ウクライナ危機の教訓と”日本問題”

ロシアによるウクライナへの侵攻から、24日で3か月になる。侵攻当初は、短期間で終結かとの見方もあったが、東部戦線では一進一退の状態が続いており、攻防は長期化する見通しだ。

内外のメディアを通じて、ロシア軍の攻撃で廃墟と化した市街地の映像や、現地の人たちの悲痛な声を聞くたびに、何とか早期停戦に持ち込めないのかという思いを強くする。

同時に、現実の世界は、こうした惨状を打開できないことにいら立ちや無力感を感じることも多いが、問題点などを整理できないまま、現在に至っている。

そこで、今回はウクライナ危機から、日本としては何を教訓として学ぶのか。

また、国内では、米中対立や東アジアでは台湾問題にどう対応するかといった議論を聞くが、実は、日本の外交・安全保障の対応と方針、「日本問題」が問われているのではないかと考える。

そこで、ウクライナ危機の教訓を踏まえて、この「日本問題」を考えてみたい。

 日本から見たウクライナ危機の教訓

ロシアによるウクライナ侵攻は、旧ソ連・大国ロシアの復活をめざすというプーチン大統領の世界観に基づく独断がもたらしたものだとみているが、国連憲章違反であり、冷戦後の国際秩序も覆すもので、決して容認することはできない。

そのうえで、ウクライナ危機から、日本は教訓として何を学ぶか、私の個人的な考えを以下、のべさせてもらいたい。

1つは、ウクライナ国民の国防・防衛意識の強さを感じる。ロシアからあれほどの猛攻を受けながら、ロシアに屈せず、独立と尊厳を守り抜こうとする姿勢に心から敬意を表したい。

ロシアや旧ソ連との長年の抗争の歴史をはじめ、90年代に実施された国民投票で旧ソ連からの独立に90%以上の賛成があったこと、今後はヨーロッパ諸国との連携を選択したいという国民の強い思いが底流にあるのではないかと感じる。

2つ目は、防衛の備えだ。攻撃から地下鉄の構内に逃れて生活を続ける姿をはじめ、地下の大きなシェルターで1か月から2か月の生活をしていた親子、さらには、個人の住宅でも小さな避難部屋を作って備えていたことを知った。

こうした国家・社会、個人レベルで国民を守る備え、軍事面での近代化や継戦能力の向上に向けた取り組みに日本との違いを感じた。

3つ目は、政治リーダーの力量だ。ゼレンスキー大統領については、様々な見方があるようだが、国民を結束させ、大国ロシアに一歩も引かない戦いを継続していることは、相当な能力の持ち主だ。

また、国際社会へ支援を呼び掛けるメッセージの発信力には、卓越したものがある。リーダーを支える側近にも優れた人材を起用しているのだろう。

 日本の対応、ロシア制裁は評価

それでは、日本の対応については、どのように自己評価したらいいのか。まず、岸田政権の対応からみていくと、ロシアに対する経済制裁はG7の欧米諸国と連携して進めているのが特徴だ。

また、ウクライナからの避難民は、空路の座席を用意したりして、既に1000人が来日している。全国各地の自治体や企業、個人の協力を得ながら、受け入れと支援・交流が続いている。

日本政府の対応については、こうした自治体、企業、国民の協力を含めて、これまでの対応は、合格点をつけていいのではないか。

 防衛力の整備 ”何から手を付けるか”

問題は、これからの取り組み方だで、さまざまな提案や考え方が出されている。例えば、安倍前首相から核共有論や、防衛費の6兆円への拡大のほか、自民党からは防衛費のGDP2%への拡大や、敵基地攻撃能力の名称を「反撃能力」に変えて保有していく考え方や提言が出されている。

さて、こうした提言などを踏まえて日本の防衛力整備に「何から手を付けるか」課題が多すぎて、対応が難しい。核兵器への備えもあれば、防衛費の増額、サイバー、電磁波攻撃への対応、陸海空の装備の更新も必要になってくる。

日本の防衛費の総額は、今年度予算で約6兆3000億円。国際軍事組織の評価で規模は世界9位で、最新鋭の戦闘機なども装備している。

国の防衛は、国民の命や財産、生活を守るのが基本だ。冒頭に触れたウクライナ危機の教訓も参考に考えると「防衛の基盤」の再構築という視点が大事ではないかと考える。

具体的には、1つは、国民の防衛意識の問題がある。ウクライナに比べ、日本国民の防衛意識は高いとは言えないのではないか。世界最新鋭の武器を備えても国民の多くの支持がなければ、戦いを持続していくのは困難だ。

国民の多くから、日本の外交・防衛政策に関心を持ってもらうことが必要で、政府の説明と説得が重要だ。

2つ目は、防衛面の備え。ウクライナをはじめ海外では、国民を保護するため、有事の際のシェルターを整備している。シェルターは、単なる地下施設ではない。食料、水、トイレ、換気口、簡易ベッドなどを備える必要がある。

専門家に聞くと、フィンランドの整備率は80%以上、アメリカでも50%、ソウルでは300%、市民の3倍にも達している。日本は、ほとんど整備が進んでいない。ミサイル攻撃に備えて、国民の避難訓練も中止されたままだ。

このほか、自衛隊の制服組に聞くと有事の際には、武器、弾薬の備蓄がカギを握るが、備蓄は乏しく継戦能力は極めて脆弱だという。つまり「防衛力の基盤の整備」が十分でない。この点は、防衛相の経験者も認めている。

3つ目に、防衛予算の問題もある。岸田首相は、防衛力の抜本的強化を図る考えで、バイデン大統領との首脳会談で防衛費の増額について言及する見通しだ。

この防衛費、自民党の提言であるGDP2%を5年間で達成する場合、今の予算が5兆3000億円余りで、GDP1%に相当する。2%に増額すると約11兆円となり、これを達成するには、毎年1兆円ずつ増やさなければならない。

使い道についても陸海空3自衛隊から要望を出してもらい、ホッチキスで止めて決着とはいかない。防衛の目標を明確にして、部隊の配置、統合運用も必要で、何よりも国民の理解と支持が不可欠だ。

このように防衛力の整備といっても何を最重点に、優先順位をどうするか、財源をどのようにして確保するのか、たいへんな難問が控えている。

 外交・防衛の構想、国会で徹底論争を

アメリカのバイデン大統領が韓国に続いて、日本を訪問した。23日に日米首脳会談、24日にクアッド=日米豪印4か国首脳会合が開かれる。大きな動きなので、最後にこの点も触れておきたい。

アメリカは、ロシアのウクライナ侵攻があっても最大の競争相手は、中国という位置づけは変えていない。今回の訪問は、中国に対抗する枠組みを強化することが最も大きな狙いだとみられる。

これに対して、岸田首相も日米同盟の強化と防衛費増額の方針を伝える公算が大きい。その場合、防衛費増額の方針は、国際的な公約として受け止められる。

その結果、日本は東アジアの安定に向けてどんな役割を果たすのか。そのためには、岸田政権が、安全保障と防衛力整備の基本構想と政策の内容をきちんと示して、国民を説得できるかどうかがカギになると思う。

