混迷深まる岸田政権、復元力は?

岸田内閣の支持率下落に歯止めが、かからない。報道各社の世論調査によると、危険水域とも言われる30%ラインを下回り、与党内では、このままの状態が続けば、政権運営が行き詰まるのではないかと懸念する声も聞かれる。

一方、政府の新たな経済対策の裏付けとなる補正予算案は、24日に衆議院の予算委員会と本会議で可決され、参議院へ送られた。参議院予算委員会で審議が続けられ、月内には成立する見通しだ。

問題は、急落している支持率が回復し、政権が再び力を取り戻すことができるかどうかだ。岸田首相の国会論戦での対応などから判断すると、復元への道はかなり険しいのではないかというのが、率直な印象だ。なぜ、こうした結論になるのか、以下、説明したい。

 記録的な低支持率、岸田政権の危機

最初に報道各社が行った11月の世論調査で、岸田内閣の支持率を確認しておきたい。今月中旬にまとまったNHKの調査(11月10日~12日)では、岸田内閣の支持率は29%で、節目の30%ラインを下回った。

続いて、下旬にまとまった読売新聞の調査(11月17日~19日)では、支持率は24%、朝日新聞の調査(11月18,19日)では25%まで下落した。

こうした支持率は、いずれも岸田政権発足以降、最も低い水準となった。また、2012年12月に自民党が政権復帰して以降と比べても、この11年間で最も低い、記録的な低支持率になっている。

この原因だが、岸田政権が打ち出した「減税と現金給付」を柱とした経済対策に対して、「評価しない」との受け止め方が6割以上にも上ったことが大きい。

また、副大臣など「政務三役」の相次ぐ不祥事で、3人が辞任に追い込まれたことも影響しているとみられている。

さらに、政府の減税を評価しない理由を聞くと「選挙対策に見えるから」が最も多く、首相や政権への強い不信感が読み取れる点も大きな特徴だ。

 予算委論戦、立て直しへの姿勢見えず

問題は、支持率急落が一時的なものか、根深い要因によるものかだ。そして、岸田首相がこうした世論の動向を察知して、何らかの対応策を打ち出すのかどうか、予算委員会での岸田首相の答弁を注目して見ていた。

総額13兆円の補正予算案が20日に国会に提出されたのを受けて、衆院予算委員会の論戦は翌日から始まった。

立憲民主党など野党側は「政府の所得税減税などが実施されるのは来年夏のボーナス時で、遅すぎる。それよりも幅広い世帯に対象を広げて現金給付を急ぐべきだ」と追及するとともに「減税は1回限りなのか」などと攻め立てた。

これに対して、岸田首相は「住民税の非課税世帯には、7万円の追加給付を行う。一方、賃上げとデフレ脱却の流れを止めてはならないので、一時的な下支え措置として定額減税を用意した」などと従来の答弁を繰り返した。

こうした回りくどい答弁では、長引く物価高に苦しむ国民に、政府の対策は響かない。また、所得税減税の場合、富裕層を除く所得制限を行うのかどうか具体的な制度設計についても踏み込まなかった。

政務三役の辞任についても、岸田首相は「任命責任を感じる」などいつもながらの答弁に終始した。国民の政権離れへの危機感や、政権の態勢立て直しへの強い思いなどは、岸田首相の答弁からは感じられなかった。

 難題対応の結論先送り、政権へ逆風

以上は岸田政権の当面の課題をみてきたが、今回の記録的な支持率低下の背景には、これまでの「岸田首相の政治姿勢や政権運営に対する疑問や不満」が大きく影響しているのではないかと感じる。

具体的には、岸田首相はこの1年「政策の大転換」と位置づけて、防衛力の抜本強化や、異次元の少子化対策を次々に打ち出す一方、防衛増税の実施時期や、少子化対策の財源の具体化については先送りを続けてきた。

岸田首相は、先送りはしていないと反論するが、「防衛増税」を「防衛財源確保の税制措置」と別の表現を使うなど、増税や国民負担の増加など国民に不人気な政策について、説明することを避けてきたのが実態だ。

このため、岸田首相が定額減税を打ち上げてもその財源はどのように確保するのか。選挙を乗り切れば、増税や社会保険料の上乗せなどの措置を取るのではないかと国民は見透かしているのではないかと思われる。

