7月7日に高市首相と維新の吉村代表との党首会談で、議員定数削減法案は今国会での成立を断念し、秋の臨時国会で成立をめざすよう方針転換し、事態の収集を図った。

皇室典範改正案の実質審議は衆議院で3時間、参議院でも3時間20分だった。政府・与党は「衆参両院議長の下で長い間議論を続けてきた」と釈明するが、こうした議論は非公開で行われ、国民には伝わっていないのが実態だ。

このように与党側の国会の運営は、十分時間をかけて審議を行うところが極めて短く、拙速だ。法案の優先順位が徹底しておらず、野党や国民への配慮も浅い。さらに、委員会運営などで粗雑な対応が目立ったと言わざるを得ない。

与党内調整不足、首相の姿勢に問題も

それでは、こうした国会運営の迷走は、どこに原因があるのだろうか。終盤国会では皇室典範改正と、自民・維新の連立政権合意に盛り込まれている衆議院議員の定数削減法案、それに「副首都」構想の関連法案の3つの扱いが最大の焦点になった。

高市政権の問題は皇室典範改正と、連立合意関連2法案の扱いに乱れが生じたことだ。連立を組む維新は連立の「センターピン」と2法案を位置づけたのに対し、自民党内は皇室典範改正を最優先とする意見が強かった。

高市首相は政権発足にあたって公明党の連立離脱という危機的状況に助け船を出してくれた恩義もあってか維新の主張に一貫して理解を示してきた。端的に言えば、与党内は高市首相・維新グループ対、自民という構図が続いた。

こうした背景もあって、法案審議にあたって皇室典範改正法案が審議入りもしていない段階で、野党の反発が強い定数削減法案などの審議を強行したことから、野党側の猛反発を引き起こした。

さらに、高市首相は終盤国会の最中、しかも平日にインド訪問の外交日程を入れるという異例の行動を取った。首相の出発当日、今度は森・衆院議長が与野党の幹事長を招いて皇室典範改正法案を最優先で成立させるとともに、首相出席の集中審議などの実現に努力するよう自民党に要請する動きも重なった。

集中審議などは、野党側が強く求めていたもので、これに難色を示す首相官邸と衆院議長、自民党執行部などとの対応の違いが露わになり、改めて政権与党内の調整不足を印象づけた。

自民党議員の一人は「高市首相と党の司、司の幹部が十分、話ができていないのではないか。そうした関係を改め、意見の違いを誰がが調整し、指示を出すようにしないと同じ失敗を繰り返すのではないか」と懸念を示す。

また、党の長老は「首相は、国会運営・対策の基本がわかっているのかどうか。議員定数などはこれまでの経緯、先輩議員の意見なども取り入れながら対応しないと思うような成果を上げることはできないのではか」と指摘する。

一方、野党や国民の間では、高市首相は自らの秘書が中傷動画や暗号資産「サナエトークン」の問題に関与していたのではないかとの報道について、説明責任を果たしていないとの意見は多い。また、国会での集中審議の出席が歴代首相に比べて少なすぎるといった声も聞く。国会にどう向き合うのか、首相の政治姿勢が問われている。

内閣支持率下落、世論に変化の兆候も

高市内閣の支持率は高い水準が続いているが、ここに来て内閣支持率が下落し、5割を切る世論調査のデータが出るようになった。具体的には、時事通信の世論調査(7月10から13日実施)だ。

それによると高市内閣の支持率は49.0%で、前月から5.3ポイント下落し、2か月連続で大幅に低下、去年10月の政権発足以降、初めて5割を切った。この調査の有効回答率は57.1%で、他の世論調査に比べて有効回答割合が高い。それに個別面接方式なので、個人的に時事通信の調査結果を注目している。

この調査によると無党派層の支持率が39.6%で、先月に比べて7.8ポイントと大幅に下落したとされる。この間、自民・維新の与党が法案審議を強行したことや、国会で取り上げられた首相陣営の中衝動画問題などが影響したのではないかとみられる。

国会は25日まで8日間延長されることになり、高市首相の国会運営や政策面の対応が焦点になる。具体的には1つは、延長国会で「副首都」法案が成立するのか、国民の支持が得られるのかどうかだ。

2つ目は、超党派の国民会議で検討が続いている給付付き税額控除と食料品の消費減税がどのようにとりまとめられるのか。そして高市首相が8月上旬に当初の方針通り、消費減税に踏み出すのかが、大きなポイントだ。

3つ目は、高市首相がこの国会で相次いで成立させた保守色の濃い法案について、国民がどのような評価をするのか、高市政権のゆくえを左右する見通しだ。(了)

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皇室典範改正案”再考の府、徹底審議を尽くせ”

衆院選挙を受けた特別国会は、会期末まで1週間を切ったが、参議院には13本の法案が積み残されるという異例の事態で、法案の成否をめぐって与野党が大詰めの攻防を続けている。

中でも皇族数の確保に向けた皇室典範改正法案は、象徴天皇制をとるわが国にとって国の基本に関わる重要な事項だ。ところが、衆議院で10日に行われた初めての審議はわずか3時間半で、その日のうちに与野党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。

参議院では14日から審議が始まる見通しだが、法案審議はどのように行われるべきだろうか。結論を先に言えば、皇室典範改正案は衆参両院の正副議長がとりまとめた「立法府の総意」から逸脱している内容もあり、このまま成立させると将来に禍根を残す。

このため、会期末は迫っているが、まずは「再考の府」と位置づけられる参議院で徹底した審議を尽くしてもらいたい。

そのうえで、与野党の幅広い合意に至らない場合は、法案を継続審議にして次の国会以降に持ち越すことを考えてはどうか。なぜ、こうした結論になるのか、以下できるだけ簡潔に説明したい。

養子の子どもに皇位継承資格は妥当か

さっそく、皇室典範改正案をめぐる主な論点をみておきたい。これまでの衆院の審議などで、論点は絞られている。

最も大きな論点は、皇室典範で禁じている養子について、例外として新たな章を設けて、養子を迎えることができるとしている点だ。養子となることができるのは、昭和22年に皇籍を離脱した11宮家の子孫で、年齢は15歳以上としている。

そして養子には皇位継承権はないが、養子のもとに生まれた子どもが男子の場合、皇位継承資格を持つとしている。

衆参正副議長がまとめた「立法府の総意」では皇位の継承には踏み込まず、先送りした。このため、政府案は「立法府の総意」から逸脱しているとの指摘が衆議院の審議でも出された。

この点について政府は「立法府の取りまとめに記述がないことから、現行の皇室典範に基づいて判断する。立法府の将来の検討を先取りしたり、縛ったりするものではない」と弁明する。だが、この説明は事実上、皇位の継承資格を先取りしていると言わざるを得ない。

次に、女性皇族が結婚して皇室に残る場合、その夫や子どもは一般国民のままで、女性皇族の家族には一般国民の「住民基本台帳を適用する」としている。女性皇族の家庭への配慮がなさ過ぎるとして、再検討すべきとする意見もある。

さらに、政府案のように男系男子による皇位継承を維持すべきだという考え方がある一方で、女性や女系の天皇も認める時期だとする意見も聞かれる。

「男系・男子による皇位継承」か、「女系・女性の天皇」を認めるのか、皇位の継承のあり方についても踏み込んで議論すべきだとする指摘は多い。こうした論点を整理しながら、国会での議論を深める必要がある。

