予算成立も”内憂外患の石破政権”

新年度予算が参議院で再修正されて可決された後、衆議院に戻されて年度末の31日ぎりぎりの日程で、成立にこぎ着けた。

一方、与野党が3月末までに結論を出すことを申し合わせていた企業・団体献金の見直しについては与野党案の隔たりが大きく、決着は先送りになった。

新年度予算が成立したことで、石破政権は通常国会最初の難関を越えたが、予算成立のこの日、東京株式市場はトランプ政権の関税政策に対する懸念が強まり、日経平均株価は1500円以上値下がりし、今年最大の下落幅となった。

石破政権は、これから内政では重要法案をめぐる与野党の攻防が激化するのをはじめ、外交ではトランプ関税への対応を迫られ、内憂外患状態にある。石破政権と4月以降の政治はどのような展開をたどるのか探ってみた。

トランプ関税、自動車産業などを直撃へ

政府の当初予算が衆議院で修正されたのに続いて参議院でも再修正され、衆議院に戻されて成立するのは今の憲法の下で初めてのケースだ。少数与党の下で、高校授業料の無償化や高額療養費制度の見直しなどをめぐって、政権の対応が迷走したことの現れだ。

さて、これからの政治の動きで、新たな難題として浮上しているのがトランプ大統領が次々と打ち出している関税引き上げへの対応だ。トランプ政権は4月3日には、日本を含む全ての国からの輸入自動車に25%の追加関税を発動する予定だ。また、相手国と同率の関税まで引き上げる「相互関税」にも近く踏み切るものとみられている。

日本にとって自動車産業は基幹産業で、対米輸出額は年間6兆円に上るだけに追加関税が適用されると部品産業も含め、深刻な影響を受ける。石破首相は、関税引き上げの対象から日本を除外するようアメリカ側に引き続き要請するとともに、産業や雇用の影響を調査し、資金繰り対策などに全力を上げる方針だ。

これに対し、立憲民主党など野党側は「2019年の第1次トランプ政権と安倍政権の間で行われた貿易交渉で、日本の自動車への追加関税を断念させる代わりに日本は米国産の牛肉や豚肉などにかける関税をTPP加盟国並みに引き下げた。トランプ政権はこの約束を破っている」として、日米貿易協定をやり直すなど毅然とした対応を取るべきだと批判を強めている。

与党からも「日本政府として関税対策にどのような体制で臨むのか、対米交渉の中心になって担当する閣僚を決めるべきだ。官邸と省庁、民間、与党などオールジャパンで早急に対応していくことが必要だ」といった意見が聞かれる。

 重要法案、政治資金の攻防も激化

内政面では、重要法案の審議が本格化する。衆議院で先月から審議が始まっているのがサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー制御」導入関連法案だ。憲法が保障する「通信の秘密」との関係をめぐって、野党側は国会の関与を強める修正案を提出する見通しで、激しい議論が予想される。

また、政府・与党で検討が進められているのが、年金制度改革関連法案だ。パートで働く人たちが厚生年金に加入できる企業要件を撤廃することなどが盛り込まれる見通しだ。

自民党内では厚生年金の適用拡大につながり、今の国会で成立をめざすべきだという意見がある一方、事業主の負担が増え参議院選挙に影響が懸念されるとして、法案提出に反対する意見があり、調整が続いている。与野党間では既に「重要広範議案」に指定されており、その扱いに注目が集まっている。

さらに、後半国会の大きな焦点になるのが選択的夫婦別姓制度の問題だ。野党第1党の立憲民主党は4月中に法案を提出する予定で、与党の公明党は賛成の立場だ。自民党は保守系議員が「旧姓の通称使用の拡大を実現すれば問題点を解決できる」として、選択的夫婦別姓制度に反対しており、党内の意見集約がどこまで進むか不透明な状況だ。

このほか、企業・団体献金の見直しをめぐっては、与野党が申し合わせた31日までに結論を出すことは困難になり、4月以降も協議が続く見通しだ。また、石破首相が10万円の商品券を自民党の衆議院議員に配付した問題については、野党側が政治倫理審査会で弁明するよう求めている。

さらに自民党派閥の裏金事件をめぐって、参議院予算委員会は旧安倍派幹部だった世耕弘成・元参院幹事長(現衆院議員)の参考人招致を議決したことから、衆議院でも旧安倍派幹部の参考人招致について、与野党の協議が行われる見通しだ。

このように内政でも重要法案や「政治とカネの問題」などの難題が山積しており、トランプ関税への対応と合わせて石破政権は、内憂外患状態にある。

 問われる首相の指導力と対応能力

そこで、石破政権の政権運営はどのようになるのだろうか。ここまでみてきたように石破首相は、まずは重要法案やトランプ関税などについて、指導力を発揮し成果を上げることができるかどうかが問われている。

また、与党側からは「コメの価格の値上がりやガソリンの暫定税率廃止など物価高対策について思い切った具体策を打ち出さないと参議院選挙は戦えない」といった声が聞かれる。こうした声に応えて、新たな対応策を打ち出せるかも注目される。

自民党のベテラン議員の一人は「党内には、”石破降ろし”を主張する議員はいるが、本気で首相を代えようという議員は多くはないのではないか。ただ、石破首相に対して、白けた雰囲気が感じられるのは要注意だ」と語る。

石破首相が10万円の商品券を配ったことが表面化した3月中頃は、石破退陣の見方も強まったが、その後、トランプ政権への対応が問われている時に党内抗争とみられるような行動はとれないなどとして、こうした見方は後退しているようにみえる。

攻める側の立憲民主党の野田代表は商品券問題が表面化した際、石破首相の退陣を求めなかった。「夏の参院選は政権基盤が弱い石破首相との対決を望んでいる」ようにみえる。

報道各社の3月の世論調査をみると商品券問題などが影響して、石破内閣の支持率は大幅に下落し、政権発足半年で最も低い水準に下落している。一方、野党の多くの党の支持率も上昇しているわけではない。

有権者の多くは「石破政権と与党は内外の課題を解決できる能力を持っているのかどうか」、「野党側は、政権与党に代わる政策や人材を結集できるのかどうか」を見定めようとしているのではないか。

通常国会後半のこれから、6月の東京議選や夏の参議院選挙に向けて内外情勢は激しく揺れ動くことが予想される。私たち有権者は、内外の情勢と与野党の政策、対応などをじっくり見極め選挙に活かしたい。(了)

★(追記4月1日午後1時)新年度予算の成立を受けて、石破首相は1日午前11時から記者会見し、冒頭、商品券配付問題について陳謝した。◇新年度予算が衆参両院での修正を受けて成立したことについて「熟議の国会の成果だ」と評価した。◇物価高対策については、従来の方針の説明に止まった。◇トランプ関税については日本を対象から除外するよう強く求めるとともに、自動車などへの関税措置が発動された場合、全国におよそ1千か所の特別相談窓口を設け、中小企業などからの相談に対応していく考えを示した。全体として踏み込んだ発言はなかった。★(追記4月3日午後1時)トランプ大統領は日本時間の3日朝、「相互関税」の導入を発表し、日本には24%の関税を課すことを明らかにした。中国に34%、インドに26%、EUに20%などの関税を課すとしている。一方、アメリカに輸入される自動車に25%の追加関税を課す措置は、日本時間の3日午後1時過ぎに発動された。日本にとってアメリカは最大の貿易相手国で、日本の自動車産業や経済は大きな打撃を受けるのは避けられない。

