“大義なき解散” 通常国会冒頭解散へ

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市首相は14日夕方に与党幹部と会談し、23日に召集される通常国会の早期に衆議院を解散する意向を伝えた。これによって、通常国会冒頭で衆議院が解散され、来月に総選挙が行われることが確実な情勢になった。

この通常国会冒頭解散をどのようにみたらいいのだろうか。私は50年近く政治取材を続けているが、一言で言えば”大義なき解散”といわざるを得ない。今回ほど政権の自己都合優先の解散は記憶にない。

というのは高市首相は新年5日の年頭の記者会見で、衆院解散の可能性を問われ「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感していただくことが大切だ」とのべ、衆院解散より政策実現を優先させる方針を力説していた。こうした方針を覆して、国民に信を問う理由や大義が見あたらないからだ。

また、通常国会冒頭で衆議院が解散されると、国民生活に直結する新年度予算案の審議はできなくなくなり、予算案の年度内成立は不可能になる。新年度予算案の審議を取り止めてでも、衆議院の解散・総選挙を急ぐ理由があるとはとても思えない。

さらに、全国の地方自治体は今、自らの新年度予算案の編成に取り組んでいるのをはじめ、国の物価高対策に対応するための事業への対応にも当たっている。加えて衆院選挙の準備が追加されることになり、自治体への負担は重い。

高市首相は自民・維新幹部との会談の中で、解散に踏み切る理由として「連立政権のパートナーが公明党から維新に変わったこと。『責任ある積極財政』や防衛三文書の見直しなど新しい政策打ち出したことから、国民の審判を受ける必要がある」と説明したという。

だが、こうした点であれば、去年の政権発足直後でも可能だったし、新年度予算案が成立する3月末以降でもできるのではないか。”解散の理屈は、後から貨車でついてくる”と言われてきた格言そのもので、説得力は乏しい。

高市首相としては「衆議院は無所属議員の参加でようやく過半数に達したが、参議院では与党過半数割れという苦しい状況にある。衆院選挙で議席を増やし、政権の求心力を高め、政策を推進したい。内閣支持率の高いうちに解散に打って出て勝利したい」との思いはそれなりにわかる。

しかし、前回衆院選挙からまだ1年2か月余り、任期の半分も経っていない。去年夏には、参院選も行われたばかりだ。政治にはそれなりのタイミングというものがある。

さらに、解散・総選挙を行うか否かという重大な方針決定の進め方にも問題がある。今回の冒頭解散方針は、高市首相と首相官邸の限られた側近だけの協議で決まり、自民党の幹事長などの役員にも知らされていなかったとされる。政党政治のあり方からも逸脱するのではないか。

このように今回の通常国会冒頭解散は「政権の都合優先」「大義なき解散」と指摘されても仕方がないのではないか。高市首相は19日に記者会見を行う予定だが、解散の理由や大義名分などについて明確な説明を願いたい。

政治のあり方を含め国民の選択がカギ

衆議院選挙は国民が国の政治に意思表示できるので、本来、歓迎すべきことだ。したがって衆院解散・総選挙が確実な情勢になった以上、選挙に関心を持ち、1票を投じていきたい。

懸案・政治課題は山積み状態だ。物価高対策をはじめとする経済・財政政策は待ったなしの状態だ。賃金引き上げや日本経済立て直しへの具体的な方法や道筋が提示されるかどうか。人口減少社会と社会保障制度、日本の防衛や外交をどのような方針で臨むのかが焦点になる。

また、先送りが続いて生きた「政治とカネの問題」に今度こそ、結論を出すことが必要だ。そして、新しい政治の姿・形をどのように構想していくか、これからの大きなテーマだ。

さらに、立憲民主党と公明党とが新党結成を視野に選挙協力の調整を始めるなど新たな動きもでている。中道勢力の結集をめざしているものとみられ、調整が進めば、衆院選挙の構図を変える可能性もある。

衆議院が解散されればどの候補者、政党を選ぶのか。しばらくの間、私たち国民が主役で決定権を持つ。内外激動が続く中で、どのような社会をめざすのか、新しい政治のあり方にどう取り組むのか、若い世代の皆さんとともに熟慮の1票を投じたい。(了)

