“自公連立崩壊”の見方・読み方

自公連立政権から公明党が離脱し、26年に及ぶ両党の協力関係が崩れた。公明党の斉藤代表は10日、自民党の高市総裁と会談し「公明党が最も重視している政治とカネの問題をめぐる自民党の対応が不十分だ」として、連立政権を離脱する方針を伝えた。

公明党は、石破首相の後継を選ぶ首相指名選挙では高市氏には投票しない考えで、選挙協力も白紙に戻す方針だ。

これに対し、自民党は14日に両院議員総会を開き、高市総裁らが経緯を説明し、今後の対応についても意見を交わすことにしている。高市総裁ら党執行部は、首相指名選挙などで維新や国民民主党の協力を求めるものとみられる。

一方、立憲民主党は「首相指名選挙で野党側がまとまれば、政権交代の可能性も出てくる」として、維新や国民民主党に候補者の一本化に向けて党首会談を呼びかけている。14日には3党の幹事長会談が行われる見通しだ。

このように首相選びをめぐって与野党の駆け引きが活発になっているが、その前に今回の自公連立崩壊の意味や、今後の政権のあり方などを掘り下げて議論し、確認していく必要があるのではないか。そうした基本姿勢がないと政治の混迷から脱却できないのではないかと危惧している。

首相選び比較第1党か、野党連携か

まず、当面の焦点である石破首相の後継を選ぶ臨時国会の召集と首相指名選挙からみておきたい。10月4日に高市氏が自民党の新総裁に選出されたが、首相指名選挙を行う臨時国会の召集日程は未だに決まっていない。

外交日程は、26日からASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議や、27日にはトランプ米大統領の訪日が予定されている。政府・自民党は、20日の週の早い時期に臨時国会を召集したいとして調整を続けている。

ところが、公明党の連立離脱で、首相選びの情勢が見通せない状況になっている。自公連立政権では衆参両院とも自公で過半数を割り込んでいるものの、衆議院では220人を上回る勢力を維持していた。

ところが、公明党の離脱で衆議院では、自民党の勢力は196(衆院議長除く)まで縮小した。これに対し、立憲民主党は147、日本維新の会は35、国民民主党は27の勢力だ。野党3党がまとまれば209で、上位2人による決選投票に持ち込まれた場合、自民党を上回ることもあり得ることになる。

立憲民主党は「政権交代のチャンスだ」として、野党候補を1本化するよう働きかけている。そして野党統一候補として、国民民主党の玉木代表を推すこともありうるとして攻勢を強める構えだ。

これに対し、維新と国民民主党は、憲法や原発・エネルギーなどの基本政策が一致していないとして、今のところ慎重な姿勢を崩していない。

首相指名選挙では与野党のさまざまな組み合わせが想定され、誰が選出されるのかはっきりしない。今の時点で与野党の対応を基に判断すると、衆参ともに勢力が最も多い比較第1党は自民党なので、高市総裁が選出される可能性が高いとみられる。

但し、野党が結束すれば自民党を上回るので、野党候補が首相に選出されることもありうる。93年に8党派による細川連立政権が誕生したように、野党各党が歩み寄ることがあるのかどうか、みていく必要がある。

 連立崩壊で単独政権、極めて異例

それでは、これからの政治はどのように展開するだろうか。首相指名選挙の行方は先ほどみたように流動的だが、比較第1党の会派から選出される確率は高いので、高市総裁が選出された場合を想定して考えてみたい。

高市総裁の場合には、女性で初めての首相就任になるので、国民からの期待や支持がかなり高まることが予想される。但し、首相の評価は、実績や政権の安定、国民の信頼が得られるかどうかがカギを握る。

高市氏自身の評価はこれからであり、今の時点では過去の連立政権をめぐる動きが判断材料として参考になる。仮に高市氏が首相指名を受けた場合、国民民主や維新が直ちに政権に参加する確率は低いとみられ、自民党の単独政権としてスタートする公算が大きい。

自民単独政権の先例はどうだっただろうか。直ぐに頭に浮かぶのは93年に政治改革をめぐって自民党が分裂し、衆院選を経て宮沢政権が退陣、非自民・非共産の8党派からなる細川連立政権の誕生だ。この時まで自民1党優位体制が続き、自民党の単独政権が長期にわたって続いた。

この細川政権以降、日本政治は「連立の時代」に入り、自民党は社会党やさきがけと連立を組むことで政権を奪還し、その後も連立相手を変えながら政権を維持してきた歴史がある。

こうした中で、自民党が単独政権となったのは橋本龍太郎政権の時だ。当初、自社さ3党連立政権の枠組みでスタートしたが、96年の衆院選挙後、社民党とさきがけが閣外協力に転じ、自民単独政権に変わった。当時、自民党は最大野党の新進党に勝利したものの、過半数を割り込み少数単独政権としての再出発だった。

その後、自民党は新進党からの離党者を”一本釣り”して復党させ、衆院の過半数を回復した。この復帰組の中に今の石破首相、高市総裁も含まれていた。社民、さきがけの閣外協力は96年6月に解消されたので、橋本政権ではそれ以降、98年の退陣までの1年2か月、自民単独政権が続いたことになる。

その橋本首相は98年7月の参院選で大敗して退陣し、小渕恵三首相が後継首相を務めた。衆院は過半数を確保していたが、参議院は過半数割れし、衆参ねじれ国会に苦しんだ。

当時は金融危機が続いており、日本長期信用銀行も破綻に追い込まれた。金融再生関連法案を早期に成立させる必要があり、野党案を丸飲みして、成立にこぎ着けた。

また当時、防衛庁の背任事件をめぐり、参院で額賀防衛庁長官(今の衆院議長)に対する問責決議案が野党側から提出されて可決され、額賀長官が辞任に追い込まれた。問責決議案で閣僚が辞任に追い込まれた最初のケースだった。

こうした政権の不安定さから脱却するために小渕首相は、当時の自由党の小沢代表と会談し、連立政権を発足させることで合意した。その影の立役者が野中官房長官で、安定政権のためには「ひれ伏してでも連立をお願いする」ととして小沢氏の連立参加を取りつけたのは有名だ。

この自自連立を契機に自自公連立、自由党が外れて自公連立へとつながった。つまり、自民単独政権は橋本政権後半の1年2か月と、小渕政権発足から自自連立まで5か月の合わせて1年7か月に過ぎない。細川連立政権以降30年のうち、自民単独政権は極めて限られたケースであることがわかる。

ここまで長々と説明したのは、連立政権の背景には先人達の心血を注ぐような努力の積み重ねがあることを知ってもらうためだ。

逆に言えば、今回自公連立が崩壊に追い込まれた背景には、自民党の対応にさまざまな問題があったのではないか。端的に言えば、連立に必要な「信頼感」を持続させていくことができなかったと言えるだろう。

具体的には、公明党は衆院選、都議選、参院選と連敗を喫し、最も強く求めたのが「政治とカネの問題」だったが、自民党からは踏み込んだ対応ができなかった。余りにも鈍感すぎる対応とみることもできる。

また、自民党内には「公明党は、連立からは外れない」との思い込みが常態化していたと感じる。さらに、高市氏が新総裁に選出された直後に国民民主党の玉木代表と極秘会談を行ったとの情報が流れ、公明党側の不信をさらに強めることになった。

連立崩壊、中心軸なき混迷政局続くか

最後に自公連立崩壊後の政治はどう動くのだろうか。まず首相指名選挙では、与野党の誰が指名されることになるのか混沌とした状態が続いている。

ただ、四半世紀続いてきた自公連立政権が崩壊したことで「政治の中心軸がなくなった状態」と言っていいのではないか。衆院(総定数465)で考えてみるとこれまでは自公で220人、過半数を下回るものの、一定の規模・中心軸があった。

ところが、公明党が外れ、今や自民党の勢力は196人にまで縮小した。主導権を発揮できる集団がなくなり、政治の混迷は避けられない情勢だ。

当面は、衆参ともに比較第1党の自民党がどのように対応するかがカギを握る。仮に高市総裁が首相に選ばれた場合、高市氏自身が大局的な立場で、安定した政権運営を行えるかどうか。そのためには、内閣の要である官房長官にかつてのような実力と経験を持った人材を起用できるかどうかが大きなポイントになる。

一方、野党側も野党第1党の立憲民主党が150人近い議員を有しており、どこまで他の野党を説得できるかが問われる。維新、国民民主も野党の立場で政権交代をめざすのか、それとも自民党との連携し政策実現の道を歩むのか態度を明確にすることが迫られるだろう。

こうした自民、野党、そして公明党の各党の動きが続く中で、政権をめざす政党や議員の離合集散、政界の再編成が始まることになるのではないか。これから新たな政治の動きがいつ、どのような形で起きるのかが焦点になる。(了)

