新しい年・2026年の政治は、どのような動きになるだろうか。去年10月に発足した高市政権は年末に補正予算を与党に加えて、国民民主党と公明党の賛成も得て成立させたのに続いて、総額122兆円の新年度予算案の編成も終えて、新年を迎えた。
内閣支持率は60%を上回る高い水準を保ったまま年を越え、これまでのところ政権運営は全体として順調に推移している。
今年は大きな選挙が予定されていないことなどから、2026年の政治は高市政権を中心に動く見通しだ。そこで、高市政権が進めようとしている政権運営を下敷きに新年の政治のゆくえを探ってみたい。
先に結論を明らかにしておいた方が、話がわかりやすいと思う。端的に言えば新年の政治は、高い支持率を背景にした高市首相の求心力がいつまで続くのか、また政権の基盤である自民・維新の連立が維持していけるかどうかが大きなカギを握っているとみている。
さらに、衆院解散・総選挙については年内説が多いが、高市首相の政権戦略からすると年内解散の確率は低いのではないか。なぜ、このような見方・読み方をしているのか、以下詳しく説明したい。
今年の政治日程”大きな選挙がない年”
最初に政治日程から確認しておくと今年の前半は、通常国会が主な舞台になる。1月23日に召集され、会期は150日間で6月21日に会期末を迎える。
その通常国会の前半は、新年度予算案の審議が中心になる。予算が成立すれば4月以降、インテリジェンス機能の司令塔となる「国家情報局」や「防災庁」の設置法案、それに連立を組む日本維新の会が重視する「衆院議員定数削減法案」や「副首都構想の法案」の扱いが焦点になる見通しだ。
外交面では、アメリカのトランプ大統領が4月に中国を訪問し、習近平主席と米中首脳会談を行う予定だ。このため、高市首相は3月にもアメリカを訪問し、トランプ大統領との日米首脳会談で対中戦略などのすり合わせを行いたい考えだ。
秋には高市首相は、自民党総裁と首相にそれぞれ選出されてから1年の節目を迎える。高市首相の総裁任期は、前任の石破首相の残り任期になるため、来年・2027年9月が任期満了、衆院議員と参院議員の半数は2028年に任期満了となる。
このように今年は”大きな選挙が予定されていない年”というのが特徴だ。もちろん高市首相が衆院解散を決断すれば、総選挙となる可能性が大きいが、高市首相は「政策が山ほど控えており、解散を考えるヒマはない」と否定している。
首相の求心力がカギ、物価・経済も影響
さて、今年の政治を読む上で、まずは「高市首相の求心力」、具体的な指標としては高市内閣の支持率の推移が大きなカギを握っている。高市内閣の12月の支持率はNHKの世論調査で64%、朝日新聞の調査で68%、読売新聞の調査で73%といずれも政権発足以降、高い水準を維持している。
野党の幹部は「支持率が50%程度にまで下がらないと攻めづらい」と語る。自民党幹部の一人も「党内には高市首相に物申したい人もいるが、今は口に出せる状況にはない」と沈黙を保っている。ただ、支持率が下落してくれば党内がざわつき、異論が広がることは否定しないというわけだ。
内閣支持率を分析すると18歳以上を含む20代から30代、40代、それに50代までは「高市内閣支持」の割合が70%台後半を占める。つまり、歴代政権と違って50代以下の若い世代の多くがまとまって支持しており、当面、大幅に支持率が下落するような事態は予想しにくい。
一方、高市内閣は発足して2か月余りが経過したばかりで、「実績」が評価されたわけではない。初の女性首相で、政治を大きく変えてくれるのではないかという「期待感」が高支持率につながっているとの見方もある。
歴代の政権は通常国会が進むにつれて、支持率が低下してくるケースが多かった。高市政権の場合、国民は物価高対策に大きな関心を寄せていることから、年が変わってようやく家計に届くようになる政府の施策が支持されるのか、逆に期待外れとして支持離れとなるか注目される。
また、国会審議の中心になる新年度予算案は、一般会計の総額が122兆円と過去最大。インフレで税収は過去最高になったにもかかわらず、新規国債の発行は増えた。金融市場は急速な円安・債券安の形で、財政規律に警鐘を鳴らしている。
予算審議では「実質賃金の目減りが続く中で、賃金の引き上げや日本経済の先行きは大丈夫なのか」などと野党側の追及が続き、内閣支持率に影響が出ることも予想される。新年度予算案が成立する見通しの4月、通常国会会期末の6月段階で、高市内閣の支持率はどのようになっているのか、2026年政局の第1のポイントになるとみている。
自・維連立は継続か、離脱の可能性は
次に通常国会は参院で与党が過半数割れしていることから、新年度予算案の修正をめぐって与野党の攻防が予想されていたが、年末の高市首相と国民民主党の玉木代表との会談で、国民民主党が要求していた「年収の壁」の178万円への引き上げを高市首相が受け入れる一方、玉木代表も新年度予算案の早期成立に協力することで合意した。
この結果、新年度予算案は自民・維新の与党に加えて、国民民主党が賛成に回る公算が大きく、与党が過半数割れの参議院でも賛成多数で可決・成立する見通しが強くなっている。
そこで政治的には新年度予算案よりも、維新が「連立参加の絶対条件」と位置づけ高市政権に実現を迫ってきた議員定数削減法案や副首都構想を実現する法案が成立するかどうかの方に焦点が移ってきている。
