立憲民主党の代表選挙は7日告示され、野田元首相、枝野前代表、泉代表、吉田晴美衆院議員の4人で争われることが決まった。4氏は、共同記者会見や候補者同士の討論、地方遊説、テレビ番組に出演し、議論を交わしている。
メデイアの多くは、今回の代表選について「政権交代に向けた野党の共闘や連携が焦点」とのとらえ方をしているが、国民の多くは「今の自公政権との違いは何か?」に関心があるのではないか。
自民党の総裁選もまもなく12日に始まり、新総裁が決まれば、早期の衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測も強まっている。今回の代表選をどのようにみたらいいのか、何が問われているかを考えてみたい。
立民代表選の顔ぶれ、関心度は?
まず、候補者の顔ぶれだが、枝野前代表と野田元首相の立候補は早い段階で固まった。一方、泉代表の立候補表明は告示日の前日、吉田晴美議員は告示日当日、締め切り直前に立候補を届け出た。20人の推薦人集めがいかにたいへんだったかが、わかる。
吉田晴美議員は当選1回、初めての挑戦だが、残り3人はいずれも民主党時代を含めて、代表経験者と現代表だ。”変わり映えがしない”、”刷新感に乏しい”などの批判も聞かれる。
そうした批判は当たっているが、野田氏は67歳、枝野氏60歳、泉氏50歳で、自民党と比べると必ずしも高齢とは言えない。野党が政権交代をめざす場合、むしろ安定感を与えるとみることもできそうだ。
そうした顔ぶれの印象よりも、立憲民主党にとっての難問は、国民に代表選への関心を持ってもらえるかどうかだ。メデイアの報道は、既に自民党の総裁選の方に集中しているようにみえる。総裁選本番となると、代表選の方は埋没してしまう可能性もある。
メデイアの扱いは、野党か、政権与党かで、政策などの報道で差が出るケースもある。それだけに代表選の候補者は、国民を引きつけるメッセージや政策を打ち出せるか力量が問われることになる。
政権との違い・対立軸を打ち出せるか
次に、各候補の主張について、ポイントを絞って見ておきたい。4人の候補とも次の衆院選で政権交代をめざすことでは一致している。
◆野田氏は「政権交代こそ最大の政治改革」だとして、自民党の裏金問題と政治改革を最大の争点として位置づけ、世論の支持拡大をめざす考えだ。
◆枝野氏は「人間中心の経済」を掲げ、失われた30年を教訓にアベノミクスに代わる、人を大事にする新たな経済政策を訴えている。
◆泉氏は「日本を伸ばす」をキャッチフレーズに地域の産業の振興、教育無償化などを推し進めていくと強調している。
◆吉田氏は「教育と経済で、国民生活の底上げ」を訴え、教育の無償化や消費税の食料品ゼロ税率などをアピールしている。
◆こうした主張をどのようにみるか。1つは、自民党の派閥の裏金事件を受けた政治改革については、報道各社の世論調査でも、岸田政権が成立させた改正政治資金規正法を「評価しない」という受け止め方が圧倒的に多い。
また、自民党総裁選に立候補を表明した候補の中からも、岸田政権の方針とは反対の「政策活動費の廃止」や「旧文通費の公開」を打ち出す意見が出されるようになった。
こうした動きを受けて、野党第1党である立憲民主党は、改正政治資金規正法の抜本改革に向けた具体案をまとめ、早期実現に道筋をつける必要があるのではないか。今後の具体的な取り組み方を注目したい。
◆2つ目は、立憲民主党が政権交代をめざすのにあたって、どのような構想・政策を掲げるかが問われている。枝野氏の「人間を中心にした経済」も構想の1つになると思うが、具体的な政策の内容がまだ、よくわからない。
一方、自民党の総裁選に名乗りを上げた小泉進次郎氏は「聖域なき構造改革、解雇規制の緩和」を打ち出した。こうした自民党候補の政策との違いを含めて、自公政権との違いを鮮明に打ち出してもらいたい。端的に言えば「自公政権との対立軸」を明確に示すことも注文しておきたい。
◆3つ目は、次の衆議院選に向けて、野党各党との共闘・連携の路線問題がある。メデイアは、共産党と維新のどちらと連携を図るのかと判断を求める論調が多い。
この問題の立憲民主党の本音は「共産党支持者の票は欲しいが、連立政権の話し合いの対象にはしたくない」というところだろう。
一方、維新は「立憲民主党との連立は考えていない」とみられる。共産党は「選挙協力を行う場合は、政権のあり方についても協議するのは当然」という考えとみられる。
つまり、3者の考え方は方向性が一致していないので、事前に話を詰めようとしても限界がある。また、次の選挙で自公両党が過半数割れに落ち込むかどうかもわからない。
このように見てくると連立政権の枠組みの問題よりも、自公過半数割れに追い込むための取り組み方を協議する方が、野党側にとっては意味があるように思われる。例えば、野党共通の主要政策をまとめ、政権に迫るといった取り組みだ。
以上、見てきたように国民の多くは、野党の共闘・連携のあり方よりも、野党第1党として、自公政権との違い・対立軸は何か、国民にわかりやすい政治課題を幾つか示すことが求められているのではないかと考える。
代表選の情勢、地方票など流動的
最後に「代表選挙の情勢はどうか?」といった質問が予想される。民主党の関係者に聞くと「野田氏と枝野氏が先行しているのではないか」といった見方を聞くが、根拠のあるデータや情報に基づくものではなく、情勢はまだわからない。
その理由は、投票全体の半数を占める「地方議員と党員・サポーター」の地方票が、まだ読めないことが大きい。今回は、選挙期間が17日間と長いこともあって、4氏の論戦の評価なども含め情勢は、流動的だ。
一方、立憲民主党にとっては、新代表に誰が選ばれるかという問題と並んで、党の存在感や政策について、無党派層を中心に世論の評価や支持が広がるかがカギとなる。次の衆院選で、政権交代が実現するか最大の焦点になるからだ。
立憲民主党の代表選は23日、自民党の総裁選は27日にそれぞれ投開票が行われ、新しいリーダーが決まる。私たち有権者も両党の論戦に耳を傾けながら、これからの日本社会は何が必要か、次の衆院選挙に向けて準備を始めたい。(了)