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”通常国会 冒頭解散”の見方・読み方

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市政権内で、通常国会冒頭に衆議院を解散し総選挙を行う案を検討していることが明らかになった。高市首相は沈黙を続けているが、2月8日か、2月15日投開票を想定している。

急浮上の解散案に与野党ともに大きな驚きとして受け止められているが、冒頭解散の流れは広がりをみせている。高市首相のねらいや、冒頭解散の動きの背景などを探ってみたい。

冒頭解散、首相官邸主導で検討進む

今回の衆院解散の動きを最初に報じたのは、読売新聞だ。正月3が日が明けて政治が本格的に動き始めた週末9日の夜、読売新聞が電子版で「高市首相が通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報じた。

政界では通常国会冒頭解散は見送りとの見方が定着していたこともあってか、全国紙のほとんどは翌日朝刊の報道は見送った。おそらく事実関係の確認などに手間取ったためとみられ、解散の動きが掲載されたのは11日朝刊になった。

筆者も報道直後に自民党関係者に電話取材をしたが、事実関係は確認できなかった。後で確認してみると与党の主要幹部でも知らない人がほとんどだった。「解散は首相の専権事項とはいえ、進め方が余りにもひどい」と憤る幹部もいたとされる。

政界関係者の情報を総合すると冒頭解散案は、高市首相と首相官邸の極めて限定された幹部が極秘裏に検討を進めたとされる。高市首相は早期解散より肝いりの政策を実現したうえで、解散を断行することが持論とされてきたが、最終的には一部側近の進言を受け入れ、早期解散にカジを切ったものとみられる。

安倍元首相は抜き打ち解散を重ねたが、いずれの場合も自民党中枢と連立を組む公明党代表には、事前に解散の意向を伝えるなど周到な根回しを行った。それに比べると高市首相の対応は官邸主導で、自民党執行部などへの根回しは後回しとなり、深刻なしこりを残すことになるだろう。

野党反発も、与党で解散の流れ広がる

高市首相の国会冒頭解散への動きに対して、野党側はそろって強く反発している。立憲民主党の野田代表は11日記者団に「経済や物価高対策が重要だと言いながら、政治空白をつくる。理屈や大義がなく、自己保身的な理由があるのではないか」と厳しく批判した。

国民民主党の玉木代表は12日「新年度予算案の年度内成立ができないタイミングでの解散になれば、『経済後回し解散』と言わざるを得ない」と批判し、新年度予算案成立に向けた協力を見直す考えがあることを明らかにした。

公明党の斉藤代表はNHK日曜討論で「新年度予算案の年度内成立が最も大事な状況の中で、なぜ今、解散するのか」とのべ、予算案の年度内成立を断念して解散につき進む姿勢を批判した。このように野党側は冒頭解散に強く反発する一方で、総選挙への態勢づくりを急いでいる。

一方、連立を組んでいる日本維新の会の吉村代表は11日の日曜討論で「おととい(9日)高市首相と話をした際に『一段ステージが変わったな』というやりとりがあった」として、通常国会冒頭解散には驚かないとの認識を示した。

自民党内では冒頭解散に驚きが広がったものの、「高市内閣の支持率が高い中で、早期解散に踏み切ることは理解できる」として、冒頭解散を容認する流れが広がっている。

ただ、党内には「高市首相がこれまで発言してきたように物価高対策や経済政策の効果を国民に実感してもらうことが重要だ」として、来年度予算案の年度内成立を優先させるよう求める声も根強くある。

こうした自民党内の反応などを踏まえたうえで、高市首相は近く、通常国会冒頭解散について自らの考え方を正式に表明するものとみられる。

高支持率で 自民大幅議席回復ねらいか

それでは、高市首相が通常国会冒頭解散を検討するようになったねらいについて話を進めたい。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は60%台から70%台という高い水準が続いている。このため、自民党内からは「高い支持率の間に早期解散に打って出るべきだ」という声が強かった。

高市首相の側近からは「今、選挙に打って出れば自民党は、単独で衆院の過半数を獲得できる」との進言が出されたとされる。高い内閣支持率の下で、衆院の大幅な議席回復が一番のねらいとみられる。