静かな環境に遠く、国会の議論も不足

もう一つ法案審議の評価をめぐっては、審議のプロセス、手順・段取りも重要な要素になる。皇位継承や皇室のあり方をめぐっては、人によって歴史・伝統・価値観などに違いがあることから、「静謐な環境」の下で粘り強く議論を重ねることが大切だ。この点については、与野党の意見は一致する。

ところが、実際には、衆参両院の正副議長による意見のとりまとめは難航し、政府の法案化を経て、政府案の閣議決定は6月30日にずれ込んだ。さらに国会の空転もあって法案の審議入りは大幅に遅れ、会期末の10日前になった。

これでは「静謐な環境」で、議論を交わすにはほど遠い。皇室典範改正案は10日午前に委員会で、3時間半審議しただけで、午後の衆院本会議に緊急上程された。採決の結果、自民・維新の与党と中道・国民・参政の各党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。本会議の所要時間はわずか5分の慌ただしさだった。

「再考の府」参議院、修正案のゆくえは

参議院の法案審議は14日から始まる見通しで、衆議院とはちがって参議院では特別委員会を設けて審議を行う。政党や会派の数が多いため、特別委員会であれば小さな会派も議論に参加できるようにするためだ。

参議院の野党第1党の立憲民主党は「養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を与えるのは問題が多い」として反対する方針だ。そして、養子案を削除することなどを求める修正案を提出することにしている。

修正案が提出されることによって論点が明確になり、養子制度をめぐるさまざまな問題点や、女性皇族の配偶者と子どもの処遇、法案の見直し期間の設定のあり方などについて、曖昧な点が整理されることが期待される。また、これからの皇位継承のあり方などについて議論が深まるかどうかも注目点だ。

参議院では自民・維新の与党が過半数割れしているが、法案の採決が行われる場合、立憲民主党が反対しても、国民民主党などの他の野党が賛成すれば、賛成多数で可決・成立する公算が大きい。

一方、仮に改正案が成立しても、参院第1党の立憲民主党などが反対した場合、「立法府の総意」に基づく改正案と言えるかどうか議論になるだろう。

そこで、与野党が対立したまま歩み寄れない場合、法案を継続審議にして次の国会以降に持ち越すことも選択肢になる。それでも政府・与党は原案通り、採決に踏み切るかどうかが問題になる。

憲法では「天皇の地位は、日本国民の総意に基づく」(第1条)と規定されており、象徴天皇制は国民の幅広い理解と支持が前提になっている。このため、国会で法案の扱いに結論が出ても「国民の総意」、国民の幅広い理解と支持を得られるのかが、カギを握っている。国会の議論と法案のゆくえを注視したい。(了)

◆追記(7月13日22時)NHKの世論調査によると皇室典範の改定について、今の国会で改正すべきだと思うか尋ねたところ、「改正すべきだ」が38%に対し、「改正する必要がない」41%で上回った。「わからない・無回答」が21%だった。◇養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を有することについては「賛成」が43%、「反対」が34%だった。◇女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、その配偶者と子どもを皇族とするかどうかは改正案に含まれていないが、配偶者と子どもを皇族にする考え方については「賛成」が49%、「反対」が28%だった。このように「立法府の総意」の取りまとめと、それに基づく政府の改正案は、国民の考え方と隔たりがあることが浮き彫りになった。参院での改正案の審議でも、こうした点も論点になりそうだ。

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審議再開”首相 強硬路線転換、与党に乱れ”

国会の会期末が17日に迫る中で、高市首相は7日夕方、日本維新の会の吉村代表と党首会談を行い、野党各党が強く反発している衆議院議員の定数削減法案について、今国会での成立を断念し、秋の臨時国会に先送りすることで一致した。

これを受けて自民党の梶山国対委員長は8日、衆院第1党の中道改革連合の重徳国対委員長と断続的に会談し、定数削減法案の先送りを伝えるとともに、衆議院予算委員会の集中審議について「与党の責任で実施する」方針を伝えた。

これに対して重徳委員長は「審議を行う環境が整った」として、皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議に応じる考えを示した。

混乱が続いてきた衆議院でも法案の審議が再開する見通しになったが、今回の定数削減法案の先送りをどのようにみたらいいのか、また最終盤の国会はどのように展開するのか探ってみたい。

政権与党に乱れ、国会運営・調整に弱点

高市首相と日本維新の会の吉村代表との党首会談は7日午後6時から、国会内で自民・維新両党の幹事長、国対委員長、参院幹部らが出席して始まったが、わずか8分で終わった。会談後、両党首とも個別にメデイアのぶら下がりに応じたが、内容の説明を避けた。それだけ追い込まれ苦渋の決断だったのだろう。

結論を先に言えば「高市政権は国会終盤に厳しい状況に追い込まれるのではないか」との見方は与野党関係者の間にかねてからあった。

というのは、終盤国会に提出される衆議院議員の定数削減と「副首都」構想、それに皇族数の確保に向けた皇室典範改正はいずれも高市政権発足時の連立政権合意に盛り込まれた内容で、与野党の意見が対立する公算が大きいからだ。

それに加えて政権与党内では、維新は自らの看板政策と位置づける議員定数削減と「副首都」の2法案を重視するのに対し、自民党は「皇室典範改正を最優先すべきだ」との空気が強く、双方に温度差、溝があるとみられていた。

さらに、高市首相は政権担当にあたって維新の支援を受けたこともあって、維新に恩恵を感じているとされる。このため、高市首相にとっては与野党対立ということだけでなく、維新グループと自民党との溝を埋めながら国会や政権を運営できるかという難問を抱えていた。

これまでの国会の動きを点検してみても、会期末まで3週間余りとなった6月26日、与党は衆議院の議院運営委員会で、野党が欠席する中で高市首相に近い山口委員長が職権で、定数削減法案と「副首都」法案の委員会付託を決定した。

続く週明けから両法案とも、関係する委員会で委員長が職権で審議入りを決定し、与党単独の審議に踏み切った。野党側はさらに強く反発したほか、与党内からも強硬路線を懸念する声が聞かれた。

こうした中で、高市首相は終盤国会最中の7月1日から3日間、インド訪問という異例の外交日程に出発し、国会を留守にした。同じ1日、衆議院の森議長は与野党7党の幹事長らと会談し「皇室典範改正法案を最優先」で成立させるよう要請した。

森氏は、議長就任前には麻生派に所属していたこともあり、森議長の要請をきっかけに皇室典範改正に強い意欲を持つ麻生副総裁など推進派の活動が一段と勢いを増したようにみえた。

政府は今国会に64本の法案を提出しているが、成立にこぎつけていないのは衆院で皇室典範の1本、参議院では16本と多くの法案を抱えている。高市首相としても維新の意向に最大限応えたいが、このままでは政府提出法案の多くが成立できない事態に追い込まれるため、削減法案断念にカジを切ったものとみられる。

高市首相は国会対策分野の経験が乏しいこともあってか、国会対策や運営は不得手なようだ。具体的には政権与党内の情勢把握、重要法案の提出から成立までの手順・段取り、不得手な分野は信頼の置ける議員を配置するといった運営ができないと、今後の政権運営は安定しないことがはっきりしたのではないか。

 国会最終盤、皇室典範改正案が焦点

混乱が続いてきた国会は参議院に続いて、衆議院でも法案の審議が再開され、全面的に正常化される見通しだ。会期末は17日で、与党は会期延長はしないとの見方が強いが、法案の扱いによっては延長もありうる。

