政権の浮沈かかる”2月政局”

新型コロナ対策の緊急事態宣言が出される中で始まった通常国会は、28日に第3次補正予算が成立し、”第1ラウンド”が終了した。補正予算の規模は19兆円の大型だが、コロナ対策は4兆円余りに止まっている。

論戦では、各地で入院できないコロナ感染者が、自宅や搬送中に亡くなる深刻な事態が取りあげられたが、政府側から、病床の確保や医療危機回避に向けた新たな対応策は打ち出されず、大きな問題として残ったままだ。

さらに緊急事態宣言が続く中で、自民党と公明党の幹部が、深夜まで東京・銀座のクラブなどを訪れていたことが明らかになり、世論の厳しい批判を浴びている。

国会は例年であれば、直ちに新年度予算案の審議に入るところだが、今年はコロナ問題で例年とは異なった国会運営になりそうだ。そのコロナ対応と、新年度予算審議が重なる、2月の国会や政治の動きはどうなるのか。菅政権への影響も含めて「2月政局・政治の動向」を探ってみたい。

 法改正 「刑事罰」削除で合意

補正予算が成立した後、政府・与党は対策の効果を強めるため、コロナ対策の特別措置法や感染症法などの改正案を先行して審議、成立させる方針だ。このため、補正予算の審議と並行して、政党レベルの協議を進めてきたが、28日に自民党と立憲民主党の幹事長間で、法案を修正することで正式に合意した。

焦点になっていた入院を拒否した感染者に対する刑事罰について「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」としていたのを、懲役刑を削除するとともに、罰金を行政罰の過料に改め、金額も50万円以下に引き下げるとしている。

また、営業時間の短縮命令などに応じない事業者に対して、50万円以下の過料に科すとしていることについても金額30万以下に減額するとしている。

いずれも与党側が、譲歩する形で決着した。政府・与党は29日から審議に入り、2月3日にも成立する見通しだ。但し、この法改正は、周知期間を置くため、施行は2月中旬になるとみられている。

 緊急事態宣言 延長の公算

次に東京など11都府県に出されている緊急事態宣言の期限を延長するかどうかについても、2月第1週に判断することが迫られる。宣言の期限は2月7日だが、直前では事業者などへの影響が大きいので、週の半ばには方針を決めたい考えだ。

菅首相や西村担当相の国会答弁では、感染状況や医療のひっ迫状況などを総合的に判断するとしているが、現在の感染状況「ステージ4」から脱却できるメドはついていないため、緊急事態宣言は延長の公算が大きいとみられている。

問題は、延長の期間と感染抑止の取り組み方をどうするか。菅首相は1月7日に1都3県に緊急事態宣言を出した際の記者会見で「1か月後には、必ず、事態を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と強い決意を表明した。

それだけに宣言を延長する場合は、政治責任とともに、事態を改善できなかった原因と今後の対策をどうするか。それに延長期間をどのように設定するかが問題になる。

特に感染防止策について、菅首相は飲食店の時間短縮に重点を置いたが、そうした対策の是非。また、深刻さを増している病床不足などの医療提供体制をどのように改善していくのか、政府や自治体の具体策が厳しく問われることになる。

 新年度予算審議も綱渡り

通常国会前半の焦点である新年度予算案の審議は、2月に入ってからのスタートになる。一般会計の総額で106兆円、過去最大の規模で、コロナ対策のほか、デジタル化や脱炭素など「菅カラー」を重視した予算になっている。

政府・与党は2月4日にも審議入りしたい考えだ。そして、年度内に成立させるためには、衆議院では3月2日までに採決を行い、参議院に送る必要がある。しかし、審議入りが遅れたため、過去の平均的な審議日程で計算すると、1日でも審議が空転すると参院送付の日程が崩れることになる。

新年度予算案は去年の12月21日に閣議決定したが、その後、コロナ感染が急拡大し、感染拡大防止と経済再生の両立という「二兎を追う」戦略が行き詰まりをみせている。

さらに野党側は、これまで控えてきた吉川元農相の収賄事件や、安倍前首相の「桜を見る会」懇親会の会費補填など「政治とカネ」の問題で攻勢を強めていく構えだ。与野党間で激しい論戦がかわされ、菅政権にとっては予算の年度内成立が可能かどうか、”綱渡りの国会運営”を迫られることになりそうだ。

 ワクチン接種に期待と不安

逆風が続く菅首相にとって、「コロナウイルス克服の決め手」として大きな期待を寄せているのが、ワクチン接種だ。ワクチン担当相に、発信力の強い河野行革担当相を指名した。

ワクチン接種をめぐっては、アメリカの製薬大手「ファイザー」が承認申請したのを受けて、厚生労働省が審査をしているが、2月半ばに承認、2月下旬に医療従事者から接種を開始になるとみられている。

自民党にとっては、年内に実施される次の衆院選に向けて、菅内閣の支持率回復の数少ない武器として、期待が大きい。コロナ難局を一変させる「ゲームチェンジャー」との声も出るほどだ。

