3党の合流断念 ”野党 多弱化と険しい再建の道”

中道改革連合、立憲民主党、公明党の3党党首が31日夕方、国会内で会談し、これまで進めてきた3党の合流を断念することを確認した。

これを受けて、衆議院議員で構成する中道改革連合は、立憲民主党系と公明系に分裂する見通しで、分党など具体的な方法の検討に入った。

中道の小川代表は会談後の記者会見で「中道勢力の拡大と政権交代に向けて党に集まった仲間が再軌道していくための新たな形態を見いだしたい」として、衆議院での統一会派の結成をめざすを示した。

秋の臨時国会を前に衆議院の野党第1党である中道が分裂すると、野党の多党化と弱体化がさらに進む。私たち国民は、こうした野党の現状と政治のあり方をどのようにみたらいいのか考えてみたい。

衆院選1千万票の重みと政党の責任

中道、立憲民主、公明の3党代表は党首会談終了後に記者会見に応じたが、3党の代表の発言内容に納得した国民は少なかったのではないか。

中道の小川代表は、その後の会見も含めて記者団から「これからめざす新たな形態とは何か」「衆院の統一会派は実現可能か」などの質問に対して、「今の体制のままではない。具体的なことは申し上げられない」との説明を繰り返した。

立憲民主党の水岡代表は「3党の協力・連携のスタートにしたい」とのべたほか、公明党の竹谷代表は「中道の対応を見守りたい」などとのべるに止まった。3党合流が頓挫した後、それぞれの党がどのような方向に踏み出すのかを聞きたかったが、3党の代表からは踏み込んだ言及はなかった。

中道改革連合は、中道勢力の結集と政権交代を掲げて先の衆院選に挑戦したが、選挙前の172議席から49議席へ激減・惨敗した。だが、比例代表選挙でみると1043万票を獲得した。自民党の2102万票次いで、2番目に多い得票だ。中道に1票を投じた有権者の思いにどのように応えるのか政治家の責任は極めて重い。

また、新党結成から衆院選を経てわずか7か月で瓦解することになったことは、政党として国民の期待に応えることができず、国民の政治に対する不信感を一段と強めたことも重く受け止める必要がある。

少数野党分立と野党弱体化の加速

それでは野党の陣営は今後、どのようになるのだろうか。まず、今の衆議院の勢力は野党第1党が中道で49人、次いで国民民主28人、参政15人、みらい11人、共産4人などとなっている。

中道が分かれると公明系が28人、立憲民主党系11人となる。野党第1党は、国民民主と公明となるが、いずれも30人を下回る小規模野党第1党だ。これまで想定していなかったような少数野党の分立国会となる。

自民党は316議席、単独で衆議院の3分の2を上回り、戦後最も多くの議席を獲得した。連立を組む維新は36人で、与党の自民・維新で352人と全体の4分の3を占める。衆議院は「自民1強・弱小野党」の構図が一段と進むことになる。

中道の小川代表は、将来の中道勢力の結集と衆院で野党第1会派をめざして、公明系などと合わせて統一会派の結成をめざしている。公明党は参議院では立憲民主党との統一会派の結成に応じなかったが、衆議院ではどのような方針で臨むか、注目される。

参議院は衆議院と異なり、自民党は101人で、維新の19人を合わせても120人に止まり、総定数248の過半数に達しない。これに対して、野党は立憲民主が40人、国民民主25人、公明21人、参政15人、共産7人、いのち5人、保守2人、みらい2人などと続く。

衆院は巨大与党、参議院は与党過半数割れで、「衆参ねじれ国会」となっているが、3党合流断念をとらえて自民党が今後、参院で多数派工作などを強めることが予想される。

政権監視の”しっかりした野党”が必要

これからの政権と野党はどのような役割が求められるのだろうか。国民の考え方も、強い政権が思い切った政策を次々に断行する政治を期待する人もいるだろうし、支持する野党を中心に政権交代を望む人もいるだろう。

ただ、国民の考え方は多様化していることと、どの政党が政権を握るようになっても公正な政治を進めるためには、政権を監視し政策をチェックする野党が必要だ。そうした野党がいない場合、強力な政権ができたとしても次第に緩みが生じて、国民の期待に反するような政治に逸脱するおそれもある。

今回は中道勢力を結集する試みは失敗したが、政権や政策をチェックする野党の必要性とは別の問題だ。政権監視などができる、しっかりした野党の存在は必要だ。そして政権交代可能な政治体制についても必要と考える国民は多いのではないか。そのための野党勢力の結集が問われているということだろう。

さて、衆議院では中道が分裂した場合、公明系の議員は公明党に復党する可能性が大きいとみられる。その場合、公明党が与野党のどの政党と連携を深めていくのか、今後のカギを握る。

一方、中道の立憲民主系の議員は、新党を結成することになるのか、あるいは離党する議員が出てくるのかどうか、さらには落選中の議員がどの程度参加するかも問われる。

野党の陣営は、中道や国民民主、公明、参政、共産など各党が乱立し、それぞれ党の理念と独自の政策を主張し合う中で、野党の勢力が小異を残して大同につくことができるのか、野党勢力の結集や再建は険しい道が予想される。

一方、高市政権にとっては、中道の分裂は野党勢力に楔を打ち込むことができ、有利に働くものとみられる。高市首相は秋の臨時国会で、悲願の食料品の消費税率を1%に引き下げる法案を成立させるとともに、「責任ある積極財政」などを掲げて、高市カラーの濃い政策を強力に展開していくものとみられる。

これに対して野党陣営は、消費減税などに対案をまとめて対峙していくことになるのか、それとも野党陣営が切り崩されて守勢に回ることになるのか。秋の政治は、経済・財政の動向とも絡んで、複雑で波乱含み展開になるのではないかと予想している。(了)

★追記(3日13時)内閣改造と自民党役員人事は今月中旬にも行われるとの見方が自民党内で強まっている。政府・与党は食料品の消費税率を1%に引き下げる制度設計を進めているが、これを実施するための税制改正大綱が15日までに閣議決定されれば、高市首相は直後に内閣改造と自民党役人事を行うとの見方。このうち、党役員人事では麻生副総裁と鈴木幹事長を続投させるかどうかが焦点。内閣改造では、維新から新たに閣僚を起用するものとみられている。

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秋の政局 “消費減税法案がカギ 高市政権”

高市政権は今年2月の衆院選挙で圧勝し、長丁場の特別国会を終えたが、報道各社の世論調査によると7月半ばに内閣支持率が急落した。8月に入っても横ばいか、低下が続いており、支持率の下落傾向に歯止めがかかっていない。

高市政権は去年秋の発足から間もなく1年を迎えることから、高市首相は9月中旬以降にも初めての内閣改造・自民党役員人事を行う見通しだ。秋の政治はどこかポイントになり、どのような展開になるのか、探ってみたい。

秋の日程、臨時国会と外交・安保2本柱

まず、秋の政治日程から見ていきたい。2つ大きな柱があり、1つは臨時国会の召集だ。その臨時国会への対応と来年秋の自民党総裁選挙をにらんで、高市首相は9月に内閣改造・自民党役員人事に踏み切る見通しだ。また、衆院選挙の公約に掲げた食料品の消費減税の関連法案を国会に提出し、成立をめざす方針だ。

2つ目は外交で、9月22日から秋の国連総会がニューヨークで開幕し、各国首脳の演説が行われる。11月にはAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で、12月にはG20サミットがアメリカのマイアミでそれぞれ開かれる。

11月3日はアメリカの中間選挙の投開票日で、結果はトランプ政権の命運を左右するだけでなく、日本を含む世界の経済・外交関係に大きな影響を及ぼす。一連の外交日程の中で米中首脳会談が行われるほか、高市首相にとっても緊張関係が続く中国の習近平主席との首脳会談が行われるかどうかなど注目点は多い。さらに年末には日本の安全保障三文書の改定と防衛力整備の問題が控えている。

臨時国会の具体的な召集日などは調整中だが、高市首相は9月22日開会の国連総会に出席するとみられることから、内閣改造などの人事は出発前の9月中旬以降、臨時国会は帰国後の9月下旬以降に召集する方向で検討しているものとみられる。

内閣改造、自民党の幹事長人事が焦点

さて、高市首相は内閣改造と自民党役員人事について、具体的な人事構想を周辺にも明らかにしていないが、与党の関係者は「自民党の党運営の要である鈴木幹事長を続投させるのかどうかが最大の焦点」との見方をしている。

また、内閣改造では閣外協力の日本維新の会から閣僚を起用するほか、去年の自民党総裁選を争った小泉、林、小林、茂木の各氏を引き続き閣内や党役員として処遇するのか否かも焦点だ。

