「辞任ドミノ」岸田政権の師走危機

岸田首相は20日、政治資金をめぐる問題が次々に明らかになった寺田総務相を更迭し、後任に松本剛明・元外相を起用する方針を決めた。

岸田政権は、山際前経済再生相、葉梨前法相に続き、わずか1か月の間に3人の閣僚が辞任に追い込まれる「辞任ドミノ」が現実になった。岸田内閣の支持率は既に33%まで下落しており(NHK11月世論調査)、岸田政権の求心力の低下は避けられない。

閣僚の相次ぐ辞任のケースとしては、竹下政権当時、3人の閣僚が1か月半余りの間に次々と辞任に追い込まれたことが思い出される。いずれもリクルート事件絡みだった。

また、第1次安倍政権では、事務所費問題などで5人の閣僚が、五月雨式に辞任や死亡の動きが続いたほか、麻生政権では、3人の閣僚が不祥事などで辞任に追い込まれた。こうしたいずれのケースとも政権はその後、短期間で幕を閉じた。

相次ぐ閣僚の辞任は、首相への信任や政権の体力を失わせることが多い。岸田政権の場合は、どうだろうか。

結論を先に言えば、懸案や重要政策の決定が年末にかけて集中する形になっており、こうした年末の対応が大きく影響するのではないか。

自民党内で”岸田降ろし”の動きが直ちに出てくる可能性は低いが、岸田政権にとっては、”師走の危機乗り切り”が今後のカギを握っているという見方をしている。以下、その理由・根拠を説明していきたい。

 臨時国会 補正予算、新法の攻防続く

まず、岸田政権の政権運営では、当面、3つの大きなハードルが待ち構えている。1つは、今の臨時国会の乗り切り。2つ目が、安全保障関係の3文書の改訂と防衛費の増額問題。それに3つ目が、新年度予算案の編成と税制改正だ。

このうち、国会からみていくと政府・与党は、21日に国会に提出した第2次補正予算案の早期成立を最優先に臨む方針だ。

これに対し、立憲民主党など野党側は、岸田首相の任命責任を質すとともに、秋葉復興相の「政治とカネ」の問題に照準を合わせて追及する構えだ。

このため、閣僚辞任は寺田氏で幕引きというわけではなく、25日から始まる予定の衆院予算委員会でも激しい攻防が続く見通しだ。補正予算案の成立は12月にずれ込む見通しだ。

もう1つの焦点が、旧統一教会の被害者救済に向けた新法の扱いだ。内閣支持率の急落を受けて、岸田首相は、新法の今の国会への提出と成立に積極的な姿勢を示している。

但し、政府・与党と野党側の間では、信者の寄付の取り扱いなど法案の中身について、かなりの開きがあり、双方が歩み寄って成立にこぎ着けられるかどうか、メドは立っていない。

このため、12月10日までとなっている国会の会期を1週間程度延長することが検討されており、ギリギリの調整が続くものとみられる。国会の最終的な決着の仕方で、岸田政権の評価や影響も違ってくる。

 防衛力整備と財源、国民的議論が必要

2つ目のハードルは、防衛力整備の問題だ。ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイルの発射などで日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。

岸田政権は、防衛力を抜本的に強化する方針を打ち出し、年末の予算編成の中で、防衛力整備の中身と予算の規模、それに財源を三位一体で決定するとしている。

これを受けて、自民・公明の両党は防衛力整備の中身の検討を進めているほか、政府の有識者会議は、防衛費の増額には安定した財源が欠かせないとして「増税を含めた国民負担が必要だ」とする報告書を、22日に岸田首相に提出する見通しだ。

問題は、与党の幹部や政府の有識者レベルでの議論は進んでいるものの、国会の与野党や国民レベルで、防衛力整備のあり方をめぐる議論が深まっていないことだ。

このため、岸田政権が焦点の「反撃能力」保有の方針を決めたり、増税を含めた国民負担の必要性などを打ち出したりした場合、国民の理解や支持を十分に得られるのかどうか、防衛関係者の中には危惧する声も聞かれる。