一方、「失敗すれば決定的な打撃を受ける」と不安視する声もある。ワクチンをめぐっては、不確定要素が多いからだ。

具体的には、ワクチンが安定して供給されるかどうか。接種体制の問題もある。実施主体は、市区町村だ。国民の大多数が対象の「前例のない接種大作戦」になる。大都市圏から、地方、過疎地、離島などで条件は異なる。医師や看護師などの態勢づくりもたいへんだ。

65歳以上の高齢者は3月下旬から始まる計画だったが、早くて4月1日以降にずれ込む見通しだ。ワクチン接種の準備体制づくりが順調に進むかどうか、政治・政権にも大きな影響を及ぼす。

 政権の浮沈かかる2月政局

菅首相にとって誤算の1つが、緊急事態宣言下の深夜に、自民党の松本純・国対副委員長と、公明党の遠山清彦・幹事長代理がそれぞれ東京・銀座のクラブなどを訪れていたことが明らかになり、世論の猛反発を受けていることだろう。

補正予算は成立したが、”予算成立効果は帳消し”と言えるのではないか。予算委員会では、コロナ対策をめぐって野党側から「菅総理の答弁では、国民に危機感が伝わらない。首相の自覚や責任感はあるのか」などと批判を浴びていたことに加えて、陳謝を重ねることにもなった。世の中に”菅政権への不信感”を増幅させた。

以上、見てきたように2月は、特別措置法などの法案の修正をはじめ、緊急事態宣言の扱いと今後の対策、さらに本予算の審議、ワクチン接種準備と節目の取り組みが集中しており、「綱渡りの国会、政局運営」が続くことになる。

内閣支持率の下落が続く菅政権が、こうした難局を乗り越えられるか、それとも足を踏み外すようなことはあるのか「政権の浮沈がかかる岐路」にさしかかっているようにみえる。

コロナ国会論戦 防戦続く菅首相

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、通常国会がようやく開会され、各党の代表や幹部が質問に立って論戦が始まった。

菅政権は11都府県に緊急事態宣言を出し、飲食店の営業時間短縮などを打ち出したが、思うような効果は上がっていない。また、国会論戦でも野党側の追及に押され、防戦が続いている。

国民の1番の関心は、コロナ危機を抑え込めるのかにある。また、何を重点に取り組むべきか、与野党に選択肢はあるのか。一方、菅首相に国会答弁能力や危機管理能力はあるのか、首相の資質・能力に疑問符を投げかける見方もある。

今回はやや地味な話になるが、コロナ第3波と政府の対応をどう評価したらいいのか。代表質問の論点を整理しながら「コロナ対策のあり方と菅政権が問われている点」を考えてみたい。

 感染拡大の原因と責任は

代表質問のトップバッターとして登壇した野党第1党・立憲民主党の枝野代表は「今回の感染拡大は、昨年の11月には明らかな兆候が表れていたが、総理はGoToトラベルを続け、必要な対策を先送りしてきた。緊急事態宣言も1月に遅れ、対象地域も追加になった。なぜ、こんなに後手に回っているのか。判断の遅れを認め、反省することから始めるべきだ」と切り込んだ。

これに対し、菅首相は「判断が遅れたとは考えていない。緊急事態宣言に基づき、飲食店の営業時間短縮などの強力な対策を講じることで、何としてもこの感染拡大を食い止めていく決意だ。感染拡大を抑えつつ、雇用や事業を維持するという考えに基づいて必要な対策を講じていく」と反論した。

このように菅首相は、野党の批判に対して「強気の姿勢」が目立ったが、感染拡大を押さえ込む具体的な方策や抑え込みの根拠、見通しなどには言及せず、防戦を迫られる場面が目立った。

 感染抑止戦略・具体策 野党が対案

次に国民にとっては、コロナ感染を押さえ込む基本的な考え方・戦略と、どんな具体策があるのかが、最も知りたい点だ。代表質問では、野党側は従来のような責任追及一辺倒から、具体的な取り組み方の提案に力を入れたのが特徴だ。

立憲民主党の枝野代表は「感染が収まらない中で、経済を活性化させようと人の移動や会食など接触の機会を増やせば、感染が再拡大し、結果的に経済により大きな悪影響を与える」として、「withコロナ」から「zeroコロナ」を目指す方向へと転換するよう迫った。

その上で、具体的な施策の3本柱を提案した。◇「医療の充実」に最優先に取り組み、医療従事者に再度「20万円の慰労金」を支給。◇「感染封じ込め」の徹底、無症状者を含めた感染者の早期把握と確実な隔離。◇「倒産を防ぐ補償と生活支援」だ。

共産党の志位委員長は、3つの緊急対策を提案した。◇PCR検査を無料で大規模に実施すること。◇医療崩壊を防ぐために病院経営の減収補填に踏み込むこと。◇時間短縮に応じた飲食店は、一律の協力金ではなく、事業規模に応じた店舗ごと補償を求めた。