このうち、自民党役員人事をめぐって高市首相は、麻生副総裁の義理の弟である鈴木幹事長を交代させ、旧安倍派の萩生田幹事長代行を据えたいとの見方が取り沙汰されている。

これに対して麻生副総裁は、鈴木幹事長の続投を強く求めているとされる。政府や自民党関係者の間では「幹事長を交代させた場合、高市・麻生関係に亀裂が入り、政権運営にも支障が出てくる」として鈴木氏続投の見方が強い一方、「高市首相は自らの考えを貫くのではないか」との見方もある。

自民党長老は「今の党内をみていると肝心なことは高市総理・総裁が独りで決めており、周囲があれこれ言っても意味がない」と語る。高市首相は25日、麻生副総裁と首相官邸で昼食をともにしたが、こうした会談以外の人事情報は、ほとんどが憶測の域を出ないとみてよさそうだ。

消費減税法案がカギ、財源含め論戦へ

それでは、秋以降の政治に大きな影響を及ぼすのは何かと言えば、食料品の消費減税法案の扱いだろう。

政府や8月5日の臨時閣議で、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げるなどした基本方針を決定した。これに合わせて、中低所得層に1%相当分を給付することで、実質ゼロを実現するとしている。

政府は、与党で食料品の消費減税を盛り込んだ税制改正大綱をまとめるのを受けて、必要な法案を秋の臨時国会に提出し、早期の成立をめざす方針だ。

この消費減税法案に対して野党側は「食料品に限定した減税の効果には疑問があるほか、農家や外食産業に多大な負担が生じる」として反対する姿勢を変えていない。自民党内にも「財源のめどがついていない」として慎重論も依然として残っている。

このため、秋の臨時国会では消費減税法案をめぐって与野党の意見が真っ向から対立する見通しだ。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案が成立するのかどうか見通しは立っていない。仮に参議院で法案が否決されたりした場合、衆議院に回付して3分の2以上の賛成多数で再可決することもありうるとの見方もある。

政府が、社会保障の財源となっている消費税率を引き下げるのは今回が初めてで、5兆円程度の財源をどのように確保するのかはっきりしない。新年度予算の財源としては、高市首相が重視する危機管理投資や成長戦略投資、さらには防衛力強化のための財源と合わせて、どのように確保するかは難題だ。

一方、秋に向けて石油由来の化学製品の値上げや、円安に伴う輸入物価の値上がりにどのような対策をとるのか、高市政権の経済・財政運営の在り方を含めて激しい論戦が交わされる見通しだ。国会審議を通じて、政府が説得力のある説明をできるかどうか、法案の成否を左右することになりそうだ。

税は鬼門、試される首相の政権運営能力

2月の衆院選挙で自民党は戦後最も多い316議席を獲得し、歴史的圧勝を収めたが、税制は政権にとって鬼門だ。これまでも衆院選挙で圧勝したケースとして、中曽根、小泉、鳩山、第2次安倍の各政権と高市政権がある。

圧勝した政権は、選挙後の政権運営も順調に運んだケースもあるが、失敗に終わったケースもある。高市政権のケースを考える際、参考になるのは中曽根政権のケースだ。

中曽根政権は昭和61年、衆参ダブル選挙で300議席を獲得し、その功績で自民党の総裁任期が1年延長となり、絶頂期を迎えた。政権後半の政治目標に売上税導入を打ち出し、法案を閣議決定、国会提出へと突き進んだ。

ところが、野党の反対に加えて、足元の自民党内、小売店などの関係団体にも反対が広がり、内閣支持率は急落、統一地方選にも敗北、ついに法案は廃案に追い込まれ失敗した。

高市政権とは法案の内容も異なるし、中曽根政権は増税に対し、高市政権は減税という違いもある。だが、税制は影響を受ける様々な業界・団体の利害調整、自らの党内はもちろん、野党への働きかけ、国民への説明や説得など地道な努力を幅広く展開する必要がある。政権全体の総合的な調整力や実行力が必要だ。

中曽根首相は元々、派手な雄弁で鳴らし、サミットなどの国際舞台で存在感をアピールするタイプの政治家だ。税制など地味な仕事は不得手だったことも影響したのではないか。

さて、高市首相はどのように対応するだろうか。これまでの活動をみると選挙の街頭演説などは得意のようだが、国会での質疑や国民に向けた記者会見などは好きではないように見える。

また、税制や財政も得意分野とは言えないようだ。首相はすべての分野に精通している必要はない。政権の最高責任者として、それぞれの分野に優秀な人材を配置し、指揮・調整していけばよい。それだけに9月に行われる予定の内閣改造と自民党役員人事でどのような布陣にするかが大きなポイントだ。

内閣と与党の人事から、臨時国会へと首相の政権運営能力が試されることになる。具体的には、首相官邸と自民・維新の与党側との調整、次に参院自民党との連携、それに霞ヶ関の官僚とも連携を図り、法案や政策が実行できるかが問われている。

先の特別国会での高市首相の言動を見る限り、高市首相が自ら調整力を発揮するのは相当、困難とみているが、政治家は大変身することもある。秋の臨時国会での首相の答弁内容や対応を注視したい。(了)

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高市内閣支持率 発足以降最低 “無党派層の支持離れ”

先の衆院選で自民党が歴史的圧勝を収めたのを受けて召集された特別国会は、先月25日に閉会した。また、焦点の食料品の消費減税について高市政権は5日、来年4月から2年間に限って消費税率を1%にまで引き下げる方針を閣議決定した。

一方、報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は先月半ば以降、急落しているが、8月に入って歯止めがかかるのかどうか。また、食料品の消費減税について国民はどのようにみているのか。NHKの8月の世論調査がまとまったので、そのデータを基に分析してみたい。

結論を先に言えば、高市内閣の支持率は53%で先月調査から5ポイント下がり、去年10月に発足して以降、最も低い水準となった。これは最も多い無党派層の支持離れが進んだためだ。

また、特別国会で成立した皇室典範の改正については国民の理解が得られていないほか、消費減税についても支持に広がりがみられないことが影響しているものとみられる。

特に消費減税をめぐっては秋の臨時国会で本格的な議論が行われることから、高市政権は厳しい政権運営を迫られる公算が大きい。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的にみていきたい。

 無党派層・女性・高齢層の支持離れ

NHKの世論調査(8月7~9日実施)によると、高市内閣の支持率は53%で、7月調査から5ポイント下落した。一方、不支持率は33%で、6ポイント増えた。高市内閣の支持率は衆院選が実施された2月は65%と高かったが、それ以降は下降傾向が続いている。8月の53%は去年10月の政権発足以降、最も低い水準になった。

報道各社の世論調査では7月半ば以降、内閣支持率が急落している。NHKの8月の調査でも下落傾向が続いていることから、支持率下落の流れには歯止めがかかっていないと言える。

次に高市内閣の支持層を党派別にみると自民支持層では85%、横ばい状態で変わっていない。一方、有権者全体の4割を占めて最も多い無党派層では36%で、先月に比べて8ポイントも減少した。ここが大きく影響しているものとみられる。

男女別では男性が6ポイント下がって56%、女性は2ポイント下がって48%だった。女性の支持が半数を割り込んだのは、今回が初めてだ。

年代別では、18歳から20代・30代では62%、30代で65%が支持しているほか、50代でも59%と高い水準を保っている。これに対し、60代と70代、それに80歳以上では4割台に止まっている。特に60代は支持が14ポイントも減っており、50代を境に高齢層の支持離れも目立っているのが特徴だ。

皇室典範改正、消費減税の政策も影響

高市内閣の支持率が発足以降、最低水準に落ち込んだ背景としては、どのような背景があるのだろうか。

まず、高市内閣を支持する理由と、支持しない理由からみておきたい。支持する理由としては、①「実行力があるから」が33%、②「他の内閣より良さそうだから」が31%、③「政策に期待が持てるから」17%で、順位は7月調査と変わっていない。

一方、支持しない理由は、①「政策に期待が持てないから」が43%、②「人柄が信頼できないから」が23%、③「支持する政党の内閣でないから」11%となっている。

先月は「人柄が信頼できないから」が35%で最も多かったが、今回は「政策に期待が持てないから」が最多で入れ替わった。人柄というやや漠然とした理由から、支持しないのは政策だと理由を明確にしている点がこれまでと異なる点だ。

そこで、国会終盤で大きな争点になり、成立した改正皇室典範についてみると「国民の理解を得られていると思うか」という問いに対し、「得られている」は29%に止まった。「得られていない」は64%に上り、大幅に上回った。

皇室典範改正の審議時間は衆参両院を合わせても6時間余りと極めて短かった。また、政府案は皇位継承は男系・男子の皇族に限定し、女系・女性天皇を認めない点などに問題があると感じた国民が多かったことも影響したのではないか。