岸田政権は、年末に向けて国民的議論をどのように進めていくのか、国民を説得できるのか。その成否は、岸田政権の評価と支持に直ちに跳ね返ってくる。

 新年度予算と政権のビジョンは

3つ目の問題が、新年度予算編成と税制改正だ。岸田首相は就任以来、「新しい資本主義」の旗印の下で「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」の3つを重点分野としてきたが、具体的に何をやり遂げたいのか、未だによくわからない。

岸田首相は、新年度の予算編成と税制改正の決定に合わせて、どのような経済・社会をめざしているのか、政権のビジョン、最重点政策をわかりやすく打ち出す必要があるのではないか。

特に内閣支持率が続落している中では、具体的な目標を明確にし、実行力を証明しないと政権の浮揚は難しい。

今回の閣僚の辞任ドミノに対しては、野党だけでなく、与党からも「岸田首相の決断が遅く、危機感も乏しい」と厳しい批判や不満の声を聞く。但し、今のところ、”岸田降ろし”の動きはみられない。菅政権の末期と違って、次の衆院選挙まで時間があるからだろう。

しかし、岸田政権がこれまでみてきた3つハードルを乗り越えることができない場合、世論の支持率はさらに下落し、”政権のレーム・ダック化”、低迷へと変わる可能性がある。”師走の政権危機”を回避できるか、岸田首相にとって正念場が続く。(了)

 

 

岸田内閣支持率 ”危険水域接近中”

臨時国会は間もなく終盤戦に入り、ヤマ場を迎えるが、岸田内閣の支持率が続落している。報道各社の世論調査の中には、内閣支持率が自民党の支持率を下回って”危険水域”といわれる30%に近づきつつある調査結果もみられる。

岸田首相は、東南アジアで開かれている一連の外交日程をこなしている。これに先立って、財政支出の総額で39兆円にのぼる総合経済対策をとりまとめたが、支持率回復の効果は見られない。

支持率続落の原因については、相次ぐ閣僚の辞任と岸田首相の決断の遅れを指摘する声が多いが、根本は岸田政権の中枢や自民党の体制、構造に問題があるとの指摘も聞く。年末に向けて岸田政権の運営はどうなるか、探ってみる。

自民支持層に”岸田離れ現象”も

報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率を見てみると◇読売新聞は支持率36%、不支持率50%(4~6日調査)。◇朝日新聞は支持率37%、不支持率51%(12,13日調査)。◇NHKは支持率33%、不支持率46%(11~13日調査)。

いずれの調査とも岸田内閣の支持率は、去年10月の政権発足以降、最低の水準。支持率を不支持率が上回る”逆転状態”が続いている点でも共通している。

こうした支持率下落の背景としては「死刑のはんこを押す時だけニュースになる地味な役職」などと発言した葉梨法相をめぐって、岸田首相が続投させるとしてきた方針を一転、更迭したことが影響したとみられる。

NHK世論調査では、内閣支持率と政党支持率との関係に新たな特徴が読み取れる。自民党の支持率は37.1%で、7月の参議院選挙以降ほぼ横ばいだ。

これに対し、内閣支持率は33%で、11月の調査で初めて内閣支持率が、自民党の支持率を下回った。これは自民支持層のうち、一定の割合で岸田内閣を支持しない”支持離れ現象”が起きていることを示している。

今の支持率33%は、今後4ポイント以上さらに下落すれば、政権の”危険水域”とされる30%の危険水域ラインを下回ることになる。

岸田政権は物価高騰や円安に対応するため、財政支出の総額で39兆円にのぼる総合経済対策をまとめた。この対策を「評価する」は61%で、「評価しない」の32%を上回ったが、内閣支持率の下落に歯止めをかけるほどの効果はなかったことになる。

政権中枢、自民の体制・構造問題も

それでは、なぜ、岸田政権の支持率がここまで、大幅に下落しているのか。第1に考えられるのが、山際経済再生担当相と葉梨法相の相次ぐ更迭の影響だ。

それに加えて、いずれの閣僚の更迭も、任命権者である岸田首相の判断、決断が遅すぎるという批判が野党だけでなく、与党内からも聞かれた。岸田首相の資質、能力、対応のまずさを指摘する声が相次いだ。