終盤国会で最大の焦点は、皇族数の確保に向けた皇室典範の改正法案だ。衆議院の議院運営委員会は理事会で、10日に審議入りすることで与野党が合意した。

党派の中には、政府案には「立法府の総意」として検討していない内容が含まれているとして、慎重審議を求める意見も出されている。参議院で40人が所属し野党第1党の立憲民主党は8日、旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにする政府案に反対する方針を決めた。

一方、私たち国民も政府案を読んでみると、明治時代の皇室典範でも認めていなかった旧皇族の男系男子を養子にする制度を設けたり、養子の子どもが男子の場合、皇位継承権を認めたりする点には疑問を感じる人が多いのではないか。

また、女性皇族が皇室に残る場合、一般国民の住民基本台帳の対象になるほか、結婚する配偶者と子どもの身分は一般国民とするのは適切なのかどうか。男系・男子だでけだなく、女系・女性の天皇をどのように考えるか、掘り下げた議論が必要ではないかと考える。

憲法では「天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」(第1条)と位置づけられている。与野党で議論を深めるとともに、国民の理解と支持が得られるような制度にしてもらいたい。会期末のあわただしい時期に、数の力で決定を急ぐような対応は取るべきでないことを強調しておきたい。

また、審議が続いている法案の中には、国旗損壊罪や「副首都」構想関連法案などには国民からもさまざまな意見が出されているので、こうした法案についても慎重な審議を要望しておきたい。(了)

★追記(10日23時)皇室典範の改正案は10日、衆院本会議で採決が行われ、自民・維新の与党と中道、国民、参政など各党の賛成多数で可決され、衆議院を通過した。参議院では週明けから審議が始まる。野党第1党の立憲民主党は修正案を提出し、否決された場合、反対する方針だが、その他の野党が賛成し改正案は成立する公算が大きい。衆議院での実質審議はわずか3時間だったので、参院では掘り下げた議論を期待したい。

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終盤国会 混迷 ”早期正常化なるか、政権与党の責任大”

会期末まで3週間を切った国会は、自民党と日本維新の会の政権与党が29日の衆議院議員の定数削減法案に続いて、30日には「副首都」構想の関連法案を委員長職権でいずれも審議入りさせた。

これに対し、野党側は強引な国会運営だとして強く反発し、審議には応じられないとして与野党が全面的に対立するという異常な事態に陥っている。

こうした重要法案の扱いに加えて、高市首相陣営の中傷動画報道などをめぐる問題も絡んで、事態打開のめどはついていない。

与野党対立が続けば、防災庁設置法案や皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議への影響が予想される。終盤国会の与野党対立の構図はどのようになっているのか、事態打開には何が必要なのか探ってみたい。

法案山積も、与党の国会戦略見えず

今の国会に提出される法案については、既にこのブログで幾度か取り上げてきたので、詳細に触れるのは避けるが、多くの法案の審議がヤマ場を迎えていたり、審議入りが予定されたりしている。

具体的には、前の内閣から引き継がれた防災庁の設置法案をはじめ、個人情報保護法改正案、与党が最も重要な法案と位置づける皇族数の確保に向けた皇室典範改正案も30日に閣議決定された。

こうした中で高市首相と維新の吉村代表は先の党首会談で、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案と「副首都」構想の関連法案を今の国会で成立をめざす方針を確認し、29日に法案を国会に提出した。

与党が連立政権合意に基づいて法案を提出するのは当然あり得ることだが、問題は会期末の7月17日が迫っていることだ。維新の中司幹事長は会期の延長を求めているのに対し、自民党の鈴木幹事長は、会期延長なしで今の国会を終える考えを表明している。

このように国会の会期延長をめぐっても連立与党の自民、維新、それに首相官邸の三者の間でも調整がつかないまま、個別の法案の扱いが進んでいる。

また、与党の幹部は「懸案の皇室典範改正案を成立させることが今国会の最重要案件であり、そのためには静かな環境で審議促進を図る必要がある」と強調してきた。ところが、実際には最終盤に入って与野党の対決法案を持ち出すなど政権与党の方針に一貫性がみられない。

国会運営は衆議院で多数を握る政権与党が主導権を発揮して、野党と交渉に当たるのが基本だ。しかし、今の国会で政権与党の対応をみると国会運営の戦略、基本方針が首相官邸と連立与党間で共有されておらず、終盤国会が混迷する根本原因はこの点にあるとみている。

中傷動画問題、首相・秘書の説明が必要

さて、終盤国会で与野党が対立している、もう一つの背景に首相陣営の中傷動画などをめぐる問題がある。

6月22日の衆参両院の予算委員会で野党側は「高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選での他陣営に対する中傷動画の投稿や、首相の個人名を使った暗号資産『サナエトークン』に関与したのではないか」と追及した。

これに対し、高市首相は事務所の関与を否定したうえで「秘書の陳述書を提出する。それをもって答弁に代えたい」と異例の答弁をした。野党側は答弁拒否だと反発し、首相出席の集中審議の実施と秘書の参考人招致を要求している。

この問題をどのように考えるかだが、現職の首相に関わる問題であることと、SNSと選挙のあり方が大きな問題になっていることを考えると、ここは高市首相が自ら進んで説明し、秘書も知りうる点を説明することが必要だと考える。

これまでの政権でもさまざまな疑惑が問題になったが、基本は「事実関係」を明らかにし、その事実に基づいて議論を深めることの重要性が指摘されてきた。そうした取り組みが、政権や国民にとってもプラスに働くと考える。

内外激動、国会の一刻も早い正常化を

それでは、これからの終盤国会で政権、与野党はどのように対応すべきだろうか。

政権与党の一部には、議員定数削減法案や「副首都」関連法案を成立させるため、国会の会期を大幅延長し、参議院に送られた法案が採決されなくても60日が経過すれば否決と見なして衆院に法案を戻し、3分の2以上の多数で再可決する方策を検討しているとの報道もある。

だが、これを採用すると「参院無用論」を政権与党自らが行うことになり、事実上、二院制の否定と国民の政治不信を増幅させる可能性もある。自民党幹部の一人は「こうした手法は採らない方がよい」との考えを示しているが、最終的には高市首相の判断になりそうだ。

一方、日本を取り巻く情勢をみてみると、アメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名がなされたが、最終的な合意は不透明だ。署名から60日後、ホルムズ海峡の通航に管理料などが徴収されるようになると、貿易立国・日本への打撃は大きい。

パキスタンは仲介国の役割を果たしたが、本来は日本が果たす役割ではなかったか。通行料なしで、安全航行を実現することなど日本が積極的に取り組むべき課題は多い。

円相場は30日午前、1ドル=162円台をつけた。1986年12月以来、およそ39年ぶりの円安水準だ。著しい円安は輸入物価を押し上げ、私たちの暮らしに大きな打撃を与える。金融政策や財政政策のかじ取りは待ったなしの状態だ。

さらに超党派の国民会議で検討が進められてきた給付付き税額控除と、2年間限定で食料品の消費税率ゼロ政策は、野党側の反発もあり、政権がめざしていた6月中の「中間とりまとめ」を断念する事態に追い込まれている。

こうした内外の情勢を考えると国会の混迷に区切りをつけ、一刻も早い正常化を実現することが必要だ。そのために首相、衆参両院の正副議長、与野党双方とも積極的に汗をかくべきだ。