日本維新の会の馬場幹事長は、◇ワクチン接種では、マイナンバー活用のデジタル化と合わせて推進するよう政治決断をすること。

国民民主党の玉木代表は、◇アメリカのバイデン新政権と同じく、家計の下支え政策が重要で、現役世代に一律10万円、低所得者にはさらに10万円上乗せの現金給付を提案した。

コロナ対策では、政府・与党も有効な決定打を持ち合わせているわけではない。野党の対案も検査・医療重視への転換、医療従事者への慰労金など支持したい案もある。今回のコロナ危機ではメデイアや国民は、従来の与党、野党にこだわらず、効果的な対策は積極的に支持・実現していく新たな発想と対応が必要だ。

 菅首相 ワクチン接種に活路

こうした野党案に対して、菅首相は先の施政方針演説で打ち出した飲食店の営業時間短縮や外出自粛要請などに国民の協力を求める答弁が目立った。

また、自民党の二階幹事長や公明党の山口代表が、ワクチン接種の取り組み方を質したのに対しては「できる限り2月下旬までに接種を開始できるよう準備をしており、さらに1日も早く開始できるよう、あらゆる努力を尽くしている」と強調。「河野規制改革担当相に、全体の調整と国民へのわかりやすい情報発信を指示、政府を挙げて全力で取り組んでいく」と強い意欲を示した。

菅首相は、感染抑止対策としてワクチン接種を決め手と位置づけるとともに、東京オリンピック・パラリンピック開催へつなげる戦略だとみられる。平たく言えば、ワクチン接種に活路を開こうとしているように見える。

問題は、海外で開発されたワクチンの安全性や副反応などの審査と2月実施が予定通りスタートできるか。市町村単位で全国民に予防接種を行う前例のない大事業を順調に実現できるか。ワクチン接種が終わるまでに、感染をコントロールできるか際どい作業が続く。

 法改正 罰則導入の是非と範囲

菅首相は、コロナ対策の実効性を高める必要があるとして、特別措置法や感染症法、それに検疫法を改正する方針で、野党に協力を求めている。これは、緊急事態宣言が出されている自治体の知事が、事業者に対して営業時間の変更などを要請したが、応じない場合、行政罰としての科料を科すことができるようにするのが大きなねらいだ。

これに対して、野党側は、菅首相は「特措法改正は感染収束まで行わない」としてきた方針を急きょ転換をしたことに反発があるほか、営業時間の短縮などの命令に応じない事業者に50万円以下の科料を科すなどの罰則を設けることにについては、十分な補償が大前提であると強く要求する方針だ。

また、緊急事態宣言の前の段階でも「まん延防止等重点措置」を規定し、営業時間の変更などを要請、命令できる規定を設けていることは、ノー・チェックとなり認められない。

さらに入院勧告に応じない場合に懲役刑を科すことについては、行政の側は病床も満足に確保できない責任を棚に上げており、全く容認できないなどの意見が出ている。

このように罰則導入の是非や範囲などをめぐって、与野党の間で法案の修正協議が行われる見通しだ。

 問われる首相の答弁能力・発信力

国会は各党の代表質問が終わり、今後は衆参の予算委員会に舞台を移して、一問一答形式の本格的な論戦に入っていく。

与党の長老に感想を聞いてみると「菅首相は防戦に終始しており、感染を封じ込める政権の強いメッセージを発信できていない」と国会乗り切りを不安視している。

21日の参議院本会議での代表質問で、立憲民主党の水岡俊一議員会長が30分にわたって質問したのに対し、菅首相の答弁はわずか10分で終わってしまった。野党理事が「答弁が短すぎる」と”抗議”、議場内で与野党の理事が協議するという珍しい光景が見られた。

首相答弁は「質問者の時間程度になる」というのが長年の相場だ。ところが、菅首相の答弁は1項目あたり文章で2から3センテンス、30秒から40秒程度の素っ気ない答弁が続く。事務方が用意した答弁メモをひたすら読むだけで、質問者向けに配慮するアドリブは全くない。長老が危惧する点だ。

首相には、個性があっていい。能弁タイプだけでなく、剛毅木訥型もありうる。しかし、今回のような先行き不透明で、国民の多くが不安を感じるような局面では、リーダーは政府方針の説明を尽くすこと。軌道修正する場合は、その理由、新たな方針などについても説明を尽し、世論を説得することが必須の条件だ。

菅内閣の支持率も急落している。菅総理の心構えだけでなく、総理を支える政権幹部、官僚との関係まで踏み込んで体制を整備しないと、感染危機の深刻化ともに政権も危機的状況に陥ることも起こりうるのではないか。

1月の最終週は、第3次補正予算案の審議が衆参の予算委員会で行われる。補正予算の成立後は、特別措置法の審議と修正協議に入る。菅首相にとっては、感染拡大の押さえ込みと、国会乗り切りに向けて綱渡りの状況が続くことになる。

 

 