維新は、先の臨時国会でも連立離脱をちらつかせながら、定数削減法案の提出と採決を自民党に強く働きかけてきた。このため、定数削減法案や副首都構想法案が成立にこぎ着けられない場合には、連立離脱が現実味を帯びるのではないかとの観測が出ている。
その際、維新に代わって国民民主党が連立入りするのではないかとの見方も一部で取り沙汰されている。
国民民主党の対応については、閣外協力の形で自民党に協力することはないとは言えないが、本音は”政権とつかず、離れず、果実を得る”のが基本戦略とみられる。このため、連立まで踏み込む可能性は小さいのではないかと個人的にはみている。
いずれにしても予算成立後の国会では、定数削減法案と副首都法案の扱い、それに自民・維新・国民民主の3党の関係が絡んで、高市政権の連立基盤が揺らぐ可能性がある。
加えて、その時点で高市内閣の支持率が下落している場合は、足元の自民党内から連立の枠組みや高市首相の政権運営をめぐって異論や批判が相次ぎ、政権基盤が揺らぐ可能性がある。こうした政見基盤の変動が、2026年政局の2つ目の焦点だ。
高市戦略は解散より、実績づくり優先か
新年の政治展望では衆院の解散・総選挙の見通しについて、質問を受けることが多いので、個人的な見方を説明したい。解散の時期は、時の首相が決断するので断定的なことは言えないが、情報を集め、政治情勢なども加味して確率の高いケースを予測するのが基本だ。
高市政権の場合、解散の時期として想定されるのは◇新年2026年1月の通常国会冒頭、◇予算成立後の4月以降、◇通常国会会期末の6月、◇高市政権発足から1年・秋の臨時国会、◇さらには来年・2027年秋の自民党総裁選前後、◇2028年10月の任期満了前のケースだ。
政界では高市内閣の支持率が極めて高いことから、予算成立後の今年4月以降はいつでもあり得るとの早期解散説が多く聞かれる。確かに自民党は衆参両院の選挙とも大敗を喫しているので、早期解散論が多数を占めることは理解できる。
ただ、自民党の政党支持率は低迷しており、この10年余りで最も低い水準のままだ。高市首相は年末の記者会見などで「目の前で取り組まなければならないことが山ほど控えている。解散は考えているヒマがない」と否定的な発言を繰り返している。
高市首相の任期は、前任の石破首相の残り任期である来年9月までだ。仮に衆院で勝利しても、参院は過半数に遠く及ばない。連立相手の維新が大幅に議席を失い連立解消になると、参院の運営は全く見通しがつかなくなる。
自民党長老に聞くと「マスコミは早期解散ありと盛んに流しているが、高市首相は実績をあげたうえで、信を問うというのが基本戦略だ。今年は腰をすえて政策実現に取り組み、来年以降に総裁選と衆院選を勝ち抜き、総裁任期で言えば通算5年政権を担う戦略を立てているのではないか」との見立てだ。
個人的には、この長老の見方を上回る情報はないので、来年秋頃の解散が有力とみている。但し、その場合、高市内閣の支持率はそれまで高い状態を維持できるかは不透明だ。
したがって、さらに正確さを求めると、通常国会で新年度予算案が衆院を通過する見通しの2月末頃の情勢をみたうえで、判断するのが最も適切ではある。
公明の路線選択と政界再編へ動きも
最後にもう1点、野党の連携と公明党の路線選択について触れておきたい。高市政権の発足を契機に、公明党が26年間続いた自民党との連立政権からの離脱し、政界の構図は大きく変わった。公明党が今後どのような路線を選択するのか、2026年政局の「隠れた焦点」だ。
野党第1党の立憲民主党は、公明党との連携を軸に中道勢力の結集に向けた動きを強める見通しだ。これを受けて公明党は立民との連携に踏み出すのか、それとも自民党との関係修復へ動くことはあるのか、その選択は政界に大きな影響を及ぼす。さらに国民民主党が自民党との連携へと動くのか、踏みとどまるのかも注目点だ。
高市政権と自民党は、維新との連立を維持した上で、連立の枠組みの拡大、具体的には国民民主党に対象を絞って連立参加をめざす方針だ。そのうえで、公明党との関係改修復をめざすのが基本戦略だ。
一昨年からの衆参両院の選挙で、参政党、れいわ、共産党、保守党、社民、チーム未来など新興勢力の政党を含めて多党化が進んだ。こうした動きがどのように整理・統合されていくのか。底流では、公明党を間に挟んで自民、立民の駆け引きが一段と強まるとみている。
そして2026年の政治は、高市政権が保守勢力を固めながら政権基盤を強化していくのか、それとも連立政権の基盤が崩れたりして政局が流動化し、政界再編への動きが出てくるのかどうか、高市首相の求心力と政権基盤の変動を注視していく必要がある。
★追記(1月6日午前11時半) 高市首相は年頭にあたって5日、記者会見し「政治の安定なくして、力強い経済政策も外交・安全保障もできない。日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党をはじめとする野党にも協力を呼びかけていく」との考えを示した。
また、通常国会の会期中の衆院解散・総選挙があるかとの質問に対し「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべ、解散に直接言及することは避けた。(了)