また、与野党とも国会で外交・安全保障論争を徹底して行う責任がある。与党の中には、夏の参議院選挙後のテーマになるとの考え方もあるが、国会に続いて、参議院選挙でも主要な論点として逃げずに議論をしてもらいたい。(了)

★参考情報:事実関係の追加(23日20時)23日の日米首脳の共同記者会見   ◆岸田首相「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費を相当増額する決意を表明し、バイデン大統領から強い支持をいただいた」と発言。  ◆バイデン大統領は記者の質問に答えて、中国が武力で台湾統一を図ろうとした場合、台湾防衛のために軍事的に関与する考えを示した。アメリカの従来の曖昧戦略から踏み込んだ発言と受け止められたが、米当局は「アメリカの政策は変わっていない」との声明を出して軌道修正した。

参院選 与党優勢、波乱要因は

夏の参議院選挙は、6月22日公示、7月10日投開票の日程で行われる見通しだ。あと1か月余りで選挙戦が始まるが、与野党の選挙関係者に話を聞くと事前の予測は「与党優勢」の見方が多い。

一方、与党幹部に選挙の手ごたえを尋ねると「ベタなぎ状態、逆風は吹いていないが、追い風もない」と国民の関心や反応に戸惑いもみせる。

そこで、今回は、参院選での与党優勢の情勢を変える波乱要因はあるのか、あるとすれば、どのようなリスクなのかを探ってみたい。

 与党の取り組み先行、野党共闘に乱れ

まず、今の時点の選挙情勢をどのようにみているのか、自民党の選挙関係者に聞いてみた。「自民党に追い風が吹いているわけではないが、野党側に比べると候補者の擁立などの取り組みは先行している」として、自民、公明両党で改選議席の過半数を獲得できる勢いがあるとの見方を示している。

具体的には、選挙区選挙のうち、定員が2人以上の選挙区で自民党は最低でも1議席は獲得できること。焦点の1人区についても野党の共闘体制に乱れが生じているので、自民党が過去2回に比べて議席を減らす可能性は低いとみていること。

さらに比例代表選挙で最低でも18議席は確保できると仮定すると自民党は、前回や前々回並みの55議席以上は獲得できるとの見方だ。

公明党は、選挙区と比例を合わせて10数議席の獲得は確実なので、与党で改選議席の過半数63以上は十分、達成可能だと判断している。

これに対して、野党側の取り組みは、前回のブログで取り上げたように与野党の勝敗を左右する1人区で共闘の足並みが乱れている。候補者を1本化できるのは15日現在で、32選挙区のうち11程度と少ない。

さらに、9日にまとまったNHK世論調査で、岸田内閣の支持率は55%と高い水準を維持している。政党支持率でも自民党は39.8%で、野党第1党の立憲民主党の5.0%、第2党の日本維新の会の3.5%を大幅にリードしている。

このようにみてくると参院選挙をめぐる情勢は、候補者擁立などで与党の取り組みが先行しており、与党優勢と言えそうだ。

 波乱要因、ウクライナ、コロナ対応

参議院選挙は、投票日直前の状況の変化などで、選挙結果がガラリと変わった選挙もあった。そこで、今回はどのような変動要因があるのかみていきたい。

直ぐに頭に浮かぶのは「ウクライナ情勢への対応」だ。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻を始めて3か月近くなるが、戦争終結の見通しは全くついていない。

岸田政権は、ロシアに対する経済制裁については、G7=主要国と連携して対応することを基本方針にしている。自民党内には、連携ばかりで日本の外交方針がはっきりしないなどの批判も聞くが、党内の大勢にはなっていない。

また、エネルギー分野では、ロシア産の石油や天然ガスの輸入禁止の問題があるが、ヨーロッパ諸国の方が、ロシアへの依存が高いので、日本が直ちに厳しい対応を迫られる公算は小さいとみられる。

このため、政府・与党側は「ウクライナ問題は、G7との連携重視で対応していけば、短期的には大きなリスクは避けられるのではないか」との見方が多い。

2つ目の変動要因は「コロナ対応」だ。ウクライナ危機が起きる前までは、最大の変動要因との見方が強かった。

感染拡大は3月以降、新規感染者数が大幅に減少したことや、3回目のワクチン接種が進んでこともあり、このところ医療のひっ迫状況は改善されている。

帰省や行楽などで人の移動が活発になった5月の大型連休が終わり、感染の再拡大が再び起きるのかどうか、まだはっきりしない。

新規感染者が増えても重症者が少ないことと、医療提供体制が維持されているので、与党関係者は、コロナ対応は、選挙のゆくえを左右する大きな争点にはならないのではないかとの見方をしている。

但し、コロナ感染は、新たな変異株がいつ現れるかわからず、油断大敵だ。個人的には、政治・行政のコロナ感染危機対応は問題が多いとみているので、この3年の検証と評価の議論を大いに深めてもらいたいと考えている。

 物価高騰、円安、経済政策リスク

変動要因の3つ目は、「物価高騰などの経済政策リスク」だ。ウクライナ情勢による原油高で関心を集めているが、去年秋から原油高や物価高が続いている。ウクライナ情勢の影響は、これから秋にかけて大きくなる。

東京23区の4月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数で去年の同じ月を1.9%上回り、上昇幅は7年ぶりの大きさになった。東京23区のデータは、全国の先行指標となっており、4月の全国指標はどこまで上昇するのか、5月20日に公表になる。

原油価格の高騰を背景に電気代、ガス代、ガソリン代が上がっているのをはじめ、各種食料品の値上がりも続いている。これに加えて、急激な円安も進んでおり、輸入物価の押し上げにつながる。

与党側にも、こうした物価高が参院選に大きな影響を及ぼすのではないかと懸念している声を聞く。この30年間、国民は大幅な物価上昇の経験をしていないためで、選挙への影響を計りかねているからだ。

政府・与党は、国費で6.2兆円に上る補正予算案を編成する方針を決めたが、物価対策としては、石油価格の高騰を抑えるための補助金の拡充や、低所得世帯の子ども1人あたり5万円の給付などに限られている。

日米の金利差の拡大で円安が急速に進んでいるが、景気が十分に回復していない中で、今の金融緩和策を転換するのは難しく、手詰まりの状態だ。

与党幹部の1人は、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の具体策が未だに示されていないことから、効果的な物価対策や成長戦略を打ち出せないと選挙に大きな影響が出てくるのではないかと警戒している。

 国会最終盤、予算委で骨太な論戦を

ここまで政策面の波乱要因を見てきたが、国会運営面で、もう1つの波乱要因を抱えることになった。それは、物価高対策のため、新年度の補正予算案を編成することになり、衆参両院で予算委員会が開かれることになったことだ。

政府・与党側は、国会の最終盤に予算委員会が開かれ、野党側が政府を厳しく追及する場面が続くと、直後の参院選挙に影響が出てくる恐れがあると神経をとがらせている。6月15日の会期末を控え、与野党の攻防が激しさを増しそうだ。

一方、国民の側から見ると予算委員会の開催は、本格的な論戦の舞台が設定され、活発な論戦が行われることに大きな意味がある。この国会では、論戦らしい論戦がほとんど見られなかった。