特に首相や政権与党の幹部は、野党との意見の対立を調整し、現実的な対応策を実現していくことが求められる。高市首相も与党や、過半数割れしている参院幹部との意思疎通を図り、政権を運営していくことが求められているのではないか。

一方、国民からすると幾つか注文がある。その一つが、法案の優先順位だ。例えば国旗損壊罪法案は急ぐ必要があるのかどうか、優先順位を考えてもらいたい。

もう一つは、焦点の皇室典範改正案の扱いだ。衆参の正副議長を中心にまとめられた「立法府の総意」に沿って法案化が進められたが、政府案では「旧皇族の養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を持つ」と規定されている。「立法府の総意」では先送りされた内容が盛り込まれており、国会での審議が必要だ。

今回の皇室典範の改正は、「皇族数の確保策」であり、「皇位継承」の課題には踏み込まないのが前提だ。国会では与野党とも慎重に審議を尽くし、国民の納得が得られた段階で、採決すべきだと考えるが、どうだろうか。

高市首相は1日から3日間の日程で、インドを訪問する。国会が最終盤の段階で、しかも週末ではなく、平日に首相が国内を留守にするのは異例の対応だ。

憲法で「内閣は、国会に連帯して責任を負う」と規定されている。特に首相が国会を留守にする場合、政府の対応が後手に回らないよう態勢を整えておくことが不可欠だ。終盤国会で、政権や与野党はどのような対応を取ったか、しっかり見届ける必要がある。(了)

★追記(7月1日23時:森衆議院議長は1日、与野党の幹事長らと会談し、与野党が協力して静謐な環境の下、皇室典範改正案を成立させることを最優先するよう要請した。また、与党に対し、予算委員会の集中審議や党首討論を開催するよう努力を求めた。中道の階幹事長は記者団に「与党がどう対応するか示す必要がある。きちんとした回答がなければ、静謐な環境は整わない」との考えを示した)。

★追記(2日22時:自民党の鈴木幹事長と衆院野党第1党の階幹事長が会談し、国会正常化に向けて意見を交わしたが、合意に至らなかった。引き続き、協議を続ける)。

★追記(7日10時:混乱が続く国会は高市首相が6日、参院予算委員会の集中審議と党首討論に応じる考えを示したことから、参院は7日から法案審議を再開することになった。一方、衆院は与野党の対立が続いており、皇室典範改正法案などの審議の見通しは立っていない)。

★追記(7日23時:高市首相と日本維新の会の吉村代表は7日、国会内で会談し、事態打開のため、衆院議員の定数削減法案について今の国会での成立を見送る方針を確認した。これを受けて、与党は8日に野党側と会談し、焦点の皇室典範改正法案の早期審議入りを働きかける方針)。

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国会残り1か月 懸案集中、高市政権の対応は?

アメリカとイランが戦闘終結に向けた覚書を19日に正式に署名する見通しになったのを受けて、各国とも原油輸送の要路であるホルムズ海峡の安全航行が実現するかどうかに強い関心を寄せている。G7サミットも15日からフランスで開かれ、中東情勢の安定に向けた取り組みを強めることを確認した。

日本国内では国会の残り会期が1か月となり、自民党と日本維新の会が連立合意文書に盛り込んだ3法案のゆくえが焦点になっている。衆院議員の定数削減、「副首都構想」、国旗損壊罪の3つの法案で、与野党の攻防が激化する見通しだ。

高市政権にとって6月は、皇族数の確保策を盛り込んだ皇室典範の改正案のとりまとめのほか、超党派でつくっている「国民会議」で食料品の消費税率ゼロと給付付き税額控除の取りまとめも控えている。

こうした内外の懸案が集中する中で、高市首相は重要案件にどのような姿勢で臨むのか、優先順位を含めた政権の対応力が試されることになる。

終盤国会、自・維連立合意3法案が焦点

今の国会では、えん罪をなくすため裁判の再審制度を見直す刑事訴訟法改正案が野党・参政党の賛成を得られることになり、改正案は16日に衆議院を通過、会期内に成立する見通しになった。この法案を含め、首相が質疑に出席する「重要法案」は4法案いずれも既に成立、もしくは成立のめどが立った。

政府・与党が次に成立をめざしているのが、高市政権が発足する際に自民・維新連立政権の合意文書に盛り込んだ3つの法案だ。具体的には、衆議院議員の定数削減法案と「副首都構想」法案、それに日本の国旗を損壊する行為を罰する法案だ。

▲このうち、国旗損壊罪法案については、自民党と国民民主党、参政党との間で修正協議がまとまったことから、16日に法案を国会に提出した。参院では与党は過半数割れしているが、国民民主党と参政党の賛成で成立する見通しだ。

▲衆議院議員の定数削減法案は、与野党の協議で選挙制度改革の結論が1年以内に出なかった場合、比例代表のみで45議席を削減するとした内容で、与党は近く法案を提出する。

ただ、野党各党は比例代表のみの削減に強く反発している。また、企業・団体献金の見直しや、SNS上の偽情報対策などの法案審議を優先させるべきだという意見もあり、成立の見通しは立っていない。

▲維新が重視している「副首都構想」法案については、自民党内で批判が相次ぎ、与党内で議論が続いている。この法案では、維新がめざしている「大阪市を廃止して複数の特別区に分割する大阪都構想」を実現する場合、是非を問う住民投票の対象を大阪市から、大阪府全体に広げることが盛り込まれていることから「住民自治の観点から問題が多い」とする反対意見が根強く出されている。

この「副首都構想」と議員定数削減法案をめぐっては高市政権の発足時に自民党内の議論がなされないまま、高市首相と維新首脳との会談で連立政権の合意文書に盛り込んだ経緯がある。このため、野党の反対だけでなく、自民党内の幅広い支持が得られるのかどうか危ぶむ声も聞かれる。

皇族数の確保、食料品消費税実質ゼロ案

安定的な皇位継承をめぐり衆参両院の正副議長が10日、各党派の代表と協議し、皇族数の確保に向けた「立法府の総意」を取りまとめた。

女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧皇族の男系男子を養子として迎える案を「いずれも了」とする内容で、政府は月内にも皇室典範の改正案を今国会に提出し、成立をめざす方針だ。

この「立法府の総意」を読むと女性皇族が結婚後も皇室に残ることは賛同できるが、女性皇族の夫や子どもの身分の扱いは明記されていない。また、皇室が養子を取ることに国民の理解が得られるのか疑問を感じる。

この問題をめぐって高市首相は12日、日本維新の会の藤田共同代表と官邸で会談し「自民党と維新の連立政権なので、まずは制度設計の細かいところまで両党でつめてほしい」と要請した。

これに対し、野党からは「こうしたやり方では、『立法府の総意』は無視することか」と反発や批判が相次いでいる。

この問題の背景には、高市首相など保守派の議員の間では「皇位の継承は、男系男子に限るという伝統を守るべきだ」との考えが強く、「皇族数の減少が続く中では、女系女性天皇も認めるべきだ」とする考え方との間で大きな違いがある。

「立法府の総意」はこうした違いを踏まえて取りまとめただけに、政府の改正案の取りまとめ方によっては与野党の意見の違いが表面化し、終盤国会の運営に影響する事態も予想される。

高市政権にとっては6月にはもう一つ、首相肝いりの政策について重要な判断を迫られる。超党派の「国民会議」で議論が続いている食料品の消費税率ゼロと、給付付き税額控除の取りまとめを受けて、政府としてどのような方針を打ち出すかという問題だ。