▲追伸(14日22時)◆政府は臨時国会を21日に召集する方針を固め、15日に衆参両院の議院運営委員会で与野党に伝える。召集日に首相指名選挙が行われる見通し。◆自民党両院議員懇談会が14日開かれ、高市総裁は公明党の連立離脱の経緯を説明し「私の責任であり、おわびしたい」と陳謝した。そのうえで、「首相指名のギリギリまで努力していく」と表明した。◆立憲民主党と日本維新の会、それに国民民主党の3党は15日に党首会談を開き、首相指名選挙をめぐり意見を交わすことになった。14日に開いた3党の幹事長会談で決まった。

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自民新総裁に高市氏 ”前途多難の出立”

石破首相の後継を選ぶ自民党総裁選挙は4日投開票が行われ、1回目の投票では決着がつかず、決選投票に持ち込まれた。決選投票では、高市早苗・前経済安全保障相が小泉農水相を抑えて新しい総裁に選出された。自民党総裁に女性が就任するのは初めてだ。

新しい首相を選ぶ臨時国会は、15日召集を軸に調整が進められている。首相指名選挙で野党側は候補者の一本化が難しいことから、高市氏が新しい首相に指名される見通しだ。女性の首相就任は憲政史上、初めてになる。

ただ、自民党は衆参両院で過半数を割り込んでいることに加えて、内政・外交ともに数多くの難問を抱えており、高市氏は政権発足当初から厳しい政権運営を迫られる見通しだ。

今回の総裁選で、高市氏が新総裁の座をつかんだのはどのような事情・背景があったのか。また、高市新総裁はどのような政権運営が問われることになるのか、この2点について探ってみたい。

党員票最多で大差、高市氏勝利の原動力

今回の総裁選挙については「小泉、高市両氏が先行し、最後は決選投票で小泉氏が勝つのではないか」と個人としては予想していたが、結果は逆になった。今回の予測では、どの部分の見通しが間違ったのか、この点から点検してみたい。。

まず、第1回投票の結果をみておくと党員票では、高市氏がトップで119票(党員票全体の40%)、2位が小泉氏84票(28%)、3位が林氏62票(21%)などと続いた。党員票では高市氏が上回ると予想していたので、順位に驚きはなかったが、その差が35票も広がるとはみていなかった。

次に国会議員票では小泉氏が80票でトップに立ち、2位が林氏72票、高市氏は3位で64票だった。高市氏は3位となったものの、トップとは16票差に止め、善戦健闘したということになる。逆に、小泉氏は議員票は予想したほど伸びず、党員票で開いた差を埋めることはできなかった。

1回目の投票で過半数を獲得した候補がいなかったため、上位2人による決選投票となり、高市氏が185票、小泉氏は156票で、高市氏の当選が決まった。

決選投票で高市氏には、麻生派と旧茂木派、それに小林氏を支持した議員の票が回り、議員票と都道府県連票を合わせて高市氏が、小泉氏を大きく上回った。

麻生派を率いる麻生最高顧問は「決選投票では、党員票が最も多かった候補を支援する」として、高市氏への投票を指示したとされる。自民党関係者に聞くと「麻生氏の指示がどこまで徹底したのかわからないが、迷っていた議員を中心に一定の効果をもたらしのは事実だろう」との見方をしている。

このようにみてくると今回の総裁選では、高市氏の勝利は党員票の大量得票が原動力になり、国会議員票にも影響を及ぼした。一方、小泉氏については党員票、議員票ともに伸びがなかったこと。この2点が今回の総裁選を決定づけるとともに、個人的な予測が外れた原因にもなったと考えている。

メデイアは党員調査のあり方の再検討を

自民党総裁選挙をめぐっては、新聞・テレビなどのメデイア各社も選挙情勢を予測したが、全国91万人の党員・党友の投票行動については、組織力のあるメデイアの調査に頼らざるをえない。

そのメデイアの調査だが、党員票については、高市氏と小泉氏のどちらが優勢なのか調査結果も分かれた。この原因は「自民党員」を対象にした調査か、「自民支持層」を対象にした調査かによる違いが大きいのではないかと考える。

「自民党員」を対象にした調査の方が、より正確であることは間違いないが、自民党員のデータをどこから入手するかなど難しい問題があるのも事実だ。筆者が現役時代は、党員名簿を基に調査した時期もあった。正確なデータを得るためには、どのような調査方法が望ましいのか再検討してもらいたい。

総裁選が終わった後、知人の自民党員に誰に投票し、選挙結果をどのように受け止めているのかを聞いてみた。今回は高市氏に投票したという知人は「高市さんは去年総裁選で敗れた後、地方回りを続けてきたことを党員の多くが知っている。そうした努力を評価した党員も多かったのではないか。小泉さんはまだ若いし、経験や見識などをさらに積む必要があると考えた」と語る。

選挙取材の基本は、調査などとは別に選挙権を持つ有権者の声を直接聞き、情勢を分析・判断することにある。限られた党員による選挙という難しさもあるが、選挙の実態にどのように迫るか、メデイアとしての取り組み方を検討し、実践していく必要がある。

 高市新総裁、問われる実績と信頼感

高市新総裁は今週前半に党の役員人事を行いたい考えで、5日の日曜日は新内閣の閣僚人事もみすえ、人事の検討を進めた。

高市氏は「全員活躍、全世代総力結集でみんなで力を合わせて取り組んでいく自民党にしたい」として、総裁選に立候補した他の4人全員を内閣や党役員に起用したいとの考えを示している。また、不記載問題に関与した議員も起用したいとの考えも明らかにしている。

こうした中で麻生最高顧問が率いる麻生派から、所属する鈴木総務会長を要職に起用するのではないかとの観測も出ている。党の主要幹部の顔ぶれがどのようになるのか、当面の焦点だ。

一方、与党・公明党の斎藤代表は4日、高市総裁と会談した中で「連立政権の継続には、公明党が抱く懸念を解消する必要がある」と伝えた。具体的には、高市氏の歴史認識や、靖国神社への参拝の考え方、外国人との共生の問題などが念頭にあるものとみられ、両党の執行部で改めて協議することになった。

高市新総裁は、政権の枠組みの拡大にも意欲を示しており、日本維新の会や、国民民主党との間で、連携のあり方について協議を行うものとみられる。

高市新総裁は64歳、当選10回のベテランで、総務相や経済安全保障相などを務めたほか、党では政務調査会長などを歴任している。安倍元首相に近く、保守的な政治信条の持ち主としても知られている。

高市総裁は新しい首相に指名されると直ちに組閣にとりかかり、新政権が発足する。新政権を国民がどのように評価するか、世論の支持率が注目される。また、10月末にはトランプ大統領の来日も予定されており、外交・安全保障への対応も待ったなしだ。内外ともに難問は山積状態にある。

自民党の長老は「高市新総裁は政治経験は豊富だが、国民の中には保守的な政治信条などを危ぶんでいる人もいる。まずは、向こう1年、実績を上げられるか。そして国民から信頼を得られるかどうかが試される。踏み外すと、短命に終わるおそれもありうる」と指摘する。

少数与党という厳しい政治環境の中で、高市総裁はどのようなかじ取りをしていくのか、まずは、最初の関門である自民党役員人事の顔ぶれを注目してみていきたい。(了)

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”小泉・高市両氏先行、林氏追う展開”自民総裁選

石破首相の後任を選ぶ自民党総裁選は10月4日の投開票に向けて、5人の候補者が最終盤の戦いを繰り広げている。選挙情勢は、小泉農水相と高市元経済安全保障相が先行し、林官房長官が追う展開になっている。

総裁選挙は全国91万人の党員・党友による投票の295票と、自民党所属の国会議員の295票の合わせて590票で争われるが、第1回投票では過半数を得る候補者がおらず、上位2人による決選投票になる見通しだ。

最終盤の選挙情勢はどのようになっているのか、党員・党友による投票と国会議員票のゆくえを分析してみたい。

党員票 小泉・高市両氏が上位で競う展開

まず、党員・党友による選挙は各都道府県連ごとに郵便投票で行われ、10月3日に締め切られた後、翌4日の国会議員の投開票に合わせて党本部に報告され、国会議員票と合わせて公表される。

その党員・党友による選挙情勢だが、これまではメデイアが党員名簿を基にした世論調査を行い、選挙情勢を把握していたが、最近はほとんど行われていない。代わって、世論調査で得られた自民支持層を基に分析する社が多くなっている。

共同通信が9月27、28両日に自民支持層を対象に実施した世論調査によると新総裁にふさわしい候補としては、◇高市氏が最多の34.4%で、◇小泉氏29.3%、◇林氏19.5%と続いた。◇4位は茂木氏5.2%、◇5位は小林氏3.8%だった。

読売新聞が9月27、28両日、自民支持層を対象にした調査では、◇小泉氏が40%で最も多く、◇高市氏が25%、◇林氏が16%と続いた。◇小林氏は5%、◇茂木氏は4%だった。

読売新聞の調査は、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号に対し、自動音声による調査で実施している。9195人が回答し、自民党支持層3143人の回答を集計、分析したとされる。共同通信の調査方法は説明されていない。