3つの変動要因は別の表現をすれば、ウクライナ危機と、コロナ感染危機、それに低迷が続く日本経済と社会をどのように立て直していくのかという問題だ。

こうした内外の懸案に対して、岸田首相をはじめ与野党の党首はどのような方針や対応策で乗り切ろうとしているのか、骨太な論戦を見せてもらいたい。国民にとって、参院選での重要な判断材料になるからだ。(了)

 

参院選”野党戦線異変あり”

夏の参議院選挙が近づいているが、国民の選挙への関心は高まっていないように見える。ロシア軍によるウクライナへの侵攻の衝撃があまりにも強く、それ以外の出来事には、なかなか関心が向きにくい事情が影響しているからだ。

その参議院選挙は6月22日公示、7月10日投開票の日程が想定されており、この日程通りに運ぶと40日余りで選挙戦が始まることになる。

この参議院選挙が終われば、全国規模の国政選挙は、衆院解散・総選挙がない限り向こう3年間は行われない。国民にとって今度の参議院選挙は、政治に意思表示できる数少ない機会になる。

このため、当ブログでも参院選挙については、さまざまな角度から取り上げたいと考えているが、今回は、野党に焦点を当てたい。

野党の戦い方をめぐっては、過去2回の選挙と大きく様変わりした事態が進行中だ。一言で言えば”野党戦線異変あり”、野党の動きを報告する。

 焦点の1人区”共闘から競争、分裂”

まず、野党の選挙への対応はどのようになっているのか。定員1人を選ぶ「1人区」が最もわかりやすいので、この1人区を中心にみていきたい。

1人区は全国に32選挙区あるが、この勝敗が与野党の勝敗を大きく左右する。地方にある選挙区で、保守地盤が厚く自民党が強い地域なので、野党側は候補者を1本化したり、選挙協力を行ったりして挑戦を続けてきた。

ところが、野党各党の候補者の擁立状況をみてみると今回は7日時点で、複数の野党がそれぞれの候補者を擁立し、競合する選挙区が目立つ。

最も競合が激しい香川選挙区では、自民党の現職に対して、野党は立憲、国民、維新、共産の各党が候補者を擁立する予定だ。

同じ旧民主党の流れをくむ立憲と国民との間では、香川だけでなく、宮崎でも候補者がぶつかる。

立憲と共産とは、栃木、群馬、富山、福井、三重、滋賀、奈良、鳥取・島根、岡山、香川、宮崎の12選挙区で競合する。(推薦の無所属候補も含む)

国民と共産とは、国民の現職がいる山形と大分を含めて9選挙区で争う見通しだ。(推薦の無所属候補も含む)

さらに今回は、維新が栃木、香川、長崎で候補者を擁立し、他の野党と競り合う見通しだ。

野党側は、第2次安倍政権当時の2013年参院選挙で惨敗したのを受けて、2016年、2019年は1人区の全ての選挙区で候補者1本化を実現してきたが、今回は一転、野党競合へ変わった。競合選挙区は、1人区の半数にのぼり、四分五裂状態に陥っているのが実状だ。

 第1党の力量低下、連合は与党接近

それでは、なぜ、野党が競合・分裂へと変わったのか。1つは、野党第1党の立憲民主党が去年の衆院選で敗北したのを受けて、共産党との共闘の見直しに踏み切ったことがある。

泉代表は、3月中旬に国民、共産、社民、れいわの各党に候補者調整を呼び掛けたが、各党をまとめていくだけの力を発揮できていない。

兄弟政党と位置づけていた国民民主党は、新年度の当初予算に異例の賛成にかじを切った。ガソリン価格抑制のトリガー条項の凍結解除に向けても与党側と政策協議を続けており、両党の距離はむしろ広がっている。

共産党は、野党共闘の継続を求める一方、参院選挙区への候補者擁立を増やし、立憲民主党の対応をけん制している。このように野党第1党の力量が低下していることに加えて、野党各党がめざす方向もバラバラ状態にある。

さらに、立憲民主党にとって誤算だったのは連合の対応だ。政権交代をめざしてきたはずの連合は、芳野友子・新会長が自民党の会合に出席したり、麻生副総裁らと会食を重ねたりするなど自民党へ異例の接近を続けている。

背景には、連合は旧総評系の官公労と旧同盟系の民間労組を統合して発足したが、結成から30年余り、産業構造の激変などを受けて民間組合の中から、自民党との政策協議などを強めるべきだとする意見が強まっていることもある。

一方、自民党は、かねてから国民民主党や民間労組と連携を強めながら、野党陣営の分断をめざしてきたが、ねらいが現実のものになりつつある。

 分断打開は困難、最後の論戦で奮起を

夏の参院選で、野党共闘は最終的にどのようになるのか。立憲民主党の関係者に聞いてみると「泉代表は最後まで調整を続ける方針だが、野党各党の方向がバラバラなので、取りまとめは無理ではないか」と厳しい見方をしている。

また、泉代表が、国民民主党の玉木代表や共産党の志位委員長らと党首会談を行い、事態の打開を図ることも考えられるが、党の関係者によるとそうした対応は検討していないという。

このため、今の事態を打開するのは困難という見方が立憲民主党内でも強まっている。そして、1人区では、野党の現職がいる選挙区などで候補者の1本化は行われるものの、野党の候補者が競合する選挙区がかなりの数に上る見通しだ。

過去の1人区の選挙で自民党は、2013年が29勝2敗、2016年は21勝11敗、2019年は22勝10敗だった。過去2回と違って1本化の選挙区が限定されるので、野党側の獲得議席は1ケタ台に落ち込むことも予想される。

参院選挙の選挙区、比例代表を合わせた参院選全体でも、堅調な取り組みを進める与党側と比べて、野党側の選挙情勢は極めて厳しい状況にある。

一方、国民の側からは「選挙結果が、投票前から予想できる消化試合のような選挙は止めてもらいたい」といった声や、「政策の対立軸、論点の設定がはっきりわかる選挙にしてもらいたい」といった意見が出されるのではないか。

それだけに野党各党とも、与党と互角に戦える選挙態勢づくりに努める責任がある。参議院選挙は首相の失言や問題発言などがきっかけになって、選挙の予測が覆るようなことも起きる。98年の橋本政権時代の参院選挙が典型的な例だ。

今回は公明党の強い働きかけで、補正予算案が編成されることになり、6月上旬には衆参両院で予算委員会が開かれ、参院選を前に最後の国会論戦が繰り広げられる。

ウクライナ情勢と物価の高騰対策などへの対応は、十分か。新型コロナ感染の再拡大にどのように備えるのか。さらには、外交・安全保障、特に日本の防衛力の整備をどう考えるのか、国民が知りたい点は多い。

岸田首相は「検討する」といった曖昧な答弁でなく、政府・与党としての基本方針を明確に示す責任を負っている。

一方、野党各党も自らの考えや対案を示しながら、岸田政権との対立軸を打ち出せるかどうか、国会最後の論戦では、野党各党の奮起を促したい。(了)