支持率低下の要因として、政界関係者の間では、岸田首相の発信力の弱さや説明不足などを指摘しているが、問題の根本は、政権が「財源などの核心部分について、結論を出さずに先送りしていること」にあるのではないかと考える。

別の表現をすれば「国民に不人気な政策であっても、結論を明確に打ち出すこと」。そのうえで「国会論戦を通じて説明し、国民を説得すること」。その取り組みがあまりにも弱かったのではないか。そうした首相の姿勢に対する疑問や不満が、逆風となって岸田政権に吹き出しているとみている。

 実績を上げられるか、復元力には弱さも

「岸田内閣の支持率が改善する展望はあるか」、「そのためには何が必要と考えるか」、自民党の長老に尋ねてみた。

「これほど政権への風当たりが厳しいと、小さくてもいいから、1つでも実績を上げること。それにより、国民の信用回復につなげることが必要だ。政権への支持が回復しなければ、党の総裁選で再選は難しいだろう。ましてや、解散などできるはずがない」と指摘する。

今の国会では、政府の総合経済対策をはじめ、旧統一教会の財産保全法案をめぐる野党との調整、マイナンバーカードの総点検を受けて、健康保険証の廃止の扱いなどの懸案を抱えている。

また、政権の新た火種として、自民党の5派閥が政治資金パーティー収入を政治資金報告書に記載していなかったことが明らかになった。こうした多くの懸案、問題の中から、1つでも実績を挙げることができるかどうかが試されている。

一方、岸田内閣の支持率をNHK世論調査でみると、支持率を不支持率が上回る「逆転状態」に陥ると、回復するまでに5か月もかかっている。安倍政権は逆転状態が少なかったことに加えて、いったん逆転状態になっても2か月、または3か月で回復し、復元力が強い政権だった。

これに対して、岸田政権は今年7月以降、既に5か月、逆転状態が進行中で、復元力の弱い政権と言える。それでも復元力を発揮するためには、国の将来にとって必要な政策は、不人気でも結論を示して、国民を説得する取り組みが必要だ。

岸田政権は、年末までに難題に結論を出していくのか、それともあいまい路線で乗り切りをめざそうとするのかどうか。岸田首相の選択と決断が、新年の日本政治の行方を大きく左右することになる見通しだ。(了)

 

 

“逆風強まる岸田政権”支持率30%割れ

岸田内閣の支持率が下落し、節目の30%ラインを割り込んだ。11月のNHK世論調査によると岸田内閣の支持率は、10月調査から7ポイント下がって29%になった。不支持率は8ポイント増えて52%、初めて5割を超えた。

内閣支持率が30%を下回るのは、菅政権が退陣する1か月前、2021年8月に同じ29%を記録したとき以来だ。2012年に自民党が政権復帰して以降をみても、菅政権と今回の岸田政権の支持率が最も低い水準になる。

今回の岸田政権の場合、政権浮揚の切り札として、減税と給付を盛り込んだ大型の経済対策を決定した直後だけに政権に及ぼすダメージは大きい。

端的に言えば、国民が喜ぶと思って5兆円の巨費を投じる減税と給付策が極めて不評で、逆に支持率が急落するという異例の結果を招いている。

なぜ、異例の支持率下落となったのか。政権への影響と今後の動きはどのようになるのか、世論調査のデータも分析しながら探ってみたい。

 政策の妥当性と政権への不信感も

まずは、岸田内閣の支持率が下落した理由・背景からみていきたい。そのためにNHK世論調査(11月10日~12日実施)の主なポイントを整理しておく。

▲世論調査では、政府の新たな経済対策のうち、物価高に対応するため、所得税などを1人当たり4万円減税し、住民税の非課税世帯に7万円を給付する方針について、どのように評価するかを質問している。

◆「評価する」は36%に止まり、◆「評価しない」が59%で大幅に上回った。

▲次に、評価しない理由は何か。◆「選挙対策に見えるから」が38%で最も多く、◆「物価高対策にならないから」30%、◆「国の財政状況が不安だから」24%、◆「実施時期が遅いから」4%となった。