 

 

首相の商品券問題と”3月政局”のゆくえ

石破首相が自民党の当選1回の衆議院議員15人と会食するのに当たって、1人あたり10万円分の商品券を議員事務所に配っていた問題が明るみになり、政権を直撃している。報道各社の世論調査によると石破内閣の支持率は急落し、政権発足以来最低の水準にまで落ち込んでいる。

一方、新年度予算案は参議院で再び修正に追い込まれ、年度内に成立できるかどうかメドが立っていない。自民党内からは、石破首相の退陣を求める声も出始めるなど政権を取り巻く情勢は一段と厳しくなっている。

今回の行為をどのように見たらいいのか、また石破政権やこれからの政治はどのように動くのか、3月政局のゆくえを探ってみたい。

 首相の商品券問題で問われること

石破首相が自民党の衆議院1回生議員との会合に先だって、参加する議員事務所に1人10万円分の商品券を配った問題については、既に詳しく報じられているので、事実関係は繰り返さないが、さまざまな意見や論点が出されている。

まず、国民からは「国民が物価高で苦労しているときに、首相は国会議員の手土産に10万円もの商品券を配るとは信じられない」などとして庶民感覚とのズレを指摘する意見や、石破首相の政治姿勢に落胆、批判、怒りの声が聞かれた。

また、与党の議員からは「この通常国会では、企業団体献金の扱いが大きなテーマになっているのに、首相自らが商品券を配るとは余りにもタイミングが悪すぎる」など厳しい意見も出された。

石破首相は「会食の土産代わりで、国会議員の家族へのねぎらう意図もあった。政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法上の問題はない」と繰り返し強調している。これに対して、野党側は「場所が首相公邸で、官房長官や副長官も同席していることなどから、政治活動に当たるのは明らかで政治資金規正法に抵触している」として、首相の政治責任を引き続き追及する構えだ。

こうした論点のほか、私の個人的な見方を言わせてもらうと、会食が行われた日にち自体に大きな問題がある。率直に言えば「政権運営の基本から逸脱」しているのではないか。

どういうことかというと、会食が行われた3月3日は、新年度予算案の修正が衆議院で大詰めを迎え、この日にようやく自民・公明両党と日本維新の会の3党幹事長会談で合意にこぎ着けた。そして、翌4日に衆院本会議で、3党の賛成多数で修正された予算案が可決、参議院へ送られた。

政権にとって当初予算案は政権の命運を左右する最重要案件の1つで、歴代政権は予算案の成立まで全精力を傾注してきた。一昔前の現役記者時代を思い出すと、首相はもちろん閣僚、与党幹部も予算成立までは夜の会合はできるだけ減らすなど細心の注意と心構えで行動していた。

ところが、今の石破政権の主要幹部は大詰めの段階に1回生議員との会食を設定し、日中に商品券を配ったりしていたことになる。はっきり言えば、信じられない対応であり、首相官邸は司令塔機能を果たしているのか疑問と言わざるを得ない。政権のチグハグな対応は、常日頃の政権運営に原因があるのではないか。

内閣支持率急落も、首相退陣論は少数

さて、こうした首相の商品券配布について、世論はどのようにみているのだろうか。読売新聞と朝日新聞の世論調査をみてみたい。

◆読売新聞の調査(3月14~16日)では、石破内閣の支持率は31%で、前回の先月調査に比べて8ポイント下落した。不支持率は58%で、15ポイント上昇した。

◆朝日新聞の調査(3月15,16日)では、石破内閣の支持率は26%で、先月調査から14ポイント下落した。不支持率は59%で、15ポイント上昇した。

どちらの調査とも商品券配布は「問題だ」とする評価が75%に上り、商品券問題が石破政権を直撃し、去年10月の政権発足以降、最低の水準にまで落ち込んだ。

一方、朝日新聞の調査では、石破首相は首相を辞めるべきだと思うかを尋ねたのに対し「その必要はない」が60%で、「やめるべきだ」が32%だった。

読売新聞の調査では、自民党中心の政権の継続を望むか、野党中心の政権に交代することを望むかを尋ねたのに対し「自民党中心の政権の継続」が36%で、「野党中心の政権に交代」が46%で上回った。同じ質問をした1月調査では「自民党中心の政権の継続」が41%と、「野党中心の政権に交代」が40%で拮抗していた。

この2つの項目についての世論の見方は、石破政権や政治のゆくえをみていくうえで、興味深いデータだ。

世論の反応について私個人の見方は次のようになる。「石破首相は退陣の必要なし」との見方は、◇新年度予算案の成立のメドもついていない中で、政治の混乱は避けるべきだとの考えや、◇有力な後継候補が見当たらないこと、◇首相や政権の評価は、夏の参院選で判断すればよいなど冷静な見方をしているのではないか。

政権の形態については「政治とカネの問題」に終止符が打てない自民党に対して、うんざりしていることの現れではないか。改善されないのであれば、政権交代で政治の刷新を図ることもやむなしとの人が増えているのであろう。

政治課題と、選挙政局をどう考えるか

それでは、これからの政治はどのように動いていくだろうか。内政では、新年度予算案や重要法案を抱えているほか、外交・経済分野ではトランプ大統領の再登板で4月初めには「相互関税」への対応を迫られる見通しだ。

このうち、新年度予算案については「年収103万円の壁」の引き上げをはじめ、高校授業料の無償化、高額療養費の自己負担上限額引き上げの凍結などが盛り込まれている。参議院で再び修正されたあと、衆議院へ回付することが必要で対応を急ぐ必要がある。

懸案の企業団体献金の扱いについては、3月末に結論を出すことになっており、与野党の激しい攻防が続く見通しだ。サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー制御」導入関連法案が18日に衆議院本会議で審議入りするほか、4月には野党が重視している選択的夫婦別姓法案も提出され、与野党の協議が本格化する見通しだ。

こうした中で野党側は、商品券問題については、石破首相に政治倫理審査会への出席を求めて説明責任を徹底して求めていく構えだ。野党第1党の立憲民主党は、内閣不信任決議案を直ちに提出することは避けて、石破首相の下で参議院決戦に臨みたい考えだとみられる。

一方、自民党内では、石破首相では夏の参議院選挙では戦えないとして、退陣を求める声が出始めた。これに対して、自民党執行部は少数与党の下で、首相交代を進めると政権を失う恐れもあるとして「石破降ろし」につながらないよう党内を説得していく方針だ。

但し、党内が収まるかどうかは、はっきりしない。参議院選挙を控える参議院自民党や旧安倍派がどのような対応を示すかが焦点になる。

このように通常国会は、石破首相が新年度予算案や、企業団体献金などの扱い、それに自らの商品券問題を含めて指導力を発揮していけるかどうかが問われることになる。

政治の役割は、国民生活を安定させるとともに、国の安全を維持していくことにある。政権与党は、内政の課題としてはどの法案を最優先で取り組むのか、首相を続投させるのか、交代させるのか国民に明確に示すことが必要だ。

一方、野党側は、与党と協力して成立させる法案と、野党が実現をめざす法案や構想を提示しながら、国民にわかりやすい選択肢を示してもらいたい。私たち有権者は、夏の参議院選挙、場合によっては衆院選挙に備えて、与野党の動きをしっかり見ていきたい。(了)

 