★追加データ(10日)夏の参議院選挙をめぐり、立憲民主党と共産党は9日、去年の衆院選の際に結んだ、政権交代を実現した場合の枠組み合意について、夏の参院選では棚上げすることを確認した。そのうえで、1人区での候補者1本化については、勝利の可能性が高い選挙区を優先して、限定的に行う方針で一致した。この結果、実際に候補者調整が行われるのは、ごく限られた選挙区に止まる見通しだ。

 

ウクライナ危機と日本防衛力整備の考え方

ロシア軍によるウクライナへの侵攻は、東部地域でロシア側の攻撃が激しさを増しているが、ウクライナ側の抵抗も強く一進一退の状況が続いている。

こうした中で、節目とみられる「5月9日」が近づいている。旧ソ連の対独戦勝記念日で、プーチン大統領がこれまでの侵攻をどのように評価し、どんな戦い方を打ち出してくるかが、大きな焦点だ。

これに対して、アメリカとヨーロッパ諸国は、ウクライナ側に軍事面の支援を強化しており、ウクライナでの攻防は長期化を予想する見方が強い。

ウクライナ情勢を日本から見て感じるのは、ウクライの大統領をはじめとする政治家、軍人、国民が、ロシア軍の激しい攻撃と甚大な被害を受けながらも、強い意思で自国の独立と尊厳を守り抜こうとしている姿勢だ。

そこで、ウクライナ危機からの教訓として、日本は何を学ぶべきか。外交・安全保障、特に日本の防衛力整備のあり方について、考えてみたい。

 日本外交・安全保障 幅広い考え混在

まず、ロシアのウクライナへの侵攻を受けて、日本の外交・安全保障のあり方について、政治家・政党はどのような考え方をしているのか整理しておきたい。

積極的な発言を続けているのは、安倍元首相だ。プーチン大統領が核使用にも言及したことを受けて、NATOのようにアメリカとの間で核の使用をめぐる「核共有」の議論を行うよう問題提起をしたほか、日本の防衛費を6兆円まで増強するよう提案している。

これに対し、岸田首相は非核三原則は堅持するとして「核共有の議論は行わない」との考えを示した。そのうえで、ロシアに対する経済制裁をG7と連携して実施するとともに「憲法、平和安全法制、専守防衛の枠内で、抜本的な防衛力を強化したい」という考えを表明している。

与党・公明党の山口代表は、専守防衛、非核三原則、国際協調の基本原則を堅持するとともに「中国なども含めたアジアの安全保障の対話ができる枠組みを設置すべきだ」と提唱する。

これに対して、野党第1党・立憲民主党の泉代表は「日本が強い攻撃兵器を持てば、周辺国も保有し軍備拡張競争となる。防衛費は着実な積み上げで対応すべきで、抑制的な安全保障政策であるべきだ」との考えを明らかにしている。

国民民主党の玉木代表は、非核三原則のうち「持ち込ませず」については、アメリカ原潜の日本寄港なども想定して、アメリカや日本国民との議論が必要だとの立場だ。

共産党の志位委員長は「日本の強みは、軍事に頼らず平和を追求する国としての信頼力だ。憲法9条を生かした外交に知恵と力を尽くすべきだ」と強調する。

これに対し、日本維新の会の馬場共同代表は、日本独自の防衛力を整備するとともに防衛費をGDP2%まで早期に引き上げるべきだと増強路線を提唱している。

このように与野党の外交・安全保障の考え方には、相当な開きがある。自民党内でも核共有を含む軍備大幅増強路線と、堅実な防衛力整備を図るべきだとする2つの流れがある。与党の公明党は大幅な増強路線には慎重だ。

野党側は、非軍事路線から、抑制的な防衛力の整備、さらには自民党並みの防衛力増強論まで、混在状態というのが現状だ。

 国民、国力、防衛力の中身がカギ

それでは、日本の防衛力の整備のあり方や進め方をどのように考えるか。ウクライナ国民は、大勢の犠牲者を出し、猛烈な攻撃を受けながらも徹底した抗戦を続けている。度重なる侵略の歴史や、自由な社会への渇望、政治リーダーの求心力なども影響しているものと思われる。

日本の場合は、先の太平洋戦争を引き起こした責任も影響して、野党第1党の社会党は非武装中立を掲げ、軍事・防衛の各論には踏み込まない傾向があった。また、自民党の保守政権も軽武装・経済重視路線を取ったことも影響している。

一方、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射をはじめ、中国の軍事力の急拡大、それに今回のロシアの侵略などを合わせると日本の防衛力のあり方を見直す時期を迎えていると考える。

但し、短兵急に結論を出すのではなく、戦後日本の平和外交や安全保障の基本原則なども踏まえて、慎重で徹底した検討を行ってもらいたい。

具体的には、まず、国民世論の理解と支持が不可欠だ。いくら防衛費を増強し最新の防衛装備をそろえても、国民の支持がなければ何の意味もない。国のリーダーが、基本的な考え方を説明し、国民の理解と協力を得ることが大前提だ。

また、防衛力整備は5年、10年と長い期間がかかる。国力、国の経済や財政が安定していなければ、持続的に進められない。ドイツは今回、防衛費のGDP2%引き上げる方針を打ち出したが、ドイツの公的債務はGDPの70%程度に抑えてきた強みがある。

これに対し、日本のGDPは伸び悩む一方、国債残高は1000兆円を超え、政府の債務はGDPの2.5倍にも達している。防衛費をどの程度増やせるのか、国力・経済力を高める政策とセットで考える必要がある。

さらに防衛力のどの分野を重点的に整備するのか。武器などの正面装備に目が行きがちだが、日本は弾薬の備蓄など継戦能力が弱いといわれ、防衛力整備の中身が問われる。

一方、外交・安全保障をめぐっては、冒頭に見たように与野党の考え方に相当な開きがある。岸田政権は、4月末に自民党の安全保障調査会がとりまとめた提言に沿って、防衛力の整備を進める方針だとみられる。

この提言では、従来の「敵基地攻撃能力」という表現から「反撃能力」という名称に変えて、弾道ミサイル攻撃に対処するほか、NATO諸国の国防予算のGDP2%を念頭に5年以内に必要な予算水準の達成をめざす方針を求めている。

この提言を受けて、岸田政権は、年末の国家安全保障戦略の改定時期まで先送りするのではなく、外交・安全保障の基本的な考え方を明らかすべきだ。その際、日米の役割分担を踏まえて、日米同盟の強化につながる取り組みが必要だ。

5月の大型連休が明けると今の通常国会は会期末まで1か月程度しかなく、その後は直ちに参院選挙に突入する。5月下旬には、ウクライナ情勢などに伴う物価高対策の補正予算案も提出される。経済運営と防衛力整備の両面について、与野党が突っ込んだ議論を見せてもらいたい。(了)

 

 

 

 

 

 

 

 

”異例・異形な補正予算案”

ウクライナ危機などによる物価高対策のため、政府・与党は今年度補正予算案を編成する方針を決めた。ガソリンなどの価格を抑えるための補助金の拡充や、低所得者の子育て世帯に子ども1人当たり5万円の給付金を支給することなどが主な内容だ。

一方、財源については、今年度予算の予備費を使ったうえで、減った分の予備費を補正予算案で積み増す措置を取る。予備費は、国会審議のチェックを受けずに政府の判断で使える予算だ。

