“大義なき解散” 通常国会冒頭解散へ

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市首相は14日夕方に与党幹部と会談し、23日に召集される通常国会の早期に衆議院を解散する意向を伝えた。これによって、通常国会冒頭で衆議院が解散され、来月に総選挙が行われることが確実な情勢になった。

この通常国会冒頭解散をどのようにみたらいいのだろうか。私は50年近く政治取材を続けているが、一言で言えば”大義なき解散”といわざるを得ない。今回ほど政権の自己都合優先の解散は記憶にない。

というのは高市首相は新年5日の年頭の記者会見で、衆院解散の可能性を問われ「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感していただくことが大切だ」とのべ、衆院解散より政策実現を優先させる方針を力説していた。こうした方針を覆して、国民に信を問う理由や大義が見あたらないからだ。

また、通常国会冒頭で衆議院が解散されると、国民生活に直結する新年度予算案の審議はできなくなくなり、予算案の年度内成立は不可能になる。新年度予算案の審議を取り止めてでも、衆議院の解散・総選挙を急ぐ理由があるとはとても思えない。

さらに、全国の地方自治体は今、自らの新年度予算案の編成に取り組んでいるのをはじめ、国の物価高対策に対応するための事業への対応にも当たっている。加えて衆院選挙の準備が追加されることになり、自治体への負担は重い。

高市首相は自民・維新幹部との会談の中で、解散に踏み切る理由として「連立政権のパートナーが公明党から維新に変わったこと。『責任ある積極財政』や防衛三文書の見直しなど新しい政策打ち出したことから、国民の審判を受ける必要がある」と説明したという。

だが、こうした点であれば、去年の政権発足直後でも可能だったし、新年度予算案が成立する3月末以降でもできるのではないか。”解散の理屈は、後から貨車でついてくる”と言われてきた格言そのもので、説得力は乏しい。

高市首相としては「衆議院は無所属議員の参加でようやく過半数に達したが、参議院では与党過半数割れという苦しい状況にある。衆院選挙で議席を増やし、政権の求心力を高め、政策を推進したい。内閣支持率の高いうちに解散に打って出て勝利したい」との思いはそれなりにわかる。

しかし、前回衆院選挙からまだ1年2か月余り、任期の半分も経っていない。去年夏には、参院選も行われたばかりだ。政治にはそれなりのタイミングというものがある。

さらに、解散・総選挙を行うか否かという重大な方針決定の進め方にも問題がある。今回の冒頭解散方針は、高市首相と首相官邸の限られた側近だけの協議で決まり、自民党の幹事長などの役員にも知らされていなかったとされる。政党政治のあり方からも逸脱するのではないか。

このように今回の通常国会冒頭解散は「政権の都合優先」「大義なき解散」と指摘されても仕方がないのではないか。高市首相は19日に記者会見を行う予定だが、解散の理由や大義名分などについて明確な説明を願いたい。

政治のあり方を含め国民の選択がカギ

衆議院選挙は国民が国の政治に意思表示できるので、本来、歓迎すべきことだ。したがって衆院解散・総選挙が確実な情勢になった以上、選挙に関心を持ち、1票を投じていきたい。

懸案・政治課題は山積み状態だ。物価高対策をはじめとする経済・財政政策は待ったなしの状態だ。賃金引き上げや日本経済立て直しへの具体的な方法や道筋が提示されるかどうか。人口減少社会と社会保障制度、日本の防衛や外交をどのような方針で臨むのかが焦点になる。

また、先送りが続いて生きた「政治とカネの問題」に今度こそ、結論を出すことが必要だ。そして、新しい政治の姿・形をどのように構想していくか、これからの大きなテーマだ。

さらに、立憲民主党と公明党とが新党結成を視野に選挙協力の調整を始めるなど新たな動きもでている。中道勢力の結集をめざしているものとみられ、調整が進めば、衆院選挙の構図を変える可能性もある。

衆議院が解散されればどの候補者、政党を選ぶのか。しばらくの間、私たち国民が主役で決定権を持つ。内外激動が続く中で、どのような社会をめざすのか、新しい政治のあり方にどう取り組むのか、若い世代の皆さんとともに熟慮の1票を投じたい。(了)

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”通常国会 冒頭解散”の見方・読み方

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市政権内で、通常国会冒頭に衆議院を解散し総選挙を行う案を検討していることが明らかになった。高市首相は沈黙を続けているが、2月8日か、2月15日投開票を想定している。

急浮上の解散案に与野党ともに大きな驚きとして受け止められているが、冒頭解散の流れは広がりをみせている。高市首相のねらいや、冒頭解散の動きの背景などを探ってみたい。

冒頭解散、首相官邸主導で検討進む

今回の衆院解散の動きを最初に報じたのは、読売新聞だ。正月3が日が明けて政治が本格的に動き始めた週末9日の夜、読売新聞が電子版で「高市首相が通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報じた。

政界では通常国会冒頭解散は見送りとの見方が定着していたこともあってか、全国紙のほとんどは翌日朝刊の報道は見送った。おそらく事実関係の確認などに手間取ったためとみられ、解散の動きが掲載されたのは11日朝刊になった。

筆者も報道直後に自民党関係者に電話取材をしたが、事実関係は確認できなかった。後で確認してみると与党の主要幹部でも知らない人がほとんどだった。「解散は首相の専権事項とはいえ、進め方が余りにもひどい」と憤る幹部もいたとされる。

政界関係者の情報を総合すると冒頭解散案は、高市首相と首相官邸の極めて限定された幹部が極秘裏に検討を進めたとされる。高市首相は早期解散より肝いりの政策を実現したうえで、解散を断行することが持論とされてきたが、最終的には一部側近の進言を受け入れ、早期解散にカジを切ったものとみられる。

安倍元首相は抜き打ち解散を重ねたが、いずれの場合も自民党中枢と連立を組む公明党代表には、事前に解散の意向を伝えるなど周到な根回しを行った。それに比べると高市首相の対応は官邸主導で、自民党執行部などへの根回しは後回しとなり、深刻なしこりを残すことになるだろう。

野党反発も、与党で解散の流れ広がる

高市首相の国会冒頭解散への動きに対して、野党側はそろって強く反発している。立憲民主党の野田代表は11日記者団に「経済や物価高対策が重要だと言いながら、政治空白をつくる。理屈や大義がなく、自己保身的な理由があるのではないか」と厳しく批判した。

国民民主党の玉木代表は12日「新年度予算案の年度内成立ができないタイミングでの解散になれば、『経済後回し解散』と言わざるを得ない」と批判し、新年度予算案成立に向けた協力を見直す考えがあることを明らかにした。

公明党の斉藤代表はNHK日曜討論で「新年度予算案の年度内成立が最も大事な状況の中で、なぜ今、解散するのか」とのべ、予算案の年度内成立を断念して解散につき進む姿勢を批判した。このように野党側は冒頭解散に強く反発する一方で、総選挙への態勢づくりを急いでいる。

一方、連立を組んでいる日本維新の会の吉村代表は11日の日曜討論で「おととい(9日)高市首相と話をした際に『一段ステージが変わったな』というやりとりがあった」として、通常国会冒頭解散には驚かないとの認識を示した。

自民党内では冒頭解散に驚きが広がったものの、「高市内閣の支持率が高い中で、早期解散に踏み切ることは理解できる」として、冒頭解散を容認する流れが広がっている。

ただ、党内には「高市首相がこれまで発言してきたように物価高対策や経済政策の効果を国民に実感してもらうことが重要だ」として、来年度予算案の年度内成立を優先させるよう求める声も根強くある。

こうした自民党内の反応などを踏まえたうえで、高市首相は近く、通常国会冒頭解散について自らの考え方を正式に表明するものとみられる。

高支持率で 自民大幅議席回復ねらいか

それでは、高市首相が通常国会冒頭解散を検討するようになったねらいについて話を進めたい。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は60%台から70%台という高い水準が続いている。このため、自民党内からは「高い支持率の間に早期解散に打って出るべきだ」という声が強かった。

高市首相の側近からは「今、選挙に打って出れば自民党は、単独で衆院の過半数を獲得できる」との進言が出されたとされる。高い内閣支持率の下で、衆院の大幅な議席回復が一番のねらいとみられる。

一方、台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁で日中関係が悪化しており、中国は対日経済圧力をさらに強めようとしている。このため、対中関係をにらんで政権基盤を強化しておきたいとのねらいを指摘する見方もある。

さらに、野党関係者からは、高市首相の政治とカネをめぐる問題や、旧統一教会と自民党の関係などの不祥事が予算委員会で取り上げられ、支持率低下を懸念したのではないかとの見方も出されている。

乏しい大義名分、国民の理解がカギ

衆院解散・総選挙をめぐっては「解散の大義名分」がいつの選挙でも議論になる。高市首相は11日のNHK日曜討論(首相は8日事前収録)で「衆議院の解散・総選挙については、国民に物価高対策と経済政策の効果を早く実感してもらいたい、今は目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」と強調した。