内閣支持率急落、厳しさ増す石破政権

新年度予算案の成立に向けて参議院で大詰めの審議が続く中で、石破内閣の支持率が急落している。NHKの3月世論調査によると石破内閣の支持率は36%で、先月に比べて8ポイント下落した。不支持率は45%で、先月より10ポイントも増えた。

なぜ、今の時点で内閣支持率が急落したのか、石破首相の政権運営にどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみたい。

 支持率急落、高額療養費の混乱が影響

さっそく、NHKが今月7日から9日にかけて行った世論調査の内容から見ていきたい。石破内閣の支持率は36%で、先月の調査より8ポイント下落した。一方、不支持率は45%で、先月より10ポイントも急上昇した。

不支持の理由としては「政策に期待が持てないから」が39%で最も多く、先月より6ポイント増えた。次いで「実行力がないから」が23%で、こちらは先月と変わらなかった。

石破内閣の支持率は、去年10月の政権発足時は44%の低い水準のスタートとなった。その後は40%前後の支持率を維持してきたが、3月の36%はこれまでで最も低い水準に落ち込んだことになる。

この支持率急落の原因だが、がんや難病などの治療で医療費が高額になった場合、患者の自己負担を抑える高額療養費制度の見直しをめぐる政府側の混乱が影響したものとみられる。

衆議院の予算審議の中で患者団体や野党からは、自己負担の引き上げに反対する意見が出されたのに対し、政府側は引き上げ案の修正を重ね、対応が二転三転した。

さらに、この問題は参議院の予算審議でも取り上げられ、身内の自民党や公明党からも慎重論が出されたことから、石破首相が7日に患者負担の引き上げ全体を見送ったうえで、再検討する考えを表明した。

この見送りで、政府・与党はおよそ100億円の費用が必要になるとして、新年度予算案を参議院で再び修正したあと、衆院に回付する異例の対応が取られる見通しだ。与野党双方から「石破首相は、もっと早い段階で決断すべきだった」などの批判が聞かれた。この問題は、今後も尾を引くことになりそうだ。

 続く難問、年金改革、企業団体献金

石破首相にとって、今の国会に提出を予定している年金制度改革関連法案の取り扱いも難問だ。この法案には、パートで働く人が厚生年金に加入できる企業要件を撤廃することなどが盛り込まれる見通しだ。

自民党内では、厚生年金の適用拡大につながり、今の国会で成立をめざすべきだという意見がある一方、参議院選挙への影響が懸念されるとして法案提出に反対する意見があり、調整がついていない。

一方、企業・団体献金の扱いについては3月末までに与野党が結論を出すことになっている。自民党は、献金の禁止ではなく透明化を図る法案を提出しているのに対し、立憲民主党などは禁止法案を提出しており、与野党の調整は難航が予想される。

さらに、トランプ政権は輸入される鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課す措置について、日本時間の12日午後、発動した。「全ての国が対象」としており、日本から輸出される製品にも関税が課されることになる。

こうした中で自民党の西田昌司参議院議員は、12日に開かれた党の参議院議員総会で「今のままの党の態勢では、夏の参議院選挙を戦えない。新たなリーダーを選び直すべきだ」として、石破首相に代わる新たな総裁を選び直すべきだという考えを示した。

こうした声が「石破降ろし」に発展するかどうかははっきりしないが、新年度予算案成立後は、夏の参院選挙に向けた体制づくりなどをめぐって党内の駆け引きが活発になることも予想される。

石破首相にとしては当面、新年度予算案の成立に全力を上げるとともに、党内の結束を固め直して夏の参院選挙に臨みたい考えだが、内外の懸案を着実に処理できるかどうか、正念場を迎えている。(了)

 

 

“一山越えても続く難関”石破政権

新年度予算の修正案は衆議院本会議で、少数与党の自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決され、参議院へ送られた。政府の当初予算案が修正されるのは、橋本内閣以来29年ぶりだ。

予算案の衆院通過で予算案の成立が確実になり、石破政権にとっては通常国会の最初の難関を越えたことになる。但し、与党側がめざした野党側との協力関係は思うようには進まなかった。

”一山越えても二山、三山”とこの通常国会では多くの関門が待ち構えている。これまでの対応を点検したうえで、これからの関門や石破政権のゆくえを探ってみたい。

 予算修正は維新が協力、薄氷の合意

去年の衆院選で30年ぶりの少数与党の立場になった石破首相は1月24日、通常国会の施政方針演説で「党派を超えた合意形成を図る」として、国民民主党や日本維新の会を念頭に野党の協力を取りつけ、新年度予算案の早期成立をめざす考えを表明した。

これを受けて自民・公明の与党側は、国民民主とは「年収103万円の壁」の見直しを進める一方、維新とは「高校授業料の無償化」に向けて政策協議を重ねてきた。しかし、国民民主とは合意に至らず、最終的には維新との間で予算案の修正で合意するとともに予算案の可決にこぎ着けた。

国民民主との間では去年の11月から3か月も政策協議を続けながら、なぜ、合意できなかったのか。一方、維新との間では今後も安定した協力関係が見込めるかどうかがポイントになる。

まず、国民民主との「年収103万円の壁」の見直しが不調に終わったのは、財源の問題と夏の参院選戦略との関係が影響したのではないかとみている。

国民民主党は、所得税の課税最低限を178万円まで引き上げるよう求めたのに対し、与党は側は123万円への引き上げを決めたが、国民民主は納得しなかった。このため、自民党は年収500万円以下まで非課税枠を拡大する案を提案したが、一蹴された。

事態打開のため、公明党が主導する形で、非課税枠を上乗せする年収の範囲を850万円まで拡大するとともに課税最低限を160万円まで引き上げる新たな案を提案した。これに対し国民民主は受け入れず、予算修正協議は最終的に物別れに終わった。

国民民主からすると年収の上限の160万円までの引き上げは一定の評価ができる一方、上乗せする対象となる年収850万円までの範囲に4段階の差をつけているのは不公平だとして、受け入れなかった。

協議が不調に終わった原因だが、当初の与党案の財源はおよそ6000億円だったが、公明案ではさらに6000億円積み増し、計1兆2000億円まで増やした。それ以上の上積みとなると国債の新規発行が必要になるとして、国民民主の要求を受け入れなかった。

一方、国民民主としては夏の参院選を控えて、年収の差を設けると不公平だとして、有権者の支持を失うおそれがあるため、与党案を受け入れない判断をしたものとみられる。

一方、維新は党の執行部の交代もあり、国民民主より後から、与党との協議を始めたが、前原共同代表が同じ防衛関係議員で旧知の石破首相に協力を求めた。また、前原氏の要請で前執行部の遠藤敬・前国対委員長が与党側との調整に当たったことから、協議が急ピッチで進んだとされる。

維新内部では、高校授業料の無償化の進め方などをめぐって異論が出され、党内の合意が危ぶまれる場面もみられたが、高校授業料の無償化のための具体策と、政府予算案の修正に賛成することで党内合意をとりつけた。

与党の執行部としては、国民民主と維新とを両天秤にかけながら両党との協力取りつけをめざしたが、最終的には維新1党だけの協力に止まった。その維新は党内の足並みがそろっているわけではないので、薄氷の合意とも言えそうだ。