過去最大規模の今年度予算が成立した直後に、参議院選挙を控えて補正予算案を編成する異例な対応に加えて、多額な予備費を積み増す異形な補正予算編成だ。なぜ、こうした異例・異形な対応をとるのか舞台裏の事情を探ってみた。

 補正予算案 予備費を積み増し

まず、自民・公明両党の幹事長が21日に決定した緊急経済対策の内容から見ておきたい。第1にガソリンなどの価格を抑えるために、石油元売り会社に対する補助金を拡充することになった。

また、低所得者の子育て世帯に対して、子ども1人当り5万円の給付金を支給すること。さらに、地方自治体による生活困窮者への支援を後押しするため、地方臨時交付金を拡充することなどを盛り込む考えで一致した。

一方、財源については、今年度予算で、コロナ対策の予備費5兆円と、一般予備費5000億円の一定額を活用するとともに、不測の事態に備える予算が足りなくなるおそれがあるとして、予備費の積み増しなどの措置を補正予算案で取ることで合意した。

これを受けて、岸田首相は、補正予算案を編成する方針を示し、26日に緊急対策の中身を公表する方針だ。補正予算案の規模は、2兆7000億円前後とみられている。

さて、この補正予算案をどうみるか。まず、原油高やガソリン価格の上昇は、去年の秋から続いていたことで、価格上昇を抑える措置を取る場合、本来は今年度予算案で対応できたはずで、対応が極めて遅いと言わざるを得ない。

また、低所得の世帯の支援は必要だが、物価高や経済対策というよりも福祉対策ではないか。現行の福祉制度の中で、機動的に手当てすることが筋ではないかと考える。

一方、予備費の扱いは極めてわかりにくい。予備費を物価高対策に使うが、減少分は補正予算案で積み増し、5兆5000億円の予備費の総額は維持する方針だ。

予備費は災害など緊急事態に対応するため、認められるもので、国会の審議を経ないで、政府の判断で使われる。国民の税金で編成される国の予算は「財政民主主義」、国民の代表である国会の審議を経て使われるのが基本だ。

今回の措置は、こうした「財政民主主義」の基本に抵触するとの見方も成り立つのではないか。国会で、きちんとした議論が必要だ。

 与党の舞台裏事情、調整機能の低下

このように今回の補正予算編成は、何を目的にしているのか明確ではない。また、予備費の扱いに見られるように、持って回った手法で、わかりにくい予算編成だ。なぜ、こうしたことになるのか、与党の舞台裏事情を取材してみた。

1つは、自民、公明両党の間では「参院選への方針・戦略」に違いを抱えていた。自民党は、補正予算案を編成すれば予算委員会を開く必要があり、参院選を前に野党に追及の場を与える補正予算には消極的だった。

それよりも予備費を活用して、高齢者向けに給付金などを支給する一方、参院選前に総合的な経済対策を打ち上げ、選挙後に補正予算案を組んで処理する方針だった。岸田首相も予備費で緊急対策を行う考えを示してきた。

これに対し、公明党は参院選では比例800万票という高い目標を掲げており、補正予算案の編成を実現して、存在感を発揮したいという思惑があるものとみられていた。

結局、公明党の強い主張に自民党は押し切られる形で、補正予算案の編成を受け入れた。但し、補正予算案では新たな踏み込んだ対策は盛り込まず、予備費の範囲内に止めることが前提になっている。

つまり、自民、公明両党の主張を足して二で割った妥協案、”木に竹を接いだような異例・異形な予算編成”になった。

2つ目は、自民・公明両党間では、参院選挙での相互推薦などをめぐってギクシャクした関係が続いてきたが、こうした背景には「両党間の調整機能の低下」がある。

与党関係者に聞いてみると「自公連立も20年を超えるが、かつてのような太いパイプが無くなり、一体感も失われつつある。幹事長同士、あるいは、政調会長同士の調整もうまく働いていないのではないか」と話す。

別の与党関係者も「高市政調会長と竹内政調会長は”水と油の関係”。茂木幹事長と石井幹事長とは、”長い会話が続かない関係”。さらに茂木幹事長と高市政調会長とは”近くて遠い関係”。幹部レベルの調整機能が低下している」と指摘する。

 補正予算審議、国のかじ取り論戦を

さて、補正予算案の編成を受けて、5月下旬には衆参両院で予算委員会が開かれる見通しだ。岸田政権は無難にこなしたい考えだが、野党側は、参院選を前に政府を追及できる絶好の機会と位置づけ、攻勢をかける構えだ。

一方、国民の側からみると、これまでの国会は論戦らしい論戦がなく、夏の参院選挙では何を判断材料にするか、戸惑う人も多いのではないか。

そこで、岸田政権に対する注文がある。内閣支持率は50%を超えて高い水準にあるが、当面の物価高対策の説明に終わらせるだけなく、ウクライナ危機を受けて、外交と内政の基本方針、国のかじ取りの構想を明確に語ってほしいという点だ。

例えば、急激に進んでいる円安にどのような方針で臨むのか。アメリカは5月にさらなる利上げに踏み切る見通しで、日米の金利差はさらに拡大、円安の加速と輸入物価の上昇が懸念されている。

また、原油やLNGなどの価格面だけでなく、エネルギーの確保をどうするのか。この夏は何とかなりそうだが、今年の冬は電力需給のひっ迫が予測されている。短期と中長期の見通しや、省エネなど国民への協力も語るべきではないか。

さらに、外交・安全保障政策で、守っていくべき基本方針と見直す点は何か。防衛力整備のあり方についても国の最高責任者として、自らの考え方を表明する責任があると考える。

一方、野党側も政府の批判・追及だけでなく、自らの基本的な考え方や政策を示しながら、議論を深めてもらいたい。

私たち有権者の側も、コロナ感染再拡大とウクライナ情勢という2つの危機を乗り切るためには、どのような構想や政策が必要だと考えるのか。国会の論戦に耳を傾け、夏の参院選挙で「熟慮の1票」を投じることが必要ではないかと考えている。(了)

★追加説明(28日)政府は26日、緊急経済対策を決定した。国費の規模は6.2兆円で、ガソリン価格を抑えるための補助金の拡充や、低所得世帯を対象に子ども1人当り5万円支給などが主な内容。一方、財源は今年度予算の予備費から1.5兆円を使う一方、補正予算案で同額の予備費を積み増す。

ウクライナ危機と 岸田政権の経済政策

ウクライナ情勢は、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が撃沈される一方、ロシア軍が報復に首都キエフ攻撃を再開するなど戦争の激化と長期化が懸念される。

こうした中で、岸田政権はロシア制裁は、G7各国と足並みをそろえ資産の凍結や貿易の優遇措置を外すなどの措置を打ち出し、国際社会からも一定の評価を受けている。

一方で、ウクライナ危機で拍車がかかる物価高騰については、22日に緊急対策を取りまとめる方針だが、与党の自民、公明両党の間で財源の扱いをめぐって隔たりが浮き彫りになっている。

また、4月に入って20年ぶりとなる水準まで円安が進んだが、政府・日銀は有効な対応策を打ち出せていない。ウクライナ戦争の長期化の見通しが強くなる中で、岸田政権の経済政策は何が問われているのか、点検してみたい。