読売と共同の調査では、それぞれ1位と2位が小泉氏と高市氏とで異なるが、これは自民党の党員・党友の規模が91万人と少ないことから、調査対象の選び方によって、得られるデータに違いが生じたものとみられる。どちらが実態に近いかは、今の時点でははっきりしない。

こうした違いはあるが、小泉氏と高市氏はいずれも上位に位置しているほか、3位の林氏との差が10ポイント程度とかなり開きがある点も共通している。したがって、順位は別にして小泉、高市両氏が上位で先行していると見て良さそうだ。

自民党の関係者に聞いても「今回、立候補した5人は前回も挑戦しており、党員・党友の得票傾向が推測できる。今回も党内では、小泉氏と高市氏は優勢で、林氏は上位2人に迫るのは難しいとの見方」とも一致する。

但し、小泉氏については、陣営内で動画配信サイトに小泉氏に好意的なコメントを投稿するようメールで要請が行われていたことが明らかになり、小泉氏が26日陳謝した。いわゆる”ステマ行為”が選挙の世界でも現実に起こりうることを示した形で、この問題がどの程度、影響があるか注意深く見ていく必要がある。

議員投票 小泉氏、林氏、追う高市氏

次に、国会議員票の状況はどのようになっているだろうか。自民党議員の情報を基に判断すると、国会議員の295票のうち、小泉氏は、党内から幅広く支持を得ており、既に70票程度は固めたとみられる。そして、さらに上積みする勢いがある。

◇高市氏は、旧安倍派や無派閥の一部の支持を中心に40票程度は固めているとみられる。前回は小泉氏に次ぐ2番目に多い議員票を集めたが、今回は前回のような伸びがみられない。

◇林氏については、旧岸田派や無派閥、かつて所属していた参議院議員を中心に50票程度を固めており、高市氏を上回る勢いがある。◇小林氏と茂木氏については、それぞれ30票程度、固めているとみられる。

このように議員票は小泉氏が先行し、続いて林氏、さらに高市氏が追う展開になっている。

小泉・高市両氏先行、決選投票の展開か

以上のような党員票と国会議員票を合わせると最終盤の選挙情勢はどのようになっていくのだろうか。

小泉氏については、党員票で高市氏と上位を競り合っている一方で、議員票で強みを発揮している。党内からは経験不足などの声が聞かれるが、今回は改革色を抑え、安定感を印象づける戦略をとっている。党員票が最後まで確保できるかがカギを握っている。

高市氏は、高い知名度と発信力で党員票で小泉氏と並んでトップ争いをしているが、今回は議員票で勢いが見られない。高市氏の強い保守的な主張が、公明党との関係や、外交・安全保障面に影響することを警戒しているためではないかとのの見方がある。いずれにしても議員票の獲得が大きな課題になっている。

林氏は、主要閣僚を数多くこなしていることもあってか、議員票を着実に伸ばしている。反面、党員票では小泉、高市両氏に大きな差をつけられている。上位2人のいずれかが失速した場合、2位に浮上する可能性がある。今後、党員票の差を埋めるだけの議員票を上積みできるかどうかがポイントになる。

このようにみると今の時点では「小泉、高市両氏が先行、第1回投票ではどちらも過半数に達しないので、決選投票に持ち込まれる公算が大きい」とみられる。

先行する2人のどちらかが失速したりした場合、追う林氏が2位以内に浮上する可能性もあるという構図になっている。

なお、国会議員については、2割程度が態度を明らかにしていないほか、党員投票についても不確定な要素も残っているので、選挙情勢が変わる可能性があることを申し添えておきたい。

今回の自民党総裁選挙については、2つの視点で見ていく必要がある。1つは、誰が最終的に勝ち抜くのかという点で、これは当然だ。2つ目は、国民政党を標榜してきた自民党が、国民の信頼の回復させることができるかどうかという点だ。

自民党は結党以来、初めて衆参両院で過半数割れしており、仮に新総裁が野党の一部の協力を得て首相に就任できたとしても、これまでのように政権運営の主導権を確保する保証はない。

こうした状況の中で今回の総裁選挙に立候補した5人の候補者の主張は、当面の物価高対策や、野党の連携をいかに取りつけるかが中心で、国民を引きつけるような議論に至っていないのが実状だ。

国民は物価高対策を求めている一方で、中長期の課題の取り組みも求めている。長期停滞が続く日本経済を再生する具体策をはじめ、超少子高齢化が進行する中で社会保障制度は維持できるのか、防衛力の整備と必要な財源をどのように確保するのかといった基本問題に「解」を示す必要があるのではないか。

10月4日に新しい総裁が決まると同時に、政権政党としての自民党が国民の信頼感や期待感を取り戻す手掛かりを得られたのかどうか、この点が最も問われている核心部分にみえる。(了)

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“小泉・高市両氏先行、波乱はあるか”自民総裁選

石破首相の後任を選ぶ自民党総裁選挙は22日告示され、10月4日の投開票に向けて選挙戦が繰り広げられる。22日午前自民党本部で立候補の受け付けが行われ、茂木前幹事長(69)、小林元経済安全保障相(50)、林官房長官(64)、高市元経済安全保障相(64)、小泉農水相(44)の5人の戦いになる見通しだ。

総裁選の主な日程は◇22日午後に各候補の所見発表演説会が行われた後、◇23日に共同記者会見、◇24日に日本記者クラブ主催の候補者討論などのほか、◇東京、名古屋、大阪の3か所で地方演説会が行われる。◇党員・党友の投票は10月3日に締め切られた後、◇4日に国会議員の投票結果と合わせて開票される。

石破首相の退陣表明から既に2週間が経過し、ようやく選挙戦が始まるが、選挙情勢はどのようになっているのか。また、今回の選挙では何が問われているのか、探ってみたい。

選挙情勢、高市・小泉両氏先行の展開か

さっそく、選挙情勢から見ていきたい。メデイアの報道では世論調査を基にさまざまな見方が示されている。共同通信の世論調査(9月11、12両日)によると「次の総裁にふさわしい人」として、高市氏28.0%、小泉氏22.5%、林氏11.4%、茂木氏6.1%、小林氏3.6%などと報じられている。

読売新聞の世論調査(9月13、14両日)では、高市氏が29%がトップで、小泉氏25%、茂木氏7%、林氏6%、小林氏3%。自民党支持層に限ると小泉氏が33%とトップで、続いて高市氏28%、林氏8%、茂木氏6%、小林氏5%と続く。

こうした世論調査は全国の国民が対象で、自民党員(今回は91万人)とは異なるので、当然のことながら自民党員の投票予測とはならない。正確な調査となると党員対象の調査が必要で、今後メデイアの中で党員調査が実施されれば有力な判断材料になる。

党員調査のデータがないので、自民党の議員や関係者の取材にならざるをえないが、国会議員の動向についても麻生派を除いて派閥が解散されているので、従来のような派閥を通じた情勢把握は困難だ。さまざまな選挙結果の見方が飛び交っているが、選挙の予測は何が根拠になっているかの見極めが重要だ。

選挙情勢は自民党議員や党員の話を集めて判断するのが基本になる。ここまでの情報を総合すると「小泉氏と高市氏の2人が先行、これをベテランの林氏と茂木氏、中堅の小林氏が追う展開」との見方が有力だ。

小泉氏と高市氏を上位に予測するのは、第1回投票では党員票の比重が大きいため、人気の高い両氏が優位に立つとみるからだ。また、議員票については各候補とも去年の総裁選に立候補しており、ある程度の予測が可能だからだ。

但し、去年の総裁選では当初、「党員投票では上位間違いなし」とみられた小泉氏がふたを開けると3位に沈んだ。高市氏も党員投票ではトップに立ったが、議員票では小泉氏を下回り、決選投票では石破氏の逆転を許す結果になった。

今回も第1回投票で過半数を得た候補がおらず、決選投票になった場合、2位までに入るのが重要なポイントになる。「小泉氏と高市氏」との見方と、「ベテランの林氏が2位に食い込み、勝者が変わる波乱も起きうる」との見方をする党関係者もいる。

選挙情勢については、態度を決めていないという議員や党員もおり、流動的な要素が残っている。波乱が起きるケースとしては、候補者同士の討論やテレビ出演などでの失言をはじめ、個別の政策をめぐって失速することもある。このため、まずは各候補の主張や論戦の模様を注意深く見ていく必要がある。

 中長期の目標・進路を示せるか

今回の総裁選挙の特徴は「自民党が結党以来初めて衆参両院ともに過半数割れ」という危機的状況の中で行われる点にある。ここで国民の信頼を失えば、政権政党の座から転落する可能性があり、再生の道を見いだせるかが問われている。

立候補を表明した5人は既に記者会見で、自ら訴える主要政策を明らかにしている。主な内容を見てみると◇茂木前幹事長「地方自治体が自由に使える数兆円規模の交付金」、◇小林元経済安保相「期限や所得制限を設けた定率減税」。

◇林官房長官「1%程度の実質賃金上昇の定着」、◇高市元経済安保相「大胆な危機管理投資と成長投資」、◇小泉農水相「2030年までに平均賃金100万円増」などを打ち出した。