逆に、評価する理由は◆「家計が助かるから」40%、◆「経済の再生につながるから」23%、◆「税収増加分は還元すべきだから」23%などと続いた。

▲岸田首相は一連の経済対策を通じて、来年夏には所得の伸びが物価上昇を上回る状態にしたいとしているが、これに期待するかを尋ねている。

◆「期待できる」は19%、◆「期待できない」は67%で、3人に2人の割合だ。

▲こうしたデータを基に岸田政権の経済政策と支持率下落の原因をどうみるか。個人的な取材を加味して考えると、次のような点を指摘できる。

▲国民の多くは、政府の経済対策を冷めた目で見ていることがうかがえる。政府の減税政策を「評価しない」とする人が6割近くと多いことに現れている。

また、「何を目的にしているのかはっきりしない」、「物価高対策としての妥当性に疑問」を抱いている人が多いことも読み取れる。

物価高対策であれば「給付」の方が「減税」よりも即効性があり、効果も大きいと考えるからだ。自民党の税調幹部の中にも同様の考え方がある。

これに対して、岸田首相の説明は、最初は物価高対策を強調し、次いで賃上げ・デフレ脱却に重点が移り、さらに子育て支援のためと政策のねらいが次々に変わり、「政策の目的、目標がはっきりしない」という問題点がある。

▲また、政府の減税政策などを評価しない理由として「選挙対策に見えるから」が最も多かった。これは「岸田首相の減税政策は、苦戦が続いていた衆参補欠選挙のテコ入れ」や「衆議院の解散ねらいの思惑があるのではないか」といった疑念や不信感が背景にあるためではないかと思われる。

▲さらに岸田首相の減税政策の打ち出し方をみると、与党に対して突如、減税検討の指示を出す一方、国会での自らの所信表明演説では、直接言及しないといった「チグハグな対応、迷走」が目立った。これでは、国民の理解や支持が広がらない。(詳しくはブログ10月27日号「迷走、所得税減税」)

▲一方、9月に行われた内閣改造人事で新たに起用された「政務三役の不祥事」が相次いで表面化した。山田太郎・文部科学政務官、柿沢未途・法務副大臣、神田憲次・財務副大臣の3人が3週間足らずの間に辞任・更迭に追い込まれた。

去年は「政治とカネの問題」などの問題で、閣僚4人が辞任する「辞任ドミノ」に追い込まれた。今年は政務官、副大臣レベルまで不祥事が広がったことも、政権の支持率低下に追い打ちをかけたとみられる。

このように物価高・経済対策そのものの内容に加えて、岸田政権の政策決定や政権運営のあり方についても、世論の側の疑問や不信感が重なって、支持率急落を引き起こしていると言えるのではないか。

 自民支持層離れ、政権の求心力も低下

そこで、政権への影響はどうか?結論を先に言えば「政権へのダメージは、大きい」とみる。既に政権の支持基盤へ影響が現れているからだ。

具体的には「自民支持層の支持離れ」が起きている。「自民支持層のうち、岸田内閣を支持する」と答えた人の割合は、岸田内閣の場合、5月は7割台半ばと高かったが、10月は6割台半ば、今月は5割台半ばまで大幅に減っている。

一方、最も大きな集団である「無党派層のうち、岸田内閣を支持する」と答えた人の割合は、10%をわずかに上回る程度だ。「支持しない」と答えた割合は7割近くにも達する。

岸田内閣は元々、無党派層の支持は少なかったが、2012年に自民党が政権に復帰して以降、今月は最も低い水準にまで落ち込んでいる。

無党派層からの支持を一定程度、得られないと普段の政権運営だけでなく、特に衆院解散・総選挙の際には勝敗を大きく左右することになる。

一方、年代別にみても20代から60代まで、さらに70歳以上のすべての年代で、「支持する」と答えた人より、「支持しない」と答えた人が上回っている。「政権の求心力の低下」が浮き彫りになっている。

 政権の力を取り戻せるか?年末がヤマ場

それでは、今後の政権運営や政局の見通しはどうなるだろうか。前回の衆院選挙から2年が経過し、与野党とも解散・総選挙のゆくえに神経をとがらせている。

今月9日から10日にかけてメデイア各社は「岸田首相は、年内解散を見送る意向を固めた」と大きく報道したが、既にみてきたように岸田政権は年内解散に打って出られるような状況にはなかった。