 自民・公明、経済対策で隔たり

まず、政府・与党が、22日に取りまとめを目指している緊急経済対策の動きから見ていきたい。自民、公明両党は、14日にそれぞれの党の経済対策の提言を政府に申し入れた。

両党とも、原油価格の高騰対策として4月末までとなっている石油元売り会社への補助金の期限延長や拡充を求めることと、生活に困っている人への支援を強化すべきだという方針では一致している。

一方、対策の財源をめぐって、自民党はスピード感を重視して今年度予算の予備費で対応するよう求めている。これに対し、公明党はウクライナ情勢や新型コロナ感染で不測の事態も予想されるとして、補正予算案の編成が必要だと主張している。

また、公明党は原油高騰対策でもガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除も求めており、両党の隔たりが浮き彫りになっている。

そこで、岸田首相が両党の隔たりを軟着陸させることができるかどうか。自民党の幹部に聞くと「ウクライナ情勢で安全の確保や、コロナ対策など総合的な対策を打ち出す必要がある。その際、予備費で直ちに実施する対策と、補正予算を編成して新たな財源を確保して、本格的に取り組む事業の仕分けが必要だ」と語る。

ということは、岸田首相は、まず、ガソリン代などへの補助金の増額と生活困窮者への支援などを予備費で実施する。そのうえで、夏の参院選もあり、子育て支援や外交・安全保障対応を含めた総合的な対策を打ち出し、補正予算案は参院選挙後に提出して成立をめざすことが想定される。

つまり、自民、公明両党の主張を足して割る、得意の2段階方式で決着を図るのではないかと個人的にはみている。

 円安・日本売り、見えない経済政策

さて、岸田政権の経済政策の評価だが、結論から先に言えば「経済政策の基本、目標と道筋が見えない」というのが最大の問題点だと考える。

先に触れた緊急経済対策は必要だと思うが、物価高は去年秋から問題になっていたことで、新年度予算が成立した直後に新たな緊急対策が必要になるというのは、余りに安易な対応と言わざるを得ない。

また、緊急経済対策と銘打つのであれば、4月に入って急激に進行している円安に対して、対策を打ち出す必要がある。4月13日の円相場は1ドル=126円台まで下落し、20年ぶりの円安水準が続いている。

今回の円安は、日米の金利差の拡大が直接的なきっかけになっているが、日本経済の低迷、経済成長が期待できないことが、根本的な要因だとの見方が強い。

円安が進めば、輸入物価がさらに上昇、賃金は上がらず、経済活動も停滞して、原材料の購入費が流出、日本売りとも言える悪循環が懸念される。

岸田政権としては、こうした悪い円安をどう乗り越えていくのか。政府と日銀は、金融・財政の基本方針を明らかにすべきだと考えるが、未だに示されていない。

また、ガソリン価格を抑えるための補助金の拡大は必要だと思うが、ウクライナ戦争が長期化する可能性を考えるとエネルギーの確保をどうするのか、ロシア産原油やLNGガスの代替策を含めて、対応策の検討を急ぐ必要がある。

さらに岸田政権の経済政策をめぐっては、看板政策である「新しい資本主義」で何をやるのかわからないという批判が、野党だけでなく与党の幹部からも聞く。これまでの方針から、もっと踏み込んだ骨太な政策を打ち出してもらいたいという厳しい注文が多い。

 激動期こそ、経済など幅広い論戦を

それでは、岸田政権の今後の経済政策や政権運営はどのようになるのだろうか。与野党の幹部の話を基に判断すると、次のような展開を予想する向きが多い。

ポイントは岸田内閣の支持率で、政権発足から半年たった4月段階でも50%を上回る異例の高い水準を維持している。このため、岸田首相は、国会の論戦は避けて安全運転に徹し、夏の参院選乗り切りを最優先に臨む。選挙に勝った後、政策の本格的な取り組みを展開するとの見方が有力だ。

こうした対応は、平時にはありうるシナリオの1つかもしれないが、国民の側からみるとウクライナ戦争や新型コロナ感染といった危機を抱える激動期に、有益な選択肢にはなりえない。危機の時こそ、迅速果敢な対応と議論が必要だ。

岸田首相は、資源高や円安に伴う日本経済の停滞をどのように乗り切っていく方針か。エネルギーの確保をめぐっては、原発の再稼働の是非や省エネをどう考えるのか。国を率いるリーダーは、基本的な構想や政策を明らかにして、実行していく責任がある。

一方、野党側はこの国会は完全な与党ペースで、存在感が全く感じられない。物価高対策として消費税率の引き下げなどを掲げているが、どのように実現を迫るのか。党首討論などあらゆる機会を活用して、国民生活支援をはじめ、経済、エネルギー、安全保障などについて積極的に論争を挑むべきだ。

今月22日には、緊急経済対策としてどんな政策が打ち出されるのか。国会も会期末まで2か月を切り、閉会後は直ちに参院選に突入する。日本経済と国民生活の立て直しと外交・安全保障のかじ取りをどうするのか、国会で与野党の真剣勝負の論戦を見せてもらいたい。(了)

 

 

参院選情勢”与党先行、波乱要因も”

夏の参院選挙は、6月22日公示・7月10日投開票日が有力視されている。この日程からすると、投票日まで3か月を切ったことになる。

国民の関心は、ロシアによるウクライナ侵攻と、収まらないコロナ感染のゆくえに集中しているが、これからの日本の進路をどうするのか。参院選では何を基準に選択をするのか、私たち有権者としても考え始める時期ではないか。

そこで、参院選の今の情勢はどうなっているのか。また、何が問われる選挙なのかを考えてみたい。

 選挙情勢、与党”前回以上の勢い”

さっそく、参院選挙に向けた与野党の取り組みからみていきたい。ここでは、参院選の勝敗を左右する、全国で32ある1人区を取り上げる。与野党の構図がわかりやすいからだ。

自民党は1人区については、宮城と山形を除く30の選挙区で候補者の擁立を終えている。宮城は近く公認候補が決まる見通しだ。山形は政府予算に賛成した国民民主党に配慮して、党本部から擁立見送り論が出され調整が行われている。

これに対して、野党側は候補者の擁立が遅れていることに加えて、野党間の候補者調整の枠組みが崩れ始めているようにみえる。

前回と前々回の参院選挙では、野党第1党の立憲民主党や民進党が中心になって、国民民主、共産、社民、れいわなどの各党と、1人区の全ての選挙区で候補者を1本化して選挙に臨んだ。

ところが、今回は立憲民主党が先の衆院選で敗北した”後遺症”もあり、野党結集に主導権を発揮できていない。加えて、国民民主党は独自路線を強め、これに共産党が反発し、候補者調整がどこまで進むかメドが立っていない。

このため、立憲民主党内からは、すべての1人区で候補者1本化は難しく、今回は、限定した形になるのではないかという見方も聞かれる。

こうした1人区の現状は、参院選全体の取り組み方とも共通しており、”与党は着実な体制で先行、野党は共闘体制に乱れ”というのが、今の段階での特徴だ。

次に選挙情勢を見ていきたい。11日にまとまったNHK4月世論調査によると岸田内閣の支持率は先月と変わらず53%、不支持は23%だった。

政党支持率では、自民党は38.9%、公明党3.0%。野党側第1党の立憲民主党は5.2%と低迷、日本維新の会も3.6%と減少が続き、国民民主党1.5%、共産党2.5%、れいわ0.2%、社民党0.4%、無党派36.7%となっている。