各候補とも当面の物価高対策や、国民受けのする分配政策が中心だ。当面の物価高対策は必要だが、同時に国民の多くは、内外情勢が激動する中で、将来社会の姿や目標を明確に打ち出すことを期待しているのではないか。

そうした観点からすると各候補の政策は目先の対応が目立ち、中長期の展望に基づいた政策は極めて乏しい。これから始まる候補者間の議論では、次のような点を明らかにしてもらいたい。

第1は「将来社会の目標と構想」で、何を最優先に取り組むのか。超少子高齢化時代への対応をはじめ、厳しい財政状況の中で、社会保障制度をどのように維持していくのか。

第2は経済政策について、分配に必要な「経済成長はどのような方法で、いつまでを目標に実現をめざすのか」を明らかにしてもらいたい。2000年以降、これまで日本の実質経済成長率は0.7%で、1%にも達していない。

第3は、「外交・安全保障の進路」をどのように考えているのか。「防衛力整備」について、重点を置く分野と必要な財源をどのよう考えているのか。また、トランプ大統領との間で「日米関係」をどのように運営していくのか、外交・安全保障戦略を語ってもらいたい。

第4は「政治とカネの問題」だ。衆院に続いて参院でも大敗した背景には、旧派閥の裏金問題が底流にあるとの指摘は多い。「解党的出直し」を掲げるが、「政治とカネの問題」に決着をつける覚悟はあるのかどうか。

このほか、「野党との連携」も問題になるが、衆参両院で自民党は過半数を割り込んでおり、主導権は野党の方にある。自民党は、まずは自らの基本方針と政策を明確にし、国民の信頼と共感を得られるかが問われていると考える。

今回の自民党総裁選挙は、新総裁に誰が選出されるのかいう点と、長期政権を担ってきた自民党が再生の手掛かりをつかむのか、それとも政権から遠ざかることになるのかが焦点だ。自民党はどこに向かうのか、総裁選での議論のゆくえを注視したい。(了)

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自民総裁選の見方・読み方  ”政権与党 危機のゆくえ”

石破首相の後任を選ぶ自民党の総裁選挙は、党員投票も含めた「フルスペック方式」で、「9月22日告示、10月4日投開票」の日程で行われることが決まった。

茂木敏充・前幹事長が10日に立候補することを正式に表明したのに続いて、11日には小林鷹之・元経済安全保障担当相が立候補意向を明らかにした。林芳正官房長官や、高市早苗・前経済安全保障担当相も立候補の意向を固めており、小泉進次郎・農水相も立候補するとみられる。いずれも去年の総裁選に立候補した顔ぶれだ。

自民党の総裁選挙はその時々の政治状況などを反映して、選挙の仕組みもたびたび変わった。私自身の経験を振り返っても総裁選を最初に取材したのは、駆け出しの政治記者時代の昭和53年・1978年だった。当時の福田赳夫首相に対し、大平正芳幹事長らが挑戦した。

当時はロッキード事件で田中角栄元首相が逮捕され、党改革の一環として今の党員投票につながる「党員参加の予備選挙」が初めて実施された。田中派の支援を受けた大平氏が勝利を治めたが、その田中派の選挙を指揮した後藤田正晴氏(後に中曽根内閣で官房長官などを歴任)を取材し、激烈な戦いの一端を知ることができた。

話を戻して、このように連綿と続いてきた総裁選だが、これまでと決定的に異なるのは、有権者の支持離れが進み、衆参ともに過半数割れに転落した中で行われるという点だ。一言でいえば「党の存亡がかかった総裁選」ということになる。

国民としては、誰が勝つのかに当然関心はあるが、同時に長期に政権を担ってきた自民党はどこに向かうのか、日本の政治は安定するのかどうかという点だろう。そこで、今回の総裁選はどこを注目してみていくとわかりやすいのか、総裁選の見方・読み方を探ってみたい。

揺らぐ「国民政党」、基本政策は明確か

石破政権と自民党は去年の衆院選挙に続いて、今年夏の参院選挙でも大敗を喫し、衆院に続いて参院でも与党過半数割れに追い込まれた。こうした選挙結果を受けて行われる今回の総裁選挙では、党勢の回復につながる取り組みができるかどうかが焦点になる。

自民党がまとめた参院選の総括の報告書では敗因として「物価高対策が国民に刺さらず、自民党らしい争点設定が出来なかったこと」や、「政治とカネを巡る不祥事で信頼を喪失した」ことを挙げた。

加えて「長年わが党を支えてきた保守層の一部にも流失が生じたこと」や「自民党は左傾化しているなどの疑念も一部世論に生まれ、他党へ流失することになった」と分析している。そのうえで「解党的出直し」に取り組み、「真の国民政党」に生まれ変わると強調している。

この「解党的出直し」をめぐって総裁選では、具体的な取り組み方が論点になる。候補者の中からは「石破政権の政策はリベラル色が強すぎた」などとして、選択的夫婦別姓や外国人の不動産取得問題などで保守的な路線を強める意見が出されることが予想される。

一方、候補者の中には「自民党は保守層を中心に、無党派層など幅広い層の支持獲得をめざしてきており、これまでの路線を変えるべきではない」といった主張が出されることが予想され、党の路線をめぐる議論が注目される。

こうした党の路線に関連して、参政党が「日本人ファースト」、国民民主党が「手取りを増やす夏」などの分かりやすいキャッチフレーズで有権者を引きつけたのに対し、自民党は何をめざすのか明確でなく、発信力が極めて弱かったとする指摘が党内からも出されている。

また、国民からは「バブル崩壊後、賃金は横ばいのままで自民党の経済政策は失敗したのではないか」、「これからの経済・財政政策の内容や、将来社会のビジョンや構想も明らかでない」といった声が聞かれ、こうした声にどのように応えるのか。

さらに、トランプ政権への対応をはじめ、中国、韓国などとの近隣外交、今後の防衛力整備の進めなどについても、各候補がどこまで踏み込んだ見解を示すことができるかも問われている。

 連立政権の枠組み、野党との連携は

衆参両院ともに過半数割れに追い込まれた自民党は、予算案や法案を国会に提出しても野党側の協力が得られなければ、一本も成立させることはできない。このため、こうした過半数割れの状況をどのように打開するのかが焦点になる。

これまで石破政権がとってきたように政策ごとに野党と連携する「部分連合」の方法を続けるのか。それとも、今の自公連立政権の枠組みに野党の協力を求め、枠組みの拡大を図るという方法もある。

こうした方法のどちらを選択するのか。また枠組みを拡大する場合、維新や国民民主、立憲民主のどの党と連携するのか、実現可能性はどの程度あるのかも議論になる見通しだ。

政治とカネ、党の体質改善はできるか

総裁選の注目点として国民の多くは、自民党の宿痾として「政治とカネの問題」にどこまで本気で取り組むのかを見極めようとしているようにみえる。

党の参院選総括の報告書でも「不記載の慣行がなぜ再開されたのかなど、この問題は国民の信頼を損なう大きな要因になり続けている」「この問題が引き続き自民党に対する不信の底流となっていることを厳しく自覚し、猛省をしなければならない」と指摘している。

このように「不信の底流」と認識しているのだが、「政治とカネの問題」に踏み込んだ対応策は示されていない。総裁選に立候補するリーダーは、党の体質改善を含めて、どのような具体策を打ち出すのかが注目している。この1点は明確にしないと「解党的出直し」も国民から信用されないだろう。

リーダーの条件 ”側近・同志はいるか”

最後に総裁選の候補者をどのように評価するか。投票権を持つのはおよそ100万人の党員などに限られ、私たち大多数の国民には投票権はないのだが、首相に就任すれば、直接関係することになる。

政党や国のリーダーの評価をめぐっては本人の見識、主要政策、実行力の有無などが判断基準になるが、”側近や同志”と言える人がいるかどうかは、特に首相の条件としては大きな比重を占めると感じる。

例えば、冒頭に触れた田中角栄元首相には二階堂官房長官、竹下登首相には金丸幹事長や”7奉行”と呼ばれた議員、小泉純一郎首相には飯島秘書官、安倍首相には今井尚秘書官といったように側近や同志がいた。

こうした一心同体とも言える側近や、政権を支える同志がいるかどうかは政権の安定性に関わってくる。安倍元首相が持病の悪化で退陣したのが2020年夏だったが、それから5年が経過し今度で早くも5人目の総理・総裁選びになる。

今回、総裁選候補として名前が挙がっている5人に、こうした側近、同士がいるかどうかも大きなポイントだ。側近・同志といったレベルでなくても、にわか仕立てではない有能な人材を結集できているかどうかも見ていく必要がある。

ここまでみてきたように自民党は今、政権政党として存続できるのかどうか危機的状況にある。今回の総裁選で「党の路線や主要政策」、「連立の枠組みの拡大」、「政治とカネをめぐる党の体質改善」、さらには「側近・同志の存在を含めた首相を支える体制整備」がどこまでできるかが問われることになる。