食料品の消費減税をめぐっては17日、「国民会議」の議長案が示された。それによると来年4月から税率を1%に引き下げ、給付と組み合わせることで「消費税率を実質ゼロ」にするとしている。

これに対し、野党からは「国民会議の議論は給付付き税額控除が中心で、消費税率の議論は行っていない」として強く反発している。また、消費減税で本当に価格が下がるのか、2年後に税率を元に戻せるのか、財源の確保はできるのかといった多くの問題を抱えており、国民会議のとりまとめは難航が必至の情勢だ。

中傷動画含め懸案集中、政権・与野党は

今の国会では、高市首相の陣営が自民党総裁選や衆院選で他陣営を中傷する動画を拡散したとする週刊文春の報道が取り上げられ、首相と野党側の応酬が続いている。

この問題をめぐっては共同通信も動画を作成した男性のインタビューを報道し、首相の秘書から総裁選で相談を受けたことや、衆院選では首相を含む与野党約50人の陣営から対立候補に関する動画の作成を頼まれ、うち20人に協力したと証言した。

この問題は、最高権力者である首相の信頼性に関わるとともに、SNS時代の選挙のあり方・公正さに関わる重要な問題だ。

それだけに、まずは「事実関係」を明確にすることが不可欠だ。高市首相が率先して事実関係を説明するとともに、秘書についても国会に招致するなどして事実関係を解明してもらいたい。

このほか、中東情勢はアメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名式典が19日に行われ、1つの節目を迎える。日本外交は同盟国のアメリカだけでなく、友好関係にあるイランへの働きかけが十分に行えたのか、戦闘終結後のホルムズ海峡の安全航行にどのような役割を果たしていくのか掘り下げた点検が必要だ。

このように国会の残り会期は1か月となり、重要法案の扱いをはじめ、首相陣営の政治倫理、ホルムズ海峡の安全航行、物価高騰や社会保障のあり方などさまざまな懸案が集中して目白押しの状況だ。

こうした中で、気になるのは野党陣営の対応で、衆院選で大敗した影響が残っているとはいえ、政権をチェックする機能を果たせているようにはとても思えない。法案をめぐって与党に協力することはあるにしても、徹底した議論を尽くすことが必要だ。

国会の会期末に向けて私たち国民も、衆院選で歴史的圧勝を収めた与党・高市政権が内外の懸案に真正面から取り組んでいるのかどうか、特に政治課題の優先順位などの判断が適切になされているか見極めていく必要がある。(了)

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“食料品 消費税1%案”の見方・読み方

国会は、中東情勢への対応に備えて予備費を増額するなど総額3兆円余りの補正予算が5日、参議院本会議で自民・維新の与党と国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。

一方、衆議院選挙で自民党が公約に掲げた食料品の消費税減税について、政府内ではレジの改修にかかる時間を短縮し、早期に実施するために消費税率をゼロではなく、「1%」として来年4月から実施する案が浮上している。

高市首相は、与野党と政府で作っている「国民会議」で議論がまとまれば、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出する考えを表明した。この食料品の消費税率1%案は効果が期待できるのかどうか、高市政権の今後の政権運営にどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみたい。

食料品 消費税1%・来年4月実施案

今年2月の衆議院選挙で争点の1つになった食料品の消費税減税と給付付き税額控除をめぐっては、政府と与野党で作っている「国民会議」で議論が続いている。

このうち、食料品の消費減税についてはレジの改修期間が問題になり、経済産業省が関係業界から聞き取り調査を行った。その結果、自民党の公約通り消費税率をゼロとした場合、レジの改修期間が「最大10か月から1年程度」かかる一方、1%であれば「最大5~6か月程度」と半分程度で済むことがわかった。

このため、政府内では食料品を対象にした2年限定の消費税を行う場合、税率は「1%」とし、来年4月から実施する案が有力になっている。

この問題は4日の衆院予算委員会で取り上げられ、高市首相は「国民会議で結論が出れば次の国会で、できるだけ早く法案を出したい」とのべ、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出したいとの考えを表明した。

高市首相は具体的な税率や実施時期については「私は結論を先取りはしない」と明言を避けたが、国民会議の議論を踏まえて6月下旬に判断を示す見通しだ。

 1%案とりまとめ 野党の対応が焦点

政府内で食料品の消費税1%案が検討されていることについて、野党側は「国民会議では給付付き税額控除を中心に議論しており、消費税減税についてはほとんど議論されていない」として、政府側の対応に強く反発している。

このうち国民民主党は、賃金上昇率が物価上昇率プラス2%に安定するまで消費税を5%に減税すべきという方針で、食料品に限った消費税減税には否定的な立場をとっている。そして、住民税の控除と社会保険料の還付で手取りを増やすよう求めている。

中道改革連合は、衆院選では恒久的な食料品の消費税率ゼロを掲げたほか、立憲民主党は「原則1年間ゼロ」、公明党は「恒久的な引き下げ」を訴えた。このように中道など3党は食料品の消費減税には賛成だが、終盤国会で高市政権と対決姿勢を強めるねらいもあって、最終的な方針をまだ決めかねている。

チームみらいは野党で唯一、衆院選でも消費税減税を掲げておらず、代わって年収に応じて現金を給付する「所得連動型給付」を行うべきだと主張している。一方、日本保守党は、消費税1%を認める方針だ。

このように国民会議に参加している野党のほとんどは、消費税1%案には反対か、態度を決めていないため、国民会議の意見のとりまとめがどのような内容になるか見通しはついていない。

衆議院は与党が圧倒的多数を占めるが、参議院では与党は過半数に達していない。このため、野党から消費税1%案を許容する党が出てくるのかどうかも焦点だ。

減税と給付の制度設計・優先順位がカギ

食料品の消費税減税については具体的な制度設計に加えて、「給付付き税額控除」との関係をどうするかといった問題を抱えている。高市政権は食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにした後、「給付付き税額控除」を本丸と位置づけて導入するのを基本方針にしている。

ただ、消費税率を今の8%からゼロ、または1%に引き下げたとしても、その効果が価格の引き下げにつながるか疑問だとする指摘がある。原材料費や運送費など他の費目の価格上昇が影響するからだ。

また、小規模の農家では、肥料や資材などの消費税額を農家が一時的に負担したり、消費税分の収入が減ったりする事態が予想されるほか、外食産業では利用者が減るのではないかと懸念されている。

さらに消費減税を2年限定で行った後、元の税率に戻せるのかという問題や、4兆円から5兆円程度は必要とされる財源をどのように確保するのかといったさまざまなな問題が残されている。

このため、「国民会議」の中からも消費税減税を取り止めて、本丸の「給付付き税額控除」ついて、低・中所得層への給付から先行させる案も出されている。

一方、自民党内では元々、社会保障の主要財源になっている消費税の税率を引き下げることに慎重な意見が根強くあるほか、幹部の中からは「さまざまな問題を抱える制度設計を誰が中心になって取りまとめるのかがはっきりしない」として政府・与党の態勢が整っていないことを不安視する声も聞かれる。

このように食料品の消費税減税や「給付付き税額控除」をめぐっては、それぞれの制度の具体的な内容をはじめ、優先順位やタイムスケジュールをどのように設定するのか詰めるべき問題は多く、紆余曲折が予想される。