岸田政権の支持率をどう読むか。まず、内閣支持率については、政権発足から半年経過した時点でも50%を超えたのは、小泉、第2次安倍、岸田の3つの政権しかないので、高い水準を維持しているといえる。

次に自民党の政党支持率について、過去3回の参院選挙のデータと比較してみると2013年の41.2%より低いが、2016年35.5%、2019年34.2%より高い水準にある。

過去3回の参院選の結果は、2013年は自民単独で、改選議席の過半数を獲得して大勝。2016年と2019年は公明党を合わせた与党で、改選議席の過半数を確保した。

つまり、与党は今の時点では「前回、前々回以上の勢い」がある。但し、「今の水準が今後も続くかどうかはわからない」というのが結論になる。

 波乱要因、コロナ、ウクライナ戦争

さて、参院選挙の予測は”当たる”ことが多いが、予想外の結果となり、政権が倒れることもある。98年橋本龍太郎政権の参院選が代表的なケースで、私も個人的に予測が外れ、苦い思いとして今も残っている。

古い話は横に置いて、参院選の場合、波乱要因は何かを絶えず意識して取材する必要がある。今回の場合は、コロナ感染の再拡大と、ウクライナ危機の影響ということになるのではないか。

自民党の長老に聞くと「ウクライナ戦争をめぐる世論の反応は、ロシアに対する批判が強く、岸田政権に向かう可能性は低いのではないか。やはり、コロナ感染の再拡大。特に入院・医療提供体制にまで影響が及ぶ事態になるかどうかを最も心配している」と語る。

一方、ギクシャクした関係が続く自民、公明関係については「自民党の各候補や県連の多くは、選挙協力では公明党・創価学会に”個別撃破”され、従来の関係に落ち着くのではないか」として、影響は大きくないとの見方をしている。

 外交・防衛、新たな争点になるか?

ここまで与野党の取り組みや選挙情勢などをみてきたが、私たち有権者にとっても「何を基準に政党や候補者を選択するのか」がそろそろ、考え始める時期に入っているのではないか。

判断材料としては岸田政権の政権運営、具体的にはコロナ対応をはじめ、国民生活への支援や日本経済の立て直しの問題がある。ウクライナ関係では、ロシアに対する制裁の評価や、去年秋からの原油高騰、物価高への対策も論点になりそうだ。

一方、今の段階でははっきりしないが、個人的に注目しているのが、日本の外交・安全保障、特に防衛力整備のあり方だ。今度の参院選で、どの程度大きな争点として浮上するのか注視したい。

安倍前首相は「核共有」をめぐる議論の活発化や、防衛費6兆円規模への増強などを盛んに打ち上げている。与野党議員からは「核より通常兵力の整備が先だ」「安倍前首相は、プーチン大統領頼みの日ロ外交の総括を明らかにすべきだ」などの意見も聞かれ、議論は混戦状態だ。

岸田政権は、年末に国家安全保障戦略や、中期防衛力整備計画などを改定する方針だ。敵基地攻撃能力保有の是非や、防衛力の整備の水準や予算規模の扱いも焦点になる。

その際、専守防衛、国連中心主義、アジア重視など戦後日本の外交・防衛の基本方針との関係が、どのように整理されるのか、あるいは方向転換することになるのかどうか。

一方で、国内では、少子高齢化に伴う人口減少と社会保障の設計、停滞の長いトンネルから抜け出せない経済政策、巨額な借金財政への対処方針も先送り状態になっている。

こうした内外の課題・懸案をどうするのか。参院選では、与野党、候補者はバラマキ政策を競うのではなく、懸案に優先順位をつけて基本方針を示す責任がある。そして、私たち選ぶ側も、賢明な選択ができるかどうかが問われることになる。(了)

ブログ・サイト復旧、12日新規投稿予定です!

3月23日から突然、ブログサイトにエラーが発生してアクセスできない状態が続いていましたが、今日4月7日、ようやくサイトが復旧しました。

新規の投稿は、取材の関係などで、週明け4月12日を予定しています。この間、ご心配やお問い合わせなどをいただき、たいへんありがとうございました。

コツコツ取材を重ね、内外の出来事についての見方、読み方などをお伝えしたいと思いますので、引き続きご覧いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

4月7日

政治ジャーナリスト、神志名泰裕

予算成立”外交・経済論争を”

一般会計の総額が過去最大の107兆円にのぼる新年度予算が22日、参議院本会議で、自民、公明両党と国民民主党の賛成多数で可決、成立した。戦後4番目に早いスピード成立になった。

これによって、長丁場の通常国会は前半の山を越え、焦点は経済安全保障推進法案など重要法案の審議に移る。また、夏の参議院選挙に向けて与野党が、本格的に動き出す。

それでは、これからの政治は、具体的に何が問われることになるのか。1つは、コロナ感染対策だ。まん延防止等重点措置は21日にすべての地域で解除されたが、年度末に人の動きが活発になると4月以降、感染の再拡大が懸念される。

もう1つは、ウクライナ危機対応だ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、住宅や学校なども攻撃され、子どもを含む一般住民の犠牲者も増えている。

国際社会は、ロシアに対する経済制裁を打ち出したが、停戦までには至っていない。ウクライナ危機は、長期化することが予想される。

国際社会の激動は、日本の外交・安全保障、さらには国内にも跳ね返って与野党の枠組み変更など大きな転換点となる可能性がある。

予算成立後の日本政治は、内外情勢が激動する中で、政権が外交・安全保障、経済運営などの基本方針を打ち出し、与野党が議論を深めて、日本の進路を設定していくことが不可欠だ。ウクライナ情勢を中心に政治の動きを展望してみたい。

 ウクライナ危機、G7連携と後追い

まず、当面の最大の焦点であるウクライナ情勢について、岸田政権の対応から見ていきたい。

岸田首相は「ロシアのウクライナへの侵攻は、国際法や国連憲章に違反し、国際秩序を根幹を揺るがす行為で断じて許容できない」として、G7の欧米諸国と連携して、ロシアに対する経済制裁を打ち出した。

自民党の幹部に評価を聞いてみると「G7と連携して対応している点は評価するが、欧米の方針決定から対応が一歩遅れ、受け身の姿勢が目立つ」と厳しい声も聞く。

確かに1月17日の施政方針演説では、ウクライナ情勢への言及はなく、続く1月21日のバイデン大統領とのオンライン会談でも、ウクライナをめぐる危機感に温度差がみられた。

岸田首相が、ウクライナ対応に本格的に向き合い始めたのは2月に入ってからで、当初の対応は、欧米諸国の後追いが実態に近かった。

但し、2014年にロシアがクリミアを併合した際には、当時の安倍首相は北方領土交渉を有利に運びたいという思惑もあって、欧米の制裁から距離を置き、批判を招いた。

これに比べると岸田首相の対応は、プーチン大統領らロシア政府関係者などの資産凍結、金融・貿易分野の制裁で欧米と足並みをそろえ、一定の評価を得ているとみていいのではないか。

