秋の政局 “消費減税法案がカギ 高市政権”

高市政権は今年2月の衆院選挙で圧勝し、長丁場の特別国会を終えたが、報道各社の世論調査によると7月半ばに内閣支持率が急落した。8月に入っても横ばいか、低下が続いており、支持率の下落傾向に歯止めがかかっていない。

高市政権は去年秋の発足から間もなく1年を迎えることから、高市首相は9月中旬以降にも初めての内閣改造・自民党役員人事を行う見通しだ。秋の政治はどこかポイントになり、どのような展開になるのか、探ってみたい。

秋の日程、臨時国会と外交・安保2本柱

まず、秋の政治日程から見ていきたい。2つ大きな柱があり、1つは臨時国会の召集だ。その臨時国会への対応と来年秋の自民党総裁選挙をにらんで、高市首相は9月に内閣改造・自民党役員人事に踏み切る見通しだ。また、衆院選挙の公約に掲げた食料品の消費減税の関連法案を国会に提出し、成立をめざす方針だ。

2つ目は外交で、9月22日から秋の国連総会がニューヨークで開幕し、各国首脳の演説が行われる。11月にはAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で、12月にはG20サミットがアメリカのマイアミでそれぞれ開かれる。

11月3日はアメリカの中間選挙の投開票日で、結果はトランプ政権の命運を左右するだけでなく、日本を含む世界の経済・外交関係に大きな影響を及ぼす。一連の外交日程の中で米中首脳会談が行われるほか、高市首相にとっても緊張関係が続く中国の習近平主席との首脳会談が行われるかどうかなど注目点は多い。さらに年末には日本の安全保障三文書の改定と防衛力整備の問題が控えている。

臨時国会の具体的な召集日などは調整中だが、高市首相は9月22日開会の国連総会に出席するとみられることから、内閣改造などの人事は出発前の9月中旬以降、臨時国会は帰国後の9月下旬以降に召集する方向で検討しているものとみられる。

内閣改造、自民党の幹事長人事が焦点

さて、高市首相は内閣改造と自民党役員人事について、具体的な人事構想を周辺にも明らかにしていないが、与党の関係者は「自民党の党運営の要である鈴木幹事長を続投させるのかどうかが最大の焦点」との見方をしている。

また、内閣改造では閣外協力の日本維新の会から閣僚を起用するほか、去年の自民党総裁選を争った小泉、林、小林、茂木の各氏を引き続き閣内や党役員として処遇するのか否かも焦点だ。

このうち、自民党役員人事をめぐって高市首相は、麻生副総裁の義理の弟である鈴木幹事長を交代させ、旧安倍派の萩生田幹事長代行を据えたいとの見方が取り沙汰されている。

これに対して麻生副総裁は、鈴木幹事長の続投を強く求めているとされる。政府や自民党関係者の間では「幹事長を交代させた場合、高市・麻生関係に亀裂が入り、政権運営にも支障が出てくる」として鈴木氏続投の見方が強い一方、「高市首相は自らの考えを貫くのではないか」との見方もある。

自民党長老は「今の党内をみていると肝心なことは高市総理・総裁が独りで決めており、周囲があれこれ言っても意味がない」と語る。高市首相は25日、麻生副総裁と首相官邸で昼食をともにしたが、こうした会談以外の人事情報は、ほとんどが憶測の域を出ないとみてよさそうだ。

消費減税法案がカギ、財源含め論戦へ

それでは、秋以降の政治に大きな影響を及ぼすのは何かと言えば、食料品の消費減税法案の扱いだろう。

政府や8月5日の臨時閣議で、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げるなどした基本方針を決定した。これに合わせて、中低所得層に1%相当分を給付することで、実質ゼロを実現するとしている。

政府は、与党で食料品の消費減税を盛り込んだ税制改正大綱をまとめるのを受けて、必要な法案を秋の臨時国会に提出し、早期の成立をめざす方針だ。

この消費減税法案に対して野党側は「食料品に限定した減税の効果には疑問があるほか、農家や外食産業に多大な負担が生じる」として反対する姿勢を変えていない。自民党内にも「財源のめどがついていない」として慎重論も依然として残っている。

このため、秋の臨時国会では消費減税法案をめぐって与野党の意見が真っ向から対立する見通しだ。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案が成立するのかどうか見通しは立っていない。仮に参議院で法案が否決されたりした場合、衆議院に回付して3分の2以上の賛成多数で再可決することもありうるとの見方もある。

政府が、社会保障の財源となっている消費税率を引き下げるのは今回が初めてで、5兆円程度の財源をどのように確保するのかはっきりしない。新年度予算の財源としては、高市首相が重視する危機管理投資や成長戦略投資、さらには防衛力強化のための財源と合わせて、どのように確保するかは難題だ。

一方、秋に向けて石油由来の化学製品の値上げや、円安に伴う輸入物価の値上がりにどのような対策をとるのか、高市政権の経済・財政運営の在り方を含めて激しい論戦が交わされる見通しだ。国会審議を通じて、政府が説得力のある説明をできるかどうか、法案の成否を左右することになりそうだ。

税は鬼門、試される首相の政権運営能力

2月の衆院選挙で自民党は戦後最も多い316議席を獲得し、歴史的圧勝を収めたが、税制は政権にとって鬼門だ。これまでも衆院選挙で圧勝したケースとして、中曽根、小泉、鳩山、第2次安倍の各政権と高市政権がある。

圧勝した政権は、選挙後の政権運営も順調に運んだケースもあるが、失敗に終わったケースもある。高市政権のケースを考える際、参考になるのは中曽根政権のケースだ。

中曽根政権は昭和61年、衆参ダブル選挙で300議席を獲得し、その功績で自民党の総裁任期が1年延長となり、絶頂期を迎えた。政権後半の政治目標に売上税導入を打ち出し、法案を閣議決定、国会提出へと突き進んだ。

ところが、野党の反対に加えて、足元の自民党内、小売店などの関係団体にも反対が広がり、内閣支持率は急落、統一地方選にも敗北、ついに法案は廃案に追い込まれ失敗した。

高市政権とは法案の内容も異なるし、中曽根政権は増税に対し、高市政権は減税という違いもある。だが、税制は影響を受ける様々な業界・団体の利害調整、自らの党内はもちろん、野党への働きかけ、国民への説明や説得など地道な努力を幅広く展開する必要がある。政権全体の総合的な調整力や実行力が必要だ。

中曽根首相は元々、派手な雄弁で鳴らし、サミットなどの国際舞台で存在感をアピールするタイプの政治家だ。税制など地味な仕事は不得手だったことも影響したのではないか。

さて、高市首相はどのように対応するだろうか。これまでの活動をみると選挙の街頭演説などは得意のようだが、国会での質疑や国民に向けた記者会見などは好きではないように見える。

また、税制や財政も得意分野とは言えないようだ。首相はすべての分野に精通している必要はない。政権の最高責任者として、それぞれの分野に優秀な人材を配置し、指揮・調整していけばよい。それだけに9月に行われる予定の内閣改造と自民党役員人事でどのような布陣にするかが大きなポイントだ。

内閣と与党の人事から、臨時国会へと首相の政権運営能力が試されることになる。具体的には、首相官邸と自民・維新の与党側との調整、次に参院自民党との連携、それに霞ヶ関の官僚とも連携を図り、法案や政策が実行できるかが問われている。

先の特別国会での高市首相の言動を見る限り、高市首相が自ら調整力を発揮するのは相当、困難とみているが、政治家は大変身することもある。秋の臨時国会での首相の答弁内容や対応を注視したい。(了)

