緊急事態宣言の見方・読み方は?

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している事態を受けて、安倍首相は7日夕方、政府の対策本部で、東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を行った。宣言の効力は5月6日までで、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡が対象になる。

そこで、この「緊急事態宣言」の見方・読み方。私たち国民はどのように受け止め、評価、対応していけばいいのか考えてみたい。

結論を先に言えば、「過剰な警戒は不要、過大な期待も禁物」、冷静に新型感染症を抑制していく。「目標の設定」を明確にして、国民の合意を広げながら取り組みを進めていくことが大事だ。

具体的には、◇不要な外出の自粛徹底で「新たな感染者を減らすこと」。
◇「医療崩壊を防ぐこと」。そのために「検査体制の拡充」と「重症者の入院・診療体制の整備」。
◇それに「社会活動・経済活動の継続と、自由な議論ができる日本方式」。

この3つの目標を国民が共有しながら、危機を克服していきたいと考える。

過剰な警戒は不要、過大な期待も禁物

今回の「緊急事態宣言」は、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて出される。物々しい印象を受けるが、日本の場合は欧米諸国などに見られるような外出禁止、多額な罰金、ロックダウン・都市封鎖といった強い権限を与える法律ではない。国民の心理面に影響を及ぼす効果は予想されるが、強制力は弱い。

このため、端的に言えば「過剰な警戒は不要、他方、過大な期待も禁物」という見方をしている。独断専行に陥る仕組みにはなっていない。他方、一刀両断、一挙に問題解決といった期待もできない。

これまで首相や知事が要請したことと似たような内容も多くなる見通しだ。「要請、お願い」レベルから、「法律に基づく要請、指示、公表」に一歩踏み込んだ措置といったところではないかと見ている。

 目標の設定と国民の協力

さて、緊急事態宣言は、総理大臣が期間や地域を指定して宣言を出し、これを受けて、各知事がそれぞれの都民・県民に対して、感染防止に必要な「緊急事態措置」を決定、要請する仕組みになっている。

そこで、重要なことは、この緊急事態宣言・措置で具体的に何をめざすのか。何を最重点に取り組むのか、「目標の設定」を明確にして、国民に説明、協力を得ながら実行していけるかがカギになる。

 外出自粛の一層の徹底

今回は新型ウイルスとの戦いでは、”集団感染”を防ぎ、”感染爆発”につながらないようにすることが重要だ。効果があるのは、まずは「不要不急の外出の自粛を一層徹底すること」。これによって「新たな感染者数を減らすこと」。地味な取り組みだが、最も効果的であり、第1の目標だ。

 医療崩壊を防ぐこと

第2は、「医療崩壊を防ぐこと」。そのためには、これまで何度も強調してきたように「PCR検査の拡充」。検査能力は高まったが、実際の検査件数が増えない。感染の疑いがある人が増えてくると、検査件数を増やして感染者を早期に発見、対応していかないと感染拡大を押さえ込むのは難しくなる。

もう1つが、重症者を早期に発見、隔離・入院させていく「重症者の診療体制の整備」。専門家が、感染拡大に備えて、受け入れ病床の確保を繰り返し強調してきたが、病床の不足が指摘されている。

このため、軽症者などは借り上げの宿舎・ホテルなどに移ってもらい、重症者の病床確保が必要になるが、こうした対応の遅れが懸念されている。今回、緊急事態宣言に踏み切ることになった背景にも、こうした診療体制の整備の遅れと医療崩壊を避けたいねらいがあるとみられる。

政府は、こうした検査体制の拡充と、重症者の診療体制の整備について、緊急経済対策の中で、医療機材の整備、人材の手当などに思い切った予算の投入をできるかが問われている。

 社会、経済、自由な議論の日本方式

第3は、緊急経済対策が出された後も、社会活動や経済活動への影響を最小限に止めるともに、自由な議論、国民の権利の尊重といった日本型の危機管理方式で乗り切っていきたい。

今回の特措法の一部には、医療施設を開設するため、所有者の同意がなくても土地などを使用できる強い権限の規定もある。あるいは、緊急事態宣言をきっかけに基本的人権などが侵害されるおそれがあると警戒する意見があるのも事実だ。

この特措法には、基本的人権の尊重の規定も盛り込まれている。感染症の危機乗り切りに徹していくことを確認し、新たな取り組みをスタートさせていきたい。

日本で感染者が初めて確認されたのが1月16日。政府の対策本部が設置されたのが1月30日。2か月余り経って、今回の緊急事態宣言の発令となる。この間、安倍政権の対応・危機管理はどうだったのか、今後、しっかり検証していく必要がある。(なお、4月7日17時30分から開かれた政府の対策本部で、安倍首相は緊急事態宣言を行いましたので、冒頭部分の表現を一部、修正しました)