”自民苦戦、与党過半数厳しい情勢”2025参院選

今月3日に公示された参議院選挙は中盤戦に入り、各党の選挙戦は一段と熱を帯びてきた。ここまでの選挙情勢をみると自民党が苦戦しており、与党で過半数を確保するのは厳しい情勢になっているようにみえる。

一方、野党側では、立憲民主党が堅調な戦いを進めているほか、参政党、国民民主党、れいわの勢いが目立つなど新たな展開もみられる。参院選序盤の情勢を分析するとともに最終盤に向けて勝敗のカギはどこにあるのか探ってみたい。

石破内閣、自民支持率ともに低位水準

今回の参議院選挙について、NHKのトレンド調査の2回目のデータ(7月4~6日実施)が7日に報道されたので、このデータを基に選挙情勢全体をみておきたい。トレンド調査は、国政選挙投開票日の数週間前から1週間ごとに連続して、有権者の政治意識の動向を把握するために行っている調査だ。

それによると石破内閣の支持率は31%で、1週前の第1回調査(6月27~29日)から3ポイント下がった。不支持率は50%で、前回より4ポイント上がった。6月上旬の月例世論調査の支持率は42%だったので、この1か月間に11ポイント下落したことになり、去年10月の政権発足以来、最も低い水準だ。

一方、自民党の支持率は、トレンド調査の1回目は27.8%、2回目は28.1%だった。前回3年前の参院選の同じ時期は、35.6%だった。安倍政権当時の自民党支持率は30%台後半、岸田政権でも30%台半ばだったので、石破政権では30%ラインを割り込んでおり、内閣支持率とともに低位の水準にあることがわかる。

与党・公明党の支持率(2回目)は3.0%で、1回目の調査より0.8ポイント下がった。

これに対して野党各党はどうか。伸びが目立つのは、参政党で4.2%まで上昇した。6月の月例調査で1.9%だったのが、1回目調査で3.1%、2回目調査でさらに伸ばした。公明党の支持率を上回ったので、その勢いには驚く。

国民民主党の支持率も5.1%と高い水準にある。3月の月例調査では8.4%で、第1党の立憲民主党を上回っていたが、参院選挙の候補者選びなどをめぐって低下した。それでも支持率としては、野党の2番目の地位を維持している。

れいわ新選組の支持率は3.2%で、前回調査の2.0%から支持を伸ばした。3年前は1.7%の支持率だったので、れいわも支持を伸ばしている。

立憲民主党の支持率は8.5%。6月の月例調査では5.8%だったので、支持率を堅実に上げてはいるが、野党第1党しては自民党との大きな差を縮められていない。一方、日本維新の会の支持率は2.3%、共産党は3.1%などとなっている。

このように石破内閣と自民党はともに支持率が低迷、公明も支持に陰りがみられる。これに対し、参政党、国民民主党、れいわの各党には勢いがみられる。立憲民主党は一定の支持を得ているが、維新、共産は低迷しており、野党でも明暗が分かれている。

 与党過半数厳しい情勢、1人区で苦戦

それでは、参院選の選挙情勢、勝敗はどうなるか。まず与党のうち、自民党からみていくと比例代表選挙について、前回は18議席を確保したが、今回は党の支持率が低下していることから、大幅に減らすことになりそうだ。

自民党の比例代表の過去最低は12議席だった。自民党関係者に聞くと「12±α」程度にまで落ち込むのではないかとの見方を示している。

次に選挙区選挙では、2人区から6人区まで複数区は13ある。このうち、複数区で2人擁立し当選した選挙区もあるが、激戦区も多く、13議席程度に止まる可能性が大きい。

問題は、全国に32ある定数1の1人区の攻防だ。自民党はこれまで地方の厚い保守地盤を活かして野党に大差をつけてきたが、今回は接戦となっている選挙区が多い。今の時点で自民党がリードしているのは群馬、石川、山口など10程度だ。