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消費減税の基本方針 閣議決定”秋の臨時国会で徹底審議を”

消費減税をめぐって、政府は5日午後に臨時閣議を開き、来年4月から2年間に限って食料品の消費税を1%に引き下げるなどとした基本方針を正式に決定した。政府は具体的な制度設計を進め、9月に税制改正大綱を決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。

閣議決定された基本方針によると食料品の消費税について、来年4月から2年間税率を1%に引き下げるとともに、中低所得の人に1%相当分を給付することで実質ゼロを実現するとしている。

財源は、市場の信認を損なうことがないよう赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、それに税外収入などを通じて確保するとし、来年度の予算編成プロセスで結論を得るとしている。

こうした2年間の減税を経たうえで、2029年度には「所得に連動したきめ細かな給付」を毎年度、継続的に実施する新たな制度として導入するとしている。

1989年に消費税が導入されてから37年になるが、政府が消費税率引き下げの方針を決定したのは、今回が初めてだ。政府の方針をどのようにみたらいいのか、また政治の対応として何が必要なのか考えてみたい。

多くの疑問・懸念は残されたまま

さっそく政府の基本方針の内容からみていきたい。まず、食料品に課税される消費税率が8%から1%に引き下げられるが、専門家は「国民が期待するほどの引き下げ効果はないのではないか」との見方を多く聞く。

イラン情勢悪化に伴う原材料や包装の価格上昇、それに輸送費、人件費も上がっていることから、減税分がそのまま価格に反映されるとは限らない。消費減税の効果は、思ったほどないのではないかというわけだ。

次に減税などを実施するためには1年で5兆円程度の財源を必要とするが、基本方針では財源の具体的な内訳は示されておらず、来年度予算編成の中で検討していくことになる。

税制に詳しい議員に聞くと「1年に5兆円程度は赤字国債に頼らずに何とかかき集められるが、他にも首相肝いりの危機管理投資や防衛力強化の予算にも必要だ」として、財源確保の難しさを認めている。

高市政権の下で財政拡張がさらに進むとみられると市場の信認を失い、円安・債券安が一段と進むリスクを抱えている。

さらに懸念されるのは、2年後に食料品の消費税率を元の8%に戻せるかだ。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説する。

だが、どうだろうか。消費税率引き上げの時期は2029年4月。その前年・2028年夏には参議院選挙が実施される。選挙を間近に控えた政権は、選挙への影響を恐れて引き上げを先送りすることはありうるのではないか。安倍政権も2回にわたって引き上げを延期したことがある。

このほか、食料品の消費税が実質ゼロになると、利用客の減少が予想される外食産業や免税農家に対する支援策の検討もこれからだ。このように食料品の消費減税には数多くの疑問や懸念が出されたが、ほとんど手つかずで残されたままだ。

首相 ”力で押し通す政治”の危うさ

今回の消費減税にあたって危惧されるのが、高市首相が進める政治手法だ。高市首相は衆院選での自民圧勝後、超党派の「国民会議」で給付付き税額控除の検討を進めたが、食料品の消費減税については与野党の合意を取りつけることに失敗し、結局、自民党の方針をそのまま政府方針として決定した。

また、政権与党・自民党の最終的な意見集約も、首相の方針を最初に党役員に提示して賛同を得た後、党所属議員の意見を聞いて集約する手法を採った。党所属議員の意見集約もわずか2日間だった。

従来の自民党であれば、党税調の意見を踏まえて方針のとりまめに活かしたり、”平場の議論”は当事者が疲れ果てるまで続けたりしたが、今やトップダウンの上意下達、”力で押し通す政治”の党に変わったように見える。

特別国会閉会後の記者会見で高市首相は「316議席、衆院選挙で国民の皆さまから頂戴した大きな、大きな負託。その責任の重さを毎日噛みしめながら公務に向き合っています」「何かを成し遂げようとすれば大きな抵抗もあるでしょうが、『公約実現』への私の思いは決して揺らぐことはありません」と強調した。

選挙公約を何としても実現したいとの首相の思いは理解できる。他方で、政治家、特に首相は選挙後に起きた内外情勢の変化、今年で言えば米・イスラエルによるイラン攻撃などの影響なども勘案し、大局的で現実的な政権運営が必要だ。

また、”力で押し通す政治”が前面に出すぎると大きな政治目標を達成することは難しくなる。首相は政治姿勢や手法を再考することが必要ではないかと考える。

消費減税を含む基本政策 徹底論戦を

消費減税の問題は、今回の閣議決定によって政府・与党の基本方針が決まったことになる。今後は秋の臨時国会で、関連法案の審議に焦点が移る。

そこで、消費税の意義と経緯をみておくと消費税は、急速な人口減少と超高齢化社会が進行する中で、社会保障を整備する新たな税制として導入された。若い世代だけでなく、高齢者も消費を通じて税を負担して社会保障を支える税制であることから、その意義を認める国民は多いとみていいのではないか。

こうした観点に立って今回の政府の基本方針をみると2年間に限定された「つなぎ」の措置のために基幹税である消費税の税率を引き下げることには疑問を抱かざるを得ない。別に財源を求めるか、給付に切り替える方策も考えられる。

秋の臨時国会では法案の成否の駆け引きでなく、人口急減時代の税と社会保障の整備について与野党が掘り下げた議論を行ってもらいたい。

また、今の日本が直面している政治課題も待ったなしだ。物価高騰対策をはじめ、日米が28年ぶりに円買いの協調介入を行った円安への対応、さらに市場が懸念を抱いているとされる政府の財政政策など取り組むべき課題は多い。

さらに今回の消費減税に必要な5兆円の財源確保をはじめ、首相が強い意欲を示す危機管理投資と防衛力の抜本強化を図るための防衛財源について、全体像を明らかにする必要がある。

秋の臨時国会は、こうした日本が直面している金融・財政、防衛力整備と社会保障などの基本政策について、政府・与党と野党側が真正面から徹底して議論を深めることが必要だ。

一方、国会の運営面では、高市政権は衆院では圧倒的多数の勢力を確保しているが、参議院では過半数割れしている。このため、先の特別国会で明らかになったように力で押し切るような国会運営は困難だ。加えて足元の自民党内では、消費税減税には慎重・反対論が根強く、高市政権の政治基盤は万全とは言えない。

一方、野党陣営は少数政党に分かれたままで、高市政権に対して本格的な論戦も挑めない状態で、国民の失望を買っている。

こうした状況から、高市政権と与野党がやるべきことは明らかだ。消費減税を含む基本政策について真正面から議論を戦わせて、結論を出していくことだ。私たち国民も高市政権と与野党がどこまで役割を果たせるか、秋の国会をしっかり見届けていく必要がある。(了)

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終盤国会 混迷 ”早期正常化なるか、政権与党の責任大”

会期末まで3週間を切った国会は、自民党と日本維新の会の政権与党が29日の衆議院議員の定数削減法案に続いて、30日には「副首都」構想の関連法案を委員長職権でいずれも審議入りさせた。

これに対し、野党側は強引な国会運営だとして強く反発し、審議には応じられないとして与野党が全面的に対立するという異常な事態に陥っている。

こうした重要法案の扱いに加えて、高市首相陣営の中傷動画報道などをめぐる問題も絡んで、事態打開のめどはついていない。

与野党対立が続けば、防災庁設置法案や皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議への影響が予想される。終盤国会の与野党対立の構図はどのようになっているのか、事態打開には何が必要なのか探ってみたい。