このほか、今回は与野党双方から「熟議の国会」を強調する声が高まり、予算案の修正をめぐって政策協議の過程が透明化されたのは一歩前進だろう。

一方で、政策協議というものの、予算修正の額高をめぐる駆け引きが延々と続き、社会保障の将来の姿や負担のあり方、教育の向上策など掘り下げた議論はほとんど見られなかった。

また、トランプ政権の再登場で国際情勢や、関税などの経済情勢が大きく揺らいでいる中で、日本の外交・安全保障、経済政策などをめぐる突っ込んだ議論がなされなかったのは極めて残念だ。「熟議の国会」を標榜するのであれば、問題の核心にまで踏み込んだ議論を展開してもらいたい。

企業献金など続く難関、最後は参院選か

さて、今後の国会はどのような展開になるだろうか。当面の焦点は、企業団体献金の扱いについて、与野党は3月末までに結論を出すことになっており、近く衆議院の特別委員会で、法案の審議が始まる見通しだ。

企業団体献金をめぐっては、自民党は「献金の禁止よりも公開が重要だ」として企業献金の透明性を高める法案を提出している。これに対して、立憲民主党など野党側は、自民党案は透明性が極めて低いと批判するとともに、企業団体献金の禁止を求める法案を提出している。

そして野党側のうち、維新は企業献金の禁止を強く求めていく方針なのに対し、国民民主は全面禁止に慎重な立場だ。自民党は国民民主の協力に期待を寄せているが、予算修正の時と比べると維新と国民民主の立ち位置が逆になっている。

一方、野党第1党の立憲民主党は、自民党旧安倍派の会計責任者の参考人聴取を受けて、旧安倍派幹部の塩谷、下村、西村、世耕4氏の参考人招致を求めている。会計責任者は、安倍派の資金還流は「元幹部議員からの要請があり、幹部議員の会合で再開が決まった」と説明、幹部議員の政倫審での発言と食い違っている。

与党の公明党は、企業・団体献金の扱いをめぐっては自民党と距離を置いているほか、旧安倍派議員の参考人招致にも前向きな姿勢を示している。参議院選挙を控えて「政治とカネの問題」をめぐって、与野党の対応が再び焦点になる。

次に選択的夫婦別姓制度については、4月から衆議院法務委員会で議論が始まる見通しだ。自民党内では、保守系議員から「旧姓の通称使用の拡大を実現すれば問題点を解決できる」として選択的夫婦別姓に反対しており、党内の意見集約がどこまで進むか不透明な状況だ。

選択的夫婦別姓問題を扱う衆院法務委員会の委員長は、立憲民主党が握っているため、野党ペースで議論が進むことも予想される。会期末が近づくにつれ、この問題は、内閣不信任決議案とも絡んで与野党攻防の争点になりそうだ。

以上、見てきたように新年度予算案の衆院通過で、石破政権にとっては一山越えたのは事実だが、「政治とカネの問題」、選択的夫婦別姓と内閣不信任決議案をめぐる会期末の攻防という難関が待ち受けている。

少数与党の石破政権は、政治課題によって協力相手の野党を変えながら通常国会を乗り越え、夏の参院決戦に臨む方針だ。

これに対して、野党側は与党との個別戦で成果を引き出す対応を取ってきたが、野党が連携して自民党と対峙する場面を作ることができるかどうか、後半国会の見所の一つになりそうだ。(了)

 

 

 

予算成立にメドも、難問続く石破政権

新年度予算案の修正をめぐり、自民・公明両党と日本維新の会の3党は25日、党首会談を開き、教育無償化や社会保険料の負担軽減策などについて、正式に合意した。維新は、新年度予算案に賛成する方針も決めた。

一方、「年収103万円の壁」の見直しをめぐり、国民民主党は、公明党が先に示した非課税枠を上乗せする年収の範囲を拡大する案については、受け入れが難しいとして、引き続き与党側と協議を続けることにしている。

新年度予算案は、維新が予算案に賛成する方針を決めたことから、少数与党の下で、年度内の成立にメドがついたことなる。一方、与党と国民民主党との修正協議は難航しているほか、予算案の衆院通過の時期、参考人聴取などの難問を抱えており、与野党のせめぎ合いが続くことになる。

 与党と維新、予算修正で合意・成立へ

新年度予算案と政策の協議をめぐって、石破政権は国民民主党と、日本維新の会を天秤にかける形で協議を続けてきたが、まずは維新との間で合意にこぎ着けたことになる。

与党と維新の主な合意内容は、◇今年4月から公立高校の授業料を実質的に無償化するため、公立・私立を問わずに支給される年間11万8800円の修学支援金の所得制限を撤廃する。

◇私立高校については、来年2026年4月から所得制限を外し、現行の年最大39万6000円から、全国平均の授業料の45万7000円まで引き上げる。

◇維新が主張する社会保障改革を議論するため、3党による協議体を設置することなどが合意文書に盛り込まれている。

維新は25日、臨時の役員会と両院議員総会を開いて協議した結果、教育無償化などの合意文書を了承するとともに、新年度予算案について賛成する方針を多数決で決めた。

これを受けて自民・公明両党と維新の3党は25日夕方、石破首相、斎藤代表、吉村代表が会談し、合意内容と新年度予算案を成立させることで最終的に合意した。

維新が新年度予算案に賛成する方針を決めたのは、去年の衆議院選挙で議席を減らすなど党勢が低迷し、12月から吉村氏が新代表に就任したことから、今年夏の参院選に向けて実績を示したいねらいがあるものとみられる。

一方、石破首相は少数与党の下で予算案成立は至上命題で、国民民主党との政策協議が停滞したことから、維新との協議の決着を急いだものとみられる。

 国民民主との予算修正協議は難航

「年収103万円の壁」の見直しをめぐる自民・公明両党と国民民主党との協議では、先に公明党が所得税の非課税枠を上乗せする年収の範囲について、自民党案の500万円以下から、850万円まで拡大する新たな案を示した。

これを受けて国民民主党は15日、党の税制調査会の会合を開いて協議した結果、「年収によって非課税枠に差をつけるのは不公平で、受け入れるのは難しい」として、年収区分を撤廃するよう求めていくことを確認した。

また、ガソリン税の暫定税率の廃止時期を明らかにするよう求めていくことになり、党の代表代行を務める古川税制調査会長に一任することを決めた。

会合のあと、古川代表代行は「中間層を含めて幅広く手取りを増やしていくことが大事だ。こちらから協議を打ち切るつもりはない」との考えを示した。

自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長は25日会談し、去年12月に国民民主党を含む3党の幹事長が「178万円をめざす」などと合意した意味は重いとして、ガソリン税の暫定税率廃止を含めて、引き続き丁寧に協議していくことを確認した。

 参考人聴取、修正規模などの難問も

このように石破政権にとっては予算成立のメドは立ったが、野党側と詰める案件は幾つも残っている。

まず、自民党旧安倍派の裏金問題をめぐって、会計責任者の参考人聴取の日程が先送りになっているが、自民党は27日に実施する考えを伝えた。この参考人聴取で、どのような説明が行われるか。これを受けて、今後の裏金問題の実態解明をどのように進めるかが問題になりそうだ。

また、予算修正をめぐって、維新と国民民主との協議が先行する一方で、野党第1党の立憲民主党は、与党側に提示した3兆8000億円規模の修正案の協議が進んでいないことにいらだちを強めている。