危機感、内容乏しい首相演説 ” コロナ国会”開会

通常国会が18日に召集され、菅首相の初めての施政方針演説が行われた。この演説を皆さんはどのように聴かれただろうか。

施政方針演説は、通常国会の冒頭に時の首相が、向こう1年間の政府の基本方針を説明するものだ。それに加えて、今年はコロナウイルス第3波が急拡大中だけに、首相がどこまで具体策に踏み込むか、注目して耳を傾けた。

ところが、菅首相の演説は「危機感が伝わって来ず、政府の対応策の内容も乏しい演説」と言わざるを得ない。今回の首相演説の中身を点検してみた。

 首相演説 ”最前線に立つ”

最初に施政方針演説の内容を確認しておくと、次のような点がポイントになる。

◆政権を担当して4か月、一貫して追い求めたのは、国民の安心と希望だ。
◆私自身も闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意だ。
◆飲食店の時間短縮などの対策を徹底的に行い、ステージ4を早急に脱却する。
◆特別措置法を改正して、罰則や支援を規定して、対策の実効性を高める。
◆ワクチンを対策の決め手と位置づけ、来月下旬までに接種を開始したい。

「自ら闘いの最前線に立つ」と決意を表明したが、その他のほとんどは既に表明してきた内容に止まっている。

 国民の知りたい点とのズレ

菅首相の演説の評価だが、1番の問題は「国民が知りたい点」に答えていない点だ。具体的には◆感染拡大の第1波、第2波を何とか抑えてきたのに、なぜ、第3波を防げなかったのか。菅政権は「GoToトラベル」など経済活動再開に重点を置いた結果、感染抑止の取り組みが不十分だったのではないか。

◆緊急事態宣言を出すタイミングは年明けになったが、遅すぎたのではないか。

◆コロナ対策の特別措置法の改正もこれから法案を提出するのではなく、去年秋の臨時国会に提出し成立させておくべきではなかったのか。

このように国民の側は「政府の対応は、後手に回っているのではないか」という受け止め方に対して、真正面から答える演説の内容になっていない。国民の受け止め方との間にズレがあり、首相の危機感が伝わってこない。政権担当以来のコロナ対策を総括し、教訓などを率直に表明するところから始めるべきではなかったか。

 感染対策の具体策の強化が必要

国民が知りたい点の2つ目は、感染抑止のためにこれから何をするのかという点だ。菅政権は飲食店の営業時間短縮に重点を置いているが、それで十分なのか。他の対策との組み合わせで、対策の強化を図る必要があるのではないか。

また、兼ねてからPCR検査の拡充、医療・病床の確保、医療機関への支援などの取り組みをどうするのか。特に医療現場の受け入れ体制がひっ迫している事態に対して、病床確保などの取り組み方も取りあげられていない。

さらに、政府と地方自治体、医療機関、専門家などとの連携、総理官邸の総合調整機能が発揮できていないのではないか。

こうした感染対策を組み合わせていく取り組みや、さまざまな分野からの意見や提言を柔軟に取り入れていく体制づくりを進める必要があると考える。

 政権の基本方針・政策を明確に

さらに、コロナ感染の収束はいつ頃を目標にどんな方針で取り組んでいくのかも知りたい点だ。

新型感染症は未知の世界で、具体的な収束の時期などを予測するのは困難なことはわかる。そこで、短期と中期、あるいは様々な事態を想定しながら対応策を進めていかざるをえない。

短期の対応としては、緊急事態宣言の期限が来る2月7日に向けては、宣言の解除ができる場合と、できない場合に分けて具体的な対応の仕方を検討して、事態に応じて臨機応変の対応を望みたい。

また、政府は緊急事態宣言の根拠になっている特別措置法や、感染症法を改正し、それぞれに罰則を導入して実効性を上げていきたい考えだ。

これに対して、野党側は営業時間の短縮や休業を求める場合は、補償や支援とセットにする必要があると主張しているほか、罰則の導入についても慎重な意見もある。

さらに政府が適切な対応策をとっているか国会がチェックする仕組みを検討すべきではないかといった意見も聞く。こうした与野党、国民の声を取り入れながら、具体的な取り組みを進めていく必要がある。

一方、政府はワクチン接種を感染収束の決め手と位置づけているが、ワクチン接種の効果が出てくるまでの期間の取り組み方が問題になる。

また、施政方針演説では、菅首相が看板政策と位置づけていた「GoToトラベル」の扱いや、「コロナ対策と経済の両立」といった政権の基本方針に関わる点を修正するのかどうかといった点は明らかにしていない。

施政方針演説を受けて行われる各党の代表質問では、こうした政権の基本方針も含めて、国民が知りたい点に応える論戦を強く注文しておきたい。

「緊急宣言」迷走 菅政権”危険水域”へ

新型コロナ感染拡大に対する「緊急事態宣言」をめぐって、政府は13日、大阪、愛知、福岡など7府県を追加する方針を決定した。先の1都3県と合わせて、宣言の対象地域は11都府県に拡大した。