法案山積も、与党の国会戦略見えず

今の国会に提出される法案については、既にこのブログで幾度か取り上げてきたので、詳細に触れるのは避けるが、多くの法案の審議がヤマ場を迎えていたり、審議入りが予定されたりしている。

具体的には、前の内閣から引き継がれた防災庁の設置法案をはじめ、個人情報保護法改正案、与党が最も重要な法案と位置づける皇族数の確保に向けた皇室典範改正案も30日に閣議決定された。

こうした中で高市首相と維新の吉村代表は先の党首会談で、自民・維新の連立政権合意に盛り込んだ衆議院議員の定数削減法案と「副首都」構想の関連法案を今の国会で成立をめざす方針を確認し、29日に法案を国会に提出した。

与党が連立政権合意に基づいて法案を提出するのは当然あり得ることだが、問題は会期末の7月17日が迫っていることだ。維新の中司幹事長は会期の延長を求めているのに対し、自民党の鈴木幹事長は、会期延長なしで今の国会を終える考えを表明している。

このように国会の会期延長をめぐっても連立与党の自民、維新、それに首相官邸の三者の間でも調整がつかないまま、個別の法案の扱いが進んでいる。

また、与党の幹部は「懸案の皇室典範改正案を成立させることが今国会の最重要案件であり、そのためには静かな環境で審議促進を図る必要がある」と強調してきた。ところが、実際には最終盤に入って与野党の対決法案を持ち出すなど政権与党の方針に一貫性がみられない。

国会運営は衆議院で多数を握る政権与党が主導権を発揮して、野党と交渉に当たるのが基本だ。しかし、今の国会で政権与党の対応をみると国会運営の戦略、基本方針が首相官邸と連立与党間で共有されておらず、終盤国会が混迷する根本原因はこの点にあるとみている。

中傷動画問題、首相・秘書の説明が必要

さて、終盤国会で与野党が対立している、もう一つの背景に首相陣営の中傷動画などをめぐる問題がある。

6月22日の衆参両院の予算委員会で野党側は「高市首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選での他陣営に対する中傷動画の投稿や、首相の個人名を使った暗号資産『サナエトークン』に関与したのではないか」と追及した。

これに対し、高市首相は事務所の関与を否定したうえで「秘書の陳述書を提出する。それをもって答弁に代えたい」と異例の答弁をした。野党側は答弁拒否だと反発し、首相出席の集中審議の実施と秘書の参考人招致を要求している。

この問題をどのように考えるかだが、現職の首相に関わる問題であることと、SNSと選挙のあり方が大きな問題になっていることを考えると、ここは高市首相が自ら進んで説明し、秘書も知りうる点を説明することが必要だと考える。

これまでの政権でもさまざまな疑惑が問題になったが、基本は「事実関係」を明らかにし、その事実に基づいて議論を深めることの重要性が指摘されてきた。そうした取り組みが、政権や国民にとってもプラスに働くと考える。

内外激動、国会の一刻も早い正常化を

それでは、これからの終盤国会で政権、与野党はどのように対応すべきだろうか。

政権与党の一部には、議員定数削減法案や「副首都」関連法案を成立させるため、国会の会期を大幅延長し、参議院に送られた法案が採決されなくても60日が経過すれば否決と見なして衆院に法案を戻し、3分の2以上の多数で再可決する方策を検討しているとの報道もある。

だが、これを採用すると「参院無用論」を政権与党自らが行うことになり、事実上、二院制の否定と国民の政治不信を増幅させる可能性もある。自民党幹部の一人は「こうした手法は採らない方がよい」との考えを示しているが、最終的には高市首相の判断になりそうだ。

一方、日本を取り巻く情勢をみてみると、アメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名がなされたが、最終的な合意は不透明だ。署名から60日後、ホルムズ海峡の通航に管理料などが徴収されるようになると、貿易立国・日本への打撃は大きい。

パキスタンは仲介国の役割を果たしたが、本来は日本が果たす役割ではなかったか。通行料なしで、安全航行を実現することなど日本が積極的に取り組むべき課題は多い。

円相場は30日午前、1ドル=162円台をつけた。1986年12月以来、およそ39年ぶりの円安水準だ。著しい円安は輸入物価を押し上げ、私たちの暮らしに大きな打撃を与える。金融政策や財政政策のかじ取りは待ったなしの状態だ。

さらに超党派の国民会議で検討が進められてきた給付付き税額控除と、2年間限定で食料品の消費税率ゼロ政策は、野党側の反発もあり、政権がめざしていた6月中の「中間とりまとめ」を断念する事態に追い込まれている。

こうした内外の情勢を考えると国会の混迷に区切りをつけ、一刻も早い正常化を実現することが必要だ。そのために首相、衆参両院の正副議長、与野党双方とも積極的に汗をかくべきだ。

特に首相や政権与党の幹部は、野党との意見の対立を調整し、現実的な対応策を実現していくことが求められる。高市首相も与党や、過半数割れしている参院幹部との意思疎通を図り、政権を運営していくことが求められているのではないか。

一方、国民からすると幾つか注文がある。その一つが、法案の優先順位だ。例えば国旗損壊罪法案は急ぐ必要があるのかどうか、優先順位を考えてもらいたい。

もう一つは、焦点の皇室典範改正案の扱いだ。衆参の正副議長を中心にまとめられた「立法府の総意」に沿って法案化が進められたが、政府案では「旧皇族の養子の子どもが男子の場合、皇位継承資格を持つ」と規定されている。「立法府の総意」では先送りされた内容が盛り込まれており、国会での審議が必要だ。

今回の皇室典範の改正は、「皇族数の確保策」であり、「皇位継承」の課題には踏み込まないのが前提だ。国会では与野党とも慎重に審議を尽くし、国民の納得が得られた段階で、採決すべきだと考えるが、どうだろうか。

高市首相は1日から3日間の日程で、インドを訪問する。国会が最終盤の段階で、しかも週末ではなく、平日に首相が国内を留守にするのは異例の対応だ。

憲法で「内閣は、国会に連帯して責任を負う」と規定されている。特に首相が国会を留守にする場合、政府の対応が後手に回らないよう態勢を整えておくことが不可欠だ。終盤国会で、政権や与野党はどのような対応を取ったか、しっかり見届ける必要がある。(了)

★追記(7月1日23時:森衆議院議長は1日、与野党の幹事長らと会談し、与野党が協力して静謐な環境の下、皇室典範改正案を成立させることを最優先するよう要請した。また、与党に対し、予算委員会の集中審議や党首討論を開催するよう努力を求めた。中道の階幹事長は記者団に「与党がどう対応するか示す必要がある。きちんとした回答がなければ、静謐な環境は整わない」との考えを示した)。

★追記(2日22時:自民党の鈴木幹事長と衆院野党第1党の階幹事長が会談し、国会正常化に向けて意見を交わしたが、合意に至らなかった。引き続き、協議を続ける)。

★追記(7日10時:混乱が続く国会は高市首相が6日、参院予算委員会の集中審議と党首討論に応じる考えを示したことから、参院は7日から法案審議を再開することになった。一方、衆院は与野党の対立が続いており、皇室典範改正法案などの審議の見通しは立っていない)。

★追記(7日23時:高市首相と日本維新の会の吉村代表は7日、国会内で会談し、事態打開のため、衆院議員の定数削減法案について今の国会での成立を見送る方針を確認した。これを受けて、与党は8日に野党側と会談し、焦点の皇室典範改正法案の早期審議入りを働きかける方針)。

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国会残り1か月 懸案集中、高市政権の対応は?