新総裁の選出で日本の政治は、真っ当な政治へ一歩近づくことになるのか、それとも混迷の度を深めることになるのか、これからの総裁選の展開をしっかり見届けたい。(了)

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”首相続投”対”早期退陣”対立深まる自民党

参院選挙で大敗した自民党は28日午後、自民党本部で両院議員懇談会を開いた。冒頭、石破首相は参院選挙の結果について陳謝したあと、「アメリカの関税措置をめぐる日米合意を着実に実行し、責任を果たしていきたい」と訴え、続投に理解を求めた。

これに対して、出席者からは続投を支持する意見が出された一方、「去年の衆院選に続いて、参院選でも大敗した責任を明らかにすべきだ」などとして、早期退陣を迫る意見が相次いだ。午後3時半に始まった懇談会は、予定時間を大幅に上回り、4時間半に及んだ。

両院議員懇談会終了後、石破首相は記者団に「果たすべき責任を果たしていきたい」とのべ、重ねて続投に意欲を示した。退陣を求める議員側も、党の正式な機関である両院議員総会の開催を求め、石破首相の退陣を迫る構えで、双方の対立は一段と深まった。

一方、報道各社の世論調査で、石破首相は参院選挙の責任をとって「辞めるべきだ」という意見と「辞める必要はない」とする意見が拮抗していることも明らかになった。こうした世論の反応をどのようにみたらいいのか、自民党内の対立はどのような展開になるのか、考えてみたい。

議員懇談会64人が発言、退陣論噴出

両院議員懇談会からみていくと石破首相と森山幹事長の挨拶のあと、懇談会は非公開で行われた。自民党所属議員の236人が出席し、このうち64人が発言した。

出席した議員の話によると「発言した64人のうち、続投を求めた議員は7人か、8人程度で、退陣を求めた議員は20数人に上った」と話しており、石破首相の責任の明確化や退陣を求める意見が噴出したというのが実態に近いようだ。

具体的な意見としては「選挙の結果責任は、誰かが取らなければいけない。組織のトップや執行部がケジメをつけるべきだ」「去年の衆議院選挙、6月の東京都議会議員選挙、参議院選挙でも大敗となった。組織の長、執行部にはケジメをつけてもらいたい」、「いつケジメをつけるのか、早く示してもらいたい」などの意見が相次いだとされる。

「辞任」「必要ない」分かれる世論

世論は、石破首相の進退をどのように考えているのだろうか。報道各社が26、27両日に行った世論調査によると◆朝日新聞では「辞めるべきだ」が41%に対し、「その必要はない」が47%で上回った。自民支持層だけに限ると「辞めるべきだ」が22%で、「その必要がない」が70%と多数を占めるという。

◆毎日新聞では「辞任すべきだ」42%、「必要ない」33%、◆産経新聞では「辞めるべきだ」47.7%、「必要ない」44.2%となった。社によって数字に違いはあるが、「辞めるべきだ」と「必要ない」が拮抗している点で共通している。

各社の世論調査では石破内閣の支持率は30%前後に対し、不支持率は60%と圧倒的に多数を占めている。だが、首相の進退については「辞任の必要はない」とする意見がかなり多いのはどうしてなのだろうか。

こうした結果になった理由について、調査では質問した項目はないが、幾つかの要因が考えられる。まず、今回の参院選挙結果の敗因は、石破首相個人の問題だけでなく、自民党全体に問題があると捉えていることが考えられる。

あるいは、日米関税交渉が合意にこぎ着けたばかりで、詰めの話し合いも予想される中で、退陣を急いで行う必要はあるのかとの見方も予想される。

もう1つは、退陣を求めている側に旧茂木派や旧安倍派、麻生派の議員が目立つことから、世論の側は裏金問題や権力闘争絡みの動きではないかとみて、不信感や疑念を抱いていることが影響していることが考えられる。

さらに、政権が交代する場合、次のリーダーや勢力に信頼を置くことができるのかどうか見定めたいという考えがあるのではないか。

いずれにしても世論の側には「政党や政権は、顔を代えるだけでは不十分で、リーダーを含めた政治勢力としての能力、資質、主要な政策などをじっくり判断したい」という姿勢が世論調査から読み取れる。

石破首相進退、8月下旬がヤマ場か

それでは、今後の展開はどのようになるのだろうか。森山幹事長は懇談会の冒頭に「選挙結果を踏まえ『参議院選挙総括委員会』を設置し、8月中をメドに報告書をとりまとめたい。まとまった段階で、幹事長としての自らの責任を明らかにしたい」との考えを示した。

森山幹事長は懇談会終了後、記者団に対し「両院議員総会については、29日の役員会で、開催する方向で協議したい」との考えを示した。

また、選挙の総括の報告書をとりまとめた後の責任には進退が含まれるのかとの質問に対し「そういうことを含むと考えている。党内には幹事長が責任をとれという意見があり、真摯に耳を傾けないといけない」とのべた。

この森山幹事長の発言は、選挙総括の報告書がまとまった段階で、自ら辞任する考えを示したものとみられる。

そこで、石破首相の進退問題はどうなるか。石破首相は続投に意欲を示しているものの、去年の衆院選に続いて、参院選でも与党が過半数割れしたことから、今の自民党の状況からすると、石破首相が政治責任を取る形になるのは避けられないのではないか。

8月は、1日からの臨時国会の召集や、広島、長崎原爆の日、終戦記念日の行事など重要な政治日程が続く。それに加えて、参院選の総括の報告書がまとまるとみられる8月下旬には、森山幹事長だけなく、石破首相の決断も迫られる可能性が大きいとみられる。

一方、総理・総裁が責任をとって辞任する場合も、自民党はこれまでと同じように首相の顔を取り替えれば、いずれ世論の支持が回復するような時代ではなくなっていることを認識する必要がある。既に衆参ともに多数派からは転落しているからだ。世論の視線も一段と厳しさを増している。

自民党は、世論の評価が厳しい「政治とカネの問題」など懸案の対応、日米関税合意への取り組み、物価高騰対策と日本経済の新たな成長戦略などを提示できない場合は、政権与党の座から滑り落ちるおそれがあるという危機感が今も乏しいのではないか。

先の参院選を受けて自民党が党の再生に向けて本格的に動き出すのか、それとも党内抗争を繰り返すことになるのかどうか、8月末にかけての動きを注視していきたい。

★追記(7月29日22時)自民党は29日の役員会で、参院選挙の敗北を受けて党内から開催を求める意見が出ていた「両院議員総会」を開くことを決めた。党執行部は8月第2週の後半にも開催する方向で調整を進めている。「両院議員総会」は、28日の両院議員懇談会とは異なり、党の正式な意思決定機関。党の運営や国会活動における特に重要な事項を審議、決定するとされている。石破首相の早期退陣を訴える議員らは、この場で石破首相の政治責任を取り上げて、退陣につなげたい考えだ。石破首相は記者団に「丁寧に真摯に、逃げずに説明するということに尽きる」とのべた。

★追記(7月31日22時)自民党は31日、参院選挙の敗北を分析する総括委員会の初会合を開き、選挙公約やSNSの活用を含む広報のあり方などについて検証したうえで、8月中に報告書をまとめる方針を確認した。一方、8月8日午後2時半から党本部で、「両院議員総会」を開くことを党所属議員に通知した。議題については「参議院選挙の総括と今後の党運営」としている。(了)

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参院選自公大敗、石破首相続投表明も政局流動化へ

20日投票が行われた第27回参議院選挙で自民・公明両党は、議席数を大幅に減らして大敗した。与党は衆議院に続いて、参議院でも過半数を維持できないことになった。自民党を中心とする政権が衆参両院で過半数割れするのは、1955年の結党以来初めての事態になる。

野党側は第1党の立憲民主党と、日本維新の会はそれぞれ改選議席を維持、または上回る議席を得たが、伸び悩んだ。これに対し、国民民主党と参政党は大幅に議席を増やして躍進した。

こうした中で石破首相は21日午後、自民党総裁として記者会見し「今、最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」として、首相を続投する意向を正式に表明した。

これに対して、自民党内には「党の総裁として政治責任を取るべきだ」として退陣を求める声が出始めている。参院選の結果をどのように見るか、参院選挙後の政治はどのように展開することになるのか探ってみたい。

 与党過半数割れ、政権不信が直撃

さっそく、今回の参議院選挙の結果をどのように評価するか、与党からみていきたい。自民党は選挙区で27、比例代表で12の合わせて39議席となった。この議席数は1989年宇野政権の36議席、第1次安倍政権の37議席に次ぐ3番目の少なさだ。

参院選の勝敗は、1人区の攻防がカギを握っている。自民党はこの1人区で圧倒的な強さを発揮してきたが、今回自民党は14勝18敗に終わった。3年前の参院選は28勝4敗だったので、勝ちが半分に落ち込んだ。

