五輪さなかの感染危機 問われる菅政権

東京オリンピックが開幕し日本勢の躍進が続いているが、東京都内では28日、新型コロナウイルスの感染者が初めて3000人を超え、2日連続で過去最多を更新した。

また、首都圏の神奈川、埼玉、千葉3県でも過去最多となったのをはじめ、全国でも最多の9576人の感染が確認された。

こうしたオリンピックさなかの感染危機に対して、政府や東京都はどのように対応しようとしているのか、どんな取り組みが問われているのか考えてみたい。

 宣言効果みられず シナリオ崩れる

東京都に4度目の緊急事態宣言が出されたのが今月12日で、この日の新規感染者は502人だった。その後も感染拡大に歯止めがかからず、オリンピック開幕当日の23日には1359人人まで拡大した。

そして、オリンピックが続いている27日の2848人に続いて、28日には3177人と初めて3000人を超えて、2日連続で過去最多を更新した。

緊急事態宣言の発出で夜間の人出は減少しているのだが、減少幅が小さいことや、感染力が強いデルタ株に急速に置き換わっていることなどが影響して、緊急事態宣言の効果がみられない。

また、政府や東京都は、緊急事態宣言の発出で感染者数を大幅に減らし、東京五輪・パラリンピックを「安全安心な大会」として開催することをめざしてきた。しかし、感染者数が減少するどころか、逆に爆発的に急増しており、感染抑制シナリオの前提が崩れた。

 感染抑え込み具体策打ち出せず

それでは、こうした感染危機拡大に政府や東京都はどのように対応しようとしているのか。

小池知事は28日、「デルタ株の影響を考えると、若者や中高年の世代にワクチンを早く行き渡らせることが重要だ」と強調するとともに「ぜひ、不要不急の外出を控えてください」といつもの呼びかけを繰り返した。

一方、菅首相は27日夕方、関係閣僚と対応策を協議した後、記者団に対して「強い危機感を持って、感染防止にあたっていく」として、国民に不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。また、東京オリンピックについては「人の流れは減っており、心配ない」として、中止の考えはないとの認識を示した。

こうした菅首相と小池知事の発言からは、過去最多の感染者数に対する危機感が伝わってこない。また、国民が最も知りたい、”急増する感染拡大に対して何をするのか”という問いに、直接答える内容になっていない。

政府のこれまでの対策をみていると、ワクチン接種以外、ほとんどが従来からの対策の繰り返しで、手詰まり状態に陥っている。今回もワクチン接種が行き届くまでの間に、具体的にどんな対策を打ち出すのか、対策の方向性も示すことができていない。

 問われる菅政権の感染危機対応

それでは、これからどんな動きになってくるか。まず、神奈川、埼玉、千葉の3県の知事は、今の「まん延防止等重点措置」から、「緊急事態宣言」を出すよう要請する方向で調整を進めている。

政府は、要請があれば速やかに検討したいとしているので、今週中には3県に緊急事態宣言適用が決まる見通しだ。問題は宣言を出す場合、具体的で実効性のある対策を打ち出せるか、政府と自治体とが連携した体制をとることができるかどうかが問われる。

一方、東京オリンピックについては、菅首相は先に触れたように大会中止は考えていないことを明らかにした。選手や大会関係者から感染者は出ているが、クラスターはこれまでのところ発生していない。

但し、来月8日のオリンピック閉会日まで感染状況がどのようになるか。さらには、来月24日から予定されているパラリンピックを開催できるか、医療提供体制の状況と合わせて、リスクの評価が焦点になる。

一方、感染対策の切り札とされるワクチン接種については27日現在、1回目の接種を終えた人が37%、2回目接種が26%まで進んでいる。海外では接種率が1回目で40%に達すると、感染者数の減少傾向が表れるとの報告もあり、日本の場合どうなるかが注目される。

ワクチン接種については、供給不足から政府は、一定の在庫があると見なした自治体に対し、配分量を削減する方針を打ち出し、自治体側が強く反発していたが、この方針を撤回するなどの混乱も続いている。

こうした中で、今回、感染急拡大の第5波を何とか抑え込めるか。東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、ワクチン接種の進捗、さらには菅首相の政権運営や政治責任にも影響を及ぼすことになる見通しだ。