国民の関心が大きい物価高対策をめぐっては、自民党総裁選の混乱で補正予算の成立が年末にずれ込み、執行は新年に持ち越された。新年度予算案も冒頭解散になれば、年度内成立は無理で4月以降へと大幅に遅れるのは確実だ。

これでは,政府・政権が責務を果たしたとは言えまい。国民から「言行不一致解散」、「政権の自己都合解散」など厳しい批判を浴びることも予想される。

また、物価高や円安は続き、トランプ政権のベネズエラへの武力行使やイラン情勢への介入なども懸念されている。内外情勢が流動的な時期に、あえて解散・総選挙を行う必要があるのだろうか。

さらに真冬の選挙になり、候補者はもちろん、有権者にとっても負担が大きい。こうした点を考慮すると解散の大義名分があるようにはとても思えない。

国民にとって国政に1票を投じる機会は本来、歓迎すべきことだ。ただ、衆院選は1年3か月前に行ったばかりで、去年夏は参院選、今回衆院選となれば、1年余りに3回の国政選挙を行うことになる。

最近の衆院選は、解散から投票日までがわずか2週間あまりのあわただしい選挙が続いている。与野党が腰を落ち着け議論を尽くしたうえで、国民に判断を求める正攻法の選挙へ改めることが必要だ。

一方、選挙情勢も流動的だ。高市内閣の支持率は60%台から70%台と高いが、自民党の政党支持率はその半分以下の30%程度と低迷している。自民党の議席増加の可能性もあるが、逆のケースも起こり得る。

公明党・創価学会との選挙協力が見込めないことや、無党派層の投票行動など流動的で、大きなリスクを抱えた選挙になる可能性もある。

高市首相は、通常国会冒頭解散に踏み切るのかどうか。内外情勢をはじめ、国民生活や日本経済への影響、さらには外交・安全保障との関係をどのように考えているのか、高市首相の説明を待ちたい。(了)

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”衆院解散 総選挙の見方・読み方” 2026年政局

新しい年が明けて、高市首相は5日に伊勢神宮を参拝した後、年頭の記者会見に臨んだのをはじめ、各党の代表や委員長もそれぞれの党で仕事始めや記者会見を行うなど新年の政治が本格的に動き出した。

こうした中で、高い支持率が続く高市首相が今年、衆議院の解散・総選挙に踏み切るかどうかが焦点の1つになっている。衆議院の解散・総選挙の可能性をどのようにみるか、探ってみたい。(★備考=読売新聞が10日「高市首相は通常国会冒頭解散を検討」と報道したことについて、ブログ文末に追記として、短いコメントをつけてあります)。

新年の解散・総選挙 4つのケース

高市首相は5日の記者会見で、今年の政権運営について「昨年中に政権として、一定の方向性を出すことはできたと考えているが、今後、さらに加速させていきたい。高市内閣は始動したばかりだが、自民党総裁選で掲げた政策や日本維新の会との連立合意に掲げた政策をどんどん具体化させ、実現していきたい」と表明した。

そのうえで、通常国会の会期中に衆院解散・総選挙があるかと問われたのに対し高市首相は「今年度の補正予算の早期執行を各大臣に指示している。国民に高市内閣の物価高対策や経済対策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべた。

こうした発言からすると高市首相は、物価高対策などの効果を実感してもらうことを解散・総選挙の前提条件にしていることから、通常国会冒頭の解散は想定していない。最も早い場合でも新年度予算が成立した以降になる公算が大きいとみられる。

具体的なケースとしては、◆①新年度予算成立の4月頃、◆②通常国会が閉会する6月下旬、◆③高市内閣発足1年の秋の臨時国会、◆④年内は見送りの4つが想定される。

 国会会期末の6月、秋の可能性も

それでは衆院解散・総選挙の時期としては、具体的にいつ頃の公算が大きいのだろうか。まず、①新年度予算成立の4月頃については、国民生活に直結する新年度予算が成立することは、政治が取り組むべき前提条件の1つを達成したことにはなる。

ただ、4月といえば新年度。国民にとっては新しい年度が始まる重要な時期で、今の選挙制度になって以降、4月や5月に総選挙が行われたことはない。政治的にみてもこの時期の解散・総選挙は避けるとみた方がよさそうだ。

次に②通常国会が閉会する6月下旬についてはどうか。通常国会前半で新年度予算が成立すれば、後半国会では連立与党の日本維新の会が、先の臨時国会から先送りになった衆議院の議員定数削減法案と副首都構想を実現する法案の成立を強く求めている。

これに対し、野党第1党の立憲民主党などは、懸案の企業・団体献金の見直し法案の成立を迫ることから、こうした法案の扱いをめぐって与野党の攻防が予想される。

そして、会期末に立憲民主党などが高市内閣に対する不信任決議案を提出した場合、これに対抗することを大義名分に高市首相が衆院解散に打って出る可能性はある。

一方、通常国会での解散を見送りにした場合は、③高市内閣発足1年、秋の臨時国会での解散・総選挙を探ることになる。具体的には内閣改造を行った後、秋の臨時国会で国民に信を問うケースが想定される。

このように自民党内で早期解散論が強いのは、高市内閣の支持率が高い間に選挙をやれば、政権与党に有利に働くという思惑に基づくものだが、肝心の自民党の政党支持率は30%ギリギリの水準で低迷している。このため、自民党の支持率が上昇に転じない状況では、早期解散は行うべきでないという意見も根強い。

年内解散見送り・来年説も有力

衆院解散・総選挙は、最終的には首相が決断することになるので、高市首相がどのような政権戦略を描いているかにかかっているとも言える。

自民党の長老に聞くと「高市首相は、とにかく政策をやりたいというのは本音だと思うので、早期解散を首相自身はめざしていないのではないか。また、総裁選の任期は来年秋なので、総裁選とその前後に衆院解散・総選挙を断行し、両方をセットで乗り切ることをめざしているのではないか」との見方をしている。

こうした見方に立つと④年内見送り、来年・2027年秋以降の解散・総選挙ということになる。だが、高市内閣の支持率が今の高い水準が維持しているどうかはわからず、不確定要素があるのも事実だ。

このように4つのケースともそれぞれの可能性と同時に、困難な点も抱えている。そのうえで、個人的な見方を率直に言えば、4つ目の年内見送り説が有力、確率が高いのではないかとの見方をしている。

その理由の1つは新年の野党の動向を見ると、政権に協力しようとする野党の動きが出るなど衆院解散・総選挙に追い込んでいく迫力が感じられないことがある。

一方、高市政権にとっても物価高対策や経済政策の効果を実感してもらうには、それなりの時間がかかること。さらに、仮に衆院解散・総選挙で自民党が勝利したとしても参院の過半数割れは3年から6年は続く。衆院での大勝が見込めない限り、解散には慎重姿勢を続けるとみるからだ。

ただ、「政界、一寸先は闇」といわれる。政治は生き物、与野党双方とも思わぬ事態が起こり得るので、4つのケースのどの流れになるか見極めていく必要がある。

選挙の質、論点・争点設定がカギ

最後に衆院解散・総選挙については選挙の時期だけでなく、「選挙の質」、具体的には「選挙の論点・争点の設定」が重要だ。特にインターネットが解禁され、SNSが活用され、私たち国民もさまざまな情報を入手できるようになった。

その一方で、「選挙の論点・争点」がはっきりしないと感じることも多い。政党や候補者が論点を整理し、選挙の争点を明確にして有権者に判断を求める取り組みがSNS時代だからこそ、必要だ。

具体的には、国会で普段から与野党が議論を進め、選挙期間中はさらに具体策などを示すことによって、有権者が投票を通じて決着をつけられるようにする取り組みが重要だ。

報道各社の世論調査を基に考えると主要な論点としては、◆物価高を含む経済政策の柱と具体的な政策・方法、◆超少子・高齢化時代の社会保障の姿・あり方、◆外交と防衛力整備の進め方、◆子育て・教育、科学技術立国のあり方。国民の多くが明確に示して欲しいと考えている論点としては、こうした点ではないか。

内外ともに激動が続く時こそ、日本社会が必要とする政策、取り組み方について、政党や候補者が競い合い、議論を尽くしたうえで、有権者が選挙で判断する政治に近づけていく取り組みが求められていると考える。

★追記(1月10日午前9時)読売新聞は10日朝刊で「高市首相は、23日召集が予定される通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報道。「政府関係者が明らかにした」としているが、高市首相自身の意向を確認したのか、自民党内の主要幹部への根回しは終えているのかなど事実関係ではっきりしない点もある。また、高市首相は記者会見で、最優先で取り組んでいる物価高対策の効果を国民に実感してもらうのが先だとして、早期解散に慎重な姿勢を繰り返し表明してきた。それだけに今回の国会冒頭解散に、国民の理解は得られるのかどうか、大義名分はあるのか、高市首相の動向を注視したい。(了)