政党の勢いが反映する比例代表選挙をみると今回の12議席は、野党に転じた2010年と同じ過去最低の議席数だ。得票数は1280万票で、前回選挙から546万票も減らした。

敗因については、最大の焦点になった物価高騰対策で、コメの高騰が去年の夏以降続いたのに対応が終始、後手に回った。1人当たり2万円の現金給付も打ち出したが、国民に選挙目当てと見透かされて評価は極めて低かった。

また、先の通常国会では、懸案の企業団体献金が先送りになったほか、トランプ関税に対する日米交渉でも思うような成果が出せず、説明も行われなかった。石破政権に対応能力はあるのか、自民党は耐久年数が過ぎてしまったのではないかと国民の不満、不信が政権与党を直撃したことが敗因になったのではないか。

自民党の長老は「去年の衆議院選挙の総括、反省がなされてこなかったのではないか。これでは、国民の信頼を信頼を得るのは難しく選挙には勝てない」と厳しい評価をしている。

公明党は選挙区、比例代表ともに4議席ずつの8議席に止まった。改選は14議席だったので、6議席も減らしたことになり、過去最低の議席数となった。

自公連立政権が発足してから四半世紀になる。両党とも政権運営がマンネリ化しており、主要な課題を解決していく意思と能力があるのか、厳しく評価されたのが今回の選挙だったように思う。

 野党は多党化、躍進・退潮の明暗も

これに対して、野党の選挙結果はどうか。野党第1党の立憲民主党は、選挙区が15、比例代表が7の合わせて22議席を獲得した。1人区を中心に反自民票の一定の受け皿にはなったが、獲得議席は改選議席と同数に止まった。

日本維新の会は、選挙区が3、比例代表4の合わせて7議席で、改選議席を2つ上回った。だが、前回の比例代表では8議席を獲得したことを考えると半減し伸び悩んだ。

これに対して、国民民主党は選挙区10、比例代表7の合わせて17議席で、改選議席を4倍以上も増やした。比例代表の得票数でも762万票、前回から2.4倍も増やした。参院候補者の選考などをめぐって一時の勢いを失ったが、「手取りを増やす」という主張が若い年代を中心に支持を広げた。

参政党も選挙区、比例代表ともに7議席ずつの合わせて14議席を獲得した。改選議席1から、一気に大幅に議席を増やした。比例代表でも745万票を獲得し、立民を上回った。

参政党は「日本人ファースト」を掲げ、20代、30代の若い世代の他、40代から60代の中高年まで支持を広げたことが世論調査で読み取れる。自民党支持層にも食い込んで支持を広げており、こうした傾向が持続するのかどうか注目される。

れいわは3議席を獲得、改選議席2から増やした。共産党は3議席で、改選議席7から大きく減らした。日本保守党は2議席、社民党は1議席、「チームみらい」も1議席を獲得した。

このように野党については、立憲民主党は改選議席を確保したものの、多党化が進んでいる。また、躍進した政党がある一方、議席減や伸び悩みの政党もあり、野党の足並みがそろうのは容易ではないのも事実だ。

石破政権の不安定化、自民党内政局も

参院選挙の結果を受けて、石破首相は21日の記者会見で「極めて厳しい審判をいただいた。有意な同志が議席を失い痛恨の極みだ」とのべる一方、「比較第1党としての責任、国家・国民の皆さまに対する責任を果たしていかなければならない」とのべ、首相を続投する意向を正式に表明した。

また、石破首相は執行部の責任について「みんなで全身全霊、対応してきた」として、執行部を続投させる考えを示した。

さらに、今後の政権運営について「連立の枠組みを拡大する考えを持っているわけではない」とのべるとともに衆参両院で少数与党になる中で、政策ごとに合意形成を図っていく考えを強調した。

これに対して、自民党内からは「去年の衆院選挙で敗北、6月の都議選で過去最低の議席、さらに参院選敗北の3連敗では、首相の政治責任を問わざるを得ない」として、石破首相の退陣を求める声が出始めている。

一方で、アメリカ政府が対日関税25%を課す期限を8月1日に設定していることや、終戦記念日関連の行事も抱えており、首相交代を求めるのは難しいとの声も聞く。

石破首相は「両院議員懇談会などの機会を設け、国会議員だけでなく、地方組織の声も丁寧に対応していく」との考えを示し、党内を説得する構えだ。

こうした石破首相の対応について、自民党の長老に聞いてみると「選挙で敗北した以上、総理・総裁は出処進退を明らかにするのが筋だ。首相自ら非改選を含め与党で過半数確保を表明した以上、けじめをつけた方がいい」と指摘する。

また、「首相がこのまま続投した場合、次の衆院選でも敗北を続けることになりかねない。いったん区切りをつけて、党のあり方や政権構想などを練り直した方がよい」との考えを示している。

自民党執行部は今月31日に両院議員懇談会を開き、党所属議員から意見を聞くことにしているが、党内では今後、国会議員や地方組織などから、石破首相の政治責任を問う動きが強まることが予想される。”自民党内政局”がこれから始まり、政局は流動化してくる見通しだ。

一方、野党側の幹部からは、石破首相から連立の枠組みへの参加を求められても応じる考えはないとする考えが示されている。立憲民主党の野田代表は「民意は石破首相にノーという審判を示した。続投の意思表明にしては説得力がなさ過ぎる」と批判し、石破政権と対峙していく考えを表明した。

野党各党にとっても石破政権とこれまでと同じように個別の政策協議に応じていくのか、野党内の連携を深めて政権と対峙していくのか問われることになる。また、野党側は衆参両院で多数を占めることになったので、主要政策や国会運営などについても責任ある対応を求められる。

参院選を受けて議長などを決める臨時国会が8月1日にも召集される見通しだ。衆参両院で多数を占める野党側の要求で、物価高対策などをめぐって石破首相と与野党の論戦が交わされることも予想される。

内外情勢が激動する中で、石破政権と与野党は日本が抱える主要課題について、どのような方針で臨むのか、国民の不安を払拭できるような突っ込んだ議論と対応を強く注文しておきたい。

★追記(23日22時)◆石破首相は23日午前、首相官邸で記者団に対し、アメリカの関税措置について、トランプ大統領との間で合意に至ったことを明らかにした。相互関税を25%から15%に引き下げるとともに、自動車関税についても既存の税率を含めて15%とすることで合意したと説明した。そのうえで「対米貿易黒字を抱える国の中で、最も低い数字となる」と成果を強調した。                 ◆石破首相は23日午後、自民党本部で、麻生最高顧問、菅副総裁、岸田前首相の首相経験者と会談した。この後、石破首相は記者団に「一部の辞任報道は事実でない」と否定したうえで、続投する考えを重ねて示した。自民党は、参院選挙の敗北を受けて、党所属議員から意見を聞く「両院議員懇談会」を今月28日に前倒しして開くことになった。自民党の中堅議員や地方県連からは、石破首相の退陣や執行部の刷新を求める意見が相次いで出されている。(了)

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”自民苦戦、与党過半数厳しい情勢”2025参院選

今月3日に公示された参議院選挙は中盤戦に入り、各党の選挙戦は一段と熱を帯びてきた。ここまでの選挙情勢をみると自民党が苦戦しており、与党で過半数を確保するのは厳しい情勢になっているようにみえる。

一方、野党側では、立憲民主党が堅調な戦いを進めているほか、参政党、国民民主党、れいわの勢いが目立つなど新たな展開もみられる。参院選序盤の情勢を分析するとともに最終盤に向けて勝敗のカギはどこにあるのか探ってみたい。

石破内閣、自民支持率ともに低位水準

今回の参議院選挙について、NHKのトレンド調査の2回目のデータ(7月4~6日実施)が7日に報道されたので、このデータを基に選挙情勢全体をみておきたい。トレンド調査は、国政選挙投開票日の数週間前から1週間ごとに連続して、有権者の政治意識の動向を把握するために行っている調査だ。

それによると石破内閣の支持率は31%で、1週前の第1回調査(6月27~29日)から3ポイント下がった。不支持率は50%で、前回より4ポイント上がった。6月上旬の月例世論調査の支持率は42%だったので、この1か月間に11ポイント下落したことになり、去年10月の政権発足以来、最も低い水準だ。

一方、自民党の支持率は、トレンド調査の1回目は27.8%、2回目は28.1%だった。前回3年前の参院選の同じ時期は、35.6%だった。安倍政権当時の自民党支持率は30%台後半、岸田政権でも30%台半ばだったので、石破政権では30%ラインを割り込んでおり、内閣支持率とともに低位の水準にあることがわかる。

与党・公明党の支持率(2回目)は3.0%で、1回目の調査より0.8ポイント下がった。

これに対して野党各党はどうか。伸びが目立つのは、参政党で4.2%まで上昇した。6月の月例調査で1.9%だったのが、1回目調査で3.1%、2回目調査でさらに伸ばした。公明党の支持率を上回ったので、その勢いには驚く。