アメリカとイランが戦闘終結に向けた覚書を19日に正式に署名する見通しになったのを受けて、各国とも原油輸送の要路であるホルムズ海峡の安全航行が実現するかどうかに強い関心を寄せている。G7サミットも15日からフランスで開かれ、中東情勢の安定に向けた取り組みを強めることを確認した。

日本国内では国会の残り会期が1か月となり、自民党と日本維新の会が連立合意文書に盛り込んだ3法案のゆくえが焦点になっている。衆院議員の定数削減、「副首都構想」、国旗損壊罪の3つの法案で、与野党の攻防が激化する見通しだ。

高市政権にとって6月は、皇族数の確保策を盛り込んだ皇室典範の改正案のとりまとめのほか、超党派でつくっている「国民会議」で食料品の消費税率ゼロと給付付き税額控除の取りまとめも控えている。

こうした内外の懸案が集中する中で、高市首相は重要案件にどのような姿勢で臨むのか、優先順位を含めた政権の対応力が試されることになる。

終盤国会、自・維連立合意3法案が焦点

今の国会では、えん罪をなくすため裁判の再審制度を見直す刑事訴訟法改正案が野党・参政党の賛成を得られることになり、改正案は16日に衆議院を通過、会期内に成立する見通しになった。この法案を含め、首相が質疑に出席する「重要法案」は4法案いずれも既に成立、もしくは成立のめどが立った。

政府・与党が次に成立をめざしているのが、高市政権が発足する際に自民・維新連立政権の合意文書に盛り込んだ3つの法案だ。具体的には、衆議院議員の定数削減法案と「副首都構想」法案、それに日本の国旗を損壊する行為を罰する法案だ。

▲このうち、国旗損壊罪法案については、自民党と国民民主党、参政党との間で修正協議がまとまったことから、16日に法案を国会に提出した。参院では与党は過半数割れしているが、国民民主党と参政党の賛成で成立する見通しだ。

▲衆議院議員の定数削減法案は、与野党の協議で選挙制度改革の結論が1年以内に出なかった場合、比例代表のみで45議席を削減するとした内容で、与党は近く法案を提出する。

ただ、野党各党は比例代表のみの削減に強く反発している。また、企業・団体献金の見直しや、SNS上の偽情報対策などの法案審議を優先させるべきだという意見もあり、成立の見通しは立っていない。

▲維新が重視している「副首都構想」法案については、自民党内で批判が相次ぎ、与党内で議論が続いている。この法案では、維新がめざしている「大阪市を廃止して複数の特別区に分割する大阪都構想」を実現する場合、是非を問う住民投票の対象を大阪市から、大阪府全体に広げることが盛り込まれていることから「住民自治の観点から問題が多い」とする反対意見が根強く出されている。

この「副首都構想」と議員定数削減法案をめぐっては高市政権の発足時に自民党内の議論がなされないまま、高市首相と維新首脳との会談で連立政権の合意文書に盛り込んだ経緯がある。このため、野党の反対だけでなく、自民党内の幅広い支持が得られるのかどうか危ぶむ声も聞かれる。

皇族数の確保、食料品消費税実質ゼロ案

安定的な皇位継承をめぐり衆参両院の正副議長が10日、各党派の代表と協議し、皇族数の確保に向けた「立法府の総意」を取りまとめた。

女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧皇族の男系男子を養子として迎える案を「いずれも了」とする内容で、政府は月内にも皇室典範の改正案を今国会に提出し、成立をめざす方針だ。

この「立法府の総意」を読むと女性皇族が結婚後も皇室に残ることは賛同できるが、女性皇族の夫や子どもの身分の扱いは明記されていない。また、皇室が養子を取ることに国民の理解が得られるのか疑問を感じる。

この問題をめぐって高市首相は12日、日本維新の会の藤田共同代表と官邸で会談し「自民党と維新の連立政権なので、まずは制度設計の細かいところまで両党でつめてほしい」と要請した。

これに対し、野党からは「こうしたやり方では、『立法府の総意』は無視することか」と反発や批判が相次いでいる。

この問題の背景には、高市首相など保守派の議員の間では「皇位の継承は、男系男子に限るという伝統を守るべきだ」との考えが強く、「皇族数の減少が続く中では、女系女性天皇も認めるべきだ」とする考え方との間で大きな違いがある。

「立法府の総意」はこうした違いを踏まえて取りまとめただけに、政府の改正案の取りまとめ方によっては与野党の意見の違いが表面化し、終盤国会の運営に影響する事態も予想される。

高市政権にとっては6月にはもう一つ、首相肝いりの政策について重要な判断を迫られる。超党派の「国民会議」で議論が続いている食料品の消費税率ゼロと、給付付き税額控除の取りまとめを受けて、政府としてどのような方針を打ち出すかという問題だ。

食料品の消費減税をめぐっては17日、「国民会議」の議長案が示された。それによると来年4月から税率を1%に引き下げ、給付と組み合わせることで「消費税率を実質ゼロ」にするとしている。

これに対し、野党からは「国民会議の議論は給付付き税額控除が中心で、消費税率の議論は行っていない」として強く反発している。また、消費減税で本当に価格が下がるのか、2年後に税率を元に戻せるのか、財源の確保はできるのかといった多くの問題を抱えており、国民会議のとりまとめは難航が必至の情勢だ。

中傷動画含め懸案集中、政権・与野党は

今の国会では、高市首相の陣営が自民党総裁選や衆院選で他陣営を中傷する動画を拡散したとする週刊文春の報道が取り上げられ、首相と野党側の応酬が続いている。

この問題をめぐっては共同通信も動画を作成した男性のインタビューを報道し、首相の秘書から総裁選で相談を受けたことや、衆院選では首相を含む与野党約50人の陣営から対立候補に関する動画の作成を頼まれ、うち20人に協力したと証言した。

この問題は、最高権力者である首相の信頼性に関わるとともに、SNS時代の選挙のあり方・公正さに関わる重要な問題だ。

それだけに、まずは「事実関係」を明確にすることが不可欠だ。高市首相が率先して事実関係を説明するとともに、秘書についても国会に招致するなどして事実関係を解明してもらいたい。

このほか、中東情勢はアメリカとイランの戦闘終結に向けた覚書の署名式典が19日に行われ、1つの節目を迎える。日本外交は同盟国のアメリカだけでなく、友好関係にあるイランへの働きかけが十分に行えたのか、戦闘終結後のホルムズ海峡の安全航行にどのような役割を果たしていくのか掘り下げた点検が必要だ。

このように国会の残り会期は1か月となり、重要法案の扱いをはじめ、首相陣営の政治倫理、ホルムズ海峡の安全航行、物価高騰や社会保障のあり方などさまざまな懸案が集中して目白押しの状況だ。

こうした中で、気になるのは野党陣営の対応で、衆院選で大敗した影響が残っているとはいえ、政権をチェックする機能を果たせているようにはとても思えない。法案をめぐって与党に協力することはあるにしても、徹底した議論を尽くすことが必要だ。

国会の会期末に向けて私たち国民も、衆院選で歴史的圧勝を収めた与党・高市政権が内外の懸案に真正面から取り組んでいるのかどうか、特に政治課題の優先順位などの判断が適切になされているか見極めていく必要がある。(了)

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後半国会 ”イラン情勢と外交・経済対応”が焦点

大型連休が終わって国会は、衆議院を通過した国家情報局設置法案の審議が8日、参議院本会議で審議が始まった。また、裁判のやり直しの制度を見直す法案の国会提出に向けて、自民党内で条文の調整が続いているほか、衆議院では防災庁設置法案など重要法案の審議も本格化する見通しだ。