それよりも岸田政権は、国民の多くの支持を失い、内閣支持率は危険水域の20%台に落ち込んだという新たな段階を迎えているとみた方が実態に近いと思う。

但し、それでも野党は依然としてバラバラ状態で、政権交代が直ちに実現するような状況にはない。自民党内も岸田首相に代わる有力なリーダーは見当たらない。

このため、岸田政権が直ちに崩れるような状況にはないが、来年秋の自民党総裁任期満了まで1年を切ったことの意味は大きい。

これまで岸田首相の再選はかなり濃厚だったが、世論の支持率の低迷がこのまま続けば、総裁選の情勢は混沌としてくることが予想される。「次の衆院選挙を戦える顔」として通用するのかという声が出てくる可能性があるからだ。

当面は、新たな経済対策の裏付けとなる補正予算案がポイントになる。今月20日に国会に提出され、成立はほぼ間違いないが、問題は、与野党の論戦を通じて、減税対策などの内容について、国民の支持が広がるかどうかだ。

また、年末の予算編成と税制改正に向けて、先送りされてきた防衛増税の実施時期や、少子化対策の具体的な財源の扱いも改めて焦点になる。

さらに、大幅な円安が進む中で、日本経済や金融政策のかじ取りをどうするのか、国民は中期の構想と展望を求めている。

いずれも難題だが、岸田首相が強いリーダーシップを発揮して懸案を前進させることができるのか。そして、内閣支持率を回復して力強い政権となるのか、それとも低迷状態が続くことになるのか、年末が大きなヤマ場となる見通しだ。(了)

 

 

 

”減税、政権運営険しい道”岸田政権

政府は2日、所得税の減税や低所得世帯への給付などを盛り込んだ新たな経済対策を決定した。経済対策の規模は、17兆円台前半になる見通しだ。

経済対策の決定を受けて、岸田首相は記者会見で「最優先はデフレからの完全脱却だ。来年夏の段階で、賃上げと減税を合わせた国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実に作りたい」と強調した。

経済対策をめぐっては、野党側は「物価高への対応にスピード感が無く、対策の効果も期待できない」と厳しく批判しているほか、自民党内にも岸田首相が強い意欲を示す所得税減税に疑問や不満がくすぶる。

国民は、新たな経済対策の内容をどのようにみたらいいのか。また、岸田政権の政権運営はどのような展開になるのか、探ってみたい。

 所得税減税の評価は?与党内にも異論

さっそく、新たな経済対策からみていきたい。ポイントは、岸田首相が強い意欲を示し、政権の目玉政策と位置づける所得税減税をどのように評価するかだ。

政府方針では、所得税と住民税を合わせて1人当たり4万円を差し引く定額減税を実施するとともに、住民税が非課税となっている低所得世帯に7万円を給付するのが主な内容だ。両方でおよそ5兆円程度の規模になる見通しだ。

政府が所得税減税を打ち出したは98年の橋本政権の定額減税と、その後継の小渕政権の定率減税以来だが、減税措置は結局、2007年まで9年間続いた。

この減税政策の評価だが、野党側は「税制改正に時間がかかり、実際に減税されるのは来年6月、遅すぎる」と批判し、「それよりも即効性のある給付で行うべきだ」と主張している。

自民党内にも「減税は一度実施すると止めるのが難しい。景気対策としての効果も給付の方が大きい」と異論も多い。また、「橋下政権時代は山一証券などが破綻した不況の時期で、コロナから回復した今は状況が違う」などの不満もくすぶる。

また、今回は減税と給付が混在することに加えて、支給額が減税の場合は1人当たり4万円で、家族数に応じて増える一方、給付は1世帯当たり7万円と異なり、公平さが担保できないといった問題点が指摘されている。

さらに、岸田首相をはじめ政府側は、減税は一回だけに止める一方、幅広い減税にするため、所得制限は避けたい考えだ。

これに対して、自民党内からは、バラマキ批判を避けるため、年収2千万円以上の高額所得者は対象から外す案や、減税は一回限りとすべきではないといった意見もあり、党の税制調査会で制度設計を急ぐことにしている。