一方、NHKの世論調査によると菅内閣の支持率は、不支持が支持を上回って、初めて逆転した。政権発足から4か月目で、早くも支持・不支持が逆転したことになる。コロナ対応の迷走と合わせて、菅政権は危険水域に近づきつつある。今回の緊急事態宣言をめぐる政権の対応と、世論の反応を分析する。

「宣言」急拡大 後追い・迷走

菅首相は今月7日、東京など1都3県に緊急事態を宣言し、飲食店の営業の時間短縮に重点を置いたコロナ対策に乗り出したが、1週間も経たないうちに宣言対象地域の拡大に追い込まれたことになる。1週間前には、大阪などへの宣言発出は必要はないとの考えを示していた。

また、この間、大阪府や愛知県の知事からは、政府に対して宣言要請の意向が伝えられていたが、ズルズルと延ばしているうちに感染が拡大。結局、大阪・兵庫、京都の関西3府県、愛知・岐阜の東海2県、福岡、栃木の7府県の追加に広がった。

緊急事態宣言をめぐって、菅首相は年末の時点では、宣言自体に否定的な考えを示していた。しかし、大晦日に感染者が急増、東京など1都3県の知事から宣言の検討を求められ、宣言発出へ大きく方針転換を迫られた。

このように今回の菅政権の対応は、知事の側の要請の後追いや、対応のブレ・迷走が目立った。その背景には、感染状況の把握や予測をはじめ、感染抑止の具体策づくり、検査の拡充や病床の確保などの医療提供体制の整備、さらには国と地方自治体との連携・調整など危機管理機能が十分改善されていないことが浮き彫りになったといえるのではないか。

 内閣支持・不支持が逆転、発足4か月

その菅内閣の支持率だが、NHKの1月の世論調査によると◆支持が40%に対して、◆不支持が41%、支持と不支持が逆転した。先月との比較では、支持が2ポイント減少、不支持が5ポイント増えた。支持と不支持が逆転したのは、今回が初めてだ。(調査は1/9~11日、有効回答59%、データはNHK WEB NEWSから)

支持・不支持が逆転した要因の1つは「緊急事態宣言」だ。「適切だ」は12%と少なく、「遅すぎた」が79%、実に8割にも達している。

また、コロナ対策をめぐる「政府の対応」については、「評価する」が38%に対して、「評価しない」は58%で、6割に達している。「コロナ対応の評価の低下」が、内閣支持率全体を下げる大きな原因になっている。

さらに緊急事態宣言の期限の2月7日までに宣言が解除できるかどうか。「できると思う」はわずか6%、「できないと思う」が88%。菅首相は「1か月後には、必ず事態を改善させる」と強調するが、世論の多数は信用していない。

さて、菅内閣の支持・不支持逆転は、9月の政権発足から4か月目。9月の支持率は62%だったので、22ポイントの大幅な下落。「支持の3分の1」がはがれ落ちた。逆に不支持は、9月の13%から3倍以上も増えたことになる。

歴代政権の支持率逆転の時期を調べてみると◆麻生政権は政権発足から3か月目。◆福田康夫政権も同じく3か月目だった。麻生、福田両政権ともその後、支持率が回復したことはなかった。支持率が一旦、急落すると回復・復元は極めて厳しいことを物語っている。

  政権”危険水域” 今後のカギは?

菅首相は13日夜の記者会見で「緊急事態宣言の対象地域を大都市圏に拡大したことで、全国の感染拡大の防止に効果が期待できる」と強調するとともに、重ねて政府の対策に国民の協力を呼びかけた。また、11の国と地域で実施しているビジネス関係者らの往来を停止して、水際対策を強化する方針を示した。

しかし、感染拡大を防ぐための対策については、飲食店の営業時間短縮を重点に進めるなど従来の方針の説明に止まり、ひっ迫する病床確保についても具体策は示されなかった。

緊急事態宣言が東京など1都3県に出された後もビッグデータによる調査では、人出は思ったほど減らず、新規感染者数や重症者数も高止まりの状況が続いている。政権の当面の最大の課題であるコロナ対策が思うような成果を上げることができておらず、世論の支持離れと合わせると、菅政権の政権運営は”危険水域”に近づきつつあるとみている。

さらに18日からは通常国会が召集され、野党側の厳しい追及も予想される。コロナ対策については、政府・与党は、第3次補正予算とコロナ対策のための特別措置法の改正案を先行して成立させ、主導権を確保したい考えだ。

しかし、特別措置法は仮に2月初めまでに成立したとしても、周知期間などが必要で、実施は2月中旬以降とみられる。つまり、2月7日の緊急事態宣言の期限切れには間に合わないので、今後、新たな緊急の対策を打ち出すかどうか問題になるのではないか。

緊急事態宣言が1か月後に解除できないとなると宣言が長期化し、経済や社会への影響はさらに大きくなる。菅首相の政治責任を問う意見が強まることも予想される。

通常国会では、政治とカネの問題、安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭や、吉川元農相の事件もあるが、最大の焦点は、コロナ対策。緊急事態宣言の期限内に効果をあげることができるかどうか。その結果は、菅政権の政権運営や政局のゆくえを大きく左右することになる。