また、政府が来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、中低所得層に1%相当分を給付するとした方針を閣議決定したことへの賛否を聞いたところ、「賛成」は49%、「反対」は39%、「わからない・無回答」は12%だった。

さらに、この減税がもたらす国の財政への影響について聞いたところ「大いに懸念している」は30%、「ある程度懸念している」は37%の合わせて67%に上った。これに対して「あまり懸念していない」は19%、「まったく懸念していない」は9%の合わせて28%だった。

物価高が続く中での減税には、国民の多くが歓迎するのではないかとの見方がある中で、「賛成」が半数程度に止まったことは、減税の是非を慎重に考えようとする国民が多いことをうかせる。

また、減税に伴う国の財政への影響を懸念する人が67%、3人に2人の割合にも上ったことは減税に必要な財源をどのように確保するのか、高市政権の取り組みを見極めようとする国民の慎重な姿勢も読み取れる。

経済のかじ取り・無党派層の動向がカギ

さて、高市政権の今後の政権運営と秋の政治の展開はどのようになるだろうか。今回の世論調査で、熊本地震への政府に対応について、「評価する」は「大いに評価」と「ある程度」を合わせて67%に上り、「評価しない」の27%を大きく上回った。

大きな震災や事故などが起きた場合、危機管理に当たる政府の評価が高くなる傾向がある。逆に言えば、この震災対応がなければ、高市内閣の支持率は5ポイント減に止まらず、大幅に下落したのではないかと推測している。

一方、無党派層について、高市内閣を支持する割合などを詳しくみてみると「支持」は36%に対し、「不支持」は42%に達し、不支持が支持を上回った。これは石破政権末期とほぼ同じ水準にあたる。つまり、無党派層については、不支持が多数を占めて、政権にとっては危険水域に達しているとみることができる。

こうした無党派層に大きな影響を及ぼすのは、暮らしや経済政策だ。消費税減税をめぐって無党派層をはじめとする国民は、財源の確保は本当にできるのか、財政に対する市場の信認は得られるのか、歴史的な円安への対応はどうするのかといった点を見極めようとしている。

したがって、秋の臨時国会で高市首相は、消費税減税をはじめとする経済・財政政策全体のかじ取りについて、説得力のある方針と具体策を打ち出せるのかが問われている。

説得力のある方針が示されない場合、無党派層の支持離れはさらに進み、高市首相は一段と厳しい状況に立たされることが予想される。高市首相の経済運営のかじ取りと無党派層の動向、この2つが秋の政治の大きなカギを握っている。(了)

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消費減税の基本方針 閣議決定”秋の臨時国会で徹底審議を”

消費減税をめぐって、政府は5日午後に臨時閣議を開き、来年4月から2年間に限って食料品の消費税を1%に引き下げるなどとした基本方針を正式に決定した。政府は具体的な制度設計を進め、9月に税制改正大綱を決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。

閣議決定された基本方針によると食料品の消費税について、来年4月から2年間税率を1%に引き下げるとともに、中低所得の人に1%相当分を給付することで実質ゼロを実現するとしている。

財源は、市場の信認を損なうことがないよう赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、それに税外収入などを通じて確保するとし、来年度の予算編成プロセスで結論を得るとしている。

こうした2年間の減税を経たうえで、2029年度には「所得に連動したきめ細かな給付」を毎年度、継続的に実施する新たな制度として導入するとしている。

1989年に消費税が導入されてから37年になるが、政府が消費税率引き下げの方針を決定したのは、今回が初めてだ。政府の方針をどのようにみたらいいのか、また政治の対応として何が必要なのか考えてみたい。

多くの疑問・懸念は残されたまま

さっそく政府の基本方針の内容からみていきたい。まず、食料品に課税される消費税率が8%から1%に引き下げられるが、専門家は「国民が期待するほどの引き下げ効果はないのではないか」との見方を多く聞く。

イラン情勢悪化に伴う原材料や包装の価格上昇、それに輸送費、人件費も上がっていることから、減税分がそのまま価格に反映されるとは限らない。消費減税の効果は、思ったほどないのではないかというわけだ。

次に減税などを実施するためには1年で5兆円程度の財源を必要とするが、基本方針では財源の具体的な内訳は示されておらず、来年度予算編成の中で検討していくことになる。

税制に詳しい議員に聞くと「1年に5兆円程度は赤字国債に頼らずに何とかかき集められるが、他にも首相肝いりの危機管理投資や防衛力強化の予算にも必要だ」として、財源確保の難しさを認めている。

高市政権の下で財政拡張がさらに進むとみられると市場の信認を失い、円安・債券安が一段と進むリスクを抱えている。

さらに懸念されるのは、2年後に食料品の消費税率を元の8%に戻せるかだ。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説する。

だが、どうだろうか。消費税率引き上げの時期は2029年4月。その前年・2028年夏には参議院選挙が実施される。選挙を間近に控えた政権は、選挙への影響を恐れて引き上げを先送りすることはありうるのではないか。安倍政権も2回にわたって引き上げを延期したことがある。

このほか、食料品の消費税が実質ゼロになると、利用客の減少が予想される外食産業や免税農家に対する支援策の検討もこれからだ。このように食料品の消費減税には数多くの疑問や懸念が出されたが、ほとんど手つかずで残されたままだ。

首相 ”力で押し通す政治”の危うさ

今回の消費減税にあたって危惧されるのが、高市首相が進める政治手法だ。高市首相は衆院選での自民圧勝後、超党派の「国民会議」で給付付き税額控除の検討を進めたが、食料品の消費減税については与野党の合意を取りつけることに失敗し、結局、自民党の方針をそのまま政府方針として決定した。

また、政権与党・自民党の最終的な意見集約も、首相の方針を最初に党役員に提示して賛同を得た後、党所属議員の意見を聞いて集約する手法を採った。党所属議員の意見集約もわずか2日間だった。

従来の自民党であれば、党税調の意見を踏まえて方針のとりまめに活かしたり、”平場の議論”は当事者が疲れ果てるまで続けたりしたが、今やトップダウンの上意下達、”力で押し通す政治”の党に変わったように見える。

特別国会閉会後の記者会見で高市首相は「316議席、衆院選挙で国民の皆さまから頂戴した大きな、大きな負託。その責任の重さを毎日噛みしめながら公務に向き合っています」「何かを成し遂げようとすれば大きな抵抗もあるでしょうが、『公約実現』への私の思いは決して揺らぐことはありません」と強調した。

選挙公約を何としても実現したいとの首相の思いは理解できる。他方で、政治家、特に首相は選挙後に起きた内外情勢の変化、今年で言えば米・イスラエルによるイラン攻撃などの影響なども勘案し、大局的で現実的な政権運営が必要だ。

また、”力で押し通す政治”が前面に出すぎると大きな政治目標を達成することは難しくなる。首相は政治姿勢や手法を再考することが必要ではないかと考える。

消費減税を含む基本政策 徹底論戦を

消費減税の問題は、今回の閣議決定によって政府・与党の基本方針が決まったことになる。今後は秋の臨時国会で、関連法案の審議に焦点が移る。

そこで、消費税の意義と経緯をみておくと消費税は、急速な人口減少と超高齢化社会が進行する中で、社会保障を整備する新たな税制として導入された。若い世代だけでなく、高齢者も消費を通じて税を負担して社会保障を支える税制であることから、その意義を認める国民は多いとみていいのではないか。

こうした観点に立って今回の政府の基本方針をみると2年間に限定された「つなぎ」の措置のために基幹税である消費税の税率を引き下げることには疑問を抱かざるを得ない。別に財源を求めるか、給付に切り替える方策も考えられる。

秋の臨時国会では法案の成否の駆け引きでなく、人口急減時代の税と社会保障の整備について与野党が掘り下げた議論を行ってもらいたい。

また、今の日本が直面している政治課題も待ったなしだ。物価高騰対策をはじめ、日米が28年ぶりに円買いの協調介入を行った円安への対応、さらに市場が懸念を抱いているとされる政府の財政政策など取り組むべき課題は多い。

さらに今回の消費減税に必要な5兆円の財源確保をはじめ、首相が強い意欲を示す危機管理投資と防衛力の抜本強化を図るための防衛財源について、全体像を明らかにする必要がある。

秋の臨時国会は、こうした日本が直面している金融・財政、防衛力整備と社会保障などの基本政策について、政府・与党と野党側が真正面から徹底して議論を深めることが必要だ。

一方、国会の運営面では、高市政権は衆院では圧倒的多数の勢力を確保しているが、参議院では過半数割れしている。このため、先の特別国会で明らかになったように力で押し切るような国会運営は困難だ。加えて足元の自民党内では、消費税減税には慎重・反対論が根強く、高市政権の政治基盤は万全とは言えない。