自民・公明両党と立憲民主党の3党は、政調会長レベルで協議を続けているが、立憲民主党の修正要求をどこまで予算案に反映させるかも焦点だ。

こうした中で、新年度予算案を年度内に自然成立させるための期限としては、3月2日までに予算案の衆議院通過が必要だ。しかし、今後の審議日程などを考えると期限までの衆院通過は困難な情勢になっている。

与党側としては早期の衆院通過をめざしているが、具体的な日程のメドはたっていない。仮に大幅にずれ込むことになれば、予算案の年度内成立に影響が出るほか、石破政権の政権運営能力も問われることになる。

また、夏の参院選挙を控えて世論は、石破政権や与野党の対応をどのように評価するのか大きな注目点だ。予算案に対する賛否と主要政策・課題への対応をしっかり見ていく必要がある。(了)

 

 

 

新年度予算案、与野党修正協議ヤマ場へ 

新年度予算案をめぐる与野党の協議が、今週ヤマ場を迎える。国民民主党、日本維新の会に続いて、立憲民主党も予算修正の要求案をまとめたのを受けて、自民党は17日以降、野党3党と個別の協議を進める。

石破首相や自民党の森山幹事長は予算修正に応じる考えを固めており、政府・与党が最終的に野党の要求をどこまで受け入れるかが、焦点になっている。(新たな動きは、原稿最後尾に★「追記」があります)

 野党3党要求出そろう、協議は個別

新年度予算案をめぐって立憲民主党は14日、予備費や基金から財源を捻出し、小中学校の給食費の無償化やガソリン価格引き下げなどを内容とする3兆8000億円規模の修正案をまとめ、自民党側に説明した。

立憲民主党案は、◇ガソリン税などの暫定税率を廃止して価格を引き下げるためにおよそ1兆5000億円、◇小中学校の給食費の無償化に4900億円、◇高校授業料の無償化に3700億円、◇介護や障害福祉に従事する職員の処遇改善に4200億円、◇患者の自己負担を抑える「高額療養費」の上限額の引き上げを凍結するための費用200億円などとなっている。

この立憲民主党案は、政府予算案全体を見直し、財源の捻出策と合わせて修正を求めているのが特徴で、17日以降、自民党との間で修正協議が行われる。

一方、日本維新の会は、高校授業料の無償化を強く主張しており、これまでに与党側は◇年間11万8800円の修学支援金を今年4月から公立・私立を問わず一律に支給することで、公立高校を実質的に無償化する案を示している。

さらに与党側は14日の会談で、私立高校の無償化に向けて現在、年収590万円未満の世帯の子を対象に年間39万6000円を上限に支給している修学支援金の所得制限を来年4月から撤廃するとともに支援金の上限額を引き上げると伝えた。

これに対し、維新の前原共同代表は、私立高校の支援金の上限額について、維新が主張する年間63万円にひき上げるよう求めている。また、ゼロ歳から2歳児までの保育や大学授業料など教育全体の無償化に向けて、年次ごとの計画を盛り込んだプログラム法を示すよう求めており、詰めの協議が行われる。

国民民主党は「年収103万円の壁」の見直しを去年秋以降、求めている。政府・与党は、所得税の控除額を123万円に引き上げる方針を示したのに対し、国民民主党は178万円まで引き上げるよう求めており、控除額が焦点になっている。

国民民主党からは、生活保護費の支給額を念頭に控除額を少なくとも156万円程度に引き上げるべきだとする意見が出ている。与党の公明党からは、食料品の値上がりなどを踏まえて140万円台後半とする案などが検討されており、3党の税調会長の協議が再開される見通しだ。

このように野党3党の要求には共通の内容も含まれているが、与党側との協議はそれぞれ個別に行われている。この背景には、野党各党とも夏の参議院選挙を意識して、与党側から譲歩を引き出し、その内容を成果としてアピールしたい思惑がある。野党の成果獲得合戦の側面もうかがえる。

 与党の修正受け入れ内容が焦点に

新年度予算案をめぐる野党側との政策協議について石破首相は13日、自民党の小野寺政務調査会長を首相官邸に呼び「野党からいろいろな提案があり、しっかり耳を傾けて、いいものをまとめるよう努力してもらいたい」と指示した。

自民党の森山幹事長も15日、福島市で講演し、予算修正をめぐる与野党協議が来週、ヤマ場を迎えるという認識を示したうえで、「各会派の意見をしっかり聞いて、筋の通るものであれば修正をして、一つでも多くの会派の理解をいただきたい。年度内に成立させなければいけない」とのべ、予算修正に踏み切る考えを示した。

自民党は、維新と国民民主の両党を天秤にかけ、最後にどちらか一方の要求を受け入れて予算成立をめざすのではないかとの見方が一部にあった。これに対し、石破首相と森山幹事長は、できるだけ多くの野党の賛成を得て、予算案の成立をめざすものとみられる。

このため、自民党は維新と国民民主両党の主張について、さらに一定程度、受け入れるものとみられる。また、立憲民主党の要求についても、衆院予算委員長ポストを立民が握っていることから、最も重視している予算案の年度内成立を確実にするために一定の範囲で認めるものとみられる。

こうしたことから与野党協議では、与党が野党3党の要求をどの程度、受け入れるかが焦点になる。その結果、野党側のうち、どの党が予算案の採決で、賛成に回ることになるかも大きなポイントになる。

政府の当初予算案は、与党の基本政策を財政面で肉付けしたものだけに、野党が賛成に回るのは異例だが、少数与党政権の下では、野党の一部の協力がないと予算案が成立しないので、与党としては野党の賛成取りつけに懸命だ。

今のところ、立憲民主党が賛成に回る可能性は低いとみられる。維新と、国民民主党の両方か、あるいはどちらか一方の賛成になるのか。この予算案の賛否は、後半国会の展開にも影響してくる。

ここまで見てきたように少数与党に転じた石破政権は、予算成立と政権維持のためには予算案の修正に応じる以外に道はない。問題は、修正の出来具合が国民の納得のいく内容になっているのかどうか。野党の修正要求と実現に向けた取り組み方、それに与党側の判断を含めて、修正協議の結果をじっくり見極めたい。

★追記(18日午前9時現在)高校の授業料無償化について、石破首相は「与党と維新の会との協議が整えば、新年度予算案を修正する方向で与党とも相談したい」とのべ、予算案の修正に応じる考えを示した。17日の衆院予算委員会で、維新の前原共同代表の質問に答えた。石破首相が予算修正に踏み込んだのは初めて。現在、公立・私立を問わずに支給されている年間11万8800円の修学支援金の所得制限を4月から撤廃。また、私立高校を対象に年間39万6000円まで加算される支援金の上限額について、今後45万7000円まで引き上げることを検討する考え。

 

 

 

 

”初回は成功、難問はこれから”日米首脳会談

石破首相とトランプ大統領との初めての日米首脳会談が日本時間の8日未明、ワシントンで行われた。

会談では、日米同盟の強化を再確認したのをはじめ、経済分野では石破首相が、アメリカへの投資額を1兆ドル(151兆円)規模まで引き上げたいとの考えを伝えた。

また、日本製鉄によるUSスチールの買収計画については、単なる買収ではなく、投資としての意味合いがあるとの認識を共有したことを明らかにした。

こうした今回の首脳会談をどのようにみたらいいのだろうか。結論を先に言えば、最初の会談としては、日米関係の方向性などで一致することができたので、成功と言えるのではないか。但し、具体的な対応はすべてこれからだ。難問はこれからと覚悟しておいた方がよさそうだ。