ロシアに対する経済制裁は長期化することが予想され、日本としてはこうした制裁を最後までやり抜くことができるかどうかが問われている。

 物価高・経済、外交防衛の基本方針を

次に、当面、最も大きな課題は、こうした経済制裁に伴う原油高、穀物価格の上昇などによる物価高にどのように対応していくかだ。円安も一時120円まで進むなど急速に進んでおり、輸入価格の上昇も重なり景気後退を招くのではないかと懸念されている。

このため、ガソリンなどの高騰対策として、1ℓ当たり25円を上限に補助金を支給しているが、これに加えて「トリガー条項」の凍結を解除してガソリン税の一部を減税する案が検討されている。

また、自民、公明両党からは、高齢者に一律5000円の給付金を支給する案が出されているが、参院選挙を意識したバラマキ政策としか言いようがない。

さらに、政権与党内では、ウクライナ情勢に伴う物価高や、経営が悪化している中小企業対策として、大型の追加経済対策が参議院選挙前に打ち出される公算が大きくなっている。

一方、外交・安全保障分野では、日本の防衛力整備をどのように進めていくのか。自民党内では、ドイツが防衛費を2%にまで拡大する方針を打ち出したことを踏まえて、日本も防衛費の増加へと舵を切るべきだという声が強まっている。

また、安倍元首相や日本維新の会からは、アメリカの核兵器を日本国内に配備して共同運用する「核共有」の議論を求める意見も出されている。

これに対し、自民党内には、核共有の問題よりも通常兵力や、武器弾薬などの継戦能力の整備などを進めるべきだといった意見も出されている。

このほか、ロシア外務省は21日、日本の制裁措置に反発して、日本との北方領土問題を含む平和条約交渉を中断する方針を表明した。日本側は強く抗議しているが、安倍政権が推進してきた北方領土での共同経済活動なども含めて日ロ関係の見直しを迫られることになりそうだ。

このように外交・安全保障や、防衛力の整備、さらには経済運営について、様々な意見が出されているが、岸田政権は、何を最優先に取り組むのかはっきりしない。

今の通常国会が6月に閉会すれば、直ちに参院選に突入する。それだけに予算成立後の国会論戦では、岸田政権が内外の課題について、基本方針を明確に打ち出す必要がある。そのうえで、与野党が議論を深め、参議院選挙で国民が選択できる判断材料を示してもらいたい。

 

“ウクライナ戦争”国民の見方は?

歴史的な冷戦終結から30年余り、私たちはテレビの映像などを通じて、世界の大きな出来事を目の当たりにしてきた。ベルリンの壁がハンマーで打ち壊された光景をはじめ、湾岸戦争、アメリカの同時多発テロ、イラク戦争などを鮮明に思い出す。

2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国連安全保障理事会の常任理事国の行為であり、にわかに信じられない事態だと世界に大きな衝撃を与えた。そして、いまも非人道的な攻撃が続いている。

一方、今回の侵攻をめぐって、”スマホで視る戦争”ともいわれる。こうした今回のウクライナ侵略を日本国民はどのように受け止めているのか、個人的にずっと気になっていた。

14日にNHKの世論調査の結果が報道されたので、そのデータを基に個人的な分析、読み方を取り上げたい。(NHK世論調査、3月11日から14日まで実施)

 ロシア経済制裁、妥当・強化は8割

▲この調査では、まず、日本政府がロシアに対して、プーチン大統領ら政府関係者や、半導体の輸出禁止などの制裁措置を決めたことについて、どう思うかを聞いている。

回答は、◇「妥当だ」42%、◇「さらに強化すべきだ」40%、◇「強すぎる措置だ」7%となっている。

「強すぎる措置だ」と反発する受け止め方は少なく、「妥当」、あるいは「さらに強化すべきだ」として支持する意見が合わせて8割に達している。

▲次に、ウクライナから避難した人の日本への受け入れを進めるとした政府の方針をどの程度、評価するか。

◇「大いに評価する」42%、◇「ある程度評価する」40%。これに対し、◇「あまり評価しない」8%、◇「まったく評価しない」2%となっている。

これを整理すると「評価しない」は10%、「評価する」が82%と圧倒的多数だ。人道的な立場からの受け入れであり、納得する方は多いだろう。

▲ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する日本政府のこれまでの対応を、どの程度評価するかについてはどうか。

◇「大いに評価する」6%、◇「ある程度評価する」52%、◇「あまり評価しない」27%、◇「まったく評価しない」8%。

これをどう読むか。まず、全体としては「評価する」が合わせて58%、およそ6割と多い。これに対して「評価しない」は35%、およそ3割に止まる。

次に、「大いに評価する」は6%、逆に「まったく評価しない」が8%ということは、両極端の評価は合わせても15%と極めて少ないのが特徴だ。

「ある程度評価する」が過半数で最も多く、次に続くのが「あまり評価しない」で2割後半だ。つまり、ロシアに対しては厳しい制裁を求めているものの、感情的にならずに「平静に推移を見極めようとする姿勢」が読み取れる。

 日本経済への影響8割が懸念

▲さらに、ロシアのウクライナ軍事侵攻が、日本の経済にもたらす影響をどの程度懸念しているかについても聞いている。

答えは、◇「非常に懸念している」が42%で最も多く、◇「ある程度懸念している」が40%、◇「あまり懸念していない」9%、◇「まったく懸念していない」が2%と続いている。

このように「懸念している」が8割に達している。原油の急騰をはじめ、小麦など穀物価格の上昇、さらにはロシア産の希少金属などの供給減などの影響を懸念していることがうかがえる。

 岸田内閣の支持率は横ばい

岸田内閣の支持率については、◇「支持する」が1ポイント下がって53%だったのに対し、◇「支持しない」は2ポイント下がって、25%だった。ほぼ横ばいだ。

もう1つの焦点になっている「政府のコロナ対応の評価」については、◇「評価する」57%、「評価しない」36%で、こちらも横ばいで大きな変化はみられなかった。

そうすると、ロシア軍事侵攻に対する政府対応の評価についても、岸田内閣の支持率には直接、大きな影響を及ぼしていないとみることができる。

但し、ロシア軍のウクライナへの侵攻が、今後、軍事的にどのような形で決着がつくのか。G7や国際社会がさらに経済制裁を強めていくのか。その結果、国際経済や日本経済などに打撃や影響が、跳ね返ってくるかが焦点になる。

政界の反応としては、安倍政権時代、2014年のロシアのクリミア併合の時に比べて、今回の岸田政権の対応は、米欧との経済制裁の足並みがそろっていると評価する声が多い。

一方で、今回は、米欧の方針の後追いが目立つと批判する意見や、核共有や防衛力整備のあり方について、主体的な判断が乏しいと批判する声も聞く。

こうした政治の側の動きとともに、今後、国民世論に変化があるのかどうか、さらには、ウクライナ問題への対応が、夏の参院選挙の大きな争点として浮かび上がってくるのかどうか、注意深く見守っていきたい。(了)