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2026年政局の焦点”高市首相の求心力と連立基盤の変動”

新しい年・2026年の政治は、どのような動きになるだろうか。去年10月に発足した高市政権は年末に補正予算を与党に加えて、国民民主党と公明党の賛成も得て成立させたのに続いて、総額122兆円の新年度予算案の編成も終えて、新年を迎えた。

内閣支持率は60%を上回る高い水準を保ったまま年を越え、これまでのところ政権運営は全体として順調に推移している。

今年は大きな選挙が予定されていないことなどから、2026年の政治は高市政権を中心に動く見通しだ。そこで、高市政権が進めようとしている政権運営を下敷きに新年の政治のゆくえを探ってみたい。

先に結論を明らかにしておいた方が、話がわかりやすいと思う。端的に言えば新年の政治は、高い支持率を背景にした高市首相の求心力がいつまで続くのか、また政権の基盤である自民・維新の連立が維持していけるかどうかが大きなカギを握っているとみている。

さらに、衆院解散・総選挙については年内説が多いが、高市首相の政権戦略からすると年内解散の確率は低いのではないか。なぜ、このような見方・読み方をしているのか、以下詳しく説明したい。

今年の政治日程”大きな選挙がない年”

最初に政治日程から確認しておくと今年の前半は、通常国会が主な舞台になる。1月23日に召集され、会期は150日間で6月21日に会期末を迎える。

その通常国会の前半は、新年度予算案の審議が中心になる。予算が成立すれば4月以降、インテリジェンス機能の司令塔となる「国家情報局」や「防災庁」の設置法案、それに連立を組む日本維新の会が重視する「衆院議員定数削減法案」や「副首都構想の法案」の扱いが焦点になる見通しだ。

外交面では、アメリカのトランプ大統領が4月に中国を訪問し、習近平主席と米中首脳会談を行う予定だ。このため、高市首相は3月にもアメリカを訪問し、トランプ大統領との日米首脳会談で対中戦略などのすり合わせを行いたい考えだ。

秋には高市首相は、自民党総裁と首相にそれぞれ選出されてから1年の節目を迎える。高市首相の総裁任期は、前任の石破首相の残り任期になるため、来年・2027年9月が任期満了、衆院議員と参院議員の半数は2028年に任期満了となる。

このように今年は”大きな選挙が予定されていない年”というのが特徴だ。もちろん高市首相が衆院解散を決断すれば、総選挙となる可能性が大きいが、高市首相は「政策が山ほど控えており、解散を考えるヒマはない」と否定している。

首相の求心力がカギ、物価・経済も影響

さて、今年の政治を読む上で、まずは「高市首相の求心力」、具体的な指標としては高市内閣の支持率の推移が大きなカギを握っている。高市内閣の12月の支持率はNHKの世論調査で64%、朝日新聞の調査で68%、読売新聞の調査で73%といずれも政権発足以降、高い水準を維持している。

野党の幹部は「支持率が50%程度にまで下がらないと攻めづらい」と語る。自民党幹部の一人も「党内には高市首相に物申したい人もいるが、今は口に出せる状況にはない」と沈黙を保っている。ただ、支持率が下落してくれば党内がざわつき、異論が広がることは否定しないというわけだ。

内閣支持率を分析すると18歳以上を含む20代から30代、40代、それに50代までは「高市内閣支持」の割合が70%台後半を占める。つまり、歴代政権と違って50代以下の若い世代の多くがまとまって支持しており、当面、大幅に支持率が下落するような事態は予想しにくい。

一方、高市内閣は発足して2か月余りが経過したばかりで、「実績」が評価されたわけではない。初の女性首相で、政治を大きく変えてくれるのではないかという「期待感」が高支持率につながっているとの見方もある。

歴代の政権は通常国会が進むにつれて、支持率が低下してくるケースが多かった。高市政権の場合、国民は物価高対策に大きな関心を寄せていることから、年が変わってようやく家計に届くようになる政府の施策が支持されるのか、逆に期待外れとして支持離れとなるか注目される。

また、国会審議の中心になる新年度予算案は、一般会計の総額が122兆円と過去最大。インフレで税収は過去最高になったにもかかわらず、新規国債の発行は増えた。金融市場は急速な円安・債券安の形で、財政規律に警鐘を鳴らしている。

予算審議では「実質賃金の目減りが続く中で、賃金の引き上げや日本経済の先行きは大丈夫なのか」などと野党側の追及が続き、内閣支持率に影響が出ることも予想される。新年度予算案が成立する見通しの4月、通常国会会期末の6月段階で、高市内閣の支持率はどのようになっているのか、2026年政局の第1のポイントになるとみている。

自・維連立は継続か、離脱の可能性は

次に通常国会は参院で与党が過半数割れしていることから、新年度予算案の修正をめぐって与野党の攻防が予想されていたが、年末の高市首相と国民民主党の玉木代表との会談で、国民民主党が要求していた「年収の壁」の178万円への引き上げを高市首相が受け入れる一方、玉木代表も新年度予算案の早期成立に協力することで合意した。

この結果、新年度予算案は自民・維新の与党に加えて、国民民主党が賛成に回る公算が大きく、与党が過半数割れの参議院でも賛成多数で可決・成立する見通しが強くなっている。

そこで政治的には新年度予算案よりも、維新が「連立参加の絶対条件」と位置づけ高市政権に実現を迫ってきた議員定数削減法案や副首都構想を実現する法案が成立するかどうかの方に焦点が移ってきている。

維新は、先の臨時国会でも連立離脱をちらつかせながら、定数削減法案の提出と採決を自民党に強く働きかけてきた。このため、定数削減法案や副首都構想法案が成立にこぎ着けられない場合には、連立離脱が現実味を帯びるのではないかとの観測が出ている。

その際、維新に代わって国民民主党が連立入りするのではないかとの見方も一部で取り沙汰されている。

国民民主党の対応については、閣外協力の形で自民党に協力することはないとは言えないが、本音は”政権とつかず、離れず、果実を得る”のが基本戦略とみられる。このため、連立まで踏み込む可能性は小さいのではないかと個人的にはみている。

いずれにしても予算成立後の国会では、定数削減法案と副首都法案の扱い、それに自民・維新・国民民主の3党の関係が絡んで、高市政権の連立基盤が揺らぐ可能性がある。

加えて、その時点で高市内閣の支持率が下落している場合は、足元の自民党内から連立の枠組みや高市首相の政権運営をめぐって異論や批判が相次ぎ、政権基盤が揺らぐ可能性がある。こうした政見基盤の変動が、2026年政局の2つ目の焦点だ。

高市戦略は解散より、実績づくり優先か

新年の政治展望では衆院の解散・総選挙の見通しについて、質問を受けることが多いので、個人的な見方を説明したい。解散の時期は、時の首相が決断するので断定的なことは言えないが、情報を集め、政治情勢なども加味して確率の高いケースを予測するのが基本だ。

高市政権の場合、解散の時期として想定されるのは◇新年2026年1月の通常国会冒頭、◇予算成立後の4月以降、◇通常国会会期末の6月、◇高市政権発足から1年・秋の臨時国会、◇さらには来年・2027年秋の自民党総裁選前後、◇2028年10月の任期満了前のケースだ。

政界では高市内閣の支持率が極めて高いことから、予算成立後の今年4月以降はいつでもあり得るとの早期解散説が多く聞かれる。確かに自民党は衆参両院の選挙とも大敗を喫しているので、早期解散論が多数を占めることは理解できる。

ただ、自民党の政党支持率は低迷しており、この10年余りで最も低い水準のままだ。高市首相は年末の記者会見などで「目の前で取り組まなければならないことが山ほど控えている。解散は考えているヒマがない」と否定的な発言を繰り返している。

高市首相の任期は、前任の石破首相の残り任期である来年9月までだ。仮に衆院で勝利しても、参院は過半数に遠く及ばない。連立相手の維新が大幅に議席を失い連立解消になると、参院の運営は全く見通しがつかなくなる。

自民党長老に聞くと「マスコミは早期解散ありと盛んに流しているが、高市首相は実績をあげたうえで、信を問うというのが基本戦略だ。今年は腰をすえて政策実現に取り組み、来年以降に総裁選と衆院選を勝ち抜き、総裁任期で言えば通算5年政権を担う戦略を立てているのではないか」との見立てだ。