世論の評価、政権の運営にも影響

それでは国民は、食料品の消費税減税などをどのようにみているだろうか。NHKの世論調査によると▲衆院選直後の2月調査では、消費税減税に「賛成」が57%、「反対」が30%、「わからない・無回答」が14%だった。

食料品の消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの質問には◇「ある」が47%、◇「ない」が46%と評価が分かれた。

▲3月調査で「給付付き税額控除」の導入については「賛成」が47%、「反対」が35%、「わからない・無回答」が18%だった。

▲5月調査で、消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの設問については「ある」が40%で、「ない」が53%だった。2月調査に比べると、消費税減税の効果については否定的な評価が増えて、肯定的な評価を上回った。

また、レジのシステム改修に1年ほどかかるとされるが、どのようにすべきか3つの選択肢から選んでももらった。◇「時間がかかっても税率ゼロを実現すべき」は18%、◇「早く減税できるなら、ゼロでなくてもよい」が48%、◇「減税する必要はない」が25%だった。

以上のデータから、国民の多くは食料品の消費税減税には賛成が多い一方で、減税の効果や税率については一つの方向に集約されるまでには至っていないようにみえる。 (★NHK世論調査6月のデータは文末に追記)

一方、高市首相は「食料品の消費税2年間ゼロの構想を『私自身の悲願』」と強調してきただけに減税の実施に道筋をつけ、来年春の統一地方選挙や、再来年の自民党総裁選挙の乗り切りにつなげる戦略とみられる。

高市首相はこのところ、総裁選や衆院選での自らの陣営の中傷動画問題で野党の追及を受けている。高市首相がこの問題と懸案の消費税減税に結論を出して、世論の支持を得られるのかどうか。その結果は、高市内閣の支持率や今後の政権運営にも大きな影響を及ぼすとみて注目している。(了)

★追記(6月8日21時)=NHK世論調査6月(5~7日実施)で、食料品の消費減税をめぐって、政府・与党内で「来年4月から1%に引き下げる案も検討されている」について、どう思うかを聞いた。「時間がかかっても税率ゼロにすべきだ」が22%、「来年4月から1%に引き下げるべきだ」が40%、「減税する必要はない」が31%だった。早期実施の答えと、減税の必要ないとの答えの差が縮まっている。

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高市政権 ”補正予算案とナフサ不安”への対応

高市首相は25日、中東情勢を受けた物価高に対応するため、7月から9月の電気・ガス料金の支援を実施するとともに、3兆円余りの補正予算案を編成する考えを記者団に明らかにした。

このうち、電気・ガス料金の支援については26日の閣議で、今年度の当初予算の予備費から5135億円支出することを決めた。補正予算案については今後、編成作業を進め、6月第1週に国会に提出する方針だが、電気・ガス料金とガソリン価格への支援継続が主な内容になる。

経済界などからは、石油を精製して作るナフサと石油関連製品の品不足に加えて、石油関連製品の価格高騰を懸念する声が広がっている。これに対して政府は、原油やナフサ、それに石油関連製品の供給は年を越えても継続できるとしており、双方の認識にズレがある。

一方、私たち国民にとって6月は、ナフサ不足による影響で包装用資材など生活用品の値上げが相次ぐほか、納豆・即席麺・食用油・缶詰など食料品の数多くの品目で値上げの波が押し寄せる。

高市政権の今回の補正予算案は、こうした石油関連製品や食料品などの値上げに対して、国民生活を守るために有効な対応策を盛り込んでいるのか点検してみたい。

補正予算 電気・ガスとガソリン支援が柱

まず、新年度の補正予算案の内容を確認しておきたい。政府は、中東情勢の長期化に伴うエネルギー価格上昇に対応するため、電気・ガス料金について、標準家庭で7月から9月までの3か月の合計で5000円程度を支援する方針だ。この財源は、今年度当初予算の予備費から5000億円を充てる。

また、3兆円余りの補正予算案を編成し「中東情勢等対応予備費」を創設するとともに、ガソリン価格を抑制するため、現在行っている支援策を継続する方針だ。

さらに、プロパンガス利用者を支援するため、重点支援地方交付金も追加する方針だ。つまり今回の補正予算案は、電気・ガス料金、ガソリン価格、プロパンガス料金の3つの支援が主な柱になっている。

財源については、赤字国債を追加発行するが、予定していた今年度の赤字国債のうち、税収や税外収入の増加で3兆円分が発行不要となる見通しのため、総額は増やさずに対応できるとしている。

一方、中東情勢による原材料不足が懸念されている原油については、6月のホルムズ海峡を経由しない代替調達の見通しが8割程度まで上がっているため、「来年春までの安定供給が確保できる見通し」だとしている。

注目のナフサについても中東以外からの代替調達が回復しており、ナフサ由来の石油関連製品についても「年を越えて供給継続が可能だ」としている。

一方、過度な懸念による買いだめや売り惜しみが現場で発生し「目詰まり」が起きているのも事実だが、政府がきめ細かく対策を進め、混乱の回避に全力で取り組むと強調している。

ナフサ不足、石油製品の価格高騰に不安

イラン情勢の混迷が長引くにつれて企業や生産現場からは、製品の原料となるナフサの不足を訴える声が相次いでいる。原油を精製してできるナフサを経由して、さまざまな製品が作られる過程は多岐にわたる。

ナフサ由来のプラスチックや塗料、合成ゴムなどを基に、包装資材やインク、衣類、洗剤などの商品ができていく。先日、食品メーカーのカルビーが「ポテトチップス」などの包装を、カラー印刷から白黒印刷に変える発表があり、石油関連製品のひっ迫状況を認識させられた。

また、さまざまな生産現場から、原材料の品不足や価格の急騰で、生産ができなくなるのではないかといった不安や、経営の見通しが立たないなど深刻な声を聞く。

政府は「ナフサや石油関連製品は年を越えても確保できる」と繰り返し強調するが、企業や生産現場との認識のズレは大きい。

値上げラッシュ、経済のかじ取りが焦点

さらに6月は、食料品の値上げが相次ぐ見通しだ。以前からの値上げの予定に加えて、ナフサ不足の影響が広がり、包装用資材の値上がりによって商品本体が値上げとなるケースもある。例えば納豆、パン、菓子類などだ。

こうした包装用資材の値上げも含めて、6月は日常生活でよく購入する納豆、即席麺、スナック菓子、食用油、缶詰など値上げラッシュとなる見込みだ。これに加えて、電気・ガス料金も値上げされる。

政府の電気・ガス料金の支援によって家計は助かるのは事実だが、電気・ガス料金の支援は富裕層を含め一律で行われる。一方、子育て中の世帯のうち、特に低所得の世帯では夏休みで学校給食がないことは負担が重くのしかかる。

電気・ガス料金の一律支援は止めて、低所得や中所得層に対象を絞って現金給付を行うなどの工夫が必要だとの指摘もある。

また、政府が続けているガソリン価格の抑制に補助を行う政策については、原油不足の事態に逆行していることに加えて、1か月に5000億円もの巨額な費用がかかる。このため、与党や野党の一部からはガソリン補助の縮小や、資源の節約を呼びかけるなど新た取り組みが必要だといった意見が出ている。

さらに補正予算の財源として赤字国債が発行されることに関連して、財政の信頼性をどのように確保していくかも論点になっている。高市政権は、食料品の消費税率を2年間ゼロにする案の導入を検討しているが、財源確保のめどが立たない場合は、こうした案の見送りも検討すべきだといった指摘も聞かれる。