国民民主党の支持率も5.1%と高い水準にある。3月の月例調査では8.4%で、第1党の立憲民主党を上回っていたが、参院選挙の候補者選びなどをめぐって低下した。それでも支持率としては、野党の2番目の地位を維持している。

れいわ新選組の支持率は3.2%で、前回調査の2.0%から支持を伸ばした。3年前は1.7%の支持率だったので、れいわも支持を伸ばしている。

立憲民主党の支持率は8.5%。6月の月例調査では5.8%だったので、支持率を堅実に上げてはいるが、野党第1党しては自民党との大きな差を縮められていない。一方、日本維新の会の支持率は2.3%、共産党は3.1%などとなっている。

このように石破内閣と自民党はともに支持率が低迷、公明も支持に陰りがみられる。これに対し、参政党、国民民主党、れいわの各党には勢いがみられる。立憲民主党は一定の支持を得ているが、維新、共産は低迷しており、野党でも明暗が分かれている。

 与党過半数厳しい情勢、1人区で苦戦

それでは、参院選の選挙情勢、勝敗はどうなるか。まず与党のうち、自民党からみていくと比例代表選挙について、前回は18議席を確保したが、今回は党の支持率が低下していることから、大幅に減らすことになりそうだ。

自民党の比例代表の過去最低は12議席だった。自民党関係者に聞くと「12±α」程度にまで落ち込むのではないかとの見方を示している。

次に選挙区選挙では、2人区から6人区まで複数区は13ある。このうち、複数区で2人擁立し当選した選挙区もあるが、激戦区も多く、13議席程度に止まる可能性が大きい。

問題は、全国に32ある定数1の1人区の攻防だ。自民党はこれまで地方の厚い保守地盤を活かして野党に大差をつけてきたが、今回は接戦となっている選挙区が多い。今の時点で自民党がリードしているのは群馬、石川、山口など10程度だ。

逆に野党各党と無所属を含めた野党系がリードしているのは岩手、長野、大分など9程度。残り13選挙区は与野党が激しく競り合い、勝敗の見通しは現時点ではつけにくい。

公明党は党員の高齢化などの影響もあり、議席獲得が確実に見込めるのは選挙区で5、比例代表で5の合わせて10程度とみられる。

与党が過半数を確保するためには、参院全体の過半数125から、非改選の自民、公明両党75を差し引いた50議席が必要になる。そうすると公明党を10と仮定するならば、自民党が40議席を確保できるかが勝敗の分かれ目になる。

その自民党は、比例12、複数区13と仮定すると合計25、残り15議席を1人区で獲得できるかということになる。ところが、1人区は接戦区が多く、15議席を確保できるメドはついていない。したがって、与党で過半数確保は厳しい情勢というのが実状だ。

立民堅調、参政、国民、れいわに勢い

野党側の情勢はどうだろうか。野党第1党の立憲民主党は支持率も3年前の水準以上に確保していることや、1人区で反自民の受け皿になっていることから、20台後半の議席を確保する見通しだ。堅調な戦いと言える。

特に勢いが目立つのが参政党だ。神谷代表は公示前の2日の時点で、獲得目標として選挙区1と比例代表5の合わせて6議席としていたが、その後、10議席以上に目標を引き上げた。

自民党関係者は「地方でも参政党が保守地盤に食い込んでおり、自民党に影響が出るのではないか」と警戒する。今の勢いを投票日まで維持すれば、選挙区と比例代表を合わせて9議席前後獲得するのではないかとの見方もある。

国民民主党も一時の勢いに陰りはみられるが、選挙区と比例代表合わせて10台半ばまで議席を大幅に増やす勢いがある。れいわも比例代表で4議席程度を確保するものとみられる。

一方、公示前の勢力として維新は5議席、共産党は7議席を確保していたが、伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

社民党と日本保守党はそれぞれ1議席を獲得する可能性がある。このように野党側については、参政党と国民民主党、れいわに勢いがある。立民は堅調だが、維新と共産は伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

1人区の最終攻防、投票率も勝敗を左右

参院選挙の最終盤に向けて勝敗面では、どこが大きなカギになるか。選挙区では1人区が全体の定員の4割を占めることから、この1人区の競合選挙区の攻防が最大の焦点になる。加えて、複数区の最後の議席をどの党が競り勝つかがポイントだ。

もう1つ、投票率も選挙戦を大きく左右する。NHKのトレンド調査をみて気づくのは、今回の参議院選挙について「投票意欲」が高いことだ。投票に「必ず行く」と答えた人は56%、「期日前投票をした」人は6%で、合わせて63%にのぼっている。

前回3年前と6年前の参議院選挙は55%に止まっていた。このときよりも7ポイントも上回っていることになる。今回の投票日20日は、3連休の中日に当たり、投票率が下がるのではないかと懸念されているが、有権者の投票意欲は相当高いようだ。

こうした背景には、物価高騰対策などに意思表示をしたいという考えがあるのだろうか。投票率が1%上がれば、有権者数で100万人増えることになり、選挙結果にも影響を及ぼす。3年前の投票率は52%だったが、今回はどうなるか、注目したい。

選挙戦真っ最中の8日、アメリカのトランプ大統領は、日本からの輸入品に25%の関税を課税する方針を日本政府に伝えた。8月1日から適用するとしている。これに対し、石破首相は、相互関税の一時停止の期限が事実上、延期されたという認識を示し、交渉を続ける考えを示した。

こうした石破政権の対応について、有権者がどのように評価をするのか。参議院選挙は選挙運動期間が17日間と長いのが特徴で、これまでも党首の発言などが選挙結果に大きな影響を及ぼしたこともあった。

内外情勢が大きく動く中で、各党の論戦や戦い方がどのような展開をみせるのか、選挙情勢は大きく変わる可能性がある。私たち有権者もどの候補者、政党に政権や政策の推進を委ねることにするのか、選挙情勢も念頭に入れて1票を投じたい。(了)

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2025参議院選挙の見方・読み方

第27回参議院選挙が3日公示され、20日の投開票日に向けて激しい選挙戦に入る。衆議院選挙が「政権選択選挙」と位置づけられるに対して、参院選は「中間選挙」とも言われ地味な印象を受けるが、政治が大きく変化する先駆けになったことも多かった。

私は昭和46年・1971年から50年余り選挙取材を続けているが、記憶に残る参院選として最初に頭に浮かぶのは、平成元年・1989年の参院選だ。「マドンナ旋風」、当時社会党の土井たか子委員長が多くの女性候補を擁立し、49議席を獲得した。対する自民党はリクルート問題、消費税導入、宇野首相の女性問題が重なって大惨敗。参院で初めて与野党の勢力が逆転し、その後の自民1党優位体制の終焉へとつながった。

平成19年・2007年の参院選で第1次安倍政権は、37議席と歴史的大敗を喫して衆参ねじれ状態となり、その後の民主党政権誕生へつながった。その後、安倍首相は衆院選で政権に復帰したあと、2013年の参院選挙で大勝し長期政権の足がかりを得た。

そこで、今度の2025年の参院選挙はどのような位置づけとなり、何が問わる選挙なのか有権者の立場に立って考えてみたい。どの政党、候補者に投票するかを判断するうえで、基礎的な判断材料になる。参院選挙の勝敗の見通しと選挙情勢については、次回以降に取り上げたい。

自公政権継続か、政変・政局激動か

今回の参議院選挙は、去年の衆院選挙で30年ぶりの少数与党となった石破政権が政権の命運をかけて臨む国政選挙になる。選挙の勝敗ラインを尋ねられた石破首相は「非改選を含め参院の過半数」を獲得目標に掲げている。

こうした石破首相の目標に対して、自民党内には「非改選を含めると甘い目標になってしまう」として、より高い「改選議席の過半数」をめざすべきだとする意見もあり、勝敗ラインの基準をめぐる綱引きが続くことになる。

いずれにしても石破首相が、非改選を含めた参院全体、あるいは改選議席の過半数を上回る議席を獲得すれば、参院選後も石破首相(自民党総裁)が続投することになる。

一方、報道各社の世論調査によると石破内閣の支持率は、不支持率の方が高い逆転状態が続いている。また、自民党の支持率も都議選後30%ラインを割り込むデータも出ており、党内で危機感が広がっている。

このため、勝敗ラインに達しない場合は、党内から政治責任を問う”石破降ろし”が起きたり、首相退陣に追い込まれたりする可能性がある。参院選挙は政権選択選挙ではないと言われるが、今回は首相の命運がかかっているので、事実上の政権選択選挙の性格を持った選挙だと言えそうだ。

このように選挙後の政治は、石破首相と今の自公政権が続くことになるのか、それとも首相退陣の政変や政権の枠組みが変わる大きな政局に発展することになるのかが焦点になる。今回の参院選はそれだけ、重い意味を持つ選挙ということになる。

8党首討論は”物価高対策論争”

次に私たち有権者にとって大きな関心のある政策面では、どのような内容が主要テーマになるだろうか。2日に日本記者クラブ主催で、自民、公明の与党と立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組、参政党の8党党首討論が行われたので、主な論点を取り上げてみたい。