個人的には、この長老の見方を上回る情報はないので、来年秋頃の解散が有力とみている。但し、その場合、高市内閣の支持率はそれまで高い状態を維持できるかは不透明だ。

したがって、さらに正確さを求めると、通常国会で新年度予算案が衆院を通過する見通しの2月末頃の情勢をみたうえで、判断するのが最も適切ではある。

公明の路線選択と政界再編へ動きも

最後にもう1点、野党の連携と公明党の路線選択について触れておきたい。高市政権の発足を契機に、公明党が26年間続いた自民党との連立政権からの離脱し、政界の構図は大きく変わった。公明党が今後どのような路線を選択するのか、2026年政局の「隠れた焦点」だ。

野党第1党の立憲民主党は、公明党との連携を軸に中道勢力の結集に向けた動きを強める見通しだ。これを受けて公明党は立民との連携に踏み出すのか、それとも自民党との関係修復へ動くことはあるのか、その選択は政界に大きな影響を及ぼす。さらに国民民主党が自民党との連携へと動くのか、踏みとどまるのかも注目点だ。

高市政権と自民党は、維新との連立を維持した上で、連立の枠組みの拡大、具体的には国民民主党に対象を絞って連立参加をめざす方針だ。そのうえで、公明党との関係改修復をめざすのが基本戦略だ。

一昨年からの衆参両院の選挙で、参政党、れいわ、共産党、保守党、社民、チーム未来など新興勢力の政党を含めて多党化が進んだ。こうした動きがどのように整理・統合されていくのか。底流では、公明党を間に挟んで自民、立民の駆け引きが一段と強まるとみている。

そして2026年の政治は、高市政権が保守勢力を固めながら政権基盤を強化していくのか、それとも連立政権の基盤が崩れたりして政局が流動化し、政界再編への動きが出てくるのかどうか、高市首相の求心力と政権基盤の変動を注視していく必要がある。

★追記(1月6日午前11時半) 高市首相は年頭にあたって5日、記者会見し「政治の安定なくして、力強い経済政策も外交・安全保障もできない。日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党をはじめとする野党にも協力を呼びかけていく」との考えを示した。

また、通常国会の会期中の衆院解散・総選挙があるかとの質問に対し「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべ、解散に直接言及することは避けた。(了)

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”巨額予算の是非”年明け通常国会で論戦へ

2025年の政治は、激動の1年だった。夏の参院選で与党が大敗し、衆参両院で与党が過半数割れした。石破首相が退陣に追い込まれ、高市早苗首相が憲政史上初の女性首相に就任する一方、26年間続いた自公連立から公明党が離脱し、高市首相は日本維新の会と新たな連立政権をスタートさせた。

その高市政権が初めて編成した来年度予算案が26日に閣議決定された。一般会計の総額は122兆3092億円で、過去最大を更新した。一方、国債の償還や利払いに充てる国債費も31兆円と過去最大に膨らみ、新たな国債を30兆円近く発行するなど厳しい財政状況が続く。

政権発足から2か月が経過した高市内閣は高い支持率を維持しているが、年明けの通常国会で野党側は「高市政権の財政拡大路線に対する市場の懸念が広がっている」として、来年度予算案の規模や内容を厳しく質していく方針だ。

年末に成立した今年度の補正予算もコロナ後の補正予算としては最大の規模だった。来年度予算案と合わせて”2つの巨額予算”をどのようにみたらいいのか、どこが主な論点になるのか点検してみたい。

歳出122兆円過去最大、国債も大量発行

政府が26日に閣議決定した来年度予算案の一般会計の総額は122兆3092億円となった。今年度の当初予算の115兆1900億円を7兆円以上も上回り、過去最大を更新した。

歳出では社会保障費が、高齢化が進むことや診療報酬がプラス改定になったことから39兆円余りに膨らんだ。国から地方に配分する地方交付税が20兆円余り、国債の償還や利払いに充てる国債費が金利の上昇などを背景に31兆円と過去最大となった。

防衛費は、防衛力の抜本的な強化に伴い3153億円増えて、8兆9842億円。文教・科学振興費は、高校授業料無償化や給食費の負担軽減などのため3846億円増えて6兆406億円。防衛費が文教費を大幅に上回る傾向が続いている。

歳入面では、税収は企業業績が堅調で、賃上げによって所得も伸びるとして今年度より6兆円近く増えて、過去最大の83兆7350億円と見込んでいる。

ただ、それでも財源が不足するため、新たな国債を29兆5840億円発行する。今年度当初予算と比べると9369億円増えるが、歳入全体に占める国債の割合「公債依存度」は今年度当初の24.9%から、24.2%に下がる。税収の伸びが大きいためだが、歳入の4分の1を借金に頼る構造だ。

高市首相は記者団に「新規国債の発行額は2年連続で30兆円を下回り、公債依存度も低下した。財政規律にも配慮し、強い経済の実現と財政の持続可能性を両立させる予算案ができた」とのべ、年明けの通常国会で早期の成立をめざす考えを表明した。

一方、総額18兆円余りに上る今年度の補正予算は、先の臨時国会で成立した。物価高対策に8兆9000億円、危機管理・成長投資に6兆4000億円、防衛力強化などに1兆6000億円が盛り込まれており、物価高対策などは年明け以降、実施される運びになっている。

野党、財政拡張路線を追及の構え

こうした高市政権の巨額の予算案について、野党第1党の立憲民主党などは「高市政権の財政拡大路線に対して、金融市場では警戒感が広がっている。円安が進んでいるほか、国債の利回りが2%台まで上昇している」として、新年度予算案の規模や内容について、通常国会で厳しく追及する方針だ。

また、野党側は「高市政権の物価高対策は、家計への支援が年内に届かないなど余りにも遅すぎる」と批判するとともに「所得の低い層だけでなく、中間層への支援も不十分だ」として、対案をとりまとめて論戦を挑む構えだ。

さらに、来年度予算案の内容をめぐっては、大企業への投資拡大や防衛費の大幅な増額に比べて、教育や科学技術、社会保障への予算配分が少なすぎるとして、政府の姿勢を追及することにしている。

一方、野党の中でも国民民主党は、要求していたガソリン税の暫定税率の廃止や来年度の税制改正で「年収の壁」を178万円まで引き上げることなどが盛り込まれたことから、来年度予算案の早期成立に協力する方針だ。このため、与党との対峙路線を取る立憲民主党など他の野党との足並みがそろわないことも予想される。

物価高対策・日本経済かじ取りが焦点

長丁場となる通常国会は新年の1月23日に召集され、前半は来年度予算案の審議が中心になる。与党は、衆議院では無所属議員の自民会派入りで辛うじて過半数に達したものの、参議院では過半数割れの不安定な状態が続く。

予算審議では、物価高対策が焦点になるものとみられ、高市首相は「物価高対策を最優先で取り組んでおり、高校教育の無償化や『年収の壁』の引き上げも実現させる」として、野党側に協力を求めていく方針だ。

これに対して、野党側は「物価の上昇に賃上げが追いついておらず、給付付き税額控除などの実施に踏み出すべきだ」として、政府に対応を求めていく構えだ。

また、高市政権は「強い経済と責任ある積極財政」を掲げて、戦略的な投資の拡大をめざしているのに対し、野党側は「高市政権の下では財政の悪化が懸念され、円安とインフレが加速する」として、政府の経済政策を追及する方針だ。

このため、予算審議では、日本経済をどのような方法で成長軌道に乗せていくのか、財政規律を保つための歯止め措置など経済・財政運営のかじ取りをめぐり、活発な議論が交わされるものとみられる。

このほか、高市首相の台湾有事をめぐる国会答弁で悪化している日中関係をはじめ、日本の防衛力整備と防衛財源の確保、それに安全保障関連三文書の改定問題の取り組み方をめぐっても激しい議論が行われる見通しだ。

こうした議論を経て、来年度予算案は原案通り可決・成立することになるのか、それとも今年度のように野党側の要求を受け入れ修正されて成立することになるのか、高市政権の安定度と新年の政治のゆくえを占ううえでも大きなポイントになる。(了)

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臨時国会閉会、自民・維新連立の足並みに乱れ

高市政権が初めて臨んだ臨時国会が17日、閉会した。総額18兆3000億円の補正予算は成立した一方、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案は審議に入れないまま継続審議となり、来年の通常国会へ先送りになった。

定数削減法案は、維新が連立政権参加の「前提条件」と位置づけ、臨時国会での成立を強く働きかけたが、自民党側は慎重姿勢が目立ち、早くも連立の足並みに乱れが生じた。

高市政権の対応や与野党の攻防をどのようにみたらいいのか、臨時国会を点検してみたい。

 物価高対策、世論の評価がカギ

まず、高市政権が初めて手がけた総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は16日、参議院本会議で自民・維新の与党に加えて、国民民主党と公明党も賛成して可決・成立した。

国民民主党や、連立政権から離脱して野党に回った公明党は、ガソリン税の暫定税率の廃止や一人当たり2万円の子ども手当の支給などを与党が受け入れたことから、補正予算案への賛成に回った。参院では与党が過半数を割り込んでいることから、国民民主と公明が賛成に回ったことは、高市政権にとっては成果といえる。