自民党の長老に聞いてみると「第2次安倍政権との比較で言えば、政権中枢の機能、動きに力強さが感じられない。安倍政権当時の今井秘書官、菅官房長官らに相当する存在が見当たらず、真逆の政権だ」と指摘する。

「党の方も高木国会対策委員長と茂木幹事長との連携、全体を取りまとめていく力が感じられない。連立与党の公明党との関係もしっくりいっていないのではないか」と危ぶむ。

総理官邸内の結束力と自民党の統率力、それに双方が支え合う体制に問題ありというのが長老の真意だろう。これが2つ目の問題。

さらに、安倍元首相が銃撃され亡くなって以降、”政権与党の全体を取り仕切る主柱”がなくなったような印象を受ける。それまでは、安倍元首相と岸田首相の2人が一定の距離を置きながら、存在感を発揮し合いながら全体を統率してきた。

ところが、その一方の柱である安倍元首相がなくなり、党内の様相が一変した。その安倍氏が率いてきた最大派閥は、後継の新会長も決められず迷走状態に陥っている。

このように安倍1強体制が崩れ、新たな党内秩序が再構築できず、不安定な構造に陥っているのが根本要因ではないかと思われる。

このため、岸田首相の個人的な資質、求心力の弱さという問題もあるが、根本的には、政権与党の体制と構造に大きな問題を抱えており、政権の立て直しは相当なエネルギーと時間がかかるとみている。

 旧統一教会、防衛費まで政権綱渡り

さて、岸田政権の当面の政権運営と国会・政局の先行きをどうみるか。まず、臨時国会は会期の延長が避けられない情勢だ。

政府・与党は、補正予算案の早期成立を最優先で臨む方針だが、この国会は野党ペースで進んでおり、補正予算案の成立は当初の見通しからずれ込み、12月上旬までかかる公算だ。

また、野党側は、政治とカネの問題を抱える寺田総務相に照準を絞って追及を強める方針で、与党側は3人目の閣僚の辞任、辞任ドミノを警戒している。

さらに、大きな焦点は、旧統一教会の被害者救済の新法が成立までこぎ着けられるかどうかだ。世論調査では、今国会での成立を求める意見が7割と圧倒的多数を占めており、この成否は岸田内閣の支持率にも影響を及ぼす。

さらに臨時国会が閉会した後、年末最大の焦点は、防衛力の整備と防衛予算の扱い問題だ。ウクライナ情勢や北朝鮮の相次ぐミサイル発射、中国の習近平・長期1強体制の継続などで、防衛力整備に向けた世論の理解は進んでいるようにみえる。

但し、岸田政権の防衛論議の進め方には批判も多い。有識者会議を設置して議論を委ねる一方、国会答弁では「整備の中身、予算の規模、財源は三位一体で年末の予算編成時に決定する」と繰り返すばかりで、国民的な議論を深める取り組みはほとんど見られない。

これでは、国家防衛戦略3文書の改訂や、防衛力強化に向けて国民の理解が深まらないと危惧する声は根強い。

このほか、来年はアメリカの景気後退が予想される中で、日本経済の再生や円安などの経済運営にどのような方針で臨むのか、中長期の政策も問われる。

このように岸田政権は、臨時国会での旧統一教会の被害者救済新法から、新年度の税制と予算の編成、防衛力整備などの難題を処理できるのかどうか、綱渡りのような対応を迫られることになりそうだ。

そのうえで、世論の支持に思うような回復がみられない場合、岸田首相は政権や自民党の体制を現状のままで年明けの通常国会に臨むのか、それとも体制の見直しに踏み込むのか、決断を迫られることになるのではないか。(了)

 

法相更迭 ”揺らぐ岸田政権”

岸田首相は11日、「死刑のはんこを押した時だけニュースになる地味な役職」などと発言し批判を浴びた葉梨法相を事実上の更迭に踏み切った。後任には、斎藤健・元農相の起用を決めた。

岸田内閣は、先月24日に旧統一教会の問題をめぐって山際経済再生相を更迭したばかりで、わずか2週間余りで2人目の閣僚の交代に追い込まれた。

岸田首相は東南アジアで開かれる国際会議に出発するため、11日午後に出発予定だったが、出発を大幅に遅らせて12日未明に出発した。岸田政権への打撃は大きく、政権基盤は大きく揺らいでいる。今後の政権運営はどうなるだろうか。