一方、台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁で日中関係が悪化しており、中国は対日経済圧力をさらに強めようとしている。このため、対中関係をにらんで政権基盤を強化しておきたいとのねらいを指摘する見方もある。

さらに、野党関係者からは、高市首相の政治とカネをめぐる問題や、旧統一教会と自民党の関係などの不祥事が予算委員会で取り上げられ、支持率低下を懸念したのではないかとの見方も出されている。

乏しい大義名分、国民の理解がカギ

衆院解散・総選挙をめぐっては「解散の大義名分」がいつの選挙でも議論になる。高市首相は11日のNHK日曜討論(首相は8日事前収録)で「衆議院の解散・総選挙については、国民に物価高対策と経済政策の効果を早く実感してもらいたい、今は目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」と強調した。

国民の関心が大きい物価高対策をめぐっては、自民党総裁選の混乱で補正予算の成立が年末にずれ込み、執行は新年に持ち越された。新年度予算案も冒頭解散になれば、年度内成立は無理で4月以降へと大幅に遅れるのは確実だ。

これでは,政府・政権が責務を果たしたとは言えまい。国民から「言行不一致解散」、「政権の自己都合解散」など厳しい批判を浴びることも予想される。

また、物価高や円安は続き、トランプ政権のベネズエラへの武力行使やイラン情勢への介入なども懸念されている。内外情勢が流動的な時期に、あえて解散・総選挙を行う必要があるのだろうか。

さらに真冬の選挙になり、候補者はもちろん、有権者にとっても負担が大きい。こうした点を考慮すると解散の大義名分があるようにはとても思えない。

国民にとって国政に1票を投じる機会は本来、歓迎すべきことだ。ただ、衆院選は1年3か月前に行ったばかりで、去年夏は参院選、今回衆院選となれば、1年余りに3回の国政選挙を行うことになる。

最近の衆院選は、解散から投票日までがわずか2週間あまりのあわただしい選挙が続いている。与野党が腰を落ち着け議論を尽くしたうえで、国民に判断を求める正攻法の選挙へ改めることが必要だ。

一方、選挙情勢も流動的だ。高市内閣の支持率は60%台から70%台と高いが、自民党の政党支持率はその半分以下の30%程度と低迷している。自民党の議席増加の可能性もあるが、逆のケースも起こり得る。

公明党・創価学会との選挙協力が見込めないことや、無党派層の投票行動など流動的で、大きなリスクを抱えた選挙になる可能性もある。

高市首相は、通常国会冒頭解散に踏み切るのかどうか。内外情勢をはじめ、国民生活や日本経済への影響、さらには外交・安全保障との関係をどのように考えているのか、高市首相の説明を待ちたい。(了)

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”衆院解散 総選挙の見方・読み方” 2026年政局

新しい年が明けて、高市首相は5日に伊勢神宮を参拝した後、年頭の記者会見に臨んだのをはじめ、各党の代表や委員長もそれぞれの党で仕事始めや記者会見を行うなど新年の政治が本格的に動き出した。

こうした中で、高い支持率が続く高市首相が今年、衆議院の解散・総選挙に踏み切るかどうかが焦点の1つになっている。衆議院の解散・総選挙の可能性をどのようにみるか、探ってみたい。(★備考=読売新聞が10日「高市首相は通常国会冒頭解散を検討」と報道したことについて、ブログ文末に追記として、短いコメントをつけてあります)。

新年の解散・総選挙 4つのケース

高市首相は5日の記者会見で、今年の政権運営について「昨年中に政権として、一定の方向性を出すことはできたと考えているが、今後、さらに加速させていきたい。高市内閣は始動したばかりだが、自民党総裁選で掲げた政策や日本維新の会との連立合意に掲げた政策をどんどん具体化させ、実現していきたい」と表明した。

そのうえで、通常国会の会期中に衆院解散・総選挙があるかと問われたのに対し高市首相は「今年度の補正予算の早期執行を各大臣に指示している。国民に高市内閣の物価高対策や経済対策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべた。