問題は、国民がどのような評価を示すかだ。政府の物価高対策をめぐっては国民から「家計に届くのは年明け以降で、あまりにも遅すぎる」「食料品などの相次ぐ上昇に比べて、対策の中身は軽い」などといった厳しい声が聞かれる。

高市政権は発足から2か月近くが経過したが、内閣支持率は高い水準が続いている。物価高騰が続く中で、国民が政府の物価高対策をどのように評価するかは、高市内閣が引き続き高い支持率を維持していけるかどうかのカギになる。

高市政権の積極財政を受けて、円安や債券安が進んでおり、経済界からもインフレがさらに進むのではないかと警戒する声も聞かれる。新年度予算案の編成を通じて、高市首相がどのような経済運営のかじ取りをするのか焦点になっている。

 企業献金見直し、定数削減も先送り

今度の臨時国会ではもう一つ、懸案の「政治とカネの問題」を前進させることが大きな宿題になっていた。石破前政権当時、与野党は「3月末までに結論を出す」ことを申し合わせてきたが、実現せず、先の通常国会から先送りが続いてきた。

自民党と立憲民主党の意見の対立で進展しなかったことから、国民民主党と公明党が11月19日、企業・団体献金の受け皿を都道府県単位に限定する案を提案し、立憲民主党も賛成する意向を示した。これを受けて、与野党で修正案をとりまとめる動きが始まろうとしていた。

こうした中で、自民党と日本維新の会は会期末まで2週間を切った12月5日になって、衆議院の議員定数削減法案を国会に提出し、既に与野党が提出済みの企業・団体献金や政治資金関連法案とともに同じ特別委員会で審議を行うことになった。

会期末が迫る中で、法案を審議する順番などをめぐって与野党の駆け引きが続き、企業・団体献金の見直し法案の審議は進まず、最終的に継続審議となった。

自民党は派閥の裏金問題をめぐって国民の厳しい批判を浴び、衆院選と参院選で大敗を喫した。また、高市政権の発足に当たっても「政治とカネの問題」の取り組み方が問題になり、公明党が連立政権を離脱する原因になった。

こうした経緯があるだけに今度の臨時国会で企業・団体献金をはじめとする「政治とカネの問題」に全く前進がみられなかったことは、国民の政治不信をますます強めることになりそうだ。

与野党ともに猛省を迫られると同時に、特に政権与党の自民党と維新は、国会最終盤に定数削減問題を持ち出し、企業・団献金見直し法案の審議が進まなかったことへの責任は大きいと言わざるを得ない。

自民・維新に温度差、連立足並みに乱れ

次に、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案について、法案の意味やねらい、それに今回は継続審議に終わったことによる連立政権への影響を考えてみたい。

まず、議員定数削減は高市政権の発足に当たって、日本維新の会が「身を切る改革」として強く主張したもので、自民・維新連立政権合意書に盛り込まれた。改革姿勢を打ち出すことで、党勢の回復をねらったものだ。

一方、定数削減法案の内容をめぐっては、野党側から厳しい批判が相次いだ。削減目標は総定数の1割とし、与野党が協議し1年以内に結論を出すとしている。そのうえで、まとまらない場合は小選挙区25、比例代表20の合わせて45議席を削減するという自動削減の規定も盛り込んでいた。

野党各党は「まとまらない場合、事前に結論が決まっているのはあまりにも乱暴で、民主主義の根本に反する」などの厳しい指摘が相次いだ。こうした点については野党だけでなく、与党の自民党内からも同じような意見が出された。

この定数削減問題は、高市総裁と維新の代表など限られたメンバーで協議して、連立合意に盛り込んだことから、自民党内ではほとんど議論されてこなかった。

維新の側からは、この国会で成立図るべきだという強い意見が出された。幹部の中からは「できなければ連立離脱もありうる」といった声や「衆院解散・総選挙も覚悟して実現をめざすべきだ」といった強硬な意見も出されたという。

このように定数削減法案をめぐっては今国会で成立を目指す維新と、慎重姿勢の自民党との間に温度差があり、特別委員会での法案の扱いについても与党側の対応には足並みの乱れがみられた。

高市総裁と吉村代表は16日に党首会談を行い、来年の通常国会で定数削減法案の実現を目指して努力していくことで一致した。しかし、「連立参加の絶対条件」としてきた維新の側には、今回の自民党の対応には強い不満と不信感が残ったとみられる。

来年春には国勢調査の速報値が出されることから、衆院議長の下に設置された協議会で、選挙制度や定数削減などについて一定の結論を出す見通しだ。その際、維新の側から再び定数削減法案が提起される可能性もあり、自民と維新の連立政権は安定した関係が続くかどうか試されることも予想される。

新年の政権運営、問われる連立の力量

臨時国会が閉会したのを受けて高市首相は17日夕方記者会見し「物価高への対応を最優先に取り組み、補正予算を成立させて国民との約束を果たすことができた」と成果を強調した。

議員定数削減法案については「たいへん残念ながら審議すらされなかった。引き続き通常国会で野党の協力を求め、成立を期したい」とのべるとともに「日本維新の会との連立合意を基礎として働いていく決意にいささかの変わりもない」とのべ、維新との連立を基軸に政権運営を進める考えを示した。

一方、台湾有事をめぐる自らの国会答弁については「日本政府の従来の立場を変えるものではない。この点をさまざまなレベルで中国及び国際社会に対して粘り強く説明していく考えだ」とのべた。

政権発足からまもなく2か月を迎える高市政権は、今月26日に新年度予算案を閣議決定した後、年明けの通常国会に臨むことになる。自民党は維新と連立を組んでも参院では過半数に達しないなど政権基盤が不安定なことから、維新との連立が機能するかどうか、連立の力量とあり方が問われることになりそうだ。(了)

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”問われる日中関係と外交姿勢”高市首相

高市首相と野党4党首による初めての党首討論が26日行われ、日中関係や経済対策などについて、意見を交わした。

このうち、焦点の「台湾有事」をめぐる国会答弁の真意を問われたのに対し、高市首相は「存立危機事態の認識は、個別具体的な状況に即し、政府が全ての情報を総合して判断する」という考えを繰り返し、従来の政府見解を維持していると強調した。

この問題をめぐって中国政府は強く反発する姿勢を変えておらず、日本への渡航自粛や日本産水産物の輸入を停止する措置を続けている。一方、アメリカのトランプ大統領は高市首相との電話会談で、対中姿勢を抑えるよう助言したとの米側の報道もあるが、木原官房長官は否定している。

発足から1か月余りが経過した高市内閣の支持率は高く、滑り出しは順調だが、ここにきて日中関係悪化という新たな火種を抱え込んだ形になっている。高市政権の外交・安全保障分野の対応で、何が問われているのかを点検してみたい。

台湾有事答弁「聞かれたので」と釈明

26日の党首討論では立憲民主党の野田代表が、高市首相の「台湾有事」をめぐる国会答弁後の日中関係を取り上げ「経済や人的交流の面で影響が出始めている。事前に政府内などで調整したうえでの発言ではなく、独断専行だったのではないか」と首相の責任を質した。

これに対し、高市首相は「先の日中首脳会談で戦略的互恵関係を確認しており、中国との対話には建設的でオープンだ。今後も対話を通じて、より包括的な良い関係をつくり、国益を最大化するのが私の責任だ」とのべた。

また、野田代表は「日本のトップが、台湾有事の際の考えをめぐらせることは大事だが、一議員の頃から考えていたことを、総理大臣になり自衛隊の最高指揮官として言葉にしていいかは別問題であり、軽率だ」と発言の真意と政府の見解を迫った。

これに対し、高市首相は「具体的なことに言及したいとは思わなかったが、予算委員会なので、政府のこれまでの答弁を繰り返すだけでは委員会を止められてしまう可能性もある。具体的な事例を挙げて聞かれたので、その範囲で誠実に答えた」と釈明した。

そのうえで、「政府の見解は、事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して判断すると答えている。それ以上でも、それ以下でもない」とのべた。

このように高市氏の答弁は「聞かれたので、答えた」と質問者側に責任があると受け取られるような発言で、最高責任者としての自覚や責任の重さが感じられない答弁ぶりだった。

日中関係の対立を今後、どのように打開していくのか知りたいところだが、野田代表は質問を別のテーマに移した。野田代表と高市首相はともに松下政経塾の出身で、野田氏が県議選に立候補した際に選挙運動を手伝ってもらった関係にあるせいか、議論は深まらないまま終わった。

 歴代首相答弁から踏み越えた発言

それでは、今回の高市首相の発言は、本当に従来の政府見解と違いはないのだろうか。もう一度、7日の衆議院予算委員会で立憲民主党の岡田元外相の質問に対する答弁を確認すると、高市首相の答弁は次のようになっている。

