不祥事続出と”政権与党嫌われ現象”

新型コロナ対策の緊急事態宣言は10都府県で延長されることになったが、感染者数は全国的に減少傾向がはっきり現れてきた。

一方、報道機関の世論調査によると菅内閣の支持率は、2月も不支持が支持を上回る逆転状態が続いている。加えて、2月はこれまで安定していた自民党の政党支持率も減少し、内閣支持率、政党支持率ともに減少、菅政権発足以降最低を記録したのが特徴だ。

こうした背景をどう見るか?政府のコロナ対応は、与党支持層を中心に評価する意見が増え始めているが、今度はコロナ対応以外の要因、具体的には相次ぐ不祥事・失言問題が影響し始めた。女性蔑視の発言だと内外で大きな批判を浴びた東京五輪パラリンピック組織委員会の森会長は12日、辞任に追い込まれた。

自民支持層の支持離れ、別の表現をすれば”政権与党・自民党の嫌われ現象”が起き始めているのではないか。世論調査のデータを分析しながら、最新の政治事情を探ってみたい。

 支持30%台、不支持逆転2か月連続

菅内閣の支持率について、NHKの2月世論調査でみてみると◆支持が38%に対して、◆不支持が44%となっている。1月に比べると支持は2ポイント下がり、菅内閣としては初めて30%台にまで下がった。不支持は3ポイント増えた。不支持が支持を上回る逆転状態は2か月連続になる。(調査実施2/5~7 データはNHK NEWS WEBより)

支持層別にみると◆自民支持層の支持の割合は65%、安倍政権では70%から84%程度だったので、相当低い。◆最も多い無党派層では支持が22%に止まる。

こうした支持率の下落だが、これまでは「政府のコロナ対応の評価」と連動してきた。つまり、政権発足から去年11月までは「評価する」が過半数を占めていたが、12月に41%、1月が38%と急落したのに比例して、内閣支持率も急降下した。

これに対して、2月は「感染の不安」を感じる人の割合が下がり、政府のコロナ対応の評価も「評価しない」が52%と多いものの、「評価する」が44%、前月に比べて6ポイント増えてきた。与党支持層を中心に感染防止の法改正やワクチン接種の取り組みを評価する意見が増えている。

このように政府のコロナ対応の評価は改善しているが、内閣支持率は下落が続いている。その理由だが、政府のコロナ対応の評価とは別の要素、「不祥事続出」が影響しているものとみられる。

 日替わり不祥事、菅政権を直撃

政権にまつわる不祥事や失言だが、2月に入って主なものだけ挙げてもその多さに改めて驚かされる。◆緊急事態宣言下の深夜まで銀座クラブ通い。自民党議員3人が離党、公明党議員が議員辞職。◆参院選買収事件で河井案里・参議院議員が議員辞職。◆新型コロナ接触アプリの不具合、4か月も放置判明。◆菅首相長男が総務省幹部を接待との報道。◆東京五輪パラ組織委の森会長が女性蔑視発言、その後撤回・謝罪。二階幹事長、ボランティア辞退に関する発言に批判。◆森会長は12日辞任に追い込まれた。

与党議員の深夜クラブ通いに始まって、古典的大型選挙買収事件の”現代版”、デジタル標榜政権がデジタルに弱い行政実態、首相子息への官僚の忖度疑惑。日替わりのようにスキャンダルが相次ぎ、菅政権を直撃している。こうした不祥事が、折角のコロナ好転分を帳消しにしているとみられる。それにしても、これだけの不祥事で、支持率が38%で止まっているのが不思議な気もする。

 自民支持率 低下  ”嫌われ現象”

こうした不祥事は、自民党の政党支持率にも影響を及ぼし始めた。自民党の支持率はこれまでは安定した高さを保ってきたが、2月は35.1%、前月から2.7ポイント下がった。逆に無党派層は、1.8ポイント増えて42.3%となった。

菅政権が発足した去年9月の自民支持率は40.8%だったので、5か月で5.ポイント余りも下がったことになる。つまり、内閣支持率の低下に続いて、自民党の支持率も追いかける形で下がりはじめた。そして、内閣支持率、自民党支持率ともに菅政権発足以来、最低の水準に落ち込んだ。

自民党の長老に聞いてみると「自民党内には、党の支持率が下がっても野党の支持率が上がっていない。無党派に回っただけなので、大丈夫だとの見方もあるが、そうではない。無党派に回った層は、選挙では野党に投票する可能性が大きいからだ」とみている。

その上で、「これまで自民党が選挙に負けたときは、その前に”自民党は嫌いだ”というムードが広がっていた。選挙では、その時の政権与党・自民党が好きか、嫌いかが大きく左右する。”嫌いな政党”と言われないように細心の注意が必要だ」と警戒する。

この発言の意味するところは、例えば第1次安倍政権。当時、党幹部の失言や閣僚の不祥事が相次ぎ、選挙で敗北、退陣につながった。有権者に傲慢、おごり、お灸をすえたいと思われたことが敗因。最近の内閣支持率や政党支持率の低下は、”有権者の嫌いな政党現象”の前兆ではないかというわけだ。

 不祥事にケジメ 政権運営のカギ

以上の世論調査の分析から、これからの政治の動きをどう見るか。まずは、菅政権はコロナ対策の決め手として、ワクチン接種の大作戦にとりかかかる。この成否が菅政権のゆくえを左右する。これが今後の政治の見方の基本だ。

次にコロナ感染の押さえ込みには、一定の期間がかかる。その間に不祥事や、失言問題に明確なケジメをつけられないと、政権与党にとって”嫌いな政党現象”がさらに拡大・定着してしまう可能性もある。

当面は、森会長の発言と辞任の影響がどう出るか。菅政権や自民党への影響は相当、深刻ではないか。森氏は安倍長期政権を支えた自民党最大派閥の親分的存在。二階幹事長も大会ボランティアの辞退をめぐる発言で批判を浴びた。自民党長老2人の古い考えや体質。その長老2人に頭の上がらない現職首相のというイメージを多くの国民に残したのではないか。

菅首相がコロナ対策や今後の国会・政権運営で、どこまでリーダーシップを発揮できるのか。また、次の衆院選に向けて、改革姿勢や党の清新さを有権者にアピールすることは可能か。当面は、予算審議の論戦と4月末に行われる衆参の補欠選挙・再選挙、それに7月の東京都議会議員選挙が試金石になる。