なぜ、こうした結論になるのか、具体的に会談の中身をみていきたい。

 経済政策、アメリカへの貢献を強調

トランプ大統領の再登板以降、カナダやメキシコ、中国に対する関税の引き上げが大きな問題になっているので、経済分野から見ていきたい。

日米首脳会談で石破首相は、日本は5年連続でアメリカへの投資額が世界一であることを説明したうえで、今後も二国間の投資と雇用を大幅に増やすことや、アメリカのLNG=液化天然ガスの日本への輸入を増やすことなどを表明した。

そして、アメリカへの投資額を1兆ドル(151兆円)の規模まで引き上げたいという考えを示したほか、日本製鉄によるUSスチールの買収計画は「単なる買収ではなく、投資としての意味合いがある」との認識で一致したことを明らかにした。

USスチールの買収計画について、石破首相は帰国後に出演したNHKの番組で「単なる買収ではなく、投資を行い、アメリカの企業であり続ける」とのべ、投資を重視する仕組みに修正して計画が進められるという見通しを示した。

このように石破首相は、日本はアメリカへの投資や雇用の拡大に貢献していることをアピールするとともに、対米投資額をバイデン政権時代の8000億ドルから、1兆ドルまでひき上げる考えを伝え、トランプ大統領から歓迎された。

こうした対米貢献策が評価されたためか、日本側が警戒していた関税の引き上げなどの要求は議論されなかったとされる。

 安全保障分野、従来の方針継続を確認

外交・安全保障分野については、日米同盟を強化するとともに、アメリカが防衛義務を果たす日米安保条約第5条を尖閣諸島に適用することを確認した。

また、厳しく複雑な安全保障環境の中で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、協力していくことを確認し、日米豪印のクアッドや日米韓、日米豪、日米比など多層的な協力を推進するとしている。

トランプ大統領は最初に当選した際、当時の安倍首相と最初の首脳会談を2017年2月10日に行い、その結果を日米共同声明として発表した。当時の共同声明が手元にあるが、日本語でA4用紙2枚の分量だった。今回は3枚に増え、安全保障分野では、主な方針はそのまま盛り込まれている。

石破首相は「今回の首脳会談で日本の防衛費について、トランプ大統領から言及はなかった」と説明している。

一方、今回の日米共同声明によると、2023年度から2027年度までの防衛力の抜本強化に続いて「米国は、2027年度よりあとも抜本的に防衛力を強化いくことに対する日本のコミットメントを歓迎した」とある。日本の防衛力のさらなる強化を期待していることが盛り込まれている。

 石破首相「相性は合うと思う」

今回の首脳会談が行われるまで、国内では「石破首相は、トランプ大統領と相性がよくないのではないか」「アメリカ側から、さまざまな要求を突きつけられて対応できるのか」など首脳会談の先行きを不安視する声が聞かれた。

首脳会談で石破首相は「日米の緊密な関係は、大統領と安倍首相によって礎が築かれた」などトランプ大統領を盛んに持ち上げ、トランプ大統領も「シンゾーもあなたのことを尊敬していた」「あなたは偉大な首相になるだろう」などと上機嫌で応じた。

石破首相は帰国後、出演したテレビ番組で「『こいつとだったら、また話したい』という関係を作らないといけない。大勢の人に努力をしてもらい、いい結果になった」「テレビで見ると怖そうなおじさんだが、実際に話をしてみると人の話をよく聴く人だ。相性は合うと思う」と自信をのぞかせた。

石破首相は、トランプ氏側から誘いのあった大統領就任式前の会談を延ばしたうえで、就任後に会談することになった。日程が決まった後は、会談の準備を練りに練ったという。外務省をはじめとする関係各省、通訳など総力で準備に当たったとされる。そうした支えがあって、最初の会談を何とか乗り切れたのだろう。

 防衛・安保の議論のあり方も再考を

今回の首脳会談をめぐっては直前まで「吉と出るか、凶と出るか」心配されたが、「吉」と出たと言っていいのではないか。但し、最初の会談は順調に行われたが、今後はどうなるかわからない。

トランプ大統領は今回、石破首相に厳しい要求をぶつけなかった。この背景には、日本との貿易赤字がトランプ政権第1期時代は世界で3番目だったが、今は7番目までに減っているためとの見方もある。

また、トランプ政権にとって、最も手強い中国との対決に備えて、同盟国である日本を自らに引きつけておくねらいもあると思う。

トランプ大統領は今後、関税の引き上げや、LNG液化天然ガスなどの開発、日本の防衛力などをめぐって、日本に要求を突きつけてくることも予想される。日本としてもその備えというよりも、主体的にどのように考え対応していくのか、政府が方針を固め、国民を巻き込んで議論していくことが必要になる。

前回、岸田政権当時の防衛力の抜本強化をめぐっては、国民レベルの議論があまりにも少なすぎた。その結果、政権は防衛増税を打ち出したが、所得税増税は未だに実施時期が決まっていない。

国会は、与党の過半数割れへと大きく変わった。防衛力・安全保障をめぐる議論のあり方、進め方についても考え直す必要があると考える。(了)

”吉と出るか、凶と出るか”日米首脳会談

石破首相とトランプ大統領との初めての日米首脳会談が2月7日(現地時間)にワシントンで行われる見通しになった。石破首相としては、会談を通じて個人的な信頼関係を構築し、日米同盟のさらなる強化につなげたい考えだ。

一方のトランプ大統領は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国には10%の追加関税をそれぞれ課す大統領令に署名した。課税はいずれも2月4日からとしている。これに対しカナダなど各国は強く反発し、対抗措置を取る方針だ。

トランプ大統領は、就任式当日の先月20日に気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱や、感染症対策などに当たっている世界保健機関WHOから脱退など40を超える大統領令に署名したのに続いて、今度は関税引き上げといった”トランプ砲”を発射し始めたといえそうだ。

こうした中で、石破首相は6日から8日の日程で訪米し、トランプ大統領との会談に臨む予定だが、果たして成果を上げることができるかどうか日本側関係者の見方を聞いてみた。

 楽観論と警戒論が交錯、予測不能?

自民党幹部の一人は「首脳会談の主な議題がどのようになるか聞いていないが、それほど心配していない。日米は『摩擦と協力』の連続だったが、いい智恵を出して乗り切ってきた」として、今回も難関を乗り切れるとの見通しを示した。

但し、こうした楽観論は少数派で、今回の首脳会談を危ぶむ見方が多い。石破首相は年末、麻生元首相と会談し助言を求めたのに対し、麻生氏は「トランプ氏には結論から言わなければダメだ」と語ると首相は「それが一番苦手だ」と漏らしたという。

また自民党内からは「安倍元首相とトランプ大統領との良好な関係は有名だが、”政敵の石破氏”のことがトランプ氏側にどのように伝わっているか。初対面の石破首相とトランプ大統領との相性が心配だ」との声も聞く。

さらに政府関係者は「トランプ大統領がどのような出方をするのか、正直わからない。予測困難だ」と話す。第1次トランプ政権発足前には、在日米軍の撤退にまで言及したことがある。「トランプ氏が関税の引き上げをちらつかせながら、防衛面の負担増を要求したりするのではないか」との警戒感も聞かれる。