「戦艦を使って、武力行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と発言している。

この発言について、高市首相は次の予算委員会での質疑で「最悪のケースを想定して答弁した」としたうえで、「反省点としては、特定のケースを想定して明言することは今後、慎もうと思う」とのべた。

歴代首相は「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなるため、一概に述べることは困難だ」(2024年2月、当時の岸田首相)と答弁してきた。これと比較すると高市首相の答弁は、政府見解を踏み越えた発言とみることができる。

それでは、なぜ踏み越えた発言になったのだろうか。高市首相の場合も官僚が事前に作成した答弁書が用意されたとみられるが、高市首相は官僚の説明を受けずに答弁書を一人で読み込み、場合によっては筆を入れたりすることが多いと聞く。

このため、高市氏は元々、新台湾派で保守色の強い議員として知られることから一定の思いを込めて発言したのか、それとも質疑の流れの中で口にしたのかはわからないが、従来の政府見解から外れたのは事実だ。

その結果が中国の強い反発を招き、日本への渡航自粛や日本産水産物の輸入停止につながるなど状況は悪化しつつある。中国側が一方的に、威圧的な対応に出ること自体、極めて大きな問題があると思うが、日本側もスキを見せない対応が必要だ。

また、自民党関係者によると「高市氏はたいへんな勉強家で、部屋に一人こもって膨大な資料に目を通すのはいいのだが、政権のチームが役割分担しながら取り組まないと政権は機能しない」と指摘する。現実を踏まえた堅実な答弁と外交力が問われている。

 外交・安保政策へ3つの注文

以上は党首討論での主な論点を中心にみてきたが、ここからは高市政権が今後、外交・安全保障分野でどのような取り組みが求められているのかを考えてみたい。当面、3つの点を注文しておきたい。

1つは、外交・安全保障分野については「正確で、バランスの取れた説明」を徹底してもらいたい。今回問題になった安全保障の法制、台湾有事の際の「存立危機事態」について高市首相の答弁は荒っぽい説明で、肝心な要素が抜けていた。

台湾有事での存立危機事態とは、一つは中国と台湾の統一の問題だ。もう一つ、日本にとっては、出動したアメリカ軍と自衛隊の日米安保協力の問題がある。新たな安全保障法制では、日本と密接な関係にある米軍が攻撃された場合、日本が直接攻撃されていなくても日本が必要最小限の範囲で後方支援などが行えることになっている。

ところが、高市首相の答弁では、米軍の出動と攻撃を受けた事態が説明されておらず、加えて、日本国民の生命、自由などの権利が根底から覆される明白な危険があることなどの条件が必要だ。つまり、台湾有事といっても直ちに存立危機事態になるとは限らず、幾つもの条件が必要であることを丁寧に説明して追うことが大事な点だ。

2つ目は、高市政権は防衛力の強化を打ち出し、国家安全保障戦略など「防衛三文書」の改訂を来年末までに行うことにしているが、「国民との対話と理解を得ること」が極めて重要だ。

2022年の岸田政権当時にも防衛三文書の改訂を行い、新たに反撃能力を保有するとともに防衛費を大幅に増やすこと決定した。だが、国民への説明は十分に行われたとは言えず、防衛財源として所得税増税が決まったものの、いまだに増税は実施できていない。

高市政権では、防衛関係経費のGDP比2%引き上げを2年前倒しを年内に実現する方針だ。加えて来年以降、さらに防衛費を増すためには、防衛力整備の必要性や中身を国民に理解してもらうことが避けて通れない。

3つ目には、高市政権として「中国、韓国などの近隣諸国外交を軌道に乗せること」ができるかどうかだ。高市首相は韓国のイ・ジェミョン大統領とはシャトル外交を継続することになったが、中国の習近平国家主席とは首脳会談を一度行っただけだ。

来年4月にはトランプ大統領は、中国を訪問する計画が進められている。一方、日本が議長国として開催することにしている日中韓の首脳会談は、今回の問題が影響して開催のメドがついていない。

東アジア情勢を安定させていくためにも日中関係の改善は避けて通れない。日本にとって最大の貿易相手国でもある。政府レベルでの関係改善が難しければ、自民党などのパイプを生かして関係修復を模索する必要がある。

報道各社の世論調査を見ると、高市首相については実行力や政策に期待が強い一方で、保守的な立場から強引な政治を推し進めるのではないかという警戒感を持つ国民が多いのも事実だ。

国際情勢が激しく動く中で、高市首相は日米同盟関係を強化するだけでなく、中国などとの間でも安定した関係を構築できるのかどうか、高市政権の安定度を占ううえでも大きなポイントになる。(了)

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”高市 総合経済対策”の効果は?懸念される危うさ

政府は21日、物価高対策や防衛力・経済力の強化などをめざす新たな総合経済対策を閣議決定した。対策の規模は減税を含めて21兆3000億円、裏付けとなる補正予算案の一般会計の歳出規模は17兆7000億円程度で、コロナ禍後では最大となる。

今度の対策は、自民・維新両党が連立合意したのを受けて発足した高市政権が初めて策定した総合経済対策だ。「強い経済」「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は何をめざし、どのような分野でどこまでの効果を上げることができるのだろうか。

一方、高市政権がめざす政策は、物価高から国民生活を守ることができるのかどうか、副作用や危うさはないのかどうか、高市政権が決めた経済政策を点検してみる。

経済対策21兆円、補正予算規模17兆円

政府の新たな経済対策は、「物価高への対応」と「強い経済の実現」、それに「防衛力と外交力の強化」の3つの柱からなっている。

このうち、「物価高への対応」に11兆7000億円、「強い経済の実現」に7兆2000億円、「防衛力と外交力の強化」に1兆7000億円となっている。これにガソリン税などの暫定税率の廃止や「年収の壁」の見直しによる減税分などが加わることになる。

この結果、経済対策の規模は21兆3000億円、一般会計の歳出規模は17兆7000億円の規模になる。当初は、経済対策で17兆円程度、一般会計歳出で14兆円程度を想定していたが、政府・与党内から拡大を求める声が強く、大きく膨らんだ。

補正予算案はこれまで2兆円から4兆円程度で推移していたが、コロナ禍で72兆円から32兆円もの巨額予算が追加計上されるようになった。コロナ禍が落ち着いた後も2023年度の岸田政権では13.1兆円、2024年度の石破政権では13.9兆円と多額の予算計上が常態化し、高市政権ではさらに17兆円まで拡大することになった。

こうした背景には、高市首相が「何を実行するにしても『強い経済』をつくることが必要だ」として、「責任ある積極財政」を打ち出していることが影響している。

具体的には、物価高対策に加えて、強い経済の実現に向けて造船能力を強化するための基金創設、防衛費のGDP比2%目標の前倒しなどによって予算規模の拡大につながった。問題は、必要な財源をどのように確保するかが問われることになる。

物価高対策には野党取り込みのねらいも

次に、今の国会で最大の焦点になっている物価高対策の内容をみていきたい。まず、電気・ガス料金の支援については、来年1月から3月までの3か月間、一般家庭で合計7000円程度を補助する。今年7月から9月まで実施された3000円から大幅に引き上げ、当初検討されていた6000円からも引き上げることになった。

高市政権が重視しているのが、地方自治体が使い途を決められる「重点支援地方交付金」の拡充で、「お米券」やプレミアム商品券の発行などが行えるとしている。

さらに最終段階で新たに決まったのが、児童手当の上乗せ支給だ。1回限りの措置だが、18歳までの子ども1人当たり2万円を上乗せして支給する。このようにさまざまな具体策を盛り込んだ結果、物価高対策も膨らんだ。

こうした物価高対策の具体策は、連立与党の維新や野党が実施を求め、自民党が受け入れた項目が目立つ。例えば、電気・ガス料金の上積みは維新が強く要求したもので、児童手当の上乗せ支給は公明党の提案を受け入れて実施されることになった。

高市政権や自民党としては、国民生活に寄り添う姿勢をアピールできる一方、少数与党だけに補正予算案の成立に公明党や国民民主党の協力を得たいねらいがあるものとみられる。

一方、補正予算案が成立しても一連の支援策が国民の手元に届くのは、年明け以降になる見通しだ。また、国民からすれば「お米券」といわれても1人当たり3000円程度で、「食料品の大幅値上げを前に少額で、それよりもまとまった現金給付の方がありがたい」といった声も聞く。

それだけに政府の物価高対策は国民にどこまで評価されるのかどうか、物価高を抑える対策や経済政策が並行して打ち出されないと国民の納得を得るのは難しいのではないかと考える。

円安・債券安、財政拡張に懸念も

高市政権の経済対策をめぐっては、円安や国債の値下がりなどの影響が懸念されている。為替市場では、このところ1ドル=157円台後半まで円安が進んでいる。国債は代表的な指標である10年ものの利回りが一時1.775%まで上昇し、2008年6月以来の高い水準になった。