一方、野党陣営は少数政党に分かれたままで、高市政権に対して本格的な論戦も挑めない状態で、国民の失望を買っている。

こうした状況から、高市政権と与野党がやるべきことは明らかだ。消費減税を含む基本政策について真正面から議論を戦わせて、結論を出していくことだ。私たち国民も高市政権と与野党がどこまで役割を果たせるか、秋の国会をしっかり見届けていく必要がある。(了)

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食料品消費税1%方針 ”前途多難な高市政権”

長丁場の特別国会を終えた高市首相は30日、自民党の臨時役員会に出席し、食料品の消費税率を来年4月から2年間、1%に引き下げる方針を正式に表明した。そのうえで、この方針で党内の意見を集約するよう指示した。

これを受けて自民党執行部は31日、党の税制調査会や全ての議員が参加できる会議を開いて意見集約を始めたが、異論が噴出したため、引き続き意見を聞くなどの調整を進めることになった。

自民党執行部は首相の方針通り党内の意見を取りまとめ、これを受けて政府は8月上旬に消費税率引き下げ方針を閣議決定する公算が大きい。

ただ、今回の消費減税をめぐっては、政策面で数多くの問題点を抱えているほか、高市首相の政権運営面でもさまざまな影響が出てくることが予想される。

端的に言えば、高市政権は政策と政権運営の両面で、前途多難な情勢にある。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的に説明したい。

食品消費税1%、財源確保 説明できず

食料品の消費税減税をめぐって、高市首相は30日記者団に対し、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、合わせて中低所得の人への給付を行い、実質ゼロとする方針について説明するとともに「衆院選挙で掲げた公約の実現を重視し、最善の方法を選択した」として、国民の理解を得ていく考えを強調した。

この方針については、既に超党派の「国民会議」で野党や有識者から、さまざまな疑問や懸念が示されたほか、自民党内の意見集約でも多くの慎重論や反対意見が出された。

国民にとっては物価高騰の中で、消費減税はありがたいのだが、一方で経済が混乱したり、社会保障に穴が開いたりするのではないかと懸念している人は多いのではないか。具体的な疑問点や懸念を挙げると次のような点だ。

まず、食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げた場合、本当に食料品の価格が期待したほど下がるのかは疑問だ。イラン情勢を経て、石油由来の包装や材料が値上げされており、業者が税率の引き下げ分をそのまま価格に反映させるかどうかわからないからだ。インフレ時に食料品に限定した減税には限界がある。

また、肝心の財源をどのように確保するのか、高市首相の説明でも具体策を示すことはできなかった。食料品の実質ゼロを実現するためには、年間5兆円の財源が必要になるが、税収の上振れや税外収入が見込めるといっても高市首相が力を入れる投資や防衛力の抜本強化の予算とも重なり、調整のめどはついていない。

さらに「2年後に消費税率を元に戻すのは無理だ」との見方が自民党内でも聞かれる。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説するが、2年後には参議院選挙が予定されており、実質増税を実施できるかと言えば難しいのではないか。

振り返ると消費税は社会保障を支える主要な税として、1989年に初めて税率3%で導入され、10%に引き上げるまで30年を要し現在に至る。この間、幾つもの政権が倒れながらも社会保障と税制の安定に尽力してきた歴史を思い起こす必要がある。

消費税率の引き下げは今回初めてになるが、疑問や問題点が多すぎる。社会保障の安定という観点からも再考した方が賢明だと考える。早期に物価高対策を行うのであれば、中低所得層に絞って大胆な給付を行う方がはるかに効果があると考える。

衆院選公約との関係どう考えるか

消費減税の是非を考える際、「衆院選挙の公約」として掲げていたこととの関係をどう考えるかという問題がある。

確かに高市首相と自民党は、消費税減税を衆院選の公約として掲げ、「検討を加速する」としてきた。選挙の公約として掲げた以上、選挙後、実現をめざすのは当然で、その責任がある。有権者が、政策の実行を期待するのも当然だ。

一方、選挙後に予測していなかった事態が起きた場合、公約の内容を見直すことはありうるのではないか。現実の政治では公約の修正もありうるし、その場合、政権・政党が説明し納得してもらうことが必要不可欠だ。

先の衆院選を思い起こすと、高市首相は今年1月、突然の衆院解散を表明した記者会見で食料品の消費税ゼロは「私の悲願だ」と強調し、党の公約に盛り込んだ。だが、党内でこの問題をめぐり突っ込んだ議論を行うことはなかった。

また、選挙戦で高市首相が消費減税を取り上げ、自らの考えを訴える場面はほとんどなかったと記憶している。選挙で公約が取り上げられ、争点になったのかどうか実態も踏まえて考える必要があるのではないか。

政権の安定度や政治の展開を左右

さて、食料品の消費税減税が政権与党内でどのような形で決着がつくかは、高市政権の安定度や今後の政権運営、秋の政治動向に大きな影響を及ぼす。

自民党は3日も党の税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、議員の意見を聞くなどの調整を行うが、麻生副総裁や鈴木幹事長ら党執行部は高市首相の方針を了承するものとみられる。

これを受けて政府は、8月上旬には閣議決定する公算が大きい。その場合、秋の臨時国会に食料品の消費税率を1%に引き下げる関連法案を提出することになる。

今後の政権運営を考えると高市内閣の支持率が7月半ば以降、急落していることをどのように考えるかが問題になる。この背景には、皇室典範の改正も影響しているとみられるが、高市政権の物価高対策などの経済政策が十分ではないという不満があるのではないか。

今月の飲食料品の値上げは2311品目で、去年8月と比べると8割も増えている。9月は4531品目とさらに値上げラッシュが続く(帝国データバンク調査)。イラン情勢悪化に伴う包装や資材価格上昇が影響しているためだ。

高市首相が消費減税の決定にこぎ着けても実施は来年4月からで、かなり先の話だ。今回の方針決定が支持率回復につながるとは限らない。高市政権は内閣支持率が高いことが政権運営の原動力になっていたが、その力が揺らぐ可能性がある。

高市政権として対応が迫られているのは、当面の物価高対策と経済運営の基本方針を明らかにすることだろう。為替水準は1ドル=164円に迫る歴史的円安で、日米通貨当局が円買いの協調介入を行った。物価高対策には、歴史的円安に歯止めをかけられるか、経済運営全体の方針を明らかにする必要がある。

次に秋の臨時国会で食料品の消費減税法案をめぐっては、日本保守党を除いて全ての野党が反対の立場だ。与党が過半数割れしている参議院では、法案審議は難航必至で、高市政権は膨大なエネルギーを費やすことになる。先の衆院選で得た膨大な政治資産を消費減税に投入するのが賢明な選択かという問題でもある。

先の特別国会で、高市政権の国会運営は、政権与党内の連携がうまく機能しなかった。その対策は手つかずのままなので、次の内閣改造・自民党の役員人事で体制が強化されない限り、不安定な国会運営が続くことになる。

さらに年末には、国家安全保障3文書の改定と、防衛力の抜本強化に向けた防衛財源確保の具体的な方策が問われる。

このように高市政権の政権運営は、最優先で取り組む必要がある経済政策をはじめ、重要政策の具体化、秋の臨時国会に向けた体制強化など課題は多いが、いずれも難題で前途多難な情勢にある。(了)

★追記(8月3日20時)自民党は3日、税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、高市首相が表明した食料品の消費減税の方針について、今後の対応を小野寺税制調査会長に一任した。党執行部は5日の総務会で了承を取りつけ、党内手続きを終えたい考え。これを受けて政府は5日の閣議決定をめざしている。

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高市政権”国会対応 機能不全” 特別国会閉会

国会は「副首都」構想関連法案をめぐり与野党の対立と混乱が続いた末、24日夜に採決が行われ、同法案が自民・維新両党とみらいの賛成多数で可決・成立した。これによって衆院選の自民圧勝を受けて2月に召集された特別国会は、25日に閉会した。

この国会は、異例ずくめの国会だった。衆院解散・総選挙で新年度予算の審議入りが遅れたが、高市首相が年度内成立にこだわり、審議日程が大幅に圧縮された。憲法と同列の重い位置づけの皇室典範の改正は、衆参合わせてわずか6時間余りの短い審議で、可決・成立した。

一方、終盤国会は自民・維新の連立合意関連の法案をめぐって与野党が対立し、国会審議が空転・迷走した。そして報道各社の世論調査によると、これまで高い水準を維持してきた高市内閣の支持率が急落している。