このように補正予算案をめぐる論点は多い。このうち、ガソリン価格への支援について高市首相は「物価動向や経済に与える影響を注視しながら、必要な検討を進めていく」との考えを示している。

一方、ガソリンや資源などの節約の呼びかけなどについて、高市首相は「経済活動にブレーキをかけるような踏み込んだ節約を要請する段階にはない」と慎重な姿勢を示している。

「強い経済」や「責任ある積極財政」を掲げる高市首相としては、節約などの動きで経済活動にマイナスの影響が出ることを強く警戒しているものとみられる。

一方、石油関連製品の不足や価格高騰が長期化する事態に備えて、日本経済をどのように運営していくのかといった観点からの議論も必要だ。補正予算案の審議にあたっては、高市首相が経済・財政運営の基本方針を明確に打ち出し、与野党との間で掘り下げた議論を行ってもらいたい。(了)

★追記(5月29日21時)民間の調査会社「帝国データバンク」の調査によると6月に値上げが予定されている食品は1078品目にのぼることがわかった。1000品目を超えるのは今年4月以来か2か月ぶりで、調味料や納豆、即席めんなどが中心。値上げの理由は原材料価格の上昇のほか、中東情勢に伴うナフサ不足の影響で、包装用資材の値上げも広がっている。7月の値上げは2269品目と値上げラッシュがさらに続く見通し。

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後半国会 ”イラン情勢と外交・経済対応”が焦点

大型連休が終わって国会は、衆議院を通過した国家情報局設置法案の審議が8日、参議院本会議で審議が始まった。また、裁判のやり直しの制度を見直す法案の国会提出に向けて、自民党内で条文の調整が続いているほか、衆議院では防災庁設置法案など重要法案の審議も本格化する見通しだ。

後半国会ではこうした重要法案をめぐって、与野党の審議と攻防が活発になる。一方、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃のゆくえと、原油や石油関連製品の供給不足や価格高騰がどうなるのか、各国にとって最大の関心事項だ。

原油輸入の9割を中東に依存している日本にとって、イラン情勢の緊張が長期化した場合、石油関連製品の高騰が続き、企業や産業、国民生活に大きな影響が避けられない。

このためイラン情勢によって、後半国会の展開はガラリと変わり、高市政権も新たな対応を迫られる。その後半国会で高市政権は、具体的にどのような点が問われることになるのか探ってみたい。

イラン情勢、経済・暮らしに影響広がる

さっそく、イラン情勢からみていきたい。アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は合意が近いとの見方が伝えられるが、ホルムズ海峡の開放やイランの核濃縮の扱いをめぐって双方の主張には隔たりがあり、先行きは不透明な状況が続いている。

日本政府は、備蓄原油の2回目の放出を5月1日に行ったほか、ホルムズ海峡以外からの原油調達を進めている。その結果、原油や、原油を精製してつくるナフサの供給は「年を越えて継続できる見込みとなった」と盛んにアピールしている。

こうした一方で、国内では原油やナフサの供給不安による影響がさまざまな分野で広がっている。ナフサはプラスチック製の資材や医療機器、食品の包装、ゴム製品など幅広い用途に使われているため、さまざまな業界で「物が手に入らない」との悲鳴が上がっている。

イラン情勢の悪化が長期化すれば、石油関連製品の品不足が深刻化するほか、夏から秋にかけて価格高騰の波が押し寄せ、国民生活がさらに圧迫される事態も予想される。

強い経済路線、高市首相 節約に消極的

こうしたイラン情勢の悪化に伴う石油関連製品の不安や価格高騰を受けて、与野党からは、原油価格高騰対策を盛り込んだ補正予算案を早期に編成すべきだという意見が相次いでいる。

これに対して高市首相は、原油は備蓄の放出と調達先の多角化で、原油とナフサ、石油関連製品についても「年を越えて供給を維持できる」と強調している。

補正予算案についても「今年度予算の予備費が活用できる」として、現時点では補正予算案の編成は必要な状況ではないとの考えを示している。

さらに与野党から「中東情勢の長期化に備えて、エネルギーの節約など需要抑制を呼びかけてはどうか」との提案が出されているが、高市首相は「あらゆる可能性を排除せず、臨機応変に対応していく」として、明確な態度表明を避けている。

高市首相は「強い経済」を掲げて高い支持率を維持してきたことから、景気に冷や水を浴びせかねない節約の要請は避けたいというのが本音だとみられる。

野党各党は連休明けに再び、原油高騰を受けた経済対策を盛り込んだ補正予算案編成の要求を強める構えだ。国民民主党は、中低所得者層を対象に5万円の給付や電気・ガス料金の負担軽減などを求めていく方針で、高市首相の対応が注目される。

6月に懸案集中、決断迫られる高市首相

それでは、これからの政治の動きはどのような展開になるだろうか。外交面では、今月14日から2日間の日程で、トランプ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と米中首脳会談を行う。米中の貿易・経済関係や台湾問題、それに中東情勢についても意見が交わされる見通しで、各国の外交政策に多大な影響を及ぼす。

また、6月15日から3日間の日程でG7=主要国首脳会議がフランスで開かれる。ホルムズ海峡の航行をめぐっては、アメリカと、イギリス・フランスなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ安全航行の枠組みづくりを進めている。米欧の間で日本はどのような役割を果たすのか高市首相の外交手腕が試される。

一方、内政では6月には、政治判断を伴う重要な懸案が相次ぐ。まず、高市首相が「悲願」と位置づける「食料品の消費税率ゼロ」について、国民会議が6月に「中間とりまとめ」を行う予定だ。国民会議では有識者や与野党から、レジの改修などの実務的な問題点が数多く指摘され、消費減税には慎重論や反対論が強まっている。

高市首相は衆院選で公約した政策であることから、当初の方針通り消費税率ゼロの方針を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案の提出をめざす考えとみられる。こうした高市首相の方針と国民会議の議論にはズレが目立っており、調整力が問われる。

また、国民会議との関係では中低所得者層の負担軽減を図る「給付付き税額控除」の扱いも問題で、食料品の消費税率ゼロ政策と合わせてどのようなタイムスケジュールで実施していくかも焦点だ。

さらに、6月は高市内閣にとって初めての中長期の経済・財政の方針となる「骨太方針」を決定する予定だ。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、給付付き税額控除や防衛力の抜本強化を実現するための財源を含めて、説得力のある将来像を提示できるかが問われる。

こうした懸案に加えて、イラン情勢の緊迫化に伴う補正予算案を編成するか否かの問題を抱えている。今の国会の会期末は7月中旬であり、これから6月にかけて判断をせまられる。このように6月には、数多くの重要な政治課題が押し寄せる見通しだ。

その際、物価高騰対策の補正予算に踏み切る場合、与党内からは「食料品の消費減税は取り止めて、給付付き税額控除先行に切り替えるべきだ」といった意見も出されている。

これに対して、自民党の閣僚経験者は「高市首相は、選挙公約を取り下げるような選択はしないのではないか」との見方をしており、主要政策の調整が問題になる見通しだ。

高市政権は政権発足から半年が経過しても高い支持率を維持しているが、外交面では、日本経済にとって死活的に重要な「ホルムズ海峡の安全航行」をどのように実現していくのか、高市政権の外交力が厳しく問われることになる。