ワシントン特派員経験者によると「石破首相や日本側が、トランプ氏に直接接触できたのは、これまで石破、トランプ両首脳のわずか5分間の電話会談だけだ。大統領の腹が読めないままトップ会談に臨むことになる」と懸念を隠さない。

このように日米首脳会談をめぐって、楽観論と警戒論などが交錯している。本当のところは「吉と出るか、凶と出るかわからない。予測不能な異例の首脳会談」というのが実態のようだ。

 首脳会談の結果、政局にも影響

国会は衆院予算委員会の基本的質疑が始まったばかりの重要な時期だが、石破首相は1日の土曜日も首相公邸に林官房長官や外務省幹部らを呼んで、日米首脳会談に向けての打ち合わせなどに懸命だ。

石破首相は、日米首脳会談では中国による海洋進出や、北朝鮮の弾道ミサイル発射など東アジア情勢が厳しさを増していることから、安全保障分野に重点を置く考えだ。

具体的には、日本としては防衛費の大幅増額など防衛力の抜本強化に取り組んでいることを説明する一方、沖縄県の尖閣諸島にアメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が適用されることなどアメリカの関与を確認したい考えだ。

また、トランプ大統領が1期目に北朝鮮による拉致被害者の家族と面会したことも踏まえて、拉致問題の解決への協力も求める考えだ。

さらに、「自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョン」の推進に向けて日米の協力を確認したい考えだ。

一方、経済分野については、日本は過去5年連続でアメリカへの投資が世界一であることなどを説明するとともに、トランプ大統領が重視しているエネルギー分野について、天然ガスなどの資源の輸入拡大を図る考えを伝える方針だ。

問題は、こうした石破首相の提案に対して、トランプ大統領がどのような考えを示すのか。また、トランプ大統領はすべての国に一律に関税を課す方針は変えていないことから、関税の引き上げや、持論の防衛費増額などについて言及するのかどうかが注目される。

日米首脳会談がどのような結果になるのか、外交・安全保障や経済の分野だけでなく、今後の国内の政局にも大きな影響を及ぼす。石破首相にとって、政権運営の追い風になるのか、それとも新たな重荷となって逆風になるのか、重い意味を持つトップ会談になる。(了)

”乱気流国会”開会へ、予算審議の攻防

今年前半の政治の主な舞台となる通常国会が、今週24日に召集される。石破政権にとっては初めての通常国会で、政府予算案の年度内成立を最優先と位置づけているが、少数与党のため成立のメドはついていない。

野党側は、夏の参議院選挙をにらんで「年収103万円の壁」の見直しや高校授業料の無償化、予算案の修正などそれぞれの党の要求の実現をめざしているが、自民党が最終的に受け入れるかどうか、見通しはついていない。

一方、東京都議会の会派「都議会自民党」の裏金問題が明らかになり、自民党の派閥の裏金問題と合わせて「政治とカネの問題」が再燃することになりそうだ。

このように今度の通常国会は、懸案・課題が多いことに加えて、政権と与党、それに野党各党がそれぞれの思惑を抱えながら対決する複雑な構図になっており、どのような展開になるのか見通せないのが実状だ。別の表現をすれば、波乱要素が多い”乱気流国会”と言えそうだ。当面、どこが与野党攻防のポイントになるのか探ってみたい。

「都議会自民党」の裏金問題

通常国会の召集が近づく中で、政界では2つの問題が注目を集めている。1つは「都議会自民党」の裏金問題であり、2つ目はトランプ次期大統領の就任を受けて、石破首相とトランプ大統領との日米首脳会談がいつ行われるかだ。

このうち、「都議会自民党」の問題は政治資金パーテイーで集めた資金の一部、3500万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、東京地検特捜部が17日、会派の会計担当職員を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。

この裏金づくりに関与した都議は25人に及ぶとみられているが、立件を免れた。都議会自民党は「責任を重く受け止める」として、政治団体「都議会自民党」を解散するとともに近く政治資金収支報告書を訂正するとしている。

今回の問題は、裏金づくりが自民党の派閥だけでなく、党の地方組織でも行われてきたことを示すものだ。そして東京都議会だけでなく、他の地方組織でも行われているとみられている。自民党としても全国の地方組織について、実態の調査が必要だ。

裏金問題をめぐっては今度の通常国会で、野党側が旧安倍派の会計責任者の参考人招致を要求している。この会計責任者は去年有罪判決を受けたが、裁判の中で、安倍元首相が派閥の会長時代、資金還流の取り止めを指示した後、安倍氏の死去後「派閥の幹部議員が集まった会合で、還流やむなしという方針が決まった」と証言した。

この会計責任者の証言と、旧安倍派幹部が衆参の政治倫理審査会での弁明と食い違うことから、野党側には旧安倍派幹部の参考人招致や証人喚問を求める意見もあり、裏金問題の実態解明が改めて問題になる見通しだ。

また、「都議会自民党」の裏金問題は、夏の東京都議選だけでなく、その直後に行われる参議院選挙にも影響を及ぼすことになりそうだ。

石破・トランプ日米首脳会談のゆくえ

2つ目の石破首相とトランプ次期大統領との首脳会談をめぐっては、石破首相が19日のNHK日曜討論で「だいたいこの当たりでと言うことで、調整が進んでいる」とのべ、2月前半にも訪米し日米首脳会談を行う方向で調整が進んでいることを明らかにした。

この日米首脳会談が実現した場合、トランプ氏が強い意欲を示す関税の引き上げや、日本の防衛費の増額を求めてくるのかどうか、さらにはバイデン政権時代に強化された日米韓の連携や台湾問題への対応などについて、トランプ大統領がどのような考えを示すのか関心を集めている。

このほか、日本製鉄によるアメリカ鉄鋼大手USスチールの買収計画に対してバイデン大統領が禁止命令を出した問題についても、トランプ大統領との会談が注目される。

この石破・トランプ会談の評価はその内容次第だが、会談が実現して一定の信頼関係を築くことができれば、石破首相の国内での政治基盤の強化につながる可能性がある。衆院予算委員会の最中に日米首脳会談が行われることになるのかどうか、国内政治への影響という面でも注目される。

最初の難関、予算案の衆院通過

長丁場の通常国会の中で石破政権にとって最初の難関は、2月下旬から3月上旬にかけて予算案を衆議院で可決し、参議院へ送ることができるかどうかだ。自民、公明の与党だけでは過半数に達しないので、野党の一部の賛成が必要になる。

自民、公明両党は、国民民主党との間で「年収103万円の壁」の見直しをめぐって123万円まで引き上げることを決めたが、国民民主党は178万円まで引き上げるよう求め、話し合いは年明けに持ち越されている。

日本維新の会との間では、教育費の無償化、特に高校授業料の無償化をめぐって協議を続けているが、与党と維新との考え方には開きがある。

野党第1党の立憲民主党は、小中学校の給食費の無償化を維新、国民民主とともに求めているほか、新年度予算案にはムダな経費が含まれているとして、予算総額の修正を求める方針だ。

自民、公明両党は予算審議と平行して、野党側との個別の協議も続ける方針だ。そのうえで、最終的には予算案や税制改正法案の一部を修正してでも野党の協力をとりつけ、予算案の衆議院通過をめざすものとみられる。

こうした与党と野党側の調整の司令塔の役割を果たしているのが、自民党の森山幹事長だ。森山氏は国対委員長時代の人脈などを活かして、国民民主党と維新の両方か、いずれか一方の協力を取りつけるのではないかとの見方が与党だけでなく、野党側の関係者からも聞かれる。

