”コロナ失政”東京に4度目緊急宣言

政府は、新型コロナウイルスの感染再拡大が続く東京都に、4度目の緊急事態宣言を出すことを決めた。沖縄県の緊急事態宣言も延長し、期限はいずれも8月22日まで。まん延防止等重点措置については、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を対象に同じく22日まで延長することになった。

この決定を受けて、東京オリンピックは、東京など1都3県のすべての会場で観客を入れずに開催されることになった。こうした決定をどうみたらいいのか、考えてみたい。

 コロナ対策の失敗、”失政”

今回緊急事態宣言をどうみるか、結論を先にいえば、菅政権のコロナ対策が行き詰まり、宣言発出に追い込まれたとみている。

まず、3度目の緊急事態宣言は2回にわたって延長され、6月21日に宣言を解除したばかりだったが、1か月も経たないうちに4度目の宣言に追い込まれたことになる。解除に当たっては専門家から慎重論が出されたが、政権側が押し切った。

また、今年1月18日に召集された通常国会の施政方針演説で、菅首相は「新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させる」と強調するとともに「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と表明していた。

さらに、昨年3月に大会延期を提案した際、当時の安倍首相は「完全な形」での開催を表明していた。後継の菅首相は、大会開催から逆算して、ワクチン接種などの対策を徹底し、感染抑え込みを実現する責任を負ってきた。結果は、感染が拡大し、無観客開催に追い込まれたので、コロナ対策は失敗、失政と言わざるを得ない。

 五輪「無観客」は世論配慮か

次に東京五輪が「無観客」開催になったことについてだが、菅政権は最終段階まで、制限付きながらも観客を入れての開催を模索していたとみられる。

最終的に「無観客」を決断したのは、世論の側が感染拡大を心配して、開催に慎重・反対論が根強く、こうした点を配慮したためではないか。先の東京都知事選で、自民党は過去2番目に少ない議席に終わり、五輪の中止や延期を主張した野党が議席を伸ばしたことも影響したものとみられる。

さらに、秋には衆議院議員の任期が満了、衆議院選挙が控えており、五輪をきっかけに感染急拡大といったリスクは避けたいという判断も働いたのではないかと、個人的にみている。

 五輪、感染抑制の総合対策が必要

東京五輪は「無観客」での開催が決まったが、問題の核心部分、つまり、「感染の再拡大で緊急事態宣言が出される中で、オリンピックを開催して大丈夫か」という問題は残されたままだ。

菅首相は8日夜の記者会見でもワクチン接種が決め手だとして、最優先で取り組む考えを強調した。ワクチン接種は重要だが、それだけで感染を抑え込めるわけではない。人流の抑制など根本的な問題を含めて、対策を練り直す必要がある。

また、繰り返される緊急事態宣言やまん延防止等重点措置と、政府・自治体の無策ぶりに国民は、うんざりしている。また、営業時間の短縮や酒類の提供停止が長期化する飲食店業界は、危機的な経営状態に追い込まれている。

コロナ対策は未知の分野で、対応が極めて難しいことは理解できる。失敗があることもやむを得ない。だからこそ、対策の点検、検証、総括が必要だが、菅政権にはそうした対応がなく、対策の見直しが進まないのが大きな問題点だ。

今、菅政権に必要なことは、東京都などの地方自治体と連携を強め、感染対策や医療体制の整備、決め手のワクチン接種をより促進させる必要がある。

また、国民生活の支援や、深刻な影響を受けている飲食店などに対する事業支援など総合的な対策を早急にまとめ、実行に移すことが問われている。

最後に、菅政権の今後の政権運営について触れておきたい。菅政権の政権運営の基本は、感染拡大を抑え込んだうえで、東京五輪・パラリンピックを成功させ、秋の衆議院解散・総選挙の勝利につなげることにあった。

ところが、今回、緊急事態宣言の発出、五輪は無観客開催に追い込まれた。政権運営の土台部分が崩れ始めた意味を持っており、菅政権は東京五輪・パラリンピック閉会後は、一段と厳しい状況に立たされる可能性が大きいとみている。