また、内政面では、イラン情勢に伴う石油関連製品の価格高騰対策など当面の対応策と、中長期の主要政策についても優先順位をつけながら決定できるのかどうか、高市政権は正念場を迎えている。(了)

★追記(5月11日21時)高市首相は11日の参院決算委員会で「日本全体として、原油も石油関連製品も必要な量は確保できている」として、現時点で国民に対し踏み込んだ節約を呼びかける段階ではないという考えを示した。また、現時点では補正予算案の編成は必要ではないという認識を示した。

★追記(5月18日21時)中東情勢を受けて、高市首相は18日に開かれた政府与党連絡会議で、今年度の補正予算案の編成を含め、検討を行うよう片山財務相に指示したことを明らかにした。また、与党に対し、今年7月から9月までの電気・ガス料金の支援策をまとめるよう要請した。

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高市内閣 発足半年 ”経済・イラン情勢対応”がカギ

高市内閣が発足してから、今月21日で半年を迎えた。内閣発足当初は衆参両院とも与党は過半数割れしていたが、2月の衆院選挙で自民党単独で3分の2を上回る316議席を獲得して圧勝を収めた。内閣支持率も発足から半年経った今も60%台と異例の高い水準を維持している。

今の国会では、新年度予算は暫定予算を経て、短期間で成立にこぎ着けた。高市首相肝いりの「国家情報会議の設置法案」などの重要法案も審議が順調に続いている。

高市政権のこれからの政権運営はどのようになるのだろうか。ポイントは、衆院選で掲げた食料品の消費税率ゼロなどの経済政策と、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が沈静化に向かうのかどうか、先行きが読めない中での対応になる。今後の政治の展開を探ってみたい。

発足半年でも高支持率、安倍政権以来

去年10月21日に発足した高市内閣は、去年12月に補正予算を成立させたのに続いて、今月7日には新年度予算を成立させた。但し、高市首相は新年度予算案の年度内成立にこだわり、衆院では強引な審議を押し通したが、野党多数の参院では跳ね返されて年度内成立を断念し、批判をあびた。

一方、外交面では2度にわたって日米首脳会談を行い、トランプ大統領と信頼関係を強める一方、台湾有事をめぐる存立危機事態の国会答弁で、中国側の反発を招き日中関係は悪化した状態が続いている。

政権発足から半年、国民は高市政権の政権運営をどのようにみているか、NHKの4月の世論調査(10~11日実施)によると次のようになっている。

高市内閣の支持率は61%に対し、不支持率は22%だった。内閣発足時の支持率は66%で、3月に59%に下がったが、4月に再び60%台に戻した。読売新聞の調査(17~19日)では支持率は66%、朝日新聞の調査(18・19日)では支持率は64%で、いずれも高い水準を保っている。

このように内閣発足時の高い支持率を半年後も保っているのは、2012年に発足した第2次安倍内閣を除けば、それ以降で初めてのケースだ。安倍内閣の場合、発足時が64%で、半年後も62%で高い水準を維持した。

その後の歴代内閣の発足時と半年後の支持率はそれぞれ次のようなデータだ。◇菅内閣62%⇒40%、◇岸田内閣49%⇒53%、◇石破内閣44%⇒35%。

支持率が高い政権の場合、50%を割り込むのがいつになるのかを政界関係者は注目するが、安倍政権の場合は、政権発足から1年7か月後だった。

安倍、高市両政権を単純に比較できないが、高市政権の支持率が高いのは、初の女性首相という効果と期待値によるところが大きいとみられる。ただ、内閣支持率はどの政権でもいずれ下降に転じる。下降局面がいつになるのか不明だが、50%ラインを割り込むと、政治・政局が動き出す一つの目安になる。

今国会、政府提出法案の多くが成立か

さて、新年度予算が成立した後の後半国会はどのように展開するだろうか。衆議院の与野党が最も重視し、首相の出席を求めて法案の趣旨説明などを行う「重要広範議案」には、次の4つの法案が決まった。

◇政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能を強化する「国家情報会議」設置法案、◇「防災庁」の設置法案、◇市販の「OTC類似薬」で患者に追加負担を求める健康保険法改正案、◇再審制度見直しの刑事訴訟法改正案の4法案だ。

このうち再審制度見直し法案を除いて、いずれも衆院で審議が始まっており、特に高市首相が「国論を二分する政策」として重視している「国家情報会議」設置法案について、与党側は今週24日までの衆院通過をめざしている。

このほか、この国会では連立を組んでいる維新が重視している◇副首都構想法案、◇衆議院議員の定数を削減する法案、◇日本国旗の損壊罪を制定する法案の提出が予定されている。

衆院は与党が圧倒的多数の議席を確保していることから、多くの法案の審議が与党ペースで進む見通しだ。

一方、参院では野党が多数を占めていることから、与党側がどこまで丁寧に審議を働きかけ、野党の理解を得て成立にまでこぎ着けられるかが焦点になる。今国会の会期末は7月17日と時間的な余裕があるので、与野党対決法案を除いて、かなりの数の政府提出法案が成立する可能性が大きい。

夏から秋、経済・外交への対応がカギ

高市首相にとって難題は、自ら「私の悲願」と位置づける食料品の消費税率ゼロと「給付付き税額控除」の政策をどのような道筋で実現にこぎ着けられるかだ。

食料品の消費減税について、有識者と与野党で構成する「国民会議」で議論が進められている。高市首相は6月に中間報告を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出し、2026年度中の実施に言及したこともある。

これに対し、「国民会議」の関係者や野党側から「消費税減税は、どこまで食料品の値下がりにつながるかわからない」「外食産業や農業などへの影響や問題点が多すぎる」など慎重論や反対論も相次いでいる。

自民党の幹部の一人は「高市首相は衆院選の公約として掲げたこともあり、規定方針通り突き進む可能性の方が大きいのではないか」との見方を示している。

一方、イラン情勢の悪化に伴う原油の確保について、政府は「ホルムズ海峡を通らない代替ルートで原油の調達が進み、年明けまで必要な量を確保できるメドがついた」と強調しているほか、流通の目詰まりへの対策も強化していると説明している。

問題は、石油関連製品などの価格高騰への対応だ。自民党内からは「原油の量は確保できても、原油価格の高騰や石油関連製品の値上げは確実で、中小企業や農林水産業など幅広い分野に影響が出ることが予想される」として、補正予算の編成を急ぐべきだとの意見が広がり始めた。

このようにこの夏から秋にかけては、国会終盤での重要法案をめぐる与野党の攻防と、高市首相肝いりの食料品の消費減税などの重要政策の制度設計、それにイラン情勢の影響が長期化した場合の対応が重なる事態が予想される。

その際、高市首相は内政と外交全般にわたって、どこまで指導力を発揮することができるのか。また、首相官邸と自民党との意見調整と連携がうまく機能するのかが焦点になる。その結果によっては、国民の高市政権に対する評価に変化が予想され、この二つの焦点が政治のゆくえを読むうえで大きなポイントになるとの見方をしている。(了)

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後半国会 ”高市カラー法案”続々、足元に不安も

国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。

一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。

イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。

重要法案審議入り、野党の協力がカギ

後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。

また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。

さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。

日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。

このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。

こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。

衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。

このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。

高市首相と自民に溝、相互不信の芽も

高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。

具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。

こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。

また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。

こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。

高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。

後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。

イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も

ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。

一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。

さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。

このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。

13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。

イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)

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