石破首相と各党党首がそろって取り上げたのが物価高対策だった。このうち、石破首相と与党公明党の斎藤代表は、子どもと非課税の人に4万円、それ以外の人には2万円の給付を行うと説明するとともに「困った人に重点を置き、早期に実施することが重要だ」と訴えた。

これに対して、立憲民主党の野田代表など野党各党の党首は「与党の現金給付はバラマキだ」と批判するとともに「物価高から国民生活を守り抜くためには、消費税減税に踏み出す必要がある」と強調した。

その際、党によって食料に限って減税する案や、消費税全体の税率を一律に引き下げる案、さらには廃止を求める考えなどに分かれた。財源の規模や、赤字国債を発行することの是非についても意見は分かれた。

一方、外交・安全保障分野では、野田代表が「日米関税交渉は前進がみられず、トランプ大統領は、相互関税の税制措置をさらに引き上げる考えを示唆している」として、石破首相がトランプ大統領と首脳会談を行い打開すべきだと質した。

これに対し、石破首相は「日本は、アメリカの最大の投資国であり、最大の雇用も生み出している国だ。関税より投資の意義を訴えていく。何としても国益を守る」とのべたが、日米首脳会談については言及しなかった。

このほか、社会保障制度改革や、コメ問題と農業政策、賃金引き上げと経済政策、企業団体献金の扱いなどについても議論された。

このように物価高対策は、有権者の関心も高く、各政党が重視していることは理解できる。一方、多くの有権者は「政党間のサービス合戦に終わらせずに、日本社会全体が発展していくために何を重点に取り組むべきか示して欲しい」と考えているのではないか。

また、各党とも高い経済成長や給与の引き上げを打ち上げているが、どのような政策の組み合わせで実現するのかは明確になっていない。これからの日本経済や社会を活性化していくための具体策の提示が必要ではないか。

  投票に求められる判断は

選挙戦が始まり、今後さまざまなメデイアでも党首討論が行われる。有権者の多くは、各党や候補者が当面の目先の対応策だけでなく、将来社会の目標やビジョン、実現への道筋などについて、より踏み込んだ議論を期待しているのではないか。

今度の参議院選挙では、選挙結果によって石破首相の進退や政権の枠組みに大きな影響を及ぼすことが予想される。一方、内外情勢が大きく動いている中で、私たち有権者は、日本社会はどのような進路を選択すべきかという観点も忘れずに選挙の論戦をみていきたい。(了)

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”都議選、自民大敗“ 敗因をどう読むか

22日投開票が行われた東京都議会議員選挙では、自民党が過去最低の21議席となり、第1党を維持できなかった。一方、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は31議席を獲得し、第1党に返り咲いた。

野党側では、立憲民主党が議席を伸ばしたほか、国民民主党と参政党が初めて議席を獲得した。共産党は議席を減らし、大阪維新の会は議席を失った。一方、公明党は、9回連続の全員当選を逃した。

このように各党派の明暗は分かれたが、特に自民党は、コメ問題で小泉農水相の登場によって選挙情勢は好転しているとみていただけに、選挙結果を深刻に受け止めている。今回の自民大敗の原因はどういうことだったのだろうか、来月に迫った参院選への影響はどうなるか分析してみたい。

 自民党過去最低の議席、敗因は

東京都議選が告示される前、自民党関係者に見通しを聞くと「自民党の現有議席は30。これを多少下回ることはあるかもしれないが、過去最低の23議席を割り込むことはないだろう」と比較的楽観的な見方を示していた。

その理由としては、コメ問題に関心が集まり、政治とカネの問題への関心が低下していること、そして小泉農水相の登場でメデイア各社の世論調査でも石破内閣の支持率も上昇していたことから、選挙情勢は好転するとみていたからだ。

ところが、ふたを開けてみると2017年、都民ファーストの会ブームで自民党が沈んだ23議席、これをさらに下回る21議席にまで落ち込んだ。このうち、3人は追加公認なので、本来の公認候補の当選は18人で、惨敗と言ってもいい。

選挙結果をみると◆定数1の1人区、千代田区、武蔵野市など7つの選挙区で、自民党が勝利したのは1議席だけで、1勝6敗に終わった。◆2人区以上の複数区では最後の議席を競り負けた選挙区が目立った。

こうした原因はどこにあるのだろうか。筆者は都内に住んでおり、小さな個人的体験で恐縮だが、今回は自民党候補のビラの配布が少なかった。一方、選挙戦終盤には小泉農水相のオートコールが固定電話にかかってきたのに驚いた。地道な選挙活動ではなく昔流の電話作戦、ネット時代には”竹槍戦法”を思い起こさせた。

選挙全体を評価するデータとしては、朝日新聞や読売新聞の出口調査が参考になる。◆自民支持層のうち、自民党候補に投票した割合は5割程度に止まっている(朝日53%、読売54%)。自民支持層の7割程度確保するのが普通なので、今回は大幅に低下した。また、都民ファーストに2割近くも支持が流れていた。

◆最も多い無党派層の投票先では、都民ファーストへの24%が最も多く、次いで自民11%、立民10%、共産9%となっている(読売データ)。無党派層の獲得率で自民党は、無党派層に大差をつけられた。

◆一方、投票の際、自民党の裏金問題を考慮したかとの問いに「考慮した」が62%、「考慮しない」36%を上回った(朝日データ)。

◆選挙の争点として重視したテーマとしては、「物価高や賃上げ対策」を挙げた人が最も多かった。石破首相は告示日の13日、参院選の公約に国民1人あたり「2万円給付」を盛り込むと発表したが、選挙結果から判断すると”都議選での追い風”にはならなかった。

このように今回の選挙の敗因としては、自民党の派閥に続いて都議会自民党でも裏金問題が起きていたことに対する強い不信感、それにコメをはじめとする物価高対策についても政権与党が明確な方針を示すことができないことへの不満、批判が大きく影響したのではないかとみている。

一方、政界関係者の中には今回、公明党が自民党の候補を推薦しなかったことから「自公の選挙協力が機能しなかったことが影響したのではないか」との見方も聞いた。重要な指摘だが、関係者の取材ができていないので、今後、取材のうえ明らかになった点があれば、報告したい。

 立民は議席増、国民民主は躍進

野党側についてみておくと、立憲民主党は前回15議席から17議席へと伸ばした。これは、野党第1党として自民党批判の受け皿になったことを示している。また、1人区から3人区で共産党などとの候補者調整が実現した効果があったものとみられる。

国民民主党は、9議席を獲得した。党の幹部は、単独で条例を提出できる11議席以上をめざしていた。他の党幹部からも「台風の目になるのではないか」とみられていたが、参議院選挙の比例代表の候補者擁立をめぐって混乱が起きた。

NHK世論調査では3月の政党支持率は8.4%だったが、6月は5.4%まで下落した。但し、国民民主党は都議選では議席を持っていなかったが、一気に9議席獲得したのは躍進したといっていいのではないか。次の参院選が正念場だ。

共産党は都議会自民党の裏金問題を追及したが、選挙結果は4議席減らした。日本維新の会は議席を失った。一方、公明党は過去8回連続で全員当選を果たしてきたが、36年ぶりに議席を減らした。

参政党は都議選で初めて3議席を獲得した。NHKの世論調査でもこの党への支持率が1月は0.3%だったのが、6月は1.9%に上昇した。保守層の支持を得ており、既成政党批判の受け皿になっている。れいわ新選組と、石丸伸二氏が立ち上げた「再生の道」は議席を獲得できなかった。新興勢力の間でも明暗が分かれた。

 参院選、与党過半数が最大の焦点

都議選と参議院選挙が重なる2025年は、夏の参議院選挙で大きなヤマ場を迎える。7月3日公示、20日投開票日の日程が近く閣議決定される運びだ。去年の衆院選で与党が過半数割れしたが、今度の参議院選挙では与党が過半数を維持できるのか、それとも野党が過半数割れに追い込むのかが、最大の焦点だ。

東京都議選の結果は、これまで直後の国政選挙に大きな影響を及ぼし、次の選挙の「先行指標」になることが多かった。今回の都議選の結果は自民・公明の与党に厳しい結果になっただけに次の参議院選挙はどうなるか、石破政権の命運を左右する見通しだ。

その石破首相は通常国会が閉会したのを受けて23日夜、記者会見した。この中で石破首相は、参院選挙の勝敗ラインについて質問されたのに対し「非改選を合わせて参議院全体の過半数の確保に全力を尽くす」との考えを強調した。

与野党の勝敗面では、全国で32ある定数1の1人区がどうなるかが、カギを握っている。野党側は立憲民主党が、維新や国民民主、共産の各党と候補者調整を進めているが、競合する選挙区も多い。公示までに候補者調整が進むのかどうかが大きなポイントになる。

物価高などの政治課題に加えて、中東情勢の緊迫化も加わる中で、参議院選挙の争点設定はどうなるか。そして、有権者がどのような判断を示すか参院決戦はまもなく本番を迎える。(了)

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