この国会をどのようにみたらいいのか。また、高市政権の国会・政権運営をどのように評価すべきか、国会閉会のタイミングで点検・分析してみたい。

首相肝入り法案成立、自民圧勝が影響

まず、国会や政権の評価に当たっては、提出法案がどの程度成立したかが判断のベースになる。首相が出席して審議をする「重要広範議案」には、国家情報会議設置法案や防災庁設置法案など4本が指定されたが、いずれも成立した。

また、新年度予算と補正予算のほか、政府が提出した改正皇室典範など64の法案は全て成立した。成立率が100%となるのは、臨時国会以外では2022年の通常国会以来だ。高市政権は法案処理の面では成果を上げたとみることができる。

一方、国会後半では自民・維新の連立政権合意に盛り込まれた衆議院議員の定数削減法案など議員立法の扱いが大きな焦点になった。このうち、定数削減法案はこの国会での審議を断念、秋の臨時国会に先送りになった。

定数削減法案以外の国旗損壊処罰法や「副首都」関連法は成立にこぎ着けた。皇室典範の改正や国家情報会議設置法などと合わせて、高市首相の肝入りで保守色の濃い法案が相次いで成立したのが大きな特徴だ。

こうした背景には、衆院選で自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得し、与野党の勢力図を大きく塗り替えたことが挙げられる。また、高市1強体制が影響している。

一方、国民生活に直結する物価高対策は真正面から取り上げられることはなく、与野党が選挙で公約した給付付き税額控除の導入などの取り組みも後退した。

国会審議は形骸化、首相出席も大幅減

この国会では、予算案や法案の審議時間が大幅に減少し、国会審議の形骸化が目立ったのが特徴だ。

衆院解散・総選挙のため、新年度予算の審議入りは例年に比べ1か月も遅れて始まったが、高市首相が年度内成立を強く主張した結果、衆院での審議時間は大幅に圧縮された。

終盤国会の焦点になった皇室典範の改正は、衆参両院の正副議長の取りまとめの作業があったとはいえ、法案の審議が衆院で3時間、参院で3時間15分という極めて短い時間で成立した。

また、高市首相は衆参両院の集中審議に出席することが少なく、27日に閉会中審査となる集中審議を含めても36時間半で、歴代首相と比べて半分以下に落ち込んだ。

国会の役割の一つは、首相と与野党議員の間で緊張感のある議論を行うことによって、国民に政治課題の現状や今後の対応策などを理解してもらうことにある。

ところが、この国会で高市首相は、国民が強い関心を持っている物価高対策や経済のかじ取り、イラン情勢など外交方針、安定した皇位継承のあり方などについて、自らの考えを積極的に説明する場面はみられなかった。国会や国民に対する説明責任を十分果たしたとはいい難く、極めて大きな問題だ。

国会運営に難点、政権与党の機能不全

国会のあり方をめぐっては首相との関係、高市政権の国会運営の実態についても点検しておく必要がある。

政権の対応が問われたのは、6月下旬から7月上旬にかけて国会終盤だった。皇室典範の改正と、自民・維新連立政権合意に盛り込まれた衆院議員の定数削減法案と「副首都」構想関連法案の合わせて3つの法案の審議入りをめぐって、与野党の意見が対立し、国会が1週間余り空転した。

この時は、高市首相の公設秘書が中傷動画の投稿に関与した疑いがあるとして、野党側が首相出席の集中審議と党首討論を要求した問題の扱いとも重なった。そして首相側は、集中審議への出席に消極姿勢を示し、野党が強く反発していた。

この場面では与野党の対立もあったが、それよりも政権与党内に意見の違いがあり、この調整が進まなかったことが根本の問題だった。端的に言えば、維新と高市首相は、3法案の中で連立合意関連の2法案を重視していたのに対し、自民党側は皇室典範の改正を最優先に位置づけていた。

詳細な経緯は省略するが、政権与党内では、法案の優先順位について政権与党内の調整が進んでいなかった。連立関連2法案の審議入りを強行したが、野党側が強く反発し、審議中断に追い込まれた。首相官邸と自民党執行部、参院自民党、それに衆院議長らの対応がバラバラで、対応が混乱した。

自民党の歴代政権は、国会運営は幹事長の下で”国対委員長”が取り仕切り、官邸や参議院自民党、さらに霞ヶ関とも連携を取りながら、法案の提出から野党との交渉、成立までを一元的に管理・運営してきた。

公明党との連立政権になってからは「二幹・二国」(自民と公明の幹事長と国対委員長で構成)と呼ばれる幹部会合を週1回定期的に開き、濃密な人間関係を築くとともに組織的な国会運営を積み重ねた。

こうした歴代政権と比べると高市政権の体制づくりと対応は見劣りする。高市政権の難点は国会運営にあり、政権与党内では関係部署の連携・調整ができておらず、機能不全状態にあったと言っても言い過ぎではない。

政権与党、特に最大与党の自民党は、議院内閣制で首相を支える立場にあるが、首相の独善先行などがあれば、物申す姿勢が不可欠だ。今の高市政権では、選挙に大勝したことが影響して首相が圧倒的に強い立場にあり、党内は上意下達、党の幹部も首相の顔色を伺うばかりとも聞く。

自由・闊達な党風こそ、自民党の良さで、首相と党の関係も再考してはどうか。難題の定数是正法案は秋の臨時国会に先送りされたが、今のような政権運営が続けば同じことの繰り返しとなり、政権運営は不安定化するのではないだろうか。

支持率急落、世論の風向き変化の兆し

報道各社の7月の世論調査で、高市内閣の支持率が急落している。◇時事通信の調査(10日から13日実施)で49.0%、5.3ポイントの下落、◇毎日新聞の調査(18・19日実施)は10ポイント減の41%、不支持率44%が支持を上回り逆転した。◇朝日新聞は(18・19日実施)7ポイント減の53%、政権発足以来、最低を更新した。

各社の調査結果には幅はあるが、世論調査は傾向を読み取ることが重要だ。各社のデータは下落傾向にあり、いずれも大幅に下落している点でも共通している。

急落の原因は、調査時期からすると皇室典範の改正問題が影響していることが考えられる。一方、国民の関心が高い物価高対策に、高市政権が対応できていないことが響いているとの見方も聞く。

いずれにしても高市政権に対する世論の風向きに変化が現れているのは事実だ。高市首相は8月上旬までには、食料品の消費減税に踏み切るのかどうか決断するとみられており、その判断が政権のゆくえを大きく左右する見通しだ。

最後に野党の対応についても触れておきたい。野党各党は小党分立の状態が続いており、国会で政権をチェックする役割が果たせていない。緊張感のある国会を実現するためにも野党側は連携・協力関係を強め、政権と対峙できるような体制作りを進めてもらいたい。

私たち国民も国会のあり方についてどのような姿が望ましいのか、与野党双方の動きをみながら、考えていく必要がある。(了)

★追記(27日22時)国会閉会を受けて高市首相は午後6時から記者会見し、食料品の消費減税について「国民会議」の取りまとめを受けて速やかに法案を提出する考えを示した。◆内閣支持率が下落していることについては「一喜一憂しない」とのべたほか、特別国会について「反省すべきことはない」とのべた。◆今後の政権運営については「何かを成し遂げようとすれば抵抗もあるだろうが、公約実現への思いは決して揺らぐことはない」と強調した。

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首相肝いり法案 相次ぎ成立、”国会運営は混乱・迷走”

国会は17日に会期末を迎え、参院本会議で皇族数の確保に向けた皇室典範改正の採決が行われ、自民・維新両党と国民民主党、公明党、参政党などの賛成多数で可決・成立した。また、国旗を損壊した行為を罰する法律や、再審制度を見直す改正刑事訴訟法も可決・成立した。

一方、「副首都」法案は参議院での審議入りのめどがつかないことから、与党は今月25日までの8日間会期を延長することを議決した。与党は参議院で過半数を割り込んでいることから、無所属の議員などの賛成を取りつけて過半数を確保できるかが焦点だ。

ここまでの国会全体を振り返ると高市政権は、既に成立している国家情報会議設置法案などに加えて、後半国会で本丸と位置づけていた皇室典範改正の実現にこぎ着けた。衆院選の歴史的圧勝を受けて高市政権は、保守色の濃い「高市カラー法案」の多くを成立させたのが特徴だ。

一方、終盤国会では圧倒的多数を占める衆議院でも皇室典範改正案や、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案などをめぐって、混乱や迷走が目立ったのも大きな特徴だ。

このように今の国会には、二つの相反するような特徴があるが、今回は圧倒的な衆院での勢力を背景に高市政権は、余裕のある政権運営ができたはずなのに、なぜできなかったのか、終盤国会の動きを中心に政権の課題や問題点を点検してみたい。