  葉梨法相更迭 ”首相の決断遅すぎ”

まず、葉梨法相の発言をどうみるかだが、法相は死刑の執行命令を発する権限を持っているのをはじめ、国の法制度や、人権問題などを担当する国の最高責任者だ。

その責任者が、死刑を執行した時だけ注目される地味な役職などと言及するのは、余りにも軽率すぎる。

また、葉梨法相の発言は自らが所属する派閥の議員のパーティで、口が滑った発言かと思っていたが、過去に少なくとも4回以上、同じ様な発言をしていたことも明らかになった。これでは、法相としての見識、責任を問われるのはやむを得ないのではないか。

一方、任命権者である岸田首相の対応についても与野党双方から「決断が遅すぎる」と批判の声が強い。松野官房長官は、問題発言のあった翌日・10日の朝、葉梨法相を首相官邸に呼び出し、厳重注意をした。

その当日、参議院法務委員会で野党側の厳しい追及を受け、葉梨法相は発言を撤回し、陳謝したが、与野党からの批判は収まらなかった。それでも岸田首相は10日夜「説明責任を果たしてもらいたい」として続投させる判断をした。

ところが、11日の衆議院法務委員会や参議院本会議などで野党側の追及が続き、岸田首相は一転して、更迭に踏み切る判断に変わり、葉梨法相の辞表を受け取った。

岸田首相が判断を一転させたのは、当初、葉梨法相の発言の撤回と説明で乗り切れると判断していたようだが、足元の与党内からも強い反発を受け、見通しが間違ったことから、方針転換を図ったものとみられる。

岸田首相は10月下旬、旧統一教会の問題で山際経済再生相を更迭する際にも対応が後手に回ったと批判されたが、その教訓は今回も生かせなかった。

 岸田政権に打撃、求心力低下も

さて、岸田政権への影響はどうだろうか。国会の最中に総合経済対策のとりまとめに当たっていた経済再生担当相が辞任したのに続いて、旧統一教会の被害者救済の新法とりまとめにも関係する法相が辞任に追い込まれただけに、政権への打撃は大きい。

野党側は、今月下旬から始まる総額29兆円の大型補正予算案や重要法案の審議をめぐって、攻勢を強める構えだ。また、政治資金の記載漏れが問題になっている寺田総務相や秋葉復興相をターゲットに”閣僚の辞任ドミノ”に追い込むことをねらっており、これを跳ね返せるかが焦点になる。

さらに、岸田政権の支持率下落が続いているが、相次ぐ閣僚の辞任で、岸田首相の求心力が一段と低下するのではないかと懸念の声が与党からも出されている。報道各社の世論調査で、内閣支持率がどのように変化するか注目される。

それでは、岸田政権の政権運営はどのようになるだろうか。今回の問題で、岸田首相の決断力の遅さを指摘する声が多いが、問題はもっと根深いところにあるのではないかとみている。

安倍元首相が銃撃され亡くなって以降、首相官邸と自民党との連携不足が目立つ。臨時国会の会期幅の決定が遅れたり、予算委員会の日程が決まらずに審議が空転するなど異例の事態が相次いでいる。

最近では、山際経済再生相が辞任した直後に、自民党のコロナ対策本部長に就任する人事が行われ、国民への配慮に欠けると反発を招いた。

自民党の長老は「今の岸田政権は、首相官邸内では総理、官房長官、副長官の縦の結合力が弱い。一方、自民党は幹事長、国対委員長、政調会長、それに公明党との足並みがバラバラで統率がとれていない。政権の土台から立て直さないと、岸田政権が求心力を取り戻すのは難しいだろう」と指摘する。

岸田首相は、12日からカンボジア、インドネシア、タイの各国を歴訪し、G20サミットなどの国際会議に出席し、首脳外交を展開する。帰国後の21日からは、補正予算案の審議が始まる見通しで、臨時国会を乗り切ることができるかどうか、正念場を迎える。(了)

 