こうした発言からすると高市首相は、物価高対策などの効果を実感してもらうことを解散・総選挙の前提条件にしていることから、通常国会冒頭の解散は想定していない。最も早い場合でも新年度予算が成立した以降になる公算が大きいとみられる。

具体的なケースとしては、◆①新年度予算成立の4月頃、◆②通常国会が閉会する6月下旬、◆③高市内閣発足1年の秋の臨時国会、◆④年内は見送りの4つが想定される。

 国会会期末の6月、秋の可能性も

それでは衆院解散・総選挙の時期としては、具体的にいつ頃の公算が大きいのだろうか。まず、①新年度予算成立の4月頃については、国民生活に直結する新年度予算が成立することは、政治が取り組むべき前提条件の1つを達成したことにはなる。

ただ、4月といえば新年度。国民にとっては新しい年度が始まる重要な時期で、今の選挙制度になって以降、4月や5月に総選挙が行われたことはない。政治的にみてもこの時期の解散・総選挙は避けるとみた方がよさそうだ。

次に②通常国会が閉会する6月下旬についてはどうか。通常国会前半で新年度予算が成立すれば、後半国会では連立与党の日本維新の会が、先の臨時国会から先送りになった衆議院の議員定数削減法案と副首都構想を実現する法案の成立を強く求めている。

これに対し、野党第1党の立憲民主党などは、懸案の企業・団体献金の見直し法案の成立を迫ることから、こうした法案の扱いをめぐって与野党の攻防が予想される。

そして、会期末に立憲民主党などが高市内閣に対する不信任決議案を提出した場合、これに対抗することを大義名分に高市首相が衆院解散に打って出る可能性はある。

一方、通常国会での解散を見送りにした場合は、③高市内閣発足1年、秋の臨時国会での解散・総選挙を探ることになる。具体的には内閣改造を行った後、秋の臨時国会で国民に信を問うケースが想定される。

このように自民党内で早期解散論が強いのは、高市内閣の支持率が高い間に選挙をやれば、政権与党に有利に働くという思惑に基づくものだが、肝心の自民党の政党支持率は30%ギリギリの水準で低迷している。このため、自民党の支持率が上昇に転じない状況では、早期解散は行うべきでないという意見も根強い。

年内解散見送り・来年説も有力

衆院解散・総選挙は、最終的には首相が決断することになるので、高市首相がどのような政権戦略を描いているかにかかっているとも言える。

自民党の長老に聞くと「高市首相は、とにかく政策をやりたいというのは本音だと思うので、早期解散を首相自身はめざしていないのではないか。また、総裁選の任期は来年秋なので、総裁選とその前後に衆院解散・総選挙を断行し、両方をセットで乗り切ることをめざしているのではないか」との見方をしている。

こうした見方に立つと④年内見送り、来年・2027年秋以降の解散・総選挙ということになる。だが、高市内閣の支持率が今の高い水準が維持しているどうかはわからず、不確定要素があるのも事実だ。

このように4つのケースともそれぞれの可能性と同時に、困難な点も抱えている。そのうえで、個人的な見方を率直に言えば、4つ目の年内見送り説が有力、確率が高いのではないかとの見方をしている。

その理由の1つは新年の野党の動向を見ると、政権に協力しようとする野党の動きが出るなど衆院解散・総選挙に追い込んでいく迫力が感じられないことがある。

一方、高市政権にとっても物価高対策や経済政策の効果を実感してもらうには、それなりの時間がかかること。さらに、仮に衆院解散・総選挙で自民党が勝利したとしても参院の過半数割れは3年から6年は続く。衆院での大勝が見込めない限り、解散には慎重姿勢を続けるとみるからだ。

ただ、「政界、一寸先は闇」といわれる。政治は生き物、与野党双方とも思わぬ事態が起こり得るので、4つのケースのどの流れになるか見極めていく必要がある。

選挙の質、論点・争点設定がカギ

最後に衆院解散・総選挙については選挙の時期だけでなく、「選挙の質」、具体的には「選挙の論点・争点の設定」が重要だ。特にインターネットが解禁され、SNSが活用され、私たち国民もさまざまな情報を入手できるようになった。