後半国会ではこうした重要法案をめぐって、与野党の審議と攻防が活発になる。一方、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃のゆくえと、原油や石油関連製品の供給不足や価格高騰がどうなるのか、各国にとって最大の関心事項だ。

原油輸入の9割を中東に依存している日本にとって、イラン情勢の緊張が長期化した場合、石油関連製品の高騰が続き、企業や産業、国民生活に大きな影響が避けられない。

このためイラン情勢によって、後半国会の展開はガラリと変わり、高市政権も新たな対応を迫られる。その後半国会で高市政権は、具体的にどのような点が問われることになるのか探ってみたい。

イラン情勢、経済・暮らしに影響広がる

さっそく、イラン情勢からみていきたい。アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は合意が近いとの見方が伝えられるが、ホルムズ海峡の開放やイランの核濃縮の扱いをめぐって双方の主張には隔たりがあり、先行きは不透明な状況が続いている。

日本政府は、備蓄原油の2回目の放出を5月1日に行ったほか、ホルムズ海峡以外からの原油調達を進めている。その結果、原油や、原油を精製してつくるナフサの供給は「年を越えて継続できる見込みとなった」と盛んにアピールしている。

こうした一方で、国内では原油やナフサの供給不安による影響がさまざまな分野で広がっている。ナフサはプラスチック製の資材や医療機器、食品の包装、ゴム製品など幅広い用途に使われているため、さまざまな業界で「物が手に入らない」との悲鳴が上がっている。

イラン情勢の悪化が長期化すれば、石油関連製品の品不足が深刻化するほか、夏から秋にかけて価格高騰の波が押し寄せ、国民生活がさらに圧迫される事態も予想される。

強い経済路線、高市首相 節約に消極的

こうしたイラン情勢の悪化に伴う石油関連製品の不安や価格高騰を受けて、与野党からは、原油価格高騰対策を盛り込んだ補正予算案を早期に編成すべきだという意見が相次いでいる。

これに対して高市首相は、原油は備蓄の放出と調達先の多角化で、原油とナフサ、石油関連製品についても「年を越えて供給を維持できる」と強調している。

補正予算案についても「今年度予算の予備費が活用できる」として、現時点では補正予算案の編成は必要な状況ではないとの考えを示している。

さらに与野党から「中東情勢の長期化に備えて、エネルギーの節約など需要抑制を呼びかけてはどうか」との提案が出されているが、高市首相は「あらゆる可能性を排除せず、臨機応変に対応していく」として、明確な態度表明を避けている。

高市首相は「強い経済」を掲げて高い支持率を維持してきたことから、景気に冷や水を浴びせかねない節約の要請は避けたいというのが本音だとみられる。

野党各党は連休明けに再び、原油高騰を受けた経済対策を盛り込んだ補正予算案編成の要求を強める構えだ。国民民主党は、中低所得者層を対象に5万円の給付や電気・ガス料金の負担軽減などを求めていく方針で、高市首相の対応が注目される。

6月に懸案集中、決断迫られる高市首相

それでは、これからの政治の動きはどのような展開になるだろうか。外交面では、今月14日から2日間の日程で、トランプ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と米中首脳会談を行う。米中の貿易・経済関係や台湾問題、それに中東情勢についても意見が交わされる見通しで、各国の外交政策に多大な影響を及ぼす。

また、6月15日から3日間の日程でG7=主要国首脳会議がフランスで開かれる。ホルムズ海峡の航行をめぐっては、アメリカと、イギリス・フランスなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ安全航行の枠組みづくりを進めている。米欧の間で日本はどのような役割を果たすのか高市首相の外交手腕が試される。

一方、内政では6月には、政治判断を伴う重要な懸案が相次ぐ。まず、高市首相が「悲願」と位置づける「食料品の消費税率ゼロ」について、国民会議が6月に「中間とりまとめ」を行う予定だ。国民会議では有識者や与野党から、レジの改修などの実務的な問題点が数多く指摘され、消費減税には慎重論や反対論が強まっている。

高市首相は衆院選で公約した政策であることから、当初の方針通り消費税率ゼロの方針を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案の提出をめざす考えとみられる。こうした高市首相の方針と国民会議の議論にはズレが目立っており、調整力が問われる。

また、国民会議との関係では中低所得者層の負担軽減を図る「給付付き税額控除」の扱いも問題で、食料品の消費税率ゼロ政策と合わせてどのようなタイムスケジュールで実施していくかも焦点だ。

さらに、6月は高市内閣にとって初めての中長期の経済・財政の方針となる「骨太方針」を決定する予定だ。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、給付付き税額控除や防衛力の抜本強化を実現するための財源を含めて、説得力のある将来像を提示できるかが問われる。

こうした懸案に加えて、イラン情勢の緊迫化に伴う補正予算案を編成するか否かの問題を抱えている。今の国会の会期末は7月中旬であり、これから6月にかけて判断をせまられる。このように6月には、数多くの重要な政治課題が押し寄せる見通しだ。

その際、物価高騰対策の補正予算に踏み切る場合、与党内からは「食料品の消費減税は取り止めて、給付付き税額控除先行に切り替えるべきだ」といった意見も出されている。

これに対して、自民党の閣僚経験者は「高市首相は、選挙公約を取り下げるような選択はしないのではないか」との見方をしており、主要政策の調整が問題になる見通しだ。

高市政権は政権発足から半年が経過しても高い支持率を維持しているが、外交面では、日本経済にとって死活的に重要な「ホルムズ海峡の安全航行」をどのように実現していくのか、高市政権の外交力が厳しく問われることになる。

また、内政面では、イラン情勢に伴う石油関連製品の価格高騰対策など当面の対応策と、中長期の主要政策についても優先順位をつけながら決定できるのかどうか、高市政権は正念場を迎えている。(了)

★追記(5月11日21時)高市首相は11日の参院決算委員会で「日本全体として、原油も石油関連製品も必要な量は確保できている」として、現時点で国民に対し踏み込んだ節約を呼びかける段階ではないという考えを示した。また、現時点では補正予算案の編成は必要ではないという認識を示した。

★追記(5月18日21時)中東情勢を受けて、高市首相は18日に開かれた政府与党連絡会議で、今年度の補正予算案の編成を含め、検討を行うよう片山財務相に指示したことを明らかにした。また、与党に対し、今年7月から9月までの電気・ガス料金の支援策をまとめるよう要請した。

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高市内閣 発足半年 ”経済・イラン情勢対応”がカギ

高市内閣が発足してから、今月21日で半年を迎えた。内閣発足当初は衆参両院とも与党は過半数割れしていたが、2月の衆院選挙で自民党単独で3分の2を上回る316議席を獲得して圧勝を収めた。内閣支持率も発足から半年経った今も60%台と異例の高い水準を維持している。

今の国会では、新年度予算は暫定予算を経て、短期間で成立にこぎ着けた。高市首相肝いりの「国家情報会議の設置法案」などの重要法案も審議が順調に続いている。

高市政権のこれからの政権運営はどのようになるのだろうか。ポイントは、衆院選で掲げた食料品の消費税率ゼロなどの経済政策と、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が沈静化に向かうのかどうか、先行きが読めない中での対応になる。今後の政治の展開を探ってみたい。

発足半年でも高支持率、安倍政権以来

去年10月21日に発足した高市内閣は、去年12月に補正予算を成立させたのに続いて、今月7日には新年度予算を成立させた。但し、高市首相は新年度予算案の年度内成立にこだわり、衆院では強引な審議を押し通したが、野党多数の参院では跳ね返されて年度内成立を断念し、批判をあびた。

