「合流新党」をどう見るか?野党第1党の役割

国民民主党が19日、党を解党した上で立憲民主党との合流新党を結成する方針を決めた。これによって、衆参両院で150人前後の「合流新党」が来月結成される見通しだ。

新党の評価は、立ち場によって大きく異なるが、ここでは選ぶ側・有権者側からどう見たらいいのか考えてみたい。

最初に私の基本的な立ち場を説明させてもらうと政治が機能するためには、政権与党とともに「しっかりした野党」が必要だと考える。

また、特にコロナ激変時代は「政権与党と野党側との緊張感のある議論と競い合い」の中から、日本の進路を見いだしていく粘り強い作業が必要だと考える。

 合流新党の意味「100人の壁」突破

その上で、新党合流をどうみるか。新党の規模から見ておくと、国民新党からの合流組と残留組との調整が続いているため、最終的に固まっていないが、合流組が勢いがあり、多数を占める見通しだ。

また、野田元首相や岡田元副総理ら衆議院の無所属議員およそ20人も参加するので、新党の規模は無所属議員を含めて衆参両院で150人前後になると見られている。これは4年前に結成された「民進党」、民主党の流れを汲む政党の規模に匹敵する。

つまり、政権から下野した後、バラバラになった旧民主党勢力を再結集する形になる。また、政権への再挑戦という観点では、衆院選挙に向けて100人台の勢力を結集、「100人の壁」を突破するという意味を持っている。民主党が政権を獲得した2009年衆院選での公示前勢力は115議席。自民党が政権復帰を果たした2018年の勢力も118議席だった。

このため、合流新党の評価としては、巨大与党の自民・公明両党に対して、100人台の野党第1党が誕生、基盤整備にこぎつけたという意味が大きいと言える。

 国民の期待感は乏しいのでは?

一方、合流新党の課題・問題としては、有権者・選ぶ側の期待感が乏しいという点にあるのではないかと見ている。

今回の立憲民主党と国民民主党との合流は、さかのぼると去年秋の臨時国会で両党を中心にした国会内の統一会派結成から進められてきた。ところが、去年暮れ、両党代表のトップ会談を繰り返したが合意に至らず、破談。この夏、再び復縁協議に入り、ようやく分党の形にすることで、なんとか合流にこぎつけた。

国民の側からすれば、新党の理念や政策などに触れる機会はほとんどなく、端的に言えば、「政党レベルの業界内再編」と受け止められているのではないか。

4年前・2016年3月、当時の民主党と維新の党が合流して結成された「民進党」の評価が参考になる。NHK世論調査では、◆「期待する」25%、◆「期待しない」70%。保守層も含むので、高い水準は予想されないが、それでも本来は、支持を得る必要がある無党派層でも「評価しない」は72%、ほぼ同じ比率だった。今回もおそらく、同様の傾向になるのではないかと見ている。

 何を目指す政党か? 新党の旗は

さて、今回の合流新党に関連して、知人から、野党の復活は可能か。国民の支持を得られる新党の必要条件は何かといった質問を受けた。

新党と世論の関係は、古くから共通の流れがあり、最大勢力の無党派層の反応は「魅力ある新党ができれば、支持する」との答えが多い。今も無党派層が多いということは、魅力ある新党ができていないとも言える。

立憲民主党、国民民主党の政党支持率を8月の世論調査で見ると次のようになっている。◆立憲民主党4.2%。◆国民民主党0.7%。最も支持が高かった時の支持率は立憲民主党が10.2%。国民民主党が1.5%。両党とも半分以上、支持率を減らしている。また、◆自民党の35.5%、◆無党派層の43.3%に比べると大幅に低い。(データは、NHK世論調査)

両党とも結党時に比べて、明らかに魅力度は低下している。合流をめぐって、両党は角突き合わせるよりも、魅力度を高めるにはどうするかという発想が必要。また、小異にこだわらず、合意を拡大する対応ができれば道は開けたと思うが、当事者に聞くと、どうしても過去の経緯や怨念などは拭いがたいものがあるという。

結論を急げば、合流新党に必要な条件は「何をめざす新党か」、政党の旗印を打ち出すことではないか。その中には、政党の理念や、政治路線、主要政策、リーダーの魅力なども含む。ところが、今回の合流では、こうした点の議論やアピールは決定的に不足しており、今後の大きな課題・問題として残されている。

 難しい新党の評価、最後は選挙!

ここで話が少し脱線するが、新党の評価、実は「難しい」と感じることが多い。というのは、新党が結成されても長続きしないケースが多かったからだ。新党が政治の表舞台に盛んに登場するようになったのは、1993年に自民党が分裂、自民1党優位時代が崩れ、細川連立政権が誕生した頃からだ。

その後、巨大野党・新進党の結成と解党、民主党への合流から政権交代実現まで新党の結成、離合集散が相次いだ。およそ30の新党が誕生しては消滅した。現役の解説委員時代、”きょうは〇〇党、あすは△△党の解党大会。来週は新党の結成大会”といった日々が続いたことを思い出す。

さらに数年前には、結成時に人気急上昇、直後の選挙は大敗となった新党もあった。解説、講演などでも取り上げたが、振り返ってみると、的確な評価ができていなかったと反省するケースも多かった。

新党の評価は、最終的には、選挙で有権者からどのような評価を受けるか。「選挙で最終的に決まる」。逆に言えば、選挙結果が出るまで、じっくり見極める必要があるというのが結論だ。

 合流新党、選挙の備えと結集力

本論に戻って、野党第1党の合流新党は、どんな役割が問われているのか。これまで見てきたように「何をする新党かの旗印」を明確にすることがある。

それに加えて、野党第1党として「野党全体をとりまとめる力」が問われる。安倍政権は国政選挙で連戦連勝、6連勝中だ。不意打ちのような衆院解散があったのも事実だが、政治の世界、野党側に選挙準備ができていないのも問題とも言える。特に衆議院の小選挙区では、事前に選挙の勝敗予測、選挙結果が予測できるところが多く、野党の選挙準備不足、その責任は大きいと考える。

任期満了まで1年2か月に迫った次の衆議院選挙に、与野党はどのように臨むのか。巨大与党の自民、公明両党の対応は現職議員が多数を占めているので、わかりやすい。

これに対して、野党陣営は見通せないところも多い。例えば、合流新党と、玉木氏らが結成する新党との関係はどうなるのか。

両党の関係が順調なケース。逆に対立が深まり、玉木氏らの新党と維新の会の連携、あるいは、れいわ新選組と組むことも予想される。新勢力の登場で野党陣営が分裂、共倒れ。政治用語で「スポイラー・エフェクト」、いわゆる”票割れ効果”といった事態も起こりうる。

このため、野党第1党は、自らの党の勢力だけでなく、今の選挙制度の下では、野党全体の連携・結集、候補者擁立の調整を行える力があるかどうか。具体的には、立憲民主党の枝野代表の力量、柔軟性、他党を包み込む度量が問われるのではないか。合流新党と他の野党との関係を見極めていく必要がある。

次の衆議院選挙は、コロナ激変時代の最初の国政選挙になる。政権与党と野党側の双方とも、これからの国民生活のあり方や日本社会の将来目標を打ち出して、有権者が選択する選挙にしていくことができるかどうか、大きな責任を負っている。