”拙速・浅慮・粗雑さ”目立つ国会運営

終盤国会を象徴するような動きとして、会期延長をめぐる政府・与党の対応がある。過去の多くの国会では会期を延長する場合、与党の幹事長が党内の意見や野党の意向も水面下で探ったりするなどして延長幅を決め、会期末の前日の夕方には衆院議長に申し入れをするのが多かった。

ところが、今回は前日どころか、会期最終日の当日朝の時点でも会期幅を表に出せない有り様だ。17日当日は各委員会で可決済みの法案が参議院本会議に上程され、こうした法案の処理が終わった後、夕方の衆院本会議でようやく会期延長が議決された。

終盤国会での与党の国会運営をみると、6月下旬の衆参予算委員会の集中審議では、高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選で、他の候補を中傷する動画のSNS投稿に関わったとする報道が取り上げられ、高市首相は「秘書の陳述書を提出することで、答弁に代えたい」と異例の答弁を行い、野党の強い反発を招いた。

皇室典範改正案をめぐっては、政府・与党は「静謐な環境の下で議論を進めたい」と強調する一方、法案の審議入りが始まっていない段階で、連立政権合意書に盛り込んだ衆議院議員の定数削減と「副首都」法案について、委員長職権で審議入りを強行し、野党の強い反発を招いた。

この問題は7月7日に高市首相と維新の吉村代表との党首会談で、議員定数削減法案は今国会での成立を断念し、秋の臨時国会で成立をめざすよう方針転換し、事態の収集を図った。

皇室典範改正案の実質審議は衆議院で3時間、参議院でも3時間20分だった。政府・与党は「衆参両院議長の下で長い間議論を続けてきた」と釈明するが、こうした議論は非公開で行われ、国民には伝わっていないのが実態だ。

このように与党側の国会の運営は、十分時間をかけて審議を行うところが極めて短く、拙速だ。法案の優先順位が徹底しておらず、野党や国民への配慮も浅い。さらに、委員会運営などで粗雑な対応が目立ったと言わざるを得ない。

与党内調整不足、首相の姿勢に問題も

それでは、こうした国会運営の迷走は、どこに原因があるのだろうか。終盤国会では皇室典範改正と、自民・維新の連立政権合意に盛り込まれている衆議院議員の定数削減法案、それに「副首都」構想の関連法案の3つの扱いが最大の焦点になった。

高市政権の問題は皇室典範改正と、連立合意関連2法案の扱いに乱れが生じたことだ。連立を組む維新は連立の「センターピン」と2法案を位置づけたのに対し、自民党内は皇室典範改正を最優先とする意見が強かった。

高市首相は政権発足にあたって公明党の連立離脱という危機的状況に助け船を出してくれた恩義もあってか維新の主張に一貫して理解を示してきた。端的に言えば、与党内は高市首相・維新グループ対、自民という構図が続いた。

こうした背景もあって、法案審議にあたって皇室典範改正法案が審議入りもしていない段階で、野党の反発が強い定数削減法案などの審議を強行したことから、野党側の猛反発を引き起こした。

さらに、高市首相は終盤国会の最中、しかも平日にインド訪問の外交日程を入れるという異例の行動を取った。首相の出発当日、今度は森・衆院議長が与野党の幹事長を招いて皇室典範改正法案を最優先で成立させるとともに、首相出席の集中審議などの実現に努力するよう自民党に要請する動きも重なった。

集中審議などは、野党側が強く求めていたもので、これに難色を示す首相官邸と衆院議長、自民党執行部などとの対応の違いが露わになり、改めて政権与党内の調整不足を印象づけた。

自民党議員の一人は「高市首相と党の司、司の幹部が十分、話ができていないのではないか。そうした関係を改め、意見の違いを誰がが調整し、指示を出すようにしないと同じ失敗を繰り返すのではないか」と懸念を示す。

また、党の長老は「首相は、国会運営・対策の基本がわかっているのかどうか。議員定数などはこれまでの経緯、先輩議員の意見なども取り入れながら対応しないと思うような成果を上げることはできないのではないか」と指摘する。

一方、野党や国民の間では、高市首相は自らの秘書が中傷動画や暗号資産「サナエトークン」の問題に関与していたのではないかとの報道について、説明責任を果たしていないとの意見は多い。また、国会での集中審議の出席が歴代首相に比べて少なすぎるといった声も聞く。国会にどう向き合うのか、首相の政治姿勢が問われている。

内閣支持率下落、世論に変化の兆候も

高市内閣の支持率は高い水準が続いているが、ここに来て内閣支持率が下落し、5割を切る世論調査のデータが出るようになった。具体的には、時事通信の世論調査(7月10から13日実施)だ。

それによると高市内閣の支持率は49.0%で、前月から5.3ポイント下落し、2か月連続で大幅に低下、去年10月の政権発足以降、初めて5割を切った。この調査の有効回答率は57.1%で、他の世論調査に比べて有効回答割合が高い。それに個別面接方式なので、個人的に時事通信の調査結果を注目している。

この調査によると無党派層の支持率が39.6%で、先月に比べて7.8ポイントと大幅に下落したとされる。この間、自民・維新の与党が法案審議を強行したことや、国会で取り上げられた首相陣営の中衝動画問題などが影響したのではないかとみられる。

国会は25日まで8日間延長されることになり、高市首相の国会運営や政策面の対応が焦点になる。具体的には1つは、延長国会で「副首都」法案が成立するのか、国民の支持が得られるのかどうかだ。

2つ目は、超党派の国民会議で検討が続いている給付付き税額控除と食料品の消費減税がどのようにとりまとめられるのか。そして高市首相が8月上旬に当初の方針通り、消費減税に踏み出すのかが、大きなポイントだ。

3つ目は、高市首相がこの国会で相次いで成立させた保守色の濃い法案について、国民がどのような評価をするのか、高市政権のゆくえを左右する見通しだ。(了)

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皇室典範改正案”再考の府、徹底審議を尽くせ”

衆院選挙を受けた特別国会は、会期末まで1週間を切ったが、参議院には13本の法案が積み残されるという異例の事態で、法案の成否をめぐって与野党が大詰めの攻防を続けている。

中でも皇族数の確保に向けた皇室典範改正法案は、象徴天皇制をとるわが国にとって国の基本に関わる重要な事項だ。ところが、衆議院で10日に行われた初めての審議はわずか3時間半で、その日のうちに与野党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。

参議院では14日から審議が始まる見通しだが、法案審議はどのように行われるべきだろうか。結論を先に言えば、皇室典範改正案は衆参両院の正副議長がとりまとめた「立法府の総意」から逸脱している内容もあり、このまま成立させると将来に禍根を残す。

このため、会期末は迫っているが、まずは「再考の府」と位置づけられる参議院で徹底した審議を尽くしてもらいたい。

そのうえで、与野党の幅広い合意に至らない場合は、法案を継続審議にして次の国会以降に持ち越すことを考えてはどうか。なぜ、こうした結論になるのか、以下できるだけ簡潔に説明したい。

養子の子どもに皇位継承資格は妥当か

さっそく、皇室典範改正案をめぐる主な論点をみておきたい。これまでの衆院の審議などで、論点は絞られている。

最も大きな論点は、皇室典範で禁じている養子について、例外として新たな章を設けて、養子を迎えることができるとしている点だ。養子となることができるのは、昭和22年に皇籍を離脱した11宮家の子孫で、年齢は15歳以上としている。

そして養子には皇位継承権はないが、養子のもとに生まれた子どもが男子の場合、皇位継承資格を持つとしている。

衆参正副議長がまとめた「立法府の総意」では皇位の継承には踏み込まず、先送りした。このため、政府案は「立法府の総意」から逸脱しているとの指摘が衆議院の審議でも出された。

この点について政府は「立法府の取りまとめに記述がないことから、現行の皇室典範に基づいて判断する。立法府の将来の検討を先取りしたり、縛ったりするものではない」と弁明する。だが、この説明は事実上、皇位の継承資格を先取りしていると言わざるを得ない。

次に、女性皇族が結婚して皇室に残る場合、その夫や子どもは一般国民のままで、女性皇族の家族には一般国民の「住民基本台帳を適用する」としている。女性皇族の家庭への配慮がなさ過ぎるとして、再検討すべきとする意見もある。

さらに、政府案のように男系男子による皇位継承を維持すべきだという考え方がある一方で、女性や女系の天皇も認める時期だとする意見も聞かれる。

「男系・男子による皇位継承」か、「女系・女性の天皇」を認めるのか、皇位の継承のあり方についても踏み込んで議論すべきだとする指摘は多い。こうした論点を整理しながら、国会での議論を深める必要がある。