問題は、思わぬところで与野党折衝のボタンの掛け違いなどで、合意のとりまとめが狂ってしまうことがある。今回は与党過半数割れを受けて、衆院予算委員長ポストが立憲民主党の安住氏に代わっていることもあり、予算委員会の採決の日程や段取りなども問題になる。

野党の一部の協力を得て、予算案の衆院通過ができれば、参院での予算成立まで近づくことになる。また、会期末に野党第1党の立憲民主党が内閣不信任決議案を提出する場合でも、野党の一部が同調しない可能性も大きくなる。

逆に予算案の衆院通過ができなくなると、政権が行き詰まることになる。したがって、与党と国民民主、維新、立憲民主の各党の政策協議のゆくえが進展するかどうかがカギを握る。同時に予算案の賛否と衆院通過の時期が通常国会前半戦の焦点になる。

波乱要素が多く、先行きが見通せない”乱気流国会”が、最終的にどのような形で決着がつくか、最初の関門である予算案の衆院通過を見ることによって判断できることになりそうだ。(了)

”衆参ダブル選挙説”の見方・読み方

新しい年が明けて石破首相をはじめ各党党首は、それぞれの党の仕事始めや記者会見、海外訪問に出発するなど本格的な活動を始めた。

各党首の年頭記者会見などを聞くと、衆議院の与党過半数割れという新しい政治状況を受けて、年明けの通常国会は新年度予算案などの修正を含め与野党の激しい攻防が予想される。

一方で、内外情勢が厳しさを増す中で、党派を超えて合意を図る政治をめざすべきだという方向では多くの党が一致しているので、対立だけでなく歩み寄り、一定の成果も期待できるのではないか。

こうした中で、今年は夏の参議院選挙に合わせて衆院の解散・総選挙を行う「衆参同日選挙」がありうるのではないかとの見方も聞かれる。この衆参ダブル選挙説は、参議院選挙が近づくにつれて今後も浮上することが予想されるので、どの程度の確率があるのか探ってみたい。

 ダブル選挙、少数与党から脱出へ

最初に今年前半の政治日程を確認しておくと年明けの通常国会は今月24日に召集される見通しで、会期末は6月22日になる。会期延長がない場合は、公職選挙法の規定などで、夏の参議院選挙は7月3日公示、20日投開票という日程になる。

一方、東京都議選は、6月下旬から7月初めにかけて投開票が行われる見通しだ。4年に一度の都議選と、3年ごとの参院選が12年ぶりに同じ年に重なる「巳年選挙」になる。

さて、その都議選に続いて行われる参議院選挙に合わせて、衆議院選挙を行う「衆参同日選挙説」が取り沙汰されている。

石破首相自らも年末の民放テレビ番組で、衆参同日選挙の可能性を問われたのに対し、「これはある。参議院と衆議院の時期が同時ではいけないという決まりはない」とのべた。その後、発言を軌道修正したが、政界に波紋を広げた。

自民党内では先の衆院選で大敗し、国会では野党の攻勢に譲歩を重ねていることに不満が鬱積している。このため、何とか早期解散に持ち込み、過半数割れからの脱出を図りたいという思いは強い。

また、先の衆院選では公認から外れた候補にも2000万円を支給した問題が敗北の決め手になったとの受け止め方が強く、これがなければ次の衆院選では一定の議席の回復は見込めるとの見方も出ている。

そして、野党側が例年と同じように会期末に内閣不信任決議案を提出することが予想されるため、それをきっかけに衆院解散に踏みきり、衆参ダブル選挙を断行してもいいのではないかとの意見が政権内にもあるのは事実だ。

こうした早期解散論の背景としては、石破首相と森山幹事長ら党執行部としては、少数与党で思うような政権運営が描けないため、解散説を流すことによって野党側をけん制するねらいがあるものとみられる。今後も国会での与野党の攻防が緊迫する際に、衆参ダブル選を模索する動きが出てくることが予想される。

 政権の求心力弱く、ダブル選は困難か

さて、自民党内の一部から衆参ダブル選期待論が聞かれるのは事実だが、実現へのハードルは極めて高い。過去2回の衆参同日選挙のうち、2回目は1986年の中曽根政権の時で、自民党が圧勝した。

当時、中曽根内閣の世論の支持は高かった。現場を取り仕切ったのは最大派閥・田中派幹部の金丸幹事長で、2人が組んで用意周到、定数是正法案も絡めて秘策を尽くし、ダブル選挙に持ち込んだ。強力な政権だったからこそ、実現が可能だった。

これに対して、今の石破政権は衆院で少数与党であり、自民党内の掌握、野党との折衝体制、衆院選に向けた選挙体制づくりなど整っていないようにみえる。

また、連立政権なので、公明党の理解と協力が不可欠だ。その公明党は、政界進出の原点である都議選と参院選に専念したいのが本音だとみられる。山口那津男元代表は8日、石破首相との会談後、記者団に「衆参同日選は望ましくない」との考えを示した。

さらに報道各社の世論調査をみると石破内閣の支持率は、朝日新聞の調査(12月14,15両日)で36%、不支持率は43%。読売新聞の調査(12月13~15日)では支持率39%、不支持率は48%と低迷している。自民党の支持率も20%台前半まで低下している。「政治とカネ」をめぐる取り組みを「評価しない」との受け止めが多く、世論の信頼回復には遠く及ばないのが実状だ。

選挙に詳しい自民党関係者に聞くと「衆参ダブル選は昭和の時代、党の支持率は高いのに保守層が投票所に足を運ばなかった。この状態を打開するために投票率を上げると同時に、議席の大幅拡大もねらった選挙戦略だった。今のような低支持率の政権にはまったく適合しないので、止めた方がいい」と指摘する。

先の衆院選挙の出口調査(朝日新聞、比例代表)をみると無党派層の投票先は、最も多かったのは立憲民主党の22%、2位が国民民主党の18%で、自民党は14%の3位に止まっている。仮に衆参ダブル選挙が実現したとしても今のような選挙情勢では野党側に競り負け、衆参ともに一気に政権から転落する可能性もある。

一方、立憲民主党の野田代表は、内閣不信任決議案は「会期末だから出すといった『竹光』を振るってチャンバラをやる時代ではない。『伝家の宝刀』だと思って刃をよく磨いておきたい」として、自民党内の動きを見ながら慎重に対応するする構えだ。

このようにみるとこの夏の参議院選挙に合わせた衆参ダブル選挙の可能性は、極めて低いというのが結論になる。この夏は、都議選に続いて、参議院選挙が最大の政治決戦になるとみている。

その参議院選挙について森山幹事長は、7日の自民党仕事始めの後の記者会見で勝敗ラインについて「与党で過半数を死守することだ。参議院全体でも改選議席でも過半数を果たすことが大事だ」とのべ、与党で改選議席の過半数である63議席以上をめざす考えを明らかにした。

これに対して、立憲民主党の野田代表は「少なくとも改選議席の与党の過半数割れを実現したい」として、特に32ある1人区で野党が候補者を1人に絞って対決していく戦いをめざしている。

夏の参議院選挙では与野党が真正面からぶつかり、与党が改選議席の過半数を獲得すれば石破政権が続投することになるが、過半数を割り込むと石破首相の政治責任論が浮上し、政局は一気に流動化することになりそうだ。(了)