一方、外交面では2度にわたって日米首脳会談を行い、トランプ大統領と信頼関係を強める一方、台湾有事をめぐる存立危機事態の国会答弁で、中国側の反発を招き日中関係は悪化した状態が続いている。

政権発足から半年、国民は高市政権の政権運営をどのようにみているか、NHKの4月の世論調査(10~11日実施)によると次のようになっている。

高市内閣の支持率は61%に対し、不支持率は22%だった。内閣発足時の支持率は66%で、3月に59%に下がったが、4月に再び60%台に戻した。読売新聞の調査(17~19日)では支持率は66%、朝日新聞の調査(18・19日)では支持率は64%で、いずれも高い水準を保っている。

このように内閣発足時の高い支持率を半年後も保っているのは、2012年に発足した第2次安倍内閣を除けば、それ以降で初めてのケースだ。安倍内閣の場合、発足時が64%で、半年後も62%で高い水準を維持した。

その後の歴代内閣の発足時と半年後の支持率はそれぞれ次のようなデータだ。◇菅内閣62%⇒40%、◇岸田内閣49%⇒53%、◇石破内閣44%⇒35%。

支持率が高い政権の場合、50%を割り込むのがいつになるのかを政界関係者は注目するが、安倍政権の場合は、政権発足から1年7か月後だった。

安倍、高市両政権を単純に比較できないが、高市政権の支持率が高いのは、初の女性首相という効果と期待値によるところが大きいとみられる。ただ、内閣支持率はどの政権でもいずれ下降に転じる。下降局面がいつになるのか不明だが、50%ラインを割り込むと、政治・政局が動き出す一つの目安になる。

今国会、政府提出法案の多くが成立か

さて、新年度予算が成立した後の後半国会はどのように展開するだろうか。衆議院の与野党が最も重視し、首相の出席を求めて法案の趣旨説明などを行う「重要広範議案」には、次の4つの法案が決まった。

◇政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能を強化する「国家情報会議」設置法案、◇「防災庁」の設置法案、◇市販の「OTC類似薬」で患者に追加負担を求める健康保険法改正案、◇再審制度見直しの刑事訴訟法改正案の4法案だ。

このうち再審制度見直し法案を除いて、いずれも衆院で審議が始まっており、特に高市首相が「国論を二分する政策」として重視している「国家情報会議」設置法案について、与党側は今週24日までの衆院通過をめざしている。

このほか、この国会では連立を組んでいる維新が重視している◇副首都構想法案、◇衆議院議員の定数を削減する法案、◇日本国旗の損壊罪を制定する法案の提出が予定されている。

衆院は与党が圧倒的多数の議席を確保していることから、多くの法案の審議が与党ペースで進む見通しだ。

一方、参院では野党が多数を占めていることから、与党側がどこまで丁寧に審議を働きかけ、野党の理解を得て成立にまでこぎ着けられるかが焦点になる。今国会の会期末は7月17日と時間的な余裕があるので、与野党対決法案を除いて、かなりの数の政府提出法案が成立する可能性が大きい。

夏から秋、経済・外交への対応がカギ

高市首相にとって難題は、自ら「私の悲願」と位置づける食料品の消費税率ゼロと「給付付き税額控除」の政策をどのような道筋で実現にこぎ着けられるかだ。

食料品の消費減税について、有識者と与野党で構成する「国民会議」で議論が進められている。高市首相は6月に中間報告を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出し、2026年度中の実施に言及したこともある。

これに対し、「国民会議」の関係者や野党側から「消費税減税は、どこまで食料品の値下がりにつながるかわからない」「外食産業や農業などへの影響や問題点が多すぎる」など慎重論や反対論も相次いでいる。

自民党の幹部の一人は「高市首相は衆院選の公約として掲げたこともあり、規定方針通り突き進む可能性の方が大きいのではないか」との見方を示している。

一方、イラン情勢の悪化に伴う原油の確保について、政府は「ホルムズ海峡を通らない代替ルートで原油の調達が進み、年明けまで必要な量を確保できるメドがついた」と強調しているほか、流通の目詰まりへの対策も強化していると説明している。

問題は、石油関連製品などの価格高騰への対応だ。自民党内からは「原油の量は確保できても、原油価格の高騰や石油関連製品の値上げは確実で、中小企業や農林水産業など幅広い分野に影響が出ることが予想される」として、補正予算の編成を急ぐべきだとの意見が広がり始めた。

このようにこの夏から秋にかけては、国会終盤での重要法案をめぐる与野党の攻防と、高市首相肝いりの食料品の消費減税などの重要政策の制度設計、それにイラン情勢の影響が長期化した場合の対応が重なる事態が予想される。

その際、高市首相は内政と外交全般にわたって、どこまで指導力を発揮することができるのか。また、首相官邸と自民党との意見調整と連携がうまく機能するのかが焦点になる。その結果によっては、国民の高市政権に対する評価に変化が予想され、この二つの焦点が政治のゆくえを読むうえで大きなポイントになるとの見方をしている。(了)

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後半国会 ”高市カラー法案”続々、足元に不安も

国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。

一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。

イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。

重要法案審議入り、野党の協力がカギ

後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。

また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。

さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。

日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。

このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。

こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。

衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。

このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。

高市首相と自民に溝、相互不信の芽も

高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。

具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。

こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。

また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。

こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。

高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。

後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。

イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も

ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。

一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。

さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。

このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。

13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。

イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)

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予算の年度内成立 断念 “高市首相に参院の壁”

新年度予算案をめぐり政府・与党は、高市首相が強い意欲を示してきた予算案の年度内成立を断念した。これに伴い予算成立までのつなぎとなる「暫定予算」が30日成立した。衆議院では自民・維新の与党と中道、国民民主、参政の各党が賛成、参議院では立民、公明両党も賛成した。

続く31日には、4月から実施予定の高校授業料無償化や税制改正関連法案などについても与野党の賛成多数で可決・成立した。「暫定予算」を組むのは2015年以来、11年ぶりだ。こうした措置よって新年度予算案は成立していないものの、国民生活に直接支障が出るような事態は避けられている。

一方、この国会では衆院選挙で圧勝した高市政権がどのような政権運営を行うのかも焦点の1つだった。最初のテーマになった新年度予算案をめぐって高市首相は「数の力」を背景に予算案の年度内の成立を押し通そうとしたが、最終的には野党が多数を占める「参議院の壁」に押し返された。

ここまでの高市首相の政権運営をどのようにみるか。後半国会ではどのような対応が問われることになるのか、国会や政権の運営のあり方などについて点検しておきたい。

 ”国会運営に疎い首相”との見方も

今回、新年度予算案をめぐって与野党が対立した理由・論点は極めてわかりやすい。野党側は1月に衆院選挙が行われたことから、年度内の成立は日程的に困難だとして、早い段階から政府・与党側に暫定予算案を編成するよう求めてきた。

自民党内も当初、予算案の成立は4月末の大型連休前を想定する見方が多かった。ところが、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、自民党は急遽、年度内成立へとカジを切った。

衆議院で予算案の実質審議入りしたのが2月27日で、例年より1か月遅れだった。予算審議をめぐっては坂本予算委員長が職権で日程を次々に決定した。例年70時間から80時間かけて審議してきたが、今年は59時間と2000年以降最短に圧縮して予算案は衆院を通過した。

政府・与党は参議院でも年度内成立をめざしたが、参議院は野党が多数を占めており、参院自民党も強行路線をとらなかったことから、予算案の年度内成立は見送りとなり、暫定予算を編成することになった。

