立民代表選の争点、何が問われる選挙か

野党第1党・立憲民主党の代表選挙が19日告示され、30日の投開票に向けて選挙戦が始まる。

今回の代表選は、先の衆院選で議席を減らした責任をとって辞任した枝野前代表の後任を選ぶもので、国会議員だけでなく、地方議員や党員なども参加して行われる。

野党の代表選挙は、与党の総裁選と違って政権に直結しないため、国民の関心は必ずしも高くはないが、政治に緊張感をもたらすためにはどんな野党になるのか、特に第1党のあり方は、国民にとっても大きな意味を持つ。

今回の代表選は、枝野前代表が打ち出した共産党などとの共闘路線の是非が大きな焦点になるとの見方が強いが、どうだろうか。

私個人は、野党共闘の問題もあるが、それ以前に野党第1党としての役割の認識や、その役割を果たすための党の態勢の立て直し、戦略の構築こそが問われているのではないかと考える。

野党共闘の問題は、新代表の下に検討委員会を設けて結論を出す方法もあるのではないか。

来年夏には参議院選挙が行われる。どんな野党第1党をめざすのか、政権構想や重点政策を明確にしたうえで、野党共闘のあり方などを決めていくのが本筋ではないかと考える。こうした理由や背景などについて以下、説明していきたい。

 小選挙区と比例で異なる効果

まず、先の衆院選挙の結果を確認しておきたい。自民党は選挙前より議席を減らしたものの、絶対安定多数の261議席を確保、公明党の32議席と合わせて293議席を獲得したので、勝利したといえる。

一方、立憲民主党は96議席で、選挙前の110議席から14議席減らし敗北した。共産党は10議席で2議席減らした。これに対し、日本維新の会は前回より4倍近い41議席を獲得して躍進、国民民主党も3議席多い11議席を獲得した。

このうち、立憲民主党の議席の内訳だが、小選挙区では、選挙前の48議席から9議席増やして57議席を獲得したのに対し、比例代表では62議席から39議席へ23議席も減らした。

小選挙区では、1万票差以内の接戦となった選挙区がおよそ30にも上ったことを考えると善戦健闘、野党候補1本化の共闘は一定の成果を上げたとも言える。

比例代表では、立憲民主党は前回からわずかに多い1100万票に止まった。これに対し、日本維新の会は800万票で、前回より460万票余りも増やし、国民民主党も新たに260万票近い得票、「れいわ」も220万票を獲得した。

こうした票の流れは前回、野党第1党も合流して結成された旧「希望の党」が集めた960万票が立憲民主党には向かわず、維新、国民、れいわ3党に回ったとみることもできる。

このため、立憲民主党が比例代表で議席を大幅に減らしたのは、共産党との共闘路線を有権者が警戒して、立憲民主党以外の政党に投票したためではないかという見方も出されている。

このように比例代表選挙と小選挙区とで、野党共闘の効果は分かれている。

 野党のあり方、旗印や存在感に弱さ

それでは、国民は、野党第1党の立憲民主党をどのように評価しているのか、報道各社の世論調査のデータでみてみたい。

報道各社の調査で、自民党の支持率は30%台後半の水準にあるのに対して、立憲民主党の支持率は、5~6%台、1ケタの水準で共通している。

また、年代別に見ると10代から30代では、自民党が4割から30%台後半で高いのに対して、立憲民主党はその10分の1,1ケタ台と低い。働く世代40代、50代でも大きく水をあけられている。60代、70歳以上の高齢世代でようやく10%台に達するが、それでも自民党との差は大きい。

さらに比例代表選挙の投票予定先でも、自民党がおよそ30%に対して、立憲民主党は11%台と3分の1に止まっていた。望ましい選挙結果についても「与党と野党の逆転」は11%程度に対し、「与党と野党の勢力伯仲」が49%で最も多かった。(10月23,24日共同通信調査)

枝野前代表は「政権選択選挙」と位置づけ、共産党とは「閣外からの協力」に止めているとのべたが、与野党の勢力が逆転した場合、政権の枠組みなどはどうなるのか、詳しく説明する場面もなかった。

このため、有権者の側は、野党共闘や政権交代を訴えられても「現実的な選択肢」として受け止める人は少なかったのではないか。

また、「立憲民主党は何をする政党か、自民党とどこが違うのかの旗印がわからない」。「自民党政権はコロナ対策で、失敗と後手の対応が続いたが、野党の存在感も感じられない」といった声も数多く聞いた。

こうした国民の評価を基に考えると、立憲民主党が衆院選で議席を減らしたのは、野党共闘というレベルの問題ではなく、何をめざす政党か、構想や重点政策も理解されておらず、政権の受け皿として認められるまで至っていない点を認識する必要があるのではないかと考える。

 魅力ある野党、新風を巻き起こせるか

今回、自民党は絶対安定多数を維持したが、何とか接戦をしのいで議席を守り抜いた「薄氷の勝利」というのが実態だ。

一方、有権者の側は「魅力のある野党や新党ができれば、支持する」「野党第1党は、政界に新風も巻き起こし、政治に緊張感を取り戻す役割」を果たしてほしいという期待は根強いものがある。

このため、立憲民主党が求められているのは「代表の顔」を顔を変えるだけでなく、◆立憲民主党は何をする政党なのかの旗印、政権構想を明確にすること。◆コロナ激変時代に取り組む重点政策。子育て、教育、雇用、知識集約型産業といった、自民党とは異なる重点政策をはっきりさせる必要があるのではないか。

そのうえで、◆来年夏の参議院選挙を野党第1党として、野党結集を進めていく具体的な道筋を明らかにすることが重要ではないか。参院選の1人区は、野党ができるだけまとまって戦わないと、政権与党側の1人勝ちになる公算が大きい。

◆共産党など野党共闘のあり方は、新しい代表の下に政権構想委員会といった組織を設けて、検討していくことも1つの方法ではないかと考える。

代表選挙の告示が近づいているが、立候補を検討しているのは、◆泉健太・政務調査会長、◆大串博志・役員室長、◆小川淳也・国会対策副委員長、◆西村智奈美・元厚生労働副大臣の4人だ。

いずれも中堅の顔ぶれだが、単に代表の顔が若返るだけでなく、コロナ激変時代の新たな構想や重点政策、それに自民党に対抗できる、もう1つの大きな政治の軸を打ち出せるような代表選挙をみせてもらいたい。