過去の政府答弁と矛盾、検事長定年延長問題

東京高検検事長の異例の定年延長問題で、政府が延長の根拠にしていた国家公務員法の定年制の規定について、過去の政府答弁では「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁していたことが明らかになった。

これは、2月10日の衆議院予算委員会での質疑の中で取り上げられたもので、政権の対応と、過去の政府答弁との矛盾が明らかになった。新たな指摘なので、前号のブログに続いて、この問題を取り上げる。

 異例の定年延長

最初にこの問題、手短におさらいをしておくと東京高検の黒川弘務検事長は、2月に63歳の定年に達し退職するものと見られていたが、政府は直前の1月31日の閣議で、黒川検事長の勤務を半年間延長する人事を決定した。

検察官の定年は、検察庁法で検事総長は65歳、それ以外は63歳と定められている。但し、検察庁法には定年延長の規定がないとして、政府は国家公務員法を適用して、今回の定年延長を決めた。

こうした政権の対応は、これまでにない異例な対応で、次の検事総長に起用するための措置ではないかとの見方も出されている。

 1981年の政府答弁と矛盾

10日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の山尾志桜里衆議院議員が、この問題を取り上げた。

山尾氏は、国家公務員法の改正案を審議した1981年4月の衆議院内閣委員会の議事録を基に、当時の政府委員で人事院幹部が「検察官に今回の国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁したと指摘。当時も、国家公務員法で検察官の定年を延長させることは想定しておらず、「政府の今回の人事は、法的根拠がないのではないか」と追及した。

 森法相「詳細は知らず」

これに対して、森法相は「議事録の詳細は知らない」とのべた上で、「検察官も一般職の国家公務員であり、国家公務員に勤務の延長を認める制度の趣旨は検察官にも及ぶ」と従来の答弁を繰り返した。

 政権対応と政府答弁の違い

以上の質疑を聴くと、安倍政権の今回の対応・説明と、過去の政府答弁との間には違い、矛盾があると判断するのが自然だ。

もちろん、新たな解釈を打ち出すこともありうると思うが、従来の政府答弁を踏襲しているのか、それとも新たな判断に転換することにしたのか、事実関係をはっきりさせておく必要がある。

現役記者時代の委員会取材でも、政府答弁は新たな判断か否かを関係者に確認し、原稿にするかどうかの判断基準にしていたからだ。

それだけに、こうした事実関係を明確にした上で、今回の人事をどのように評価・判断するか、国会で国民にわかりやすい議論を続けてもらいたい。