こうした政府・与党の対応について、野党側は「予算案の年度内成立が無理なことは、通常国会の冒頭解散になった時から明らかだった。選挙に圧勝したことで高市首相は自信過剰となり、国会の見通しにも甘さが出たのではないか」と厳しい評価をしている。

自民党執行部からは衆院選を圧勝に導いた高市首相を直接、批判するような意見は出ていないが、党内には参院の情勢を判断できず最後まで年度内成立にこだわり続けた高石首相に冷ややかな見方もある。

また、「首相官邸と、衆議院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間の意思疎通並びに連携がとれていないのが一番の問題」といった意見も聞かれる。

さらに別の自民党関係者は「高市首相は政策には精通しているが、国会の運営や党内調整、参議院自民党の立ち位置などの基本認識に疎いところがある。党執行部も首相と率直に話ができる関係にならないと安定した党運営は難しいのではないか」と指摘する。

予算成立後も試される首相の力量

それでは4月以降の国会の動きはどうなるだろうか。参院予算委員会で審議が続いている新年度予算案は、4月1日と2日に分野別に各委員会で審議する委嘱審査が行われることが決まっている。

自民党は一日でも早く予算案を成立させる必要があるとして、4月3日までに成立させるよう求めているが、野党側は高市首相の出席を求めて集中審議を行うことを主張している。このため、4月第1週の採決は難しく、第2週にずれ込むのではないかとの見方が出ている。

新年度予算案は既に衆議院で可決されていることから、憲法の規定で参議院で採決が行われなくても11日には自然成立する。このため、参議院の与野党とも11日の前までには採決を行うものとみられる。

4月以降の後半国会で政府・与党は、インテリジェンス(情報収集・分析)政策の司令塔となる「国家情報会議」設置法案を推進することにしているほか、連立を組む維新が強く求めている副首都法案や、衆議院議員の定数削減法案など与野党の対決色が強い法案の扱いが焦点になる見通しだ。

その際、高市首相は予算審議の教訓を踏まえて、野党側の協力を得るためにどのような姿勢で臨むのか、また自民党執行部との関係を強化できるかが問われることになりそうだ。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は低下している調査結果はあるものの、全体として高い水準を維持している。ただ、イラン情勢の悪化が長期化するとエネルギー価格の高騰と供給量の確保、物価高や企業支援などの難題が政権を直撃することも予想される。

その結果、高市政権がめざしている食料品の消費税率ゼロや、危機管理投資、防衛力の抜本強化といった高市カラーの政策に影響が出ることも予想される。

自民党の長老に高市政権について聞くと「内閣支持率は高いが、実績の評価というよりも期待値だろう。高市首相は首相官邸に閉じこもることが多いと聞くが、イラン中東の危機に的確に対応できるか、重要法案を着実に成立にこぎ着けられるか、本当の力量が試されるのはこれからだ」との見方を示す。

ここまでみてきたように高市首相は衆院選の圧勝で自民党内の基盤を強化した一方で、与党の過半数割れが続く参議院では依然として不安定な状況に立たされていることが浮き彫りになった。後半国会では衆参ねじれの状況を克服できるのかどうか、高市首相の力量が試される。(了)

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”虎の尾踏まず、されど展望開けぬ”日米首脳会談

イラン情勢の緊張が続く中で、訪米中の高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談が日本時間の20日未明、行われた。日本にとって最大の焦点になっていたホルムズ海峡に艦船を派遣する問題については、高市首相が「日本の法律でできることとできないことがあり、可能なことは対応する」などと説明した。

これに対しトランプ大統領から、艦船の派遣など具体的な要求を突きつけられることはなかった模様で、高市首相は難しい首脳会談を何とか乗り切ることができたようだ。

政府関係者は「会談は成功だった」と成果を強調する。だが、イラン戦争をめぐる停戦への道筋、ホルムズ海峡の安全航行、重油の確保と価格高騰の抑制などの根本問題は手つかずのままだ。今回の日米首脳会談をどのようにみたらいいのか会談内容を点検してみたい。

虎の尾を踏まず、艦船派遣は回避

高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談は、日本時間の20日午前0時40分から1時間半にわたって行われた。

この中で、高市首相はイラン情勢について、事態を沈静化することが必要だとしたうえで、イランによる周辺国への攻撃やホルムズ海峡の実質的な封鎖を非難する日本の考えを伝えた。

また、トランプ大統領が意欲を示すホルムズ海峡への艦船の派遣について、高市首相は「日本の法律の範囲内でできることとできないことがあり、可能なことは対応する」などと説明した。

そして両首脳は、中東地域の平和と安定の実現に向けて緊密に意思疎通を続けていくことで一致した。

会談終了後、高市首相はホルムズ海峡への艦船の派遣について「機微のやり取りではあるが、ホルムズ海峡の安全確保は非常に重要だということだった。ただ、日本の法律の範囲内でできることとできないことがあるので、これについては詳細にきっちりと説明をした」とのべた。

これに対してトランプ大統領がどのような反応を示したか、高市首相は言及しなかった。一方、会談に同席した政府関係者は「一言で言うと会談は成功裏に進み、成功裏に終了した。対面では2度目の会談だが、2度目とは思えないほどの信頼の絆を感じた」とのべ、一定の理解を得られたとの認識を示した。

今回の首脳会談をめぐって日本側は、トランプ大統領からホルムズ海峡への艦船派遣や、予想のつかないような要求が飛び出すのではないかと警戒していた。加えて高市首相についてもトランプ大統領の注文を請け負ったりするのではないかと懸念する声も聞かれた。

こうした中で行われた日米首脳会談の冒頭、メデイアに公開された場面で高市首相は「私は世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っており、諸外国に働きかけてしっかりと応援したい。きょうはそれを伝えに来た」とトランプ大統領を持ち上げた。

この発言をめぐっては「世界に戦争と混乱をもたらしている人物を賛美するもので、適切な評価と言えない」といった指摘や批判が相次いでいる。

一方、日本にとってホルムズ海峡への艦船派遣は、死活的に必要なエネルギーの確保と、日本の憲法や現行法制の下での安全保障行動を両立させることができるのか、難問であることも事実だ。

それだけに今回の首脳会談のタイミングで、この問題を先送りするのはやむを得ない面があると個人的に考える。別の言い方をすれば「虎の尾を踏まずにリスクを回避するのも一法」ではある。ただ、それだけに終わってしまうと今後の展望が開けないので、停戦など将来に向けた布石を打っているのかも問われるところだ。

経済分野 米国産原油 生産拡大へ協力

今回の日米首脳会談で、日本側は経済分野で新たなプロジェクトを提案し、アメリカ側と取り組みを進めることで一致した。

エネルギー関係では、アラスカ州の原油を増産して日本に輸入する方針で、供給量を増やし原油市場を落ち着かせるねらいもある。日本にとって、アラスカ州の原油は輸送にかかる日数が中東より10日ほど短く、輸送上のリスクも少ないというメリットがある。

原子力発電では「SMR」と呼ばれる次世代型の小型原子炉を建設する案件が盛り込まれたほか、天然ガスの発電施設を建設する案件も入っている。こうしたプロジェクトの総額は、最終的に最大で730億ドル・日本円で11兆円を超える見込みだ。

こうした一連のプロジェクトは、去年日米両政府がまとめたアメリカへの「80兆円規模の投資計画の第2弾」として位置づけられ、日米首脳会談にあわせて共同文書として発表された。