その一方で、「選挙の論点・争点」がはっきりしないと感じることも多い。政党や候補者が論点を整理し、選挙の争点を明確にして有権者に判断を求める取り組みがSNS時代だからこそ、必要だ。

具体的には、国会で普段から与野党が議論を進め、選挙期間中はさらに具体策などを示すことによって、有権者が投票を通じて決着をつけられるようにする取り組みが重要だ。

報道各社の世論調査を基に考えると主要な論点としては、◆物価高を含む経済政策の柱と具体的な政策・方法、◆超少子・高齢化時代の社会保障の姿・あり方、◆外交と防衛力整備の進め方、◆子育て・教育、科学技術立国のあり方。国民の多くが明確に示して欲しいと考えている論点としては、こうした点ではないか。

内外ともに激動が続く時こそ、日本社会が必要とする政策、取り組み方について、政党や候補者が競い合い、議論を尽くしたうえで、有権者が選挙で判断する政治に近づけていく取り組みが求められていると考える。

★追記(1月10日午前9時)読売新聞は10日朝刊で「高市首相は、23日召集が予定される通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報道。「政府関係者が明らかにした」としているが、高市首相自身の意向を確認したのか、自民党内の主要幹部への根回しは終えているのかなど事実関係ではっきりしない点もある。また、高市首相は記者会見で、最優先で取り組んでいる物価高対策の効果を国民に実感してもらうのが先だとして、早期解散に慎重な姿勢を繰り返し表明してきた。それだけに今回の国会冒頭解散に、国民の理解は得られるのかどうか、大義名分はあるのか、高市首相の動向を注視したい。(了)

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2026年政局の焦点”高市首相の求心力と連立基盤の変動”

新しい年・2026年の政治は、どのような動きになるだろうか。去年10月に発足した高市政権は年末に補正予算を与党に加えて、国民民主党と公明党の賛成も得て成立させたのに続いて、総額122兆円の新年度予算案の編成も終えて、新年を迎えた。

内閣支持率は60%を上回る高い水準を保ったまま年を越え、これまでのところ政権運営は全体として順調に推移している。

今年は大きな選挙が予定されていないことなどから、2026年の政治は高市政権を中心に動く見通しだ。そこで、高市政権が進めようとしている政権運営を下敷きに新年の政治のゆくえを探ってみたい。

先に結論を明らかにしておいた方が、話がわかりやすいと思う。端的に言えば新年の政治は、高い支持率を背景にした高市首相の求心力がいつまで続くのか、また政権の基盤である自民・維新の連立が維持していけるかどうかが大きなカギを握っているとみている。

さらに、衆院解散・総選挙については年内説が多いが、高市首相の政権戦略からすると年内解散の確率は低いのではないか。なぜ、このような見方・読み方をしているのか、以下詳しく説明したい。

今年の政治日程”大きな選挙がない年”

最初に政治日程から確認しておくと今年の前半は、通常国会が主な舞台になる。1月23日に召集され、会期は150日間で6月21日に会期末を迎える。

その通常国会の前半は、新年度予算案の審議が中心になる。予算が成立すれば4月以降、インテリジェンス機能の司令塔となる「国家情報局」や「防災庁」の設置法案、それに連立を組む日本維新の会が重視する「衆院議員定数削減法案」や「副首都構想の法案」の扱いが焦点になる見通しだ。

外交面では、アメリカのトランプ大統領が4月に中国を訪問し、習近平主席と米中首脳会談を行う予定だ。このため、高市首相は3月にもアメリカを訪問し、トランプ大統領との日米首脳会談で対中戦略などのすり合わせを行いたい考えだ。

秋には高市首相は、自民党総裁と首相にそれぞれ選出されてから1年の節目を迎える。高市首相の総裁任期は、前任の石破首相の残り任期になるため、来年・2027年9月が任期満了、衆院議員と参院議員の半数は2028年に任期満了となる。

このように今年は”大きな選挙が予定されていない年”というのが特徴だ。もちろん高市首相が衆院解散を決断すれば、総選挙となる可能性が大きいが、高市首相は「政策が山ほど控えており、解散を考えるヒマはない」と否定している。