”政権浮揚も 険しい道” 大型経済対策

11月に入り、臨時国会は会期末まで残り1か月余りとなった。これまでの国会は、野党側が旧統一教会問題を中心に岸田政権を攻め立て、主導権を発揮する場面が目立った。

これに対し、政府・与党側は、先月末に決定した物価高騰対策を柱とする総合経済対策を受けて、裏付けとなる補正予算案を提出、会期内に成立させて、岸田政権の浮揚につなぎたい考えだ。

このため、後半国会では旧統一教会の問題とともに、新たに政府の大型経済対策も焦点になるが、世論の視線は厳しく、政権の浮揚につながるかどうか。岸田首相にとっては、険しい道が続くことになりそうだ。

 電気・ガス料金の負担軽減に6兆円

まず、政府が28日に閣議決定した総合経済対策の中身をみておきたい。財政支出の総額は39兆円に上り、対策の柱としては、家庭の電気やガス料金などの負担軽減策を盛り込んだのが一番の特徴だ。

今回の軽減策で標準的な世帯では、来年前半で4万5000円の支援になると試算されている。この総合経済対策を実施するため、政府は一般会計の総額で29兆1000億円の第2次補正予算案を編成、国会に提出する方針だ。

岸田首相は記者会見で「来年1月からの電気代の負担軽減策や、ガソリン価格の抑制策を来年以降も続けることなどに6兆円を充てる」と説明した。

そのうえで「今回の対策は『物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策』だ。国民の暮らし、雇用、事業を守るとともに、来年に向けて経済を強くしていく」と強調した。

野党 ”対策が遅く、生活支援が弱い”

これに対して、野党側は「政府の経済対策は遅すぎる」と批判するとともに「政府案では、ガス料金の負担軽減を挙げながら、全国で利用の半分を占めるLPガスが対象になっていない」と指摘する。

また、「政府案では6兆円もの巨額な予算を計上しているが、電気、ガス、ガソリンの支援額は、1世帯当たり月額5000円程度にすぎない。企業を通しての支援の仕方にも問題がある」として、5万円の現金給付や消費税率の引き下げなどに対策を切り替えるべきだと主張する。

さらに、野党側は「政府の対策は、物価高騰対策を強調しながら、中身は、公共事業や、予備費の大幅上積みなどあれもこれも詰め込み、肝心の家庭や中小企業への支援が弱い」と今後、政府の姿勢を追及する構えだ。

 世論 ”政府の対策に厳しい評価”

こうした中で、共同通信が10月29、30両日、全国緊急世論調査を実施した。それによると政府の総合経済対策について「期待できる」が27%に対し、「期待できない」が71%に上った。

一方、岸田内閣の支持率は37.6%、前回8、9日両日の調査に比べて、2.6ポイント増えた。不支持率は3.5ポイント減の44.8%だった。支持率は微増に止まり、支持を不支持が上回る逆転状態が続いている。

政府・与党は、総合経済対策に7割の人が「期待できない」という厳しい評価をしていることを重く受け止める必要がある。

こうした理由・背景に何があるのか。1つは、電気、ガス料金の軽減対策は、必要だと一定の評価をしながらも、食料品などの値上げが続いており、政府の物価対策としては不十分と受け止めているのではないか。

また、政府・与党で対策を決める際、財務省の当初案は25兆円規模だったのが、自民党側の要求で一夜で4兆円も積み増しされた。「経済対策の中身より、規模ありき」の姿勢に対する批判もうかがえる。

一方、財政への影響はどうか。補正予算案の規模といえば、数兆円が相場だったが、コロナ対策を機に跳ね上がり、今回も29兆円にも上る。この財源の大半は、赤字国債、借金だ。国の借金は1255兆円、借金財政がいつでも続くはずがない。

さらに、問題の核心は、岸田政権の経済・財政運営にある。つまり、急激な円安に対して、黒田日銀総裁は、金融の大幅緩和策を継続する方針を表明した。

一方、岸田首相は、物価高騰の抑制に全力を挙げる構えで、双方の対策が逆方向に見える。岸田首相は、今後のかじ取りをどのように進めるのか、経済・財政運営の方針をはっきり打ち出してもらいたい。

また、この国会では、旧統一教会の問題、年末に控えている安全保障の3文書の改訂と防衛費の扱いについても、国民の疑問・関心に応えられるようしっかり議論を行うよう強く注文しておきたい。(了)