静かな環境に遠く、国会の議論も不足

もう一つ法案審議の評価をめぐっては、審議のプロセス、手順・段取りも重要な要素になる。皇位継承や皇室のあり方をめぐっては、人によって歴史・伝統・価値観などに違いがあることから、「静謐な環境」の下で粘り強く議論を重ねることが大切だ。この点については、与野党の意見は一致する。

ところが、実際には、衆参両院の正副議長による意見のとりまとめは難航し、政府の法案化を経て、政府案の閣議決定は6月30日にずれ込んだ。さらに国会の空転もあって法案の審議入りは大幅に遅れ、会期末の10日前になった。

これでは「静謐な環境」で、議論を交わすにはほど遠い。皇室典範改正案は10日午前に委員会で、3時間半審議しただけで、午後の衆院本会議に緊急上程された。採決の結果、自民・維新の与党と中道・国民・参政の各党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。本会議の所要時間はわずか5分の慌ただしさだった。

「再考の府」参議院、修正案のゆくえは

参議院の法案審議は14日から始まる見通しで、衆議院とはちがって参議院では特別委員会を設けて審議を行う。政党や会派の数が多いため、特別委員会であれば小さな会派も議論に参加できるようにするためだ。

参議院の野党第1党の立憲民主党は「養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を与えるのは問題が多い」として反対する方針だ。そして、養子案を削除することなどを求める修正案を提出することにしている。

修正案が提出されることによって論点が明確になり、養子制度をめぐるさまざまな問題点や、女性皇族の配偶者と子どもの処遇、法案の見直し期間の設定のあり方などについて、曖昧な点が整理されることが期待される。また、これからの皇位継承のあり方などについて議論が深まるかどうかも注目点だ。

参議院では自民・維新の与党が過半数割れしているが、法案の採決が行われる場合、立憲民主党が反対しても、国民民主党などの他の野党が賛成すれば、賛成多数で可決・成立する公算が大きい。

一方、仮に改正案が成立しても、参院第1党の立憲民主党などが反対した場合、「立法府の総意」に基づく改正案と言えるかどうか議論になるだろう。

そこで、与野党が対立したまま歩み寄れない場合、法案を継続審議にして次の国会以降に持ち越すことも選択肢になる。それでも政府・与党は原案通り、採決に踏み切るかどうかが問題になる。

憲法では「天皇の地位は、日本国民の総意に基づく」(第1条)と規定されており、象徴天皇制は国民の幅広い理解と支持が前提になっている。このため、国会で法案の扱いに結論が出ても「国民の総意」、国民の幅広い理解と支持を得られるのかが、カギを握っている。国会の議論と法案のゆくえを注視したい。(了)

◆追記(7月13日22時)NHKの世論調査によると皇室典範の改定について、今の国会で改正すべきだと思うか尋ねたところ、「改正すべきだ」が38%に対し、「改正する必要がない」41%で上回った。「わからない・無回答」が21%だった。◇養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を有することについては「賛成」が43%、「反対」が34%だった。◇女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、その配偶者と子どもを皇族とするかどうかは改正案に含まれていないが、配偶者と子どもを皇族にする考え方については「賛成」が49%、「反対」が28%だった。このように「立法府の総意」の取りまとめと、それに基づく政府の改正案は、国民の考え方と隔たりがあることが浮き彫りになった。参院での改正案の審議でも、こうした点も論点になりそうだ。

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審議再開”首相 強硬路線転換、与党に乱れ”

国会の会期末が17日に迫る中で、高市首相は7日夕方、日本維新の会の吉村代表と党首会談を行い、野党各党が強く反発している衆議院議員の定数削減法案について、今国会での成立を断念し、秋の臨時国会に先送りすることで一致した。

これを受けて自民党の梶山国対委員長は8日、衆院第1党の中道改革連合の重徳国対委員長と断続的に会談し、定数削減法案の先送りを伝えるとともに、衆議院予算委員会の集中審議について「与党の責任で実施する」方針を伝えた。

これに対して重徳委員長は「審議を行う環境が整った」として、皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議に応じる考えを示した。

混乱が続いてきた衆議院でも法案の審議が再開する見通しになったが、今回の定数削減法案の先送りをどのようにみたらいいのか、また最終盤の国会はどのように展開するのか探ってみたい。

政権与党に乱れ、国会運営・調整に弱点

高市首相と日本維新の会の吉村代表との党首会談は7日午後6時から、国会内で自民・維新両党の幹事長、国対委員長、参院幹部らが出席して始まったが、わずか8分で終わった。会談後、両党首とも個別にメデイアのぶら下がりに応じたが、内容の説明を避けた。それだけ追い込まれ苦渋の決断だったのだろう。

結論を先に言えば「高市政権は国会終盤に厳しい状況に追い込まれるのではないか」との見方は与野党関係者の間にかねてからあった。

というのは、終盤国会に提出される衆議院議員の定数削減と「副首都」構想、それに皇族数の確保に向けた皇室典範改正はいずれも高市政権発足時の連立政権合意に盛り込まれた内容で、与野党の意見が対立する公算が大きいからだ。

それに加えて政権与党内では、維新は自らの看板政策と位置づける議員定数削減と「副首都」の2法案を重視するのに対し、自民党は「皇室典範改正を最優先すべきだ」との空気が強く、双方に温度差、溝があるとみられていた。

さらに、高市首相は政権担当にあたって維新の支援を受けたこともあって、維新に恩恵を感じているとされる。このため、高市首相にとっては与野党対立ということだけでなく、維新グループと自民党との溝を埋めながら国会や政権を運営できるかという難問を抱えていた。

これまでの国会の動きを点検してみても、会期末まで3週間余りとなった6月26日、与党は衆議院の議院運営委員会で、野党が欠席する中で高市首相に近い山口委員長が職権で、定数削減法案と「副首都」法案の委員会付託を決定した。

続く週明けから両法案とも、関係する委員会で委員長が職権で審議入りを決定し、与党単独の審議に踏み切った。野党側はさらに強く反発したほか、与党内からも強硬路線を懸念する声が聞かれた。

こうした中で、高市首相は終盤国会最中の7月1日から3日間、インド訪問という異例の外交日程に出発し、国会を留守にした。同じ1日、衆議院の森議長は与野党7党の幹事長らと会談し「皇室典範改正法案を最優先」で成立させるよう要請した。

森氏は、議長就任前には麻生派に所属していたこともあり、森議長の要請をきっかけに皇室典範改正に強い意欲を持つ麻生副総裁など推進派の活動が一段と勢いを増したようにみえた。

政府は今国会に64本の法案を提出しているが、成立にこぎつけていないのは衆院で皇室典範の1本、参議院では16本と多くの法案を抱えている。高市首相としても維新の意向に最大限応えたいが、このままでは政府提出法案の多くが成立できない事態に追い込まれるため、削減法案断念にカジを切ったものとみられる。

高市首相は国会対策分野の経験が乏しいこともあってか、国会対策や運営は不得手なようだ。具体的には政権与党内の情勢把握、重要法案の提出から成立までの手順・段取り、不得手な分野は信頼の置ける議員を配置するといった運営ができないと、今後の政権運営は安定しないことがはっきりしたのではないか。

 国会最終盤、皇室典範改正案が焦点

混乱が続いてきた国会は参議院に続いて、衆議院でも法案の審議が再開され、全面的に正常化される見通しだ。会期末は17日で、与党は会期延長はしないとの見方が強いが、法案の扱いによっては延長もありうる。

終盤国会で最大の焦点は、皇族数の確保に向けた皇室典範の改正法案だ。衆議院の議院運営委員会は理事会で、10日に審議入りすることで与野党が合意した。

党派の中には、政府案には「立法府の総意」として検討していない内容が含まれているとして、慎重審議を求める意見も出されている。参議院で40人が所属し野党第1党の立憲民主党は8日、旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにする政府案に反対する方針を決めた。

一方、私たち国民も政府案を読んでみると、明治時代の皇室典範でも認めていなかった旧皇族の男系男子を養子にする制度を設けたり、養子の子どもが男子の場合、皇位継承権を認めたりする点には疑問を感じる人が多いのではないか。

また、女性皇族が皇室に残る場合、一般国民の住民基本台帳の対象になるほか、結婚する配偶者と子どもの身分は一般国民とするのは適切なのかどうか。男系・男子だでけだなく、女系・女性の天皇をどのように考えるか、掘り下げた議論が必要ではないかと考える。

憲法では「天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」(第1条)と位置づけられている。与野党で議論を深めるとともに、国民の理解と支持が得られるような制度にしてもらいたい。会期末のあわただしい時期に、数の力で決定を急ぐような対応は取るべきでないことを強調しておきたい。