首相の求心力がカギ、物価・経済も影響

さて、今年の政治を読む上で、まずは「高市首相の求心力」、具体的な指標としては高市内閣の支持率の推移が大きなカギを握っている。高市内閣の12月の支持率はNHKの世論調査で64%、朝日新聞の調査で68%、読売新聞の調査で73%といずれも政権発足以降、高い水準を維持している。

野党の幹部は「支持率が50%程度にまで下がらないと攻めづらい」と語る。自民党幹部の一人も「党内には高市首相に物申したい人もいるが、今は口に出せる状況にはない」と沈黙を保っている。ただ、支持率が下落してくれば党内がざわつき、異論が広がることは否定しないというわけだ。

内閣支持率を分析すると18歳以上を含む20代から30代、40代、それに50代までは「高市内閣支持」の割合が70%台後半を占める。つまり、歴代政権と違って50代以下の若い世代の多くがまとまって支持しており、当面、大幅に支持率が下落するような事態は予想しにくい。

一方、高市内閣は発足して2か月余りが経過したばかりで、「実績」が評価されたわけではない。初の女性首相で、政治を大きく変えてくれるのではないかという「期待感」が高支持率につながっているとの見方もある。

歴代の政権は通常国会が進むにつれて、支持率が低下してくるケースが多かった。高市政権の場合、国民は物価高対策に大きな関心を寄せていることから、年が変わってようやく家計に届くようになる政府の施策が支持されるのか、逆に期待外れとして支持離れとなるか注目される。

また、国会審議の中心になる新年度予算案は、一般会計の総額が122兆円と過去最大。インフレで税収は過去最高になったにもかかわらず、新規国債の発行は増えた。金融市場は急速な円安・債券安の形で、財政規律に警鐘を鳴らしている。

予算審議では「実質賃金の目減りが続く中で、賃金の引き上げや日本経済の先行きは大丈夫なのか」などと野党側の追及が続き、内閣支持率に影響が出ることも予想される。新年度予算案が成立する見通しの4月、通常国会会期末の6月段階で、高市内閣の支持率はどのようになっているのか、2026年政局の第1のポイントになるとみている。

自・維連立は継続か、離脱の可能性は

次に通常国会は参院で与党が過半数割れしていることから、新年度予算案の修正をめぐって与野党の攻防が予想されていたが、年末の高市首相と国民民主党の玉木代表との会談で、国民民主党が要求していた「年収の壁」の178万円への引き上げを高市首相が受け入れる一方、玉木代表も新年度予算案の早期成立に協力することで合意した。

この結果、新年度予算案は自民・維新の与党に加えて、国民民主党が賛成に回る公算が大きく、与党が過半数割れの参議院でも賛成多数で可決・成立する見通しが強くなっている。

そこで政治的には新年度予算案よりも、維新が「連立参加の絶対条件」と位置づけ高市政権に実現を迫ってきた議員定数削減法案や副首都構想を実現する法案が成立するかどうかの方に焦点が移ってきている。

維新は、先の臨時国会でも連立離脱をちらつかせながら、定数削減法案の提出と採決を自民党に強く働きかけてきた。このため、定数削減法案や副首都構想法案が成立にこぎ着けられない場合には、連立離脱が現実味を帯びるのではないかとの観測が出ている。

その際、維新に代わって国民民主党が連立入りするのではないかとの見方も一部で取り沙汰されている。

国民民主党の対応については、閣外協力の形で自民党に協力することはないとは言えないが、本音は”政権とつかず、離れず、果実を得る”のが基本戦略とみられる。このため、連立まで踏み込む可能性は小さいのではないかと個人的にはみている。

いずれにしても予算成立後の国会では、定数削減法案と副首都法案の扱い、それに自民・維新・国民民主の3党の関係が絡んで、高市政権の連立基盤が揺らぐ可能性がある。

加えて、その時点で高市内閣の支持率が下落している場合は、足元の自民党内から連立の枠組みや高市首相の政権運営をめぐって異論や批判が相次ぎ、政権基盤が揺らぐ可能性がある。こうした政見基盤の変動が、2026年政局の2つ目の焦点だ。