 

 

 

 

緊急事態宣言と”菅首相の本気度”

新型コロナ対策として、菅首相は7日、東京など1都3県を対象に「緊急事態宣言」を出した。期間は8日から2月7日までのほぼ1か月。宣言発出直後の記者会見では「1か月後には、必ず事態を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と決意を表明した。果たして感染急拡大を抑え込めるのだろうか。

緊急事態宣言は、危機に当たって国民や組織をまとめ上げる”強力な武器”になる反面、個人の自由や経済活動を制約するので、扱いを間違えると激しい反発を招く”劇薬”にもなる。

それだけに宣言発出の唯一の権限を持つトップリーダーの覚悟や、国民に対する訴える力が問われる。今回、菅首相がどこまで本気で緊急事態宣言の効果を上げようとしているのか、菅首相の”本気度”と今回の対策の効果を探ってみたい。

 ”追い込まれ型” の緊急宣言

菅首相は、安倍政権の官房長官時代から、「緊急事態宣言は経済活動を制約するため、慎重な姿勢だった」と言われる。安倍前首相による最初の緊急事態発出の際もそうだったし、緊急宣言解除後、観光需要喚起の「GoToトラベル」再開の旗を振ったのも菅氏だった。

去年の年末25日の記者会見でも、記者から緊急事態宣言を出す可能性を質問された際、「尾身会長からも、今は緊急事態宣言を出すような状況ではないとの発言があったことを私は承知しています」と政府分科会の尾身会長の発言を引いて緊急事態宣言は想定していない”慎重な考え方”を明らかにしていた。

ところが、10日しか経っていない1月4日の年頭記者会見で「緊急事態宣言の検討開始表明」に追い込まれた。大晦日に新たな感染者が、東京で1337人、全国で4520人に急拡大したからだ。

また、正月2日には、小池東京都知事と近隣3県の知事からそろって「緊急事態宣言の発出検討」を迫られたため、不本意ながら応ぜざるを得なかった。今回の緊急事態宣言は、端的に言えば「追い込まれ型の緊急宣言」というのが実態だ。

 国会事前説明 首相の出席見送り

菅首相は年頭の記者会見では、感染対策、水際対策、医療体制、ワクチンの早期接種の4点にわたって政権の方針を説明した。実は、菅首相が記者会見で政権のコロナ対策を総合的に取りあげ説明したのは、この時が初めてだった。

また、新型コロナウイルス対策の特別措置法についても、遅ればせながらも休業要請などの給付金と罰則をセットにした改正案を、通常国会に提出する考えも表明した。この時は、普段のような語り口で持ち味も出て、菅首相にしては珍しく意欲とわかりやすさが前面に出た記者会見だった。

こうした中で、緊急事態宣言を出す7日に、衆参両院の議院運営委員会で、政府が発令を事前報告する委員会に、菅首相の出席は見送りになることが決まった。代わって西村担当相が出席し、与野党の委員と質疑を行うことになった。

これは、自民党と野党第1党・立憲民主党の国対委員長会談で決まったものだ。野党側は首相の出席を求めたが、自民党は拒否し出席は見送られた。「昨年、初めての宣言を出す時は首相が出席したが、今回はその延長線上の対応でいい」という理由だ。事前に自民党が菅首相の意向を確認した上での対応だとみられる。

議院運営委員会は各党代表の委員で構成され、議院の運営を協議する機関だ。首相が出席することは珍しいが、去年の4月7日最初の宣言が出された時は、安倍首相が出席した。昭和50年・1975年、当時の三木首相以来45年ぶりだったが、緊急事態宣言の重みを国民に伝える上でも大きな意味があった。

今回の宣言は2回目だが、菅首相は感染危機乗り切りの決意を示す上でも出席すべきではなかったか。欠席では、首相の”本気度”は伝わらない。

 緊急宣言効果 飲食店重視の評価?

さて、今回の緊急事態宣言の効果をどうみるか。政府の対策は「効果のある対象にしっかりした対策を講じる」として、飲食店の営業時間短縮に感染防止の重点を置いている。このため、この飲食店重視の評価で、効果の見方も変わる。

菅首相が強調するように感染経路不明な要因として、大半が飲食店が関係しているのは、専門家の指摘通りなのだろう。その意味で飲食店対策は必要だ。

一方で、分科会の尾身会長や、数理モデル分析が専門の西浦博教授によると、東京都の感染者数を十分に減少させるためには、昨年の緊急事態宣言と同等レベルの効果を想定しても2月末までかかるとみられている。

また、飲食店対策とともに、不要不急の外出自粛や、出勤者の7割削減など幅広い対策の組み合わせが欠かせないとの見通しも示す。ということは、今回の宣言期間である2月7日までに大きな効果が上がるのはかなり難しいと覚悟していた方が良さそうだ。

