”最長政権に陰り” 支持率低下 進行中

新しい年・2020年が明けて2週間余り、1月20日からは長丁場の通常国会が、いよいよ始まる。安倍政権は自民党総裁の残り任期が2年を切り、今年、衆議院の解散・総選挙に打って出るのかどうかが、大きな焦点になっている。

そこで、新年、世論の風向きはどうなっているのか。NHKの1月世論調査の結果が公表されたので、そのデータを基に分析してみる。

結論から先に言えば、安倍内閣の支持率は、昨年夏以降、ジリジリと下がり続けており、”最長政権に陰り”が読み取れる。

支持率は政権担当8年目に入っても40%台半ばを維持しているが、中身を詳しく分析してみると”政権に勢い”が見られない。

このため、今年前半の解散・総選挙の確率は低いのではないかとうのが、私・個人の見方だ。以下、その理由、見通しなどを見ていきたい。

 安倍内閣支持率  5か月連続低下

NHKの世論調査は、1月11日から13日までの3日間行われ、14日にまとまった。「NHK NEWS WEB」に掲載されているので、そのデータを基に見ていく。

安倍内閣の支持率は「支持する」が44%で前月より1ポイント減、「支持しない」が38%で1ポイント増、ほぼ横ばいで変化がないように見える。
但し、内閣支持率は数字そのものも重要だが、「トレンド=傾向」をどう読み取るかが大きな意味を持つ。

そのトレンド、去年夏の参議院選挙が終わった翌月・2019年8月、安倍内閣の支持率は49%、5割近くにも達した。しかし、その後、ジリジリと下がり続けており、新年1月まで5か月連続、減少中というのが大きな特徴だ。(去年10月は台風19号の影響で調査自体が中止になっている)

 不祥事直撃、外交努力も吹き飛ぶ

支持率低下は、相次ぐ不祥事が大きな原因だ。9月11日に内閣改造を行ったところまでは比較的順調だったが、10月下旬に菅原経産相、河井法相の連続辞任に始まって、萩生田文科相の「身の丈発言」と大学入学共通テストへの英語民間試験の導入延期など看板政策の取り止めにも追い込まれた。

さらに首相主催の「桜を見る会」についても、安倍首相の地元支持者を招くなど公私混同が明るみになり、防戦に追われた。こうしたことが影響していると見られる。

11月には、安倍首相の通算在任期間が戦前・戦後を通じて憲政史上最長を記録。年末には日米韓の首脳会談など得意の外交も展開したが、相次ぐ不祥事で、外交努力も吹き飛ぶ形になっている。

 ”最長政権に陰り”

そこで、安倍内閣の支持率の中身を分析するとどうなるか。
▲◇去年8月が支持49%、不支持31%。◇今年1月は支持44%、不支持38%。この5か月で、支持が5ポイント下がり、不支持が7ポイント増えたことになる。

政権発足から8年目で支持率40%台半ばを維持しているのは、異例、驚異的だ。
但し、支持と不支持の差は6ポイントまで縮まり、4ポイント変動すると不支持が支持と逆転する可能性もある。”最長政権に陰り”が生じ、”黄色信号”が点滅し始めたと見ている。

 首相不信、浮き彫りに

▲支持する理由としては、「他の内閣より良さそうだから」が51%、次いで「実行力がある」が19%、消極的な支持が多数を占めているのが実態だ。

一方、不支持の理由としては、「首相の人柄が信頼できない」が46%、「政策に期待が持てない」28%などと続く。このうち、「首相の人柄が信頼できない」は8月段階では35%だったので、11ポイントも急増したことになる。

「桜を見る会」の安倍首相の説明に対して、「納得できない」との受け止め方が実に7割に達しており(12月調査)、首相に対する不信感が強いことが浮き彫りになっている。

無党派層 不支持が過半数

▲支持する政党がない、無党派層は全体の4割近くを占める大きな集団だ。この無党派層を見てみると、内閣の支持は21%に止まり、不支持が53%と過半数に達しているのも大きな特徴だ。選挙の際には、大きな不安材料になっている。

以上見てきたように、安倍政権に対する有権者の視線は、厳しさを増していることが読み取れる。

野党も低迷続く

こうした一方で、安倍政権と対峙する野党はどうか。
1月の政党支持率は、野党第1党の立憲民主党の支持率は5.4%。国民民主党は0.9%と低迷状態が続いている。

自民党の支持率は40.0%なので、大差をつけられている。
また、立憲民主党と国民民主党の連携・合流に向けた話し合いも行われているが、有権者の期待感は高まっているとは言えない。

こうした野党の存在感の乏しさ、安倍政権に代わる別の選択肢がないことが、最近の政治に緊張感や魅力を感じられない要因になっている。

衆院解散への影響は?

最後に今後の見通しだが、安倍政権にとっては、年末には、カジノを含むIR汚職事件で、現職の衆議院議員が逮捕された。

今週は、自民党の河井案里参議院議員の陣営が、去年夏の参議院選挙での公職選挙法違反の疑いで事務所の捜索を受けた。昨年秋以来、これほど不祥事、問題が相次ぐのは、これまでにない異常事態だ。

通常国会が始まると野党側は、桜を見る会問題をはじめ、IR汚職事件、総務省の事務次官の更迭問題などを巡って、集中砲火を浴びせる構えを取りつつある。

一方、内閣支持率の低下や、無党派層の支持離れに見られるように、政権に対する世論の風向きは厳しさを増しつつある。

このため、衆議院の解散時期については、今年前半、東京オリンピック・パラリンピックが終わるまでは、可能性は低いと言っていのではないか。これが現時点での個人的な見通しだ。

但し、政治は”生き物”、”小休止なし”、どのような展開をたどるのか?
まずは、今月20日、幕を開ける通常国会の与野党の論戦、攻防をじっくり見ていく必要がある。随時、リポートとして取り上げていきたい。