「大阪都構想」否決 菅政権2つの不安材料

大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」が、1日に行われた住民投票で、反対多数で再び否決された。

大阪地域の問題だが、菅政権や衆院選、政局に及ぼす影響は大きいとみている。菅政権にとっては日本学術会議に続いて、大阪都構想否決問題が、国会・政権運営の面で不安定要因になる可能性がある。

今後の政治にどんな影響が出てくるのか、具体的にみていきたい。

 大阪都構想、”無党派層6割が反対”

大阪都構想がなぜ、再び否決されたのか。まず、構想を推進する「大阪維新の会と公明党の足並みの乱れ」がある。報道各社の出口調査では、住民投票で維新支持層の9割は賛成だったのに対し、公明支持層の賛成は半数に止まった。

投票率は前回より4ポイント余り下回ったものの、62.35%と高い水準となった。最も多い無党派層が投票所に足を運び「無党派層の6割が反対」に回ったことが大きく影響した。

大阪都構想をめぐっては、「府と市の二重行政の無駄を是正できる」との賛成意見は多かった。一方で、「大阪市廃止後の市はどうなるのか、住民の利益になるのかどうか」確信を持てない市民が多かったのではないか。

結局、大阪都構想の大義名分、住民自治や利益について、十分説得することができなかった。「住民投票の難しさ」も改めて浮き彫りになった。憲法改正問題での国民投票でも同様の問題を抱えている。

 維新に打撃、看板政策否定と代表引退

「大阪都構想」を推進してきた「大阪維新の会」と「日本維新の会」代表の松井市長は「政治家としてケジメをつけなければならない」として、2023年4月までの任期を務めた上で、政界を引退する意向を明らかにした。

維新の会にとって、結党以来の看板政策である「大阪都構想」が2度にわたって否決された。加えて、党を率いてきた松井市長が政界引退表明に追い込まれた打撃は大きい。

向こう1年以内には、衆議院の解散・総選挙が行われる。維新の会は、住民投票での勝利をテコに、次の衆院選では全国各地で候補者を積極的に擁立する戦略を描いていた。

それだけに党の態勢の立て直しが急務だが、結党以来の旗印である都構想に代わる看板政策を打ち出せるかどうか。選挙戦略の見直しも迫られるのではないか。

 菅政権 “政権補完勢力”の後退

菅政権への影響はどうか。菅首相は、安倍政権の官房長官時代から、松井代表とは太いパイプを築いてきた。今回の住民投票でも、自民党大阪府連が反対の立ち場を取る中で、静観を続けてきた。

政権関係者に聞くと「維新の会は是々非々路線、重要法案の審議では賛成に回る場面も多く、立憲民主党など野党勢力を分断できる貴重な存在だ。今回の維新の失速が、政権運営面で直ちに影響が出てくるとはみていないが、今後、国会運営や憲法改正問題などにも影響が出てくるだろう」と”政権補完勢力”の後退の影響の大きさを認める。

一方、連立与党の公明党は、前回の住民投票では反対だったが、今回は賛成に回った。次の衆院選大阪選挙区での公明党候補への影響を意識した対応とみられているが、反対の姿勢を貫いた自民党大阪府連との間にしこりを残した。

 2つの不安材料 大阪都構想と学術会議

菅政権発足後、最初の臨時国会が10月26日に召集され、11月2日からは衆議院予算委員会に舞台を移して、一問一答形式の質疑が始まった。

野党第1党の立憲民主党は、日本学術会議の会員候補の一部の任命を菅首相が拒否した問題に焦点を絞って攻め立て、初日の審議では、菅首相は同じ答弁メモを繰り返すなど防戦が目立った。

今回の維新の失速は、菅政権にとっては、学術会議の人事問題に続いて、2つ目の不安材料になる可能性がある。菅政権は、当面、臨時国会を乗り切るとともに第3次補正予算と新年度予算案の編成で、菅カラーを打ち出して行きたいところだが、2つの不安材料をどこまで押さえ込むことができるかどうかも注目点だ。