国会閉会 ”桜” 幕引き、年明け持ち越しへ

臨時国会は12月9日、閉幕する運びだが、皆さんはこの国会、どのようにご覧になっているでしょうか?

焦点の日米貿易協定の承認案件など内閣提出の主要法案はすべて成立した。
一方で、この国会は閣僚2人の連続辞任をはじめ、大学入学共通テストへの英語試験の導入延期、さらには首相主催の”桜を見る会”を巡る問題に報道が集中したが、肝心な事実関係はあいまいなままだ。

政府・与党は会期延長せずに幕引きを図るが、野党は来年の通常国会で引き続き追及する方針で、年明けの国会へ持ち越される見通しだ。
政府・与党と野党側、それぞれ何が問われているのか、国会対応を中心に総括しておきたい。

 不祥事・スキャンダル、説明不足

問題の第1は、この国会での会期中、菅原前経産相と河井前法相の主要閣僚2人が相次いで辞任に追い込まれた。しかし、当事者である2人は、未だに指摘された問題に対する説明を行っていない。また、衆議院本会議での法案の採決にも出席をしておらず、自民党内でも問題になっている。

国の予算・税金が使われている「桜を見る会」についても、どんな人たちが招待されていたのか、予算が年々膨れあがった理由は何かといった基本的な事実関係についても、招待者名簿が廃棄されたとして、十分な説明がなされていない。

野党側は、桜を見る会の前日、安倍首相夫妻が出席して開かれていた「前夜祭」について公私混同、会費も安すぎ買収などの公職選挙法違反の疑いがあると追及したのに対し、安倍首相は会費の補填などはないと否定している。

野党側は一問一答方式の予算委員会での集中審議を要求したが、与党側は応じなかった。結局、参議院本会議での質疑はあったが、予算委員会での安倍首相の説明は行われないまま幕を閉じることになった。

このように不祥事に対する政権側の説明は乏しい、説明不足と言わざるをえない。国会は国権の最高機関と位置づけられており、疑惑・不祥事については、国会の場で真正面から説明責任を果たすのが、首相をはじめとする政権の責務だと考える。

 ”大問題ではない。されど…….”

国会を総括する際には、さまざまな考え方、立ち場があり、評価の基準も1つではない。「桜を見る会」の問題についても、いろいろな見方があると思う。

よく聞く意見の1つに「桜を見る会、大きな問題ではないではないか。予算も国の行事にしては多額すぎるとも言えない。政治家が地元の支持者を呼ぶこともありうる。それよりも野党は、日米貿易協定など重要な問題を審議すべきだ」といった意見だ。

後半の日米貿易協定など重要な問題を審議すべきだというのは、その通りだ。
問題は、国の予算・税金が公正に使われているか、選挙も公平・公正、法律の規定通りに行われているかチェックするのは、国会の本来の役割だ。

私も率直に言えば、大問題であり、何が何でも徹底追及すべきだとまで論じるつもりはないが、”されど、問題なしとは言えない”というのが基本的な立ち場だ。

安倍政権は、会期中に戦前戦後を通じて歴代最長政権となった。長期政権の緩みやおごり批判に対する身の処し方も重要だ。そして、大きな問題でないというのであれば、首相が半日か1日、委員会で説明する。
その代わり、野党に対して、憲法などの審議に応じてもらう”ことも可能ではないか。少なくとも、以前の与野党の国会対応は双方とも柔軟な対応をして、世論の納得を得る工夫があったように思う。国会の運営のあり方については、与野党双方、反省すべき点は多いのではないか。

 ”更迭、取り止め、説明なし”

この国会、安倍政権の対応で、もう1つ、気になる点があるので、触れておきたい。それは、閣僚の不祥事があると即交代、閣僚を辞任させると短時間のうちに後任閣僚を発表。危機管理対策としては、政権に及ぼすダメージを最小限に食い止めるという対応はありうる。但し、更迭の事実関係の説明はない。

萩生田文科相の「身の丈発言」の問題。こちらも厳しい批判がわき上がると早々に英語試験の導入延期を発表。この問題、さかのぼれば、第2次安倍政権が発足、教育再生実行会議の提言を受けて打ち出した看板政策の1つだ。強い批判が出されたのでは事実だが、簡単に方針転換を打ち出したことには、正直、驚かされた。

「桜を見る会」の問題について、安倍首相や菅官房長官の説明もクルクル変わるとともに、来年度の開催取りやめを発表した。昭和27年からという伝統の政府行事の見送りである。但し、その理由、実態は先ほど触れたようにあいまい、よくわからないのが実状だ。

 内閣支持率優先の現れ?

こうした政権の対応、十分な説明がないまま、更迭、取り止め、方針転換が相次いでいるが、どうして行うのか。その理由・背景として、安倍1強と言われ、自民党、官僚も押さえている中で、唯一対応が難しい世論を気にしすぎているのではないか。具体的には、内閣支持率優先の現れではないかといった見方を政界関係者から聞く。

私なり見方は、長期政権で最も難しいのは、国民にどう向きあうか。世論の側からの長期政権に対する批判、”飽き”を防ぐことができるのか。これまで安倍政権は、世論への働きかけを比較的、うまく対応していたと見ている。

但し、この国会での対応ぶりは、説明が不十分で、政権への評価を気にしすぎて逆に不信感を持たれることになるのではないか。長期政権で心がけることは、まずは、事実関係をきちんと説明すること。その上で、間違いがあれば、是正することが王道ではないか。今後の安倍首相、政権のかじ取りを引き続き注視していきたい。