高市戦略は解散より、実績づくり優先か

新年の政治展望では衆院の解散・総選挙の見通しについて、質問を受けることが多いので、個人的な見方を説明したい。解散の時期は、時の首相が決断するので断定的なことは言えないが、情報を集め、政治情勢なども加味して確率の高いケースを予測するのが基本だ。

高市政権の場合、解散の時期として想定されるのは◇新年2026年1月の通常国会冒頭、◇予算成立後の4月以降、◇通常国会会期末の6月、◇高市政権発足から1年・秋の臨時国会、◇さらには来年・2027年秋の自民党総裁選前後、◇2028年10月の任期満了前のケースだ。

政界では高市内閣の支持率が極めて高いことから、予算成立後の今年4月以降はいつでもあり得るとの早期解散説が多く聞かれる。確かに自民党は衆参両院の選挙とも大敗を喫しているので、早期解散論が多数を占めることは理解できる。

ただ、自民党の政党支持率は低迷しており、この10年余りで最も低い水準のままだ。高市首相は年末の記者会見などで「目の前で取り組まなければならないことが山ほど控えている。解散は考えているヒマがない」と否定的な発言を繰り返している。

高市首相の任期は、前任の石破首相の残り任期である来年9月までだ。仮に衆院で勝利しても、参院は過半数に遠く及ばない。連立相手の維新が大幅に議席を失い連立解消になると、参院の運営は全く見通しがつかなくなる。

自民党長老に聞くと「マスコミは早期解散ありと盛んに流しているが、高市首相は実績をあげたうえで、信を問うというのが基本戦略だ。今年は腰をすえて政策実現に取り組み、来年以降に総裁選と衆院選を勝ち抜き、総裁任期で言えば通算5年政権を担う戦略を立てているのではないか」との見立てだ。

個人的には、この長老の見方を上回る情報はないので、来年秋頃の解散が有力とみている。但し、その場合、高市内閣の支持率はそれまで高い状態を維持できるかは不透明だ。

したがって、さらに正確さを求めると、通常国会で新年度予算案が衆院を通過する見通しの2月末頃の情勢をみたうえで、判断するのが最も適切ではある。

公明の路線選択と政界再編へ動きも

最後にもう1点、野党の連携と公明党の路線選択について触れておきたい。高市政権の発足を契機に、公明党が26年間続いた自民党との連立政権からの離脱し、政界の構図は大きく変わった。公明党が今後どのような路線を選択するのか、2026年政局の「隠れた焦点」だ。

野党第1党の立憲民主党は、公明党との連携を軸に中道勢力の結集に向けた動きを強める見通しだ。これを受けて公明党は立民との連携に踏み出すのか、それとも自民党との関係修復へ動くことはあるのか、その選択は政界に大きな影響を及ぼす。さらに国民民主党が自民党との連携へと動くのか、踏みとどまるのかも注目点だ。

高市政権と自民党は、維新との連立を維持した上で、連立の枠組みの拡大、具体的には国民民主党に対象を絞って連立参加をめざす方針だ。そのうえで、公明党との関係改修復をめざすのが基本戦略だ。

一昨年からの衆参両院の選挙で、参政党、れいわ、共産党、保守党、社民、チーム未来など新興勢力の政党を含めて多党化が進んだ。こうした動きがどのように整理・統合されていくのか。底流では、公明党を間に挟んで自民、立民の駆け引きが一段と強まるとみている。

そして2026年の政治は、高市政権が保守勢力を固めながら政権基盤を強化していくのか、それとも連立政権の基盤が崩れたりして政局が流動化し、政界再編への動きが出てくるのかどうか、高市首相の求心力と政権基盤の変動を注視していく必要がある。

★追記(1月6日午前11時半) 高市首相は年頭にあたって5日、記者会見し「政治の安定なくして、力強い経済政策も外交・安全保障もできない。日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党をはじめとする野党にも協力を呼びかけていく」との考えを示した。

また、通常国会の会期中の衆院解散・総選挙があるかとの質問に対し「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべ、解散に直接言及することは避けた。(了)

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