こうした経済分野の協力が、イラン情勢への対応でトランプ大統領が日本に対し手柔軟な姿勢をみせた要因の一つになったことも考えられる。

ただ、アラスカ原油については増産が可能な時期や量、それに生産コストの問題を抱えている。次世代型の小型原子炉も実用化までの課題が多いのも事実だ。

残る根本問題 停戦・安全航行・原油高

今回の日米首脳会談でをめぐっては「成功した」との評価を政府関係者などから聞くが、イラン情勢の根本問題は依然として残されたままだ。

アメリカとイスラエルによるイランに対する軍事攻撃はいつ収束することになるのか、見通しははっきりしない。今回の日米首脳会談でどこまで踏み込んで意見交換がなされたのかも明らかではない。

また、日本は原油輸入の9割以上を中東に依存し、そのほとんどがホルムズ海峡を通過している。ホルムズ海峡の安全航行をどのようにして実現するのか、日本にとって死活的に重要な問題だが、事実上の封鎖が続いている。

日本はイランと歴史的にも友好な関係にあるので、高市政権としては同盟国アメリカとイラン双方に早期停戦と海峡の安全航行の実現を強く働きかけることが求められている。こうした点についてもアメリカ側への説明はなされたのだろうか。

さらに日本にとって原油価格が高騰するとガソリンなど値上げのほか、石油関連製品の価格上昇にみまわれる。原油輸入の減少が長期化すると日本経済そのものが直撃され、大きな影響を受ける。

このほか、今回の日米首脳会談はトランプ大統領の訪中を前に日米双方が対中政策をすり合わせることを目的にしていたが、イラン情勢への対応に焦点が移ってしまった。対中政策について、日米両国の調整は進んだのだろうか。こうした首脳会談の中身はどうだったのか肝心な点がはっきりしない。

週明けの国会では、参院予算委員会の集中審議で日米首脳会談をめぐって議論が交わされる見通しだ。高市首相をはじめとする政府は、日米首脳会談を踏まえてイラン情勢の収束と原油輸送の安全航行、原油高騰対策にどのような方針で臨むのか、注視している。要は、日本の外交力と政権の実行力が問われているのである。(了)

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予算案衆院通過”参院で続く攻防、年度内成立は不透明”

衆院選後の特別国会前半の焦点になっている新年度予算案は、13日夜の衆院本会議で自民党と日本維新の会の賛成多数で可決され、参議院へ送られた。

新年度予算案の審議は例年、衆参両院でそれぞれ1か月程度ずつ時間をかけて行われてきたが、今年の衆院審議は2週間余りに圧縮され、審議時間も59時間と今の審議方式となった2000年以降、最も短くなった。高市首相が予算案の年度内成立を強く求めたことが影響しており、予算審議のあり方に禍根を残した。

予算案の衆院通過を受けて、16日から参議院の予算委員会に舞台を移して審議が始まる。参議院は与党が過半数割れしていることから、与党が思うような委員会運営は困難とみられ、高市首相が強いこだわりをみせている予算案の年度内成立ができるかどうか不透明な情勢だ。

衆院選で圧勝した高市政権の国会運営や、参院で始まる予算審議のどこを注視していく必要があるのか、探ってみたい。

 職権決定連発、過去最短の予算審議

まず、新年度予算案の衆院通過をどのようにみるかだが、結論から先に言えば「質、量ともに内容が乏しく乱暴な予算審議」と言わざるを得ない。

「質」の面では、新年度の予算案は一般会計の総額が過去最大の122兆円に上るが、掘り下げた議論はほとんどみられなかった。高市首相は国民の関心が強い物価高対策として、食料品の消費税率ゼロを打ち出しているが、実現は早くても来年で、それまで具体策として何をするのか依然として不明なままだ。

防衛費は初めて9兆円を超えたが、今後の防衛力の抜本強化ではどのような分野に重点を置くのか、そのための財源をどのように確保するのか国民が知りたい点については明らかになっていない。

「量」の面では、新年度予算案の審議は高市首相が通常国会冒頭の解散に踏み切ったことから、例年に比べて1月遅れの2月27日から始まった。例年、衆院と参院で1か月ずつ審議を行うため、与野党とも予算案の成立は4月末までずれ込むとみていたが、高市首相は年度内成立に強い意欲を示した。

これを受けて与党は、衆院選で得た圧倒的な議席数を背景に審議日程を圧縮し、坂本予算委員長が職権で審議日程などを次々に決定した。

こうした結果、衆院の審議時間は59時間、2000年に今のような審議方式になって以降、最も短い。例年70時間から80時間、1か月かけて審議してきたが、大幅に縮小した。

予算審議が最短で終わった背景としては、高市首相が年度内成立に強いこだわりを示したことが大きく影響した。予算審議が始まる前には、首相が官邸に自民党の衆参幹部を呼び、年度内成立を指示した。

自民党内は、衆院選圧勝を導いた首相に異論を挟むのは難しいとの空気が強く、高市首相の指示をそのまま追認する状態が続いている。

一方、野党側も衆院選大敗で議席数を大きく減らしたこともあって、高市政権の政治姿勢などを厳しく追及することができていないのが実状だ。

このように今年の衆院の予算審議は、首相が年度内成立にこだわった結果、予算案の衆院通過の時期に与野党の関心が集中し、論戦も極めて不十分なまま終わってしまった。国民生活に直結する予算審議のあり方について、高市首相や与野党双方とも猛省が必要だ。

続く攻防、首相の政治姿勢と手腕は

さて、新年度予算案の論戦の舞台は参院に移り、16日と17日には高市首相と全ての閣僚が出席して基本的質疑が行われる。

予算案は憲法の規定で、参議院で採決が行われない場合でも衆議院を通過して30日経過する4月11日には自然成立する。だが、政府・与党はあくまで年度内成立をめざす方針を変えていない。

一方、野党側は、衆院で十分な審議日程がとられなかったことに強く反発しており、参議院では例年並みの審議日程を確保するよう求めていく方針だ。そして憲法の規定に沿って暫定予算を組むよう求め、この中にイラン情勢悪化に伴う緊急対策などを盛り込むように求めていく構えだ。

参議院では自民・維新の与党だけでは過半数に達していないことに加えて、野党側が慎重審議求めていることから、予算案の年度内成立は不透明な情勢だ。最終的には、政府が暫定予算を組むことになる可能性もある。

衆議院では予算案をめぐる掘り下げた議論ができなかったため、参議院では「再考の府」「熟議の府」として、国民が知りたい点について踏み込んだ議論を尽くす必要がある。

一方、高市首相は18日から4日間の日程で訪米し、トランプ大統領と日米首脳会談を行う。緊迫したイラン情勢への対応をはじめ、東アジアの安全保障、日本の対米投資のあり方など幅広いテーマで意見をが交わす見通しだ。

参議院予算委員会では日米首脳会談の報告を踏まえて、イラン情勢の悪化に伴う物価高騰対策や経済対策が焦点になる見通しだ。与野党は緊急に実施すべき対応策についても議論を深め、必要な対策を早期に実施していくことが必要だ。

NHKの3月の世論調査(3月6~8日実施)によると高市内閣の支持率が59%と前月に比べて6ポイント下落する一方、不支持率は26%で6ポイント増えた。世論の高市政権への視線は衆院選挙時の熱気が冷めて、政権の内外対応を冷静に見極めようとする姿勢がうかがえる。

衆院選で圧倒的多数を得た高市政権は、衆院段階の予算審議では”横綱相撲”ではなく、数にまかせた乱暴な姿勢が露わになった。参議院での予算審議ではこうした政治姿勢が修正できるのか、またイラン情勢など内外の激動に的確な対応ができるのかどうか、高市首相の手腕が問われることになる。(了)

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