円相場については、高市氏が自民党総裁に就任する前日の10月3日は、1ドル=147円だったので、円安がかなり進んでいることがわかる。市場関係者の間では、高市政権や与党内で財政規模の拡充を求める意見が強まっているとして、財政悪化につながるのではないかという危機感が広がっている。

円安が続くと輸入物価が上昇し、インフレが加速するほか、賃金引き上げが物価上昇に追いつかない状態が続くことになる。実質賃金のマイナスは9か月連続だ。

高市首相は経済対策を閣議決定した後、記者団に「今回の対策は、国民生活を守り、強い経済をつくるため、戦略的な財政出動を行うものだ」と説明するとともに「補正予算案を編成した後の国債発行額は、昨年度の補正後の規模を下回る見込みだ」とのべ、財政状況に十分配慮しているとの考えを強調した。

これに対し、野党側は「国債の発行額が去年を下回るといっても去年の発行額は42兆円にも上る。加えて国と地方の借金は1200兆円にも達し、市場の信頼を失えば、日本経済は決定的なダメージを受ける」と批判する。

高市首相は、半導体やAIなど17分野を挙げて戦略的投資を行う方針を決定したり、財政健全化の目標であるプライマリーバランスの単年度ごとの黒字化を見直したりするなど個別の政策は次々に打ち出している。

ところが、日本経済をどのように運営していくのか、全体像の説明は乏しい。経済成長の目標をはじめ、長期金利や消費者物価の目安、実質賃金が恒常的にプラスに転じる時期などがはっきりしないまま、個別政策が先行する点に危うさを感じる。

また、高市首相が掲げている防衛力の強化や「責任ある積極財政」などについても必要な財源をどのように確保するのか、国債発行のあり方などの方針は明らかにされていない。経済運営全体の考え方や財源確保に向けた方針が問われることになる。

政権発足1か月、首相の危うさ指摘も

高市政権が発足して21日で、1か月が経過した。報道各社の世論調査では高市内閣の支持率は60%台後半を記録するなど順調な滑り出しをみせている。憲政史上初の女性首相であることや、就任直後の外交デビューの効果が大きいためとみられる。

一方、内政では今回の新たな経済対策をはじめ、評価が分かれる課題は多い。外交面では、高市首相の台湾有事をめぐる国会答弁に中国側が猛反発する事態を招き、沈静化のメドがついていない。

高市首相は保守派の立場から、従来の政府方針と異なる見解を示す一方、新たな対応について整理してまとまった説明をすることが少ないことから、政権の最高責任者としての危うさを指摘する声は、野党だけでなく与党からも聞かれる。

26日には高市政権になって初めての党首討論が行われるのに続いて、来月上旬には補正予算案が提出され、衆参両院の予算委員会で審議が行われる見通しだ。内外に多くの懸案が山積しているので、国民が知りたい点に応えられるような議論をみせてもらいたい。(了)

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高市内閣”高い支持率、独自色に懸念も”

高市内閣が発足して3週間余り、臨時国会で与野党の本格的な論戦も始まり、高市内閣がめざす政治の輪郭が次第に明らかになりつつある。

こうした状況の中で、NHKの世論調査がまとまり、高市内閣の支持率は66%と歴代内閣の中で高い水準にある一方、自民党の政党支持率は低迷していることが浮き彫りになった。

また、高市首相が掲げる独自色の濃い政策については賛否が分かれ、国民は高市カラーに危うさを感じている点も読み取れる。高市内閣の高い支持率の背景と、政権が問われる点を探ってみたい。

高い内閣支持率、現役世代に支持広がる

さっそく、NHK世論調査(11月7日~9日実施)の内容からみていきたい。高市内閣の支持率は66%で、政権発足時の内閣支持率としては小泉内閣の81%、鳩山内閣の72%に次いで、3番目に高い水準になった。なお、調査方法が異なるため、単純に比較できないが、傾向として理解してほしい。以下の項目も同様だ。

高市内閣の支持率を支持政党別にみてみると自民支持層の86%が支持している。これは、2012年12月に自民党が政権復帰して以降では最も高い。また、無党派層の支持率は59%で、同じように最も高い水準だ。

年代別では、高市内閣の支持率は◇18歳からと20代、◇それに30代と40代はいずれも77%、◇50代は76%となっている。50代以下の現役世代については、第2次安倍内閣以降、最も高い水準となっている。

支持率の男女別では男性が67%に対し、女性は63%で、女性の比率がやや低い傾向にある。

以上のように高市内閣は、自民支持層の支持を取り戻しているだけでなく、無党派層の支持も広げている。それに現役世代でも幅広い支持を得ているのが特徴だ。

それでは、高市内閣の支持率が高い理由、背景はどういった事情があるのだろうか。まず、「支持する」と答えた人に理由を聞くと「実行力があるから」が33%と最も多く、次いで「政策に期待が持てる」が26%と、積極的な支持が多数を占めた。

これまでの内閣では「他の内閣より良さそう」といった消極的支持が目立ったのと大きく異なる点だ。

また、高市政権では連立相手がこれまでの公明党から、日本維新の会に代わったが、新たな政権に「期待する」が58%で、「期待しない」の37%を上回った。

さらに、個別の質問項目をみると外交の評価が高いことがわかる。高市首相が初の日米首脳会談や日中首脳会談を行ったことについて、いずれも「評価する」がおよそ7割に達し、「評価しない」の25%程度を大きく上回った。

このように高市内閣の支持が高い理由・背景としては、初の女性首相の誕生で、若い年代や無党派を中心に、これまでの政治を大きく変えてくれるのではないかという期待感が強く現れたと言えそうだ。

また、今回は政権発足直後に高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談が行われるなど一連の外交日程を通じて新しい首相の誕生を強くアピールしたことも支持率を上げる上で、大きな効果があったのではないかとみられる。

自民党支持率は低迷、回復の兆し見えず

一方、政党支持率をみると自民党の支持率は、30.7%だった。2012年12月に自民党が政権に復帰して以降、内閣発足時の支持率としては、安倍、菅、岸田、石破の各内閣と比べて、最も低い水準となっている。

自民党は高市内閣の発足で、保守層を取り戻しての党勢回復を目指しているが、内閣支持率の上昇は、党勢の回復にはつながっていない。党内には、内閣支持率上昇の勢いに乗って早期の衆院解散論が一部に出ているが、今のような支持率低迷が続くようでは、早期解散は困難な情勢にある。

自民党と連立を組んだ日本維新の会の支持率は3.3%で、10月の1.7%から1.6ポイント増やした。但し、以前は4%から6%台の水準もあったのに比べると党勢回復にはほど遠い状況にある。

野党各党では、◇立憲民主党は7.2%で、10月より1.6ポイント伸ばした。参院選で躍進した◇国民民主党は3.5%で、1.3ポイント減。◇参政党は3.4%で、1.1%減で明暗が分かれた。

このほか、◇公明党は2.6%で、1.1ポイント減。◇共産党は2.6%で、先月と同じ。◇れいわは0.9%で、0.3ポイント減だった。◇無党派は38.7%で、2.3ポイント減だった。

 高市首相の人柄・独自カラーに懸念も

再び高市内閣に話を戻すと、高市内閣はこれまでみたように滑り出しは極めて好調だが、不安定な要素を幾つか抱えている。

まず、高市内閣の看板政策の一つである、外国人政策の見直しについての評価だ。世論調査では「高市内閣は一部の外国人による違法行為などで、国民が不安や不公平感を感じているとして、制度の適正化を検討し、来年1月をメドに考え方をまとめるとしているが、どう思うか」と尋ねている。

調査結果は「積極的に対応すべきだ」が42%だったのに対し、「慎重に対応すべきだ」が47%で、上回った。「対応する必要はない」が3%だった。外国人政策をめぐって国民の評価は分かれている。

もう一つ、高市内閣を支持する理由については「実行力があるから」などの積極的な支持が多かったことは既に触れたが、支持しない理由としては「(首相の)人柄が信頼できないから」が26%で最も多く、次いで「政策に期待が持てないから」が24%、「他の内閣の方が良さそうだから」が18%と続いた。

内閣を支持しない理由として「人柄が信頼できないから」がトップになるケースは、極めて珍しい。第2次安倍内閣以降(内閣発足時のデータ)を調べると、安倍内閣では3番目で14%、菅内閣では4番目で16%、岸田内閣では5番目で10%、石破内閣では3番目で16%といずれも低かった。

「人柄が信頼できない」が多数に上った背景としては、高市首相は安倍元首相を政治の師と仰ぐなど保守派の政治家として知られていることから、外交・安全保障や財政政策などをめぐって安定した政権運営ができるのか、危惧する声があることが影響しているのではないか。