 首相の本気度? 早急に緊急対応を

緊急事態宣言を出した後、菅首相が臨んだ7日の記者会見をどう受け止めるか。菅首相は「1か月後には、必ず事態を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と決意を表明した。

ところが、この日明らかになった新たな感染数は、東京は2400人余り、2000人を超えるのは初めてだ。埼玉、千葉、神奈川各県も過去最多を更新した。全国でも初めて7000人を超え、過去最多となった。こうした現実を前にすると、菅首相の決意も、事態改善にどこまで根拠と展望を持っているのか、”本気度”が残念ながら伝わって来なかった。

また、国民の側には、なぜ、ここまで政府の対応は後手に回ってしまったのか、その反省の弁もなく、国民の協力を求める首相の姿勢に違和感を感じた国民も多かったのではないか。国民と危機感を共有するところまで至らなかったのではないか。

一方、全国の感染状況は大阪、京都、兵庫の関西3府県や、愛知県でも感染拡大が続き、緊急事態宣言の発出を政府に要請する動きも出ている。感染抑制どころか、非常事態宣言地域が広がる可能性もある。

さらに、首都圏では入院や重症患者が増えて病床がひっ迫、看護師などの医療従事者が不足するなど提供体制が維持できるか深刻さを増している。こうした点についても菅首相から説得力のある対応策や見通しは示されなかった。

コロナ感染危機をどのように乗り切っていくか。政府に望みたいのは、総理官邸を中心に司令塔としての体制を整えること。そして各自治体と連携して、早急に感染抑止と医療提供体制の確保に向けた取り組みを強めることだ。

その上で、まもなく始まる通常国会では、政府がコロナ危機の現状と今後の対応策を報告し、与野党間で法改正や予算措置などを協議して、対応策を迅速に実行してもらいたい。

同時に私たち国民の側も基本的な感染防止対策を徹底するなどに協力して、危機乗り切りにメドをつけていきたい。

危機を乗り切るためには、政権、与野党など政治の対応がカギを握っている。

 

”首相交代含みの波乱政局” 2021年予測

新しい年・2021年は、東京のコロナ感染者が大晦日に1300人を超えるなど感染第3波と強い寒波の襲来で幕を開けた。去年の日本政治は、憲政史上最長の7年8か月に及んだ安倍政権が幕を閉じ、菅新政権が誕生する激動の年だった。今年はどんな年になるのだろうか?

結論を先に言えば、”コロナ大激変時代”、政治もコロナ対応を軸に動く。菅政権は予想以上に不安定さが目立ち、さらに今年は自民党総裁、衆議院議員の任期切れが重なる。”首相交代含みの波乱政局”になる公算が大きいとみている。なぜ、こうした結論になるのか、以下、その理由・背景を説明していきたい。

 新年の政治 ”コロナ、五輪、選挙”

2021年の主な政治日程を見ておきたい。◆通常国会は1月18日に召集、今年前半の政治の主な舞台になる。◆6月末から7月にかけて東京都議会議員選挙、各党とも国政選挙並みの取り組みになる。◆7月23日から、延期されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催、9月5日閉会の見通し。その後、9月に自民党総裁の任期切れ、10月に衆院議員の任期が満了、それまでに選挙が行われる。

新年の政治に影響を及ぼす要素としては、何があるか。3つ挙げるとすると◆1つは「コロナ対応」。◆2つ目は「東京五輪」。国家的行事で、仮に再び延長になれば、政治はもちろん、経済、社会への影響は甚大だ。◆3つ目が「選挙」。春の統一補選、夏の都議選、自民総裁選、解散・総選挙、大きな選挙が相次ぐのが特徴だ。

 政局 衆院解散より ”菅リスク”

そこで、政治の焦点はどこになるのか。これまでは衆院解散・総選挙がいつになるかが、最大の焦点だった。

ところが、菅政権のコロナ対応が後手に回り、年末、菅内閣の支持率が急落した。菅政権の力量に赤信号、年明けの解散・総選挙はなくなったとの受け止め方が広がり、秋の解散・総選挙が有力になっている。

代わって、菅政権は「いつまで持つか」。フェーズが変わり、解散・総選挙より、”菅政権の不安定化”に焦点が移りつつある。”菅リスク”をどうみるか、この点が、実は”2021政局の核心”だ。

なお、解散の時期は◆通常国会冒頭解散が見送られた場合、◆新年度予算成立後の4月説、◆東京都議選とのダブル選挙説も一部にあるが、公明党が都議選を重視していることなどから、実現可能性は極めて低い。◆10月任期満了か、その前の9月選挙が、選挙のプロの見方だ。

 菅政権 ワクチン接種効果に期待

それでは、菅首相はどんな政権運営を行うのだろうか。菅首相に近い関係者に聞くと菅首相は「実績を積み重ねた上で、信を問えば、国民は必ず理解してくれる」という考え方で一貫していると言う。

