旧統一教会との関係をめぐり、細田衆議院議長は再調査の結果、新たに4つの会合に出席し、挨拶していたことを明らかにした。
細田議長と旧統一教会との関係をめぐっては、事実関係の問題とは別に、議長が自ら記者会見や国会での説明に応じていないことが問題になっている。
衆議院議長は、参議院議長などとともに”三権の長”に位置づけられているが、どのような対応が求められているのか、考えてみたい。
説明は文書配布、記者会見はなし
これまでの経緯を手短に整理しておくと、かねてから旧統一教会との関係が指摘されてきた細田衆議院議長は9月29日に、ようやく「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との接点を認めるコメントを発表した。
内容は、2018年と19年の関連団体の会合に4回出席したことを認めたもので、A4版の文書1枚が配布されただけだった。野党側は、内容が具体性を欠いており、不十分と強く反発したため、議院運営委員会の山口委員長が、さらに詳しい説明を行うよう要請していた。
これを受けて、細田議長は7日、衆議院議長公邸で山口委員長と自民、立憲民主両党の筆頭理事2人と10分程度面会し、過去10年間さかのぼって調査した結果をまとめたA4版2枚の文書を示し、説明したという。
それによると前回調査の4回とは別に、新たに4つの会合に出席し、挨拶していたことがわかったとしている。また、教会側の関連する会合に祝電を送っていたケースが3件あったことが、新たに判明したとしている。
このほか、教会側に選挙支援を依頼したり、組織的な動員を受けたりしたことはないことなどを記している。
旧統一教会との関係については、後ほど触れるとして、異様に感じられるのが細田議長の対応だ。
最初の説明は、文書の配布だけだ。2回目は、山口議院運営委員長ら3人に文書を示して説明し、その結果を山口委員長が記者団に説明するという回りくどい方法をとっている。
昭和を通り越して、明治時代を連想させるような方法だが、なぜ、こうした方法になるのだろうか。また、こうした対応をどう評価したらいいのだろうか。
議長の権限は絶大、説明責任も重い
議長の仕事といえば、国会の本会議が開かれた際、中央の議長席で議事運営を指揮することが多い。このほか、天皇陛下がご臨席になる開会式への出席や、さまざまな公式行事に参加することも多い。
国会での議長の職務権限については、国会法19条で「各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する」と規定されている。
これを整理すると議長の権限は、①秩序維持権、②議事整理権、③事務監督権、④代表権ということになり、幅広く絶大といえる。
例えば、国会で与野党が激突した場合、国会職員の衛視だけでなく、警察官の派遣を要請して院内秩序を維持したこともあった。
本会議中の規律保持も議長が行うので、議員が議場の秩序を乱したり、議院の品位を汚す行為をしたりした場合は、制止や発言取りができる。議長の許可がなければ、議員は演壇に登ってはならないという衆議院規則もある。
話がわき道にそれるが、先に立憲民主党の泉代表が本会議で、細田議長に向かって発言した行為をめぐって、自民党は礼を失するとして抗議した。
泉代表の行為はパフォーマンスに見えたが、細田議長も無礼千万と発言を制止したり、降壇を命じることもできたはずだが、躊躇せざるを得ない心理状況にあったのかもしれない。
話を元に戻すと、衆院議長はこのように絶大な権限を持っている。このことは、逆に個人的な問題などが起きた場合は、国権の最高機関の長として、説明責任を果たす重い責務を負っている。
このようにみてくると細田議長としては、記者会見を行うこと。あるいは、議院運営委員会に出席して自ら説明し、与野党の質疑に応じることも考えられる。議長の発言には制約があるとの説も聞くが、国会法20条には「議長は、委員会に出席し発言できる」と規定されている。
一昔前の話になるが、自民党には「政界の三賢人」と呼ばれた人たちがいた。椎名悦三郎、前尾繁三郎、灘尾弘吉の各氏で、前尾、灘尾の両氏は衆院議長を務めた。公正、公平、清廉潔白などの評価が伝えられている。
細田議長もこうした先人たちにならって、国会の権威や信頼感を維持していくためにも具体的な行動を取ってはどうか。
事実の解明、議長・国会の重い責任
最後に細田議長の文書を読んでもわからないことが幾つもある。まず、2019年名古屋市で開かれた関連団体の大規模イベントに出席して挨拶し「今日の会の内容を安倍総理にさっそく報告したい」などとのべていたとされる。当時、細田氏や安倍首相は教会側とどのような関係にあったのか。
また、細田氏は、2014年から21年まで自民党最大派閥の会長を務めていたが、この派閥は、旧統一教会とのつながりが深く、参議院比例代表選挙で支援を受けていたとの証言もある。実態はどうだったのか、明らかにするよう求める意見は多い。
安倍元首相の銃撃事件は、戦後初めて首相経験者が殺害された大きな事件だ。捜査当局が容疑者の刑事責任を問うこととは別に、政府や国会もそれぞれの立場から事件の真相や背景を徹底して究明するのは当然のことと思われる。
ところが、日本の政治は国葬の決定は早いが、真相究明への動きは極めて鈍い。欧米では、司法の捜査とは別に、政府の調査委員会を設置したりするのとは大きな違いがある。
細田議長は、自らの問題の説明責任を果たす必要がある。加えて、国会としても事実関係や背景を粘り強く調べていく取り組みはできないものか。
岸田首相も、旧統一教会との関係が次々に明らかになっている山際経済再生担当相の扱いを含め、国民の政治不信にどう応えるかが問われている。
臨時国会は、17日から衆参両院の予算委員会に舞台を移して、一問一答方式の詰めた質疑が始まる。旧統一教会の問題をどのような形で決着をつけるのか、細田衆院議長と山際担当相の問題が焦点になりそうだ。(了)