政権の政策決定に批判、世論も厳しい視線

こうした所得税などの減税をめぐっては、与党内には、政権の政策決定のあり方を問題視する声も出ている。

具体的には、岸田首相が「税収増の国民への還元」を図るとして、新たな経済対策のとりまとめを与党に指示したのは9月26日だ。

その後、岸田首相から、唐突に所得税減税検討の指示が出されたのが10月20日で、苦戦が伝えられていた衆参補欠選挙の投票日の直前だった。

このため、「減税策は補欠選挙へのテコ入れではないか」、あるいは「低迷する政権の浮揚や、年内解散・総選挙をねらったものではないか」といった憶測も飛び交い、政権の対応のまずさを指摘する声は党のベテラン議員からも聞かれる。

一方、国民の岸田政権の経済対策に対する視線も厳しい。報道各社の10月の世論調査では、政府の新たな経済対策について「期待する」は4割程度に止まり、「期待しない」が6割程度でほぼ共通している。

直近の日経新聞の世論調査(10月27~29日実施)によると政府の経済対策について「期待する」は37%、「期待しない」は58%だった。物価対策としての所得税減税については「適切とは思わない」が65%で、「適切だと思う」の24%を大きく上回った。

岸田内閣の支持率は33%で、前回調査から9ポイント低下し政権発足以来、最低の水準だ。不支持率は8ポイント増えて59%だった。政権の対応を厳しい視線でみていることがうかがえる。

 補正予算審議と中期の将来展望がカギ

さて、岸田政権の今後の政権運営はどのようになるか。まず、新たな経済対策を受けて、政府は裏付けとなる補正予算案の編成を進めており、今月下旬に国会へ提出する見通しだ。一般会計の規模は13兆1000億円で、財源の多くは借金・国債に頼ることになる。

国会は与党が圧倒的に多数なので、原案通り可決・成立する見通しだが、予算審議を通じて、世論の反応が注目される。先の日経の調査と同じような結果になると減税が評価されず、内閣支持率を引き下げることになり、政権にとっては思わぬ展開となる可能性もある。

また、今の国会は、旧統一教会の財産保全のための法案や、11月末が期限のマイナンバーカードの総点検と健康保険証廃止の扱いをどうするかという問題も抱えている。

さらに、年末の予算編成や税制改正を控えて、先送りになっている防衛増税の実施時期や、少子化対策の具体的な財源が焦点になる。岸田首相は、減税や児童手当の拡充など国民受けする政策には積極的だが、増税や国民負担増の問題は避けようとする姿勢がうかがえる。

岸田政権の減税に対して、世論の評価が低い背景としては「減税の後には、増税と負担増が待ち受けているのではないか」といった将来への不安や、政治不信があるのではないか。

したがって、岸田政権は当面の対策だけでなく、向こう3年から5年程度の日本経済や金融政策のかじ取りをどうするのか、中期の将来展望を明らかにしないと政権への不信感はぬぐえないのではないかと思う。

自民党の長老も「岸田首相に必要なことは、政権の目標をわかりやすく、はっきり示すこと。将来の展望を国民に率直に語りかけることが必要ではないか」と指摘する。

岸田首相にとっては、今月下旬に予定される衆参の予算委員会の質疑などを通じて、政府の経済対策について世論の支持が広がるかどうか、今後の政権運営の分水嶺になる。そして、来年夏の減税の実施時点で、日本経済がデフレ脱却の軌道に乗せられるのかどうか、険しい道が続くことになりそうだ。

最後に衆院解散・総選挙について触れておきたい。これまでのブログで触れてきたように経済対策のとりまとめが迷走し、内閣支持率も低迷している今の状況では、年内解散の可能性はほぼなくなったと言えるのではないか。

岸田首相も12月の政治日程として◆今月末からドバイで開かれるCOP28=国連の気候変動枠組み条約会議への出席、◆8日から長崎で開かれる国際賢人会議、◆16日から3日間、東京で開催されるASEAN特別首脳会議などの日程調整を進めている。

岸田首相にとって、懸案の解決で「政権の実績」を上げることができるかどうか、衆院解散の前提条件になる。(了)