新「立憲民主党」が問われるもの 

立憲民主党や国民民主党などが合流してつくる新党の代表選挙が10日に行われ、新しい代表に枝野幸男氏が選ばれた。新党の名称は、枝野氏が提案した「立憲民主党」に決まった。新「立憲民主党」は15日に結党大会を開く。

一方、政権与党の自民党では、ポスト安倍の総裁選挙が進行中で、菅官房長官が優位な情勢だ。14日の投開票で菅氏が新総裁に選出される見通しで、7年8か月ぶりに総理・総裁が交代する。

コロナウイルスの感染状況と国民生活・経済への影響がどうなるか。私たち国民の側も、政治の舵取りや与野党の動きをしっかり見ていく必要がある。

そこで、新たに結成された「立憲民主党」は、どんな意味や役割を持っているのか。何が問われているのか考えてみたい。

 野党第1党、100人台の規模達成

さっそく、新「立憲民主党」の意味から見ていくと、弱小野党のバラバラ状態が続いてきた中で、衆参100人規模の野党第1党にまとまった点が大きい。

新党の内訳は、従来の立憲民主党88人、国民民主党から40人、無所属21人、衆参合計で149人。100人を超える野党第1党が結成されるのは、3年前・2017年10月の民進党以来になる。

今の衆議院の選挙制度は、政権交代をめざす複数の政党が競い合う、政党本位の選挙が基本だ。

与党は、自民・公明の巨大与党。対する野党第1党が政権交代をめざすためには、衆議院で3ケタの野党勢力が必要とされてきた。今回、旧民進党の復活と揶揄されながらも合流で106人、ようやく政権交代に挑戦できる条件を満たしたことになる。緊張感のある選挙に近づくという点で、評価している。

 支持率4%台からの出発 乏しい存在感

さて、大きな野党が結成された言っても、その前途は極めて厳しい。まず、世論の支持が低く、存在感が乏しいからだ。

8月のNHK世論調査で政党支持率をみると◇立憲民主党4.2%、◇国民民主党0.7%、合計4.9%。共産、社民を加えた野党4党の合計でも7.8%に過ぎない。

これに対し、◇自民党36.8%、◇公明党3.2%。与党合計で40%。野党4党合計とは、5倍もの開きがある。

立憲民主党幹部に支持率の低さの理由を聞くと、民主党政権時代の失敗の影響を挙げる。しかし、それだけではない。立憲民主党は一時は10%台の支持を得た時もあったが、半分以下まで下落。国民民主党の支持率は最高でも1.5%と低迷が続いてきた。

このように”存在感”は極めて乏しい。この「現状」を十分、認識して再出発しないと新党の前途は開けない。

世論との関係で言えば、自民党を上回る”第1党”は、無党派層の43.3%。野党は、以前は選挙でこの層を大幅に取り込むことができていたが、最近は支持が広がらない。この無党派層のへ支持を広げることが、新党の大きな課題だ。

 コロナ激変時代、具体策で浮上も

今後の政治や政党のゆくえに大きな影響を及ぼすのが、コロナ問題だ。安倍首相が退陣に追い込まれたのも持病の悪化もあるが、コロナ対策が後手に回ったことが大きく影響している。

逆に言えば、政権や政党の側が新たな対策を打ち出し、効果が上げることができれば、世論の支持を大きく拡大する可能性がある。

今回の合流新党の代表選の論戦と、ほぼ同時に進んでいる自民党の総裁選の論戦を比較すると、どうか。私個人は、感染拡大防止については、合流新党の論戦で示された対応策の方が、具体的で説得力があるとの印象を受けた。例えば、PCR検査の拡充、保健所などの検査と医療体制の整備、地域を限定した休業要請と補償のセット論などだ。

これから年末に向けて、国民生活や経済の立て直しに向けて、政権与党とは異なる政策、対応策を打ち出せるかどうか。具体的には、代表選の議論で示された子育て・医療・教育などの公共サービスの拡充や、消費税や所得税減税などをどこまで説得力のある形で示せるか。具体的で有効な対応策を打ち出すことができれば、野党の存在が大きく浮上する可能性もある。

 衆院選挙 候補者1本化できるか

今回の合流は、近づく衆院解散・総選挙を乗り切るためのねらいが大きい。安倍長期政権の下で、野党は国政選挙6連敗中だ。

衆院選挙で反転攻勢ができるかどうか。そのためには、衆院の小選挙区で野党候補の1本化調整がどこまで進むかがカギを握っている。

野党は、前回、前々回の衆院選挙も安倍首相に不意打ちの形の解散を仕掛けられて大敗したが、根本は候補者擁立・選挙準備が遅れていたことが大きい。今回も289の小選挙区のうち、野党第1党が候補者を擁立できていない「空白区」は90近くにのぼる。

一方で、合流新党に参加しなかったメンバーが新「国民民主党」を結成する。れいわ新選組も独自候補の擁立を進めている。さらに共産党は多くの小選挙区で独自候補を擁立する。野党候補の乱立を防いで、与党と1対1の対決の構図に持ち込めるか。野党第1党の役割として、候補者の1本化調整ができるのかどうかが問われている。

このほか、新党は足下の党内融和が進むのかどうか、15日の結党大会に向けて、新たな執行部体制の人事を控えている。このように枝野「立憲民主党」は内外に多くの課題・難問を抱えており、新代表としての手腕・力量が試されることになる。

最後になるが、政権与党の自民党内では、新政権発足の勢いに乗って早期の年内解散を求める空気が強まっている。今後、自民・公明の与党間の綱引き、与野党の駆け引きが一段と激しくなりそうだ。

私たち有権者の側からみると次の解散・総選挙は、7年8か月に及ぶ安倍長期政権の終焉、新型コロナ危機の中で、国民生活や経済をどのように立て直していくのかを選択する選挙にする必要がある。

そのためには、政党の側が、設計図や構想を示して議論した上で、国民に信を問うプロセスが極めて重要だ。”党利党略”の動きには鉄槌を下し、与野党の徹底した論戦に耳を傾ける。その上で、私たちが自ら判断・選択できる政治を粘り強く求めていきたいと考える。