政権が発足して最初の世論調査だが、こうした見方が今後、どのように推移するのか注目してみていきたい。

 国会論戦、補正予算案の攻防が焦点

高市首相が重視している政策をめぐっては世論調査とは別に、今の国会論戦でも与野党の主要な論点として浮上してきている。

一つは台湾有事への対応で、高市首相は「武力の行使を伴うものであれば、存立危機事態になりうる」と踏み込んだ答弁をした。その後、野党側の追及に対して、発言の撤回をするつもりはないとしながらも「今後、特定のケースを明言することは慎もうと思う」とのべるなど防戦を余儀なくされている。

また、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」に関連して、財政健全化の指標であるプライマリーバランスについて「単年度ごとの目標を見直す」考えを表明した。これに対して、野党側は「財政健全化目標の見直しの前に、日本経済の成長目標や金利水準など経済政策全体の姿を明らかにすべきだ」として、議論が続いている。

このように高市首相は独自色を次々に打ち出しているが、政府のこれまでの政策との整合性や、新たな取り組み方をする場合、その内容を整理して説明できないと政権運営の不安定さを印象づけることになりかねない。

このほか、臨時国会の最大の案件である補正予算案をめぐっては、自民と維新の連立与党だけでは過半数に達しないので、どの野党の協力を得ることができるかどうかが焦点になる。

また、維新が「連立参加の絶対条件だ」として、今の国会での実現を強く求めている衆議院議員の定数削減について、他の野党が反発する中で、結論を出せるのかどうかという問題も抱えている。

高市政権はこうした一連の問題・懸案を着実に処理できるのかどうか、それによって世論の政権に対する評価や、政権の安定度を左右することになる。これから年末に向けての国会論戦と補正予算案を扱いめぐる与野党の攻防を注視していきたい。(了)

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高市政治“経済・安保は保守色鮮明、懸案は曖昧”

高市首相は就任直後から続いていた一連の外交日程を終えて、今月4日からは3日間の日程で、初めての国会論戦となる各党の代表質問に臨んだ。7日からは衆院予算委員会に舞台を移して一問一答方式の詰めた論戦に入る。

一方、報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は60%台後半から70%台の高い水準が続いている。高市氏は安倍元首相を政治の師と仰ぐ保守派として知られているが、どんな政治をめざすのか輪郭は見えてきたのだろうか。

代表質問を通じての論戦で高市首相がめざす政治について、明らかになった点と不明な点、それに高市政権が今後、問われる課題を点検してみたい。

経済・安保・外国人政策で保守色鮮明

各党の代表質問には野党第1党・立憲民主党の野田代表をはじめ、連立を組む日本維新の会の藤田共同代表、連立を離脱した公明党の斉藤代表など各党の代表が質問に立ち、それぞれの立場から高市首相の政治姿勢や政治課題の取り組み方などを質した。

これに対して高市首相は、経済政策と安全保障、それに総裁選で取り上げた外国人政策などについては、自らの保守的な考えを鮮明に打ち出した。

高市首相はまず、何を実行するにしても「強い経済をつくること」が必要だと訴え、そのためには「責任ある積極財政」で、所得や消費を増やし、事業収益を上げて経済の好循環を実現すると強調した。

高市内閣は4日、成長戦略の司令塔となる「日本成長戦略本部」の初会合を開き、AI・人工知能、半導体や造船など17項目の戦略分野を定めて、官民で集中投資し、経済成長をめざす方針を決めた。来年夏に新たな成長戦略をまとめることにしている。

このように高市政権の経済政策は需要と供給のうち、供給面からテコ入れすることに重点を置いているが、需要や分配にも配慮しないと結果を出すのは難しいとの指摘もある。また、積極的な投資も裏付けとなる財源などがはっきりしないので、説得力が乏しいとの批判もある。

一方、外交安全保障では「我が国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要だ」として、防衛関連予算の対GNP2%水準について、補正予算と合わせて2年前倒しで実現する方針を明らかにした。来年中に国家安全保障戦略をはじめとする「三文書」を改定する考えも示した。

さらに自民党総裁選挙の時から外国人政策を取り上げてきた高市首相は、排外主義とは一線を画すとしたうえで、外国人による違法行為などに対して、政府として毅然と対応するとの方針を打ち出した。そして、外国人による土地取得のルールや各種制度のあり方について、来年1月をめどに方向性をまとめる方針だ。

このほか、憲法改正について国会による発議の実現や、政府のインテリジェンス機能の強化が急務だとして、国家情報局を創設するなど高市政権は、歴代政権に比べて保守色の濃い政策を打ち出しているのが大きな特徴だ。

物価高、問われる即効性ある具体策

次に当面の焦点になっている物価高対策について、高市首相は「内閣としても最優先で取り組む課題で、速やかに対策をとりまとめ、必要な補正予算を今の国会に提出する」と表明した。

具体的な対策としては、ガソリン税の暫定税率について、今の国会で廃止法案を成立させる考えを示した。この問題をめぐっては5日、自民党や立憲民主党など与野党6党が12月31日にガソリン税の暫定税率を廃止することで正式に合意した。軽油引取税の暫定税率も来年4月に廃止することで与野党が合意している。

この暫定税率廃止は、高市政権の物価高対策の第1弾になるが、元々、野党が要求してきた問題で、自民党が受け入れたものだ。ガソリンと軽油の暫定税率廃止に伴い1兆5千億円の税収減になるが、その財源確保のメドはついていない。年末の税制改正で結論を出すことにしている。

一方、立憲民主党などは物価高対策として、給付金の支給と食料品の消費税率ゼロ%の時限的な引き下げを迫った。これに対し、高市首相は、給付金は夏の参院選で国民の理解が得られなったとして実施する考えはなく、消費税率引き下げも「レジのシステムなどに一定の時間がかかる」として、否定的な考えを示した。

それでは高市政権としては、具体的にどのような対策があるのかということになる。特に物価急騰の影響が大きい子育て世帯や低所得の高齢者などに対しては、即効性のある対策が必要ではないかとの指摘が与野党から出されている。

高市政権としても即効性のある物価高対策と、輸入物価を押し上げる要因になっている円安など金融・財政・経済政策が改めて問われることになりそうだ。

政治とカネ・定数削減など懸案は曖昧

3日間にわたる各党の代表質問で、高市首相の答弁で歯切れが悪かったのが、懸案の政治とカネの問題や企業・団体献金の扱い、それに議員定数の削減などへの対応だ。

このうち政治とカネの問題では、最初に質問に立った立憲民主党の野田代表が自民党の旧派閥の裏金事件で、不記載の議員を副大臣や政務官に起用したことを捉えて「裏金問題にけじめがついたと考えているのか」などと追及した。

また、不記載議員で官房副長官に起用された佐藤啓参議院議員に対しては、野党側が強く反発して、参議院本会議場などで陪席できない事態が続いている。

さらに企業団体献金については、公明党と国民民主党が政治資金の透明化に向けて、企業献金を受け取る団体を政党本部と都道府県連に限るなど規制を強める法案を提出する方針だ。立憲民主党もこの案に賛成する意向を示しており、自民党の対応が問われることになる。

高市首相は、不記載議員の問題などについては「今後、厳しい姿勢で臨み、ルールを順守する自民党を確立する」などと釈明する一方、企業団体献金については「各党の成り立ちや組織のあり方にも留意しつつ、公平で公正な仕組みとなるよう検討したい」と慎重な考えを繰り返している。

もう1つ、自民党と維新の連立合意で、衆議院議員の定数1割を削減する法案を今の国会に提出し、成立をめざす方針を打ち出したことが各党に波紋を広げている。維新の幹部は「連立参加の絶対条件」として、これが実現しない場合は、連立を離脱する考えを示している。

高市首相は代表質問の答弁で「連立与党で検討するとともに、各党各会派とも真摯な議論を重ねたい」として、与野党で議論する考えを示している。

今回の定数削減をめぐっては、衆院議員のおよそ50人を比例部分だけで削減することが想定されているとされ、中小の政党は「一方的な切り捨てになる」として強く反発している。自民党内からも「与野党の協議会で議論している取り組みを否定するものだ」として批判がくすぶっている。

以上みてきたように一連の懸案について、高市首相は自民党の従来の方針を踏襲した慎重な姿勢が目立つ。一方、防衛力の抜本強化や防衛費の増額、さらに経済政策などについても、必要となる財源などの核心部分については、曖昧な点が多い。このため、国民の多くは高市政治とは何か、これからの日本はどのようになっていくのかを知りたいと思っているのではないか。

各党の代表質問に続いて、7日からは衆議院の予算委員会が始まり、一問一答方式で詰めた議論が行われる。代表質問で明らかになった論点について、高市首相がさらに踏み込んだ説明を行うのかどうか、野党側も対案を示しながら分かりやすい議論を展開してもらいたい。(了)

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