岸田政権は10月4日に発足から1年を迎えたが、報道各社の世論調査によると支持率が続落、いずれの調査でも支持と不支持が逆転している。
国会運営でも政府・自民党の連携不足から不手際が目立ち、政権運営は”袋小路”に迷い込んでいるようにみえる。
17日からは衆議院予算委員会に舞台を移し、一問一答方式の本格的な質疑が始まる見通しだ。与党関係者からは「旧統一教会問題で、野党の攻勢に防戦一方になるのではないか」と懸念の声も聞かれる。果たして、出口を見いだせるのか探ってみる。
旧統一教会問題、実行力に厳しい目
まず、11日に報道されたNHK世論調査の結果が、今の岸田政権を取り巻く状況を的確に表していると思うので、そのデータから見ておきたい(NHK世論調査10月8~10日実施)。
◆岸田内閣の支持率は38%で、3か月連続で下落が続いており、4割を割り込んで政権発足以来、最も低くなった。不支持率は43%で、支持と不支持が初めて逆転した。
◆9月27日に実施された安倍元首相の国葬について、政府が実施したことを「評価する」は33%に止まり、「評価しない」が54%で上回った。国葬が終わったあとも評価は上がらなかった。
◆旧統一教会問題の岸田首相の対応については、「評価する」が18%に対し、「評価しない」が73%に達した。山際経済再生相の説明には「納得していない」が77%と圧倒的多数を占めた。
◆政府の物価高騰対策については、「評価する」が45%、「評価しない」が47%で、評価が分かれた。
◆発足から1年がたった岸田内閣の実績については、「評価する」が38%に対し、「評価しない」が56%で上回った。
岸田内閣は発足以来、高い支持率を維持してきたが、7月の支持率59%をピークに急落した。その主な要因は、岸田首相が決断した安倍元首相の国葬と、旧統一教会問題への対応にあることが、先のデータからも読み取れる。
また、岸田内閣を支持しない理由をみてみると、これまで「政策に期待が持てないから」が3割台でトップだったが、10月からは「実行力がないから」が39%に達し最多になった。9月に比べて、10ポイントも増えた。
7月は20%、1年前は12%だったので、「岸田首相の実行力」に疑問や不満を抱いている人たちが急増していることも読み取ることができる。
与党の国会運営、目立つ混乱と防戦
次に国会運営面で、政府と自民党との連携が不足し、信じられないような不手際が相次いでいるのも最近の特徴だ。
臨時国会は3日に召集され、岸田首相の所信表明演説と、これに対する各党の代表質問が3日間行われた。
続いて、衆参の予算委員会に舞台を移して、一問一答方式の本格的な論戦が始まるところだが、鈴木財務相の国際会議出席が政府・自民党間で共有されていなかったため、予算委員会の日程が設定できなくなった。
衆議院の予算委員会は17日からになる見通しで、この間は一部の委員会を除いて、国会は”開店休業状態”が続く異例の事態になっている。
国会日程を巡っては、これより先、野党側に召集日を伝達した際にも、会期幅が決まっておらず、野党側の反発を受けて、あわてて政府・与党の幹部が協議して決定するといった事態も起きた。政権与党の統率力に疑問符がつく事態だ。
旧統一教会、政権与党の体制もカギ
さて、これからの注目点だが、まずは、17日から始まる予定の予算委員会の質疑のゆくえだ。
野党側は、旧統一教会の問題を巡って、新たな事実が次々に明らかになっている山際経済再生担当相と、説明文書を出すだけで記者会見などに応じない細田衆議院議長について、岸田首相の対応や政治姿勢を厳しく追及する構えだ。
これに対して、岸田首相は、旧統一教会の問題は、政治家個人が自ら点検、説明することが基本だとかわす一方、物価高騰対策が当面の最重要課題だとして、電気料金の抑制に巨額な支援金を出すなど大型の経済対策を打ち出して、反転攻勢をめざすものとみられる。
こうした与野党の論戦と政府の経済対策を、世論がどのように評価するか、国会後半の展開にも影響する。
もう一つは、岸田首相の政権運営だ。夏の参院選挙に大勝したあと、いち早く自ら決断した安倍元首相の国葬方針が、世論の批判を浴びた。また、時期を早めた内閣改造も新たに任命した閣僚などに旧統一教会との接点が明らかになるといった誤算が続いている。
政界の関係者の間では、岸田政権の中枢に問題があるのではないかといった見方や、官邸と自民党幹事長室、国会対策委員長との連携不足や足並みの乱れを正す必要があるとの指摘も聞く。
さらには、安倍1強体制が崩れ、今の政権与党にはそれに代わる新たな柱・体制が整っていない点に問題の核心があるといった意見も聞かれる。
このようにみてくると、まずは、世論が大きな関心を寄せ、政権の基本姿勢にかかわる旧統一教会問題について、岸田政権がけじめをつけることができるかどうか。その上で、政策課題、難題の解決に向けた具体策と道筋を打ち出すことがカギを握っているのではないか。
また、政権運営をめぐる問題は、政権与党内の権力構造に関わる根の深い問題なので、岸田政権が、袋小路から脱出する出口を見いだすのは容易ではないのではないかとの見方をしている。臨時国会は、前半の山場を迎える。(了)
★追記(15日14時45分)国会日程については、岸田首相と全ての閣僚が出席する予算委員会が、衆議院で17日と18日、参議院で19日と20日にそれぞれ開かれることが14日までに決まった。