また、審議が続いている法案の中には、国旗損壊罪や「副首都」構想関連法案などには国民からもさまざまな意見が出されているので、こうした法案についても慎重な審議を要望しておきたい。(了)

★追記(10日23時)皇室典範の改正案は10日、衆院本会議で採決が行われ、自民・維新の与党と中道、国民、参政など各党の賛成多数で可決され、衆議院を通過した。参議院では週明けから審議が始まる。野党第1党の立憲民主党は修正案を提出し、否決された場合、反対する方針だが、その他の野党が賛成し改正案は成立する公算が大きい。衆議院での実質審議はわずか3時間だったので、参院では掘り下げた議論を期待したい。

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終盤国会 混迷 ”早期正常化なるか、政権与党の責任大”

会期末まで3週間を切った国会は、自民党と日本維新の会の政権与党が29日の衆議院議員の定数削減法案に続いて、30日には「副首都」構想の関連法案を委員長職権でいずれも審議入りさせた。

これに対し、野党側は強引な国会運営だとして強く反発し、審議には応じられないとして与野党が全面的に対立するという異常な事態に陥っている。

こうした重要法案の扱いに加えて、高市首相陣営の中傷動画報道などをめぐる問題も絡んで、事態打開のめどはついていない。

与野党対立が続けば、防災庁設置法案や皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議への影響が予想される。終盤国会の与野党対立の構図はどのようになっているのか、事態打開には何が必要なのか探ってみたい。

法案山積も、与党の国会戦略見えず

今の国会に提出される法案については、既にこのブログで幾度か取り上げてきたので、詳細に触れるのは避けるが、多くの法案の審議がヤマ場を迎えていたり、審議入りが予定されたりしている。

具体的には、前の内閣から引き継がれた防災庁の設置法案をはじめ、個人情報保護法改正案、与党が最も重要な法案と位置づける皇族数の確保に向けた皇室典範改正案も30日に閣議決定された。

こうした中で高市首相と維新の吉村代表は先の党首会談で、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案と「副首都」構想の関連法案を今の国会で成立をめざす方針を確認し、29日に法案を国会に提出した。

与党が連立政権合意に基づいて法案を提出するのは当然あり得ることだが、問題は会期末の7月17日が迫っていることだ。維新の中司幹事長は会期の延長を求めているのに対し、自民党の鈴木幹事長は、会期延長なしで今の国会を終える考えを表明している。

このように国会の会期延長をめぐっても連立与党の自民、維新、それに首相官邸の三者の間でも調整がつかないまま、個別の法案の扱いが進んでいる。

また、与党の幹部は「懸案の皇室典範改正案を成立させることが今国会の最重要案件であり、そのためには静かな環境で審議促進を図る必要がある」と強調してきた。ところが、実際には最終盤に入って与野党の対決法案を持ち出すなど政権与党の方針に一貫性がみられない。

国会運営は衆議院で多数を握る政権与党が主導権を発揮して、野党と交渉に当たるのが基本だ。しかし、今の国会で政権与党の対応をみると国会運営の戦略、基本方針が首相官邸と連立与党間で共有されておらず、終盤国会が混迷する根本原因はこの点にあるとみている。

中傷動画問題、首相・秘書の説明が必要

さて、終盤国会で与野党が対立している、もう一つの背景に首相陣営の中傷動画などをめぐる問題がある。

6月22日の衆参両院の予算委員会で野党側は「高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選での他陣営に対する中傷動画の投稿や、首相の個人名を使った暗号資産『サナエトークン』に関与したのではないか」と追及した。

これに対し、高市首相は事務所の関与を否定したうえで「秘書の陳述書を提出する。それをもって答弁に代えたい」と異例の答弁をした。野党側は答弁拒否だと反発し、首相出席の集中審議の実施と秘書の参考人招致を要求している。

この問題をどのように考えるかだが、現職の首相に関わる問題であることと、SNSと選挙のあり方が大きな問題になっていることを考えると、ここは高市首相が自ら進んで説明し、秘書も知りうる点を説明することが必要だと考える。

これまでの政権でもさまざまな疑惑が問題になったが、基本は「事実関係」を明らかにし、その事実に基づいて議論を深めることの重要性が指摘されてきた。そうした取り組みが、政権や国民にとってもプラスに働くと考える。

内外激動、国会の一刻も早い正常化を

それでは、これからの終盤国会で政権、与野党はどのように対応すべきだろうか。

政権与党の一部には、議員定数削減法案や「副首都」関連法案を成立させるため、国会の会期を大幅延長し、参議院に送られた法案が採決されなくても60日が経過すれば否決と見なして衆院に法案を戻し、3分の2以上の多数で再可決する方策を検討しているとの報道もある。

だが、これを採用すると「参院無用論」を政権与党自らが行うことになり、事実上、二院制の否定と国民の政治不信を増幅させる可能性もある。自民党幹部の一人は「こうした手法は採らない方がよい」との考えを示しているが、最終的には高市首相の判断になりそうだ。

一方、日本を取り巻く情勢をみてみると、アメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名がなされたが、最終的な合意は不透明だ。署名から60日後、ホルムズ海峡の通航に管理料などが徴収されるようになると、貿易立国・日本への打撃は大きい。

パキスタンは仲介国の役割を果たしたが、本来は日本が果たす役割ではなかったか。通行料なしで、安全航行を実現することなど日本が積極的に取り組むべき課題は多い。

円相場は30日午前、1ドル=162円台をつけた。1986年12月以来、およそ39年ぶりの円安水準だ。著しい円安は輸入物価を押し上げ、私たちの暮らしに大きな打撃を与える。金融政策や財政政策のかじ取りは待ったなしの状態だ。

さらに超党派の国民会議で検討が進められてきた給付付き税額控除と、2年間限定で食料品の消費税率ゼロ政策は、野党側の反発もあり、政権がめざしていた6月中の「中間とりまとめ」を断念する事態に追い込まれている。

こうした内外の情勢を考えると国会の混迷に区切りをつけ、一刻も早い正常化を実現することが必要だ。そのために首相、衆参両院の正副議長、与野党双方とも積極的に汗をかくべきだ。

特に首相や政権与党の幹部は、野党との意見の対立を調整し、現実的な対応策を実現していくことが求められる。高市首相も与党や、過半数割れしている参院幹部との意思疎通を図り、政権を運営していくことが求められているのではないか。

一方、国民からすると幾つか注文がある。その一つが、法案の優先順位だ。例えば国旗損壊罪法案は急ぐ必要があるのかどうか、優先順位を考えてもらいたい。

もう一つは、焦点の皇室典範改正案の扱いだ。衆参の正副議長を中心にまとめられた「立法府の総意」に沿って法案化が進められたが、政府案では「旧皇族の養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を持つ」と規定されている。「立法府の総意」では先送りされた内容が盛り込まれており、国会での審議が必要だ。

今回の皇室典範の改正は、「皇族数の確保策」であり、「皇位継承」の課題には踏み込まないのが前提だ。国会では与野党とも慎重に審議を尽くし、国民の納得が得られた段階で、採決すべきだと考えるが、どうだろうか。

高市首相は1日から3日間の日程で、インドを訪問する。国会が最終盤の段階で、しかも週末ではなく、平日に首相が国内を留守にするのは異例の対応だ。

憲法で「内閣は、国会に連帯して責任を負う」と規定されている。特に首相が国会を留守にする場合、政府の対応が後手に回らないよう態勢を整えておくことが不可欠だ。終盤国会で、政権や与野党はどのような対応を取ったか、しっかり見届ける必要がある。(了)

★追記(7月1日23時:森衆議院議長は1日、与野党の幹事長らと会談し、与野党が協力して静謐な環境の下、皇室典範改正案を成立させることを最優先するよう要請した。また、与党に対し、予算委員会の集中審議や党首討論を開催するよう努力を求めた。中道の階幹事長は記者団に「与党がどう対応するか示す必要がある。きちんとした回答がなければ、静謐な環境は整わない」との考えを示した)。

★追記(2日22時:自民党の鈴木幹事長と衆院野党第1党の階幹事長が会談し、国会正常化に向けて意見を交わしたが、合意に至らなかった。引き続き、協議を続ける)。

★追記(7日10時:混乱が続く国会は高市首相が6日、参院予算委員会の集中審議と党首討論に応じる考えを示したことから、参院は7日から法案審議を再開することになった。一方、衆院は与野党の対立が続いており、皇室典範改正法案などの審議の見通しは立っていない)。

★追記(7日23時:高市首相と日本維新の会の吉村代表は7日、国会内で会談し、事態打開のため、衆院議員の定数削減法案について今の国会での成立を見送る方針を確認した。これを受けて、与党は8日に野党側と会談し、焦点の皇室典範改正法案の早期審議入りを働きかける方針)。

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