具体的には◆コロナ対応は、ワクチン接種が2月下旬に始まれば、感染防止にメドがつく。◆その上で、東京オリ・パラを成功させる。◆その間に携帯電話料金の値下げ、不妊治療支援、自然エネルギー開発のグリーン成長戦略を進めた上で、衆院選勝利、総裁再選へとつなげる戦略と言われる。

 野党攻勢 ”桜、卵 ”疑惑 の逆風

これに対して、野党の出方はどうだろうか。野党側は、菅内閣の支持率急落は、政府のコロナ対策に国民の支持が得られていないことが原因とみて、政権批判と野党のコロナ対策の提案も織り交ぜながら、攻勢を強めることにしている。

もう1つは、”政治とカネ”の問題。「桜を見る会」前夜の懇親会をめぐり、安倍前首相の公設第1秘書が政治資金規正法違反で略式命令を受けた。野党側は、安倍氏は責任を秘書に押しつけ、国会での虚偽答弁の政治責任もとっていないとして、安倍氏の証人喚問を要求していく方針だ。立憲民主党の幹部は「今度こそ、安倍氏を追い詰める」と強気で攻める構えだ。

また、自民党に所属していた吉川貴盛・前農相が、大臣在任中に大手鶏卵生産会社の元代表から現金500万円を受け取っていた問題。東京地検特捜部は、贈賄容疑で強制捜査に乗り出した。吉川氏は、先の総裁選では菅選対の事務局長を務めるなど菅首相とも近く、事件に発展すれば菅政権への打撃は避けられない。

さらに、河井案里参院議員が、一昨年夏の参院選で公職選挙法違反、買収の罪に問われている裁判で、国会召集直後の1月21日に判決が言い渡される。

菅政権にとっては、コロナ対応に加えて、政治とカネのスキャンダルが逆風となって吹きつける公算が大きい。年明けの通常国会は、厳しい国会運営を迫られることになりそうだ。

 首相続投か、交代か?政局流動化

それでは、今年の政局はどのような展開になり、何が大きなカギになるか。

自民党のベテランに聞くと「コロナ次第だ。ワクチン接種がうまくいけば、菅首相は政権維持ができるし、再選だって可能になる。自民党は保守政党、総裁に問題ありといっても直ぐには代えられない。菅首相で総裁選まで突っ込む可能性が大きいのではないか。”菅降ろし”ができる実力者もいない」との見方を示す。

一方で、「都議選と、国政選挙が重なる年は、要注意だ。党員の意見や世論の力が強く働く。また、菅内閣の支持率下落だけでなく、自民党の支持率も徐々に低下し始めた点が気になる」と警戒感をのぞかせる。

この指摘は、平たく言えば、”麻生型”か、”森型”か。「どちらのコースをたどるのかが、今年の政局のポイントだ」と示唆しているように聞こえる。

◆”麻生型”。麻生元総理は、リーマンショックの対応を優先し、早期解散を見送ったが、”漢字が読めない総理”などの不評も重なって支持率が急落、退陣論もくすぶった。任期満了近くの解散・総選挙まで粘ったが、惨敗・退陣に終わった。

◆”森”型。森元総理は、日本の水産高校の練習船「えひめ丸」がハワイ沖で、アメリカ海軍の原子力潜水艦と衝突・沈没した事故の対応をめぐって批判を浴びた。その年は、都議選と参院選とが予定されており、「森元総理では選挙を戦えない」などの声が強まり、退陣に追い込まれた。

こうしたケースにみられるように菅政権は、コロナ対応の批判や内閣支持率の低下が続いた場合、党内から首相批判が強まる事態が予想される。菅首相は、総裁選に挑戦して続投をめざすのか、それとも首相交代へと追い込まれるのか。今年の政局は衆院選の戦い方とも絡んで、政局が流動化する公算が大きいとみている。

 コロナ激変時代 再生の競い合いを

最後に”コロナ激変時代”、私たち国民の立ち場から、今の政治のどこを注視していけばいいのか、みておきたい。

第1は「政権の危機対応」だ。菅政権はこれまで携帯電話料金値下げなど”菅カラー”の政策には熱心だったが、肝心のコロナ対応は「後手の連続」と言わざるをえない。政権がコロナ危機に有効な対応策を打ち出し、司令塔の役割を果たしているかどうか、しっかりみていく必要がある。

第2は、繰り返される「政治とカネの問題にケジメ」をつけられるか。安倍長期政権のよどみが噴き出した結果にもみえる。コロナ対応に集中するためにも、与野党は、安倍氏の証人喚問などは早期に結論を出して決着を図ってもらいたい。

第3は「日本社会・経済の立て直し」の議論と競い合い。自民党の次をめざすリーダーや、野党各党の代表はそれぞれ自らの構想を打ち出し、議論を深め、競い合いをみせて欲しい。

国民の側は、こうした主張・構想を手がかりに、年内に必ず行われる衆院選に1票を投じたい。コロナ禍で、政府や政治の重要さは肌身に感じている国民は多いのではないか。投票参加によって、「コロナ激変時代、日本社会立て直し元年」にしてはどうだろうか。