逆に野党各党と無所属を含めた野党系がリードしているのは岩手、長野、大分など9程度。残り13選挙区は与野党が激しく競り合い、勝敗の見通しは現時点ではつけにくい。

公明党は党員の高齢化などの影響もあり、議席獲得が確実に見込めるのは選挙区で5、比例代表で5の合わせて10程度とみられる。

与党が過半数を確保するためには、参院全体の過半数125から、非改選の自民、公明両党75を差し引いた50議席が必要になる。そうすると公明党を10と仮定するならば、自民党が40議席を確保できるかが勝敗の分かれ目になる。

その自民党は、比例12、複数区13と仮定すると合計25、残り15議席を1人区で獲得できるかということになる。ところが、1人区は接戦区が多く、15議席を確保できるメドはついていない。したがって、与党で過半数確保は厳しい情勢というのが実状だ。

立民堅調、参政、国民、れいわに勢い

野党側の情勢はどうだろうか。野党第1党の立憲民主党は支持率も3年前の水準以上に確保していることや、1人区で反自民の受け皿になっていることから、20台後半の議席を確保する見通しだ。堅調な戦いと言える。

特に勢いが目立つのが参政党だ。神谷代表は公示前の2日の時点で、獲得目標として選挙区1と比例代表5の合わせて6議席としていたが、その後、10議席以上に目標を引き上げた。

自民党関係者は「地方でも参政党が保守地盤に食い込んでおり、自民党に影響が出るのではないか」と警戒する。今の勢いを投票日まで維持すれば、選挙区と比例代表を合わせて9議席前後獲得するのではないかとの見方もある。

国民民主党も一時の勢いに陰りはみられるが、選挙区と比例代表合わせて10台半ばまで議席を大幅に増やす勢いがある。れいわも比例代表で4議席程度を確保するものとみられる。

一方、公示前の勢力として維新は5議席、共産党は7議席を確保していたが、伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

社民党と日本保守党はそれぞれ1議席を獲得する可能性がある。このように野党側については、参政党と国民民主党、れいわに勢いがある。立民は堅調だが、維新と共産は伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

1人区の最終攻防、投票率も勝敗を左右

参院選挙の最終盤に向けて勝敗面では、どこが大きなカギになるか。選挙区では1人区が全体の定員の4割を占めることから、この1人区の競合選挙区の攻防が最大の焦点になる。加えて、複数区の最後の議席をどの党が競り勝つかがポイントだ。

もう1つ、投票率も選挙戦を大きく左右する。NHKのトレンド調査をみて気づくのは、今回の参議院選挙について「投票意欲」が高いことだ。投票に「必ず行く」と答えた人は56%、「期日前投票をした」人は6%で、合わせて63%にのぼっている。

前回3年前と6年前の参議院選挙は55%に止まっていた。このときよりも7ポイントも上回っていることになる。今回の投票日20日は、3連休の中日に当たり、投票率が下がるのではないかと懸念されているが、有権者の投票意欲は相当高いようだ。

こうした背景には、物価高騰対策などに意思表示をしたいという考えがあるのだろうか。投票率が1%上がれば、有権者数で100万人増えることになり、選挙結果にも影響を及ぼす。3年前の投票率は52%だったが、今回はどうなるか、注目したい。

選挙戦真っ最中の8日、アメリカのトランプ大統領は、日本からの輸入品に25%の関税を課税する方針を日本政府に伝えた。8月1日から適用するとしている。これに対し、石破首相は、相互関税の一時停止の期限が事実上、延期されたという認識を示し、交渉を続ける考えを示した。

こうした石破政権の対応について、有権者がどのように評価をするのか。参議院選挙は選挙運動期間が17日間と長いのが特徴で、これまでも党首の発言などが選挙結果に大きな影響を及ぼしたこともあった。

内外情勢が大きく動く中で、各党の論戦や戦い方がどのような展開をみせるのか、選挙情勢は大きく変わる可能性がある。私たち有権者もどの候補者、政党に政権や政策の推進を委ねることにするのか、選挙情勢も念頭に入れて1票を投じたい。(了)

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