東京など1都3県に出されていた緊急事態宣言が、21日解除された。これによって、年明け1月7日に決定された緊急事態宣言は、2か月半ぶりに全面的に解除された。
政府は引き続き、国民に感染対策の徹底を求めるとともに、無症状の感染者を洗い出すため、繁華街などで無料のPCR検査を行うなどして、感染のリバウンド・再拡大防止に全力を挙げることにしている。
こうした対策で本当に感染を抑え込めるのかどうか、菅政権の対応に焦点を当てて、何が問われているのか考えてみたい。
後手と迷走 政権のコロナ対応
去年4月に出された最初の緊急事態宣言に続いて2回目となった今回の緊急事態宣言を振り返って見ると、菅政権の対応は”後手と迷走”の連続だった。
菅首相は年末、緊急事態宣言を出す必要はないと明言していたが、年末から年始にかけて新規感染者が急増、1月7日に1都3県の宣言発出に追い込まれた。続いて、1週間後の13日に大阪、愛知など7府県に拡大、さらに2月入って1か月延長を決定。その後、大阪など6府県が解除されたが、1都3県は2週間の再延長、ようやく今回、解除となった。
この間、コロナ対策の特別措置法の改正が実現した。行政罰の導入などを盛り込んだ法改正だが、本来、去年の第1波、第2波が収まった後、直ちに改正すべきだったとの指摘は与野党双方から聞かれた。このように菅政権の対応は、後手と迷走が続いた。
政権の司令塔機能の立て直し
菅首相は、緊急事態宣言の解除に合わせて、5つの柱からなる総合対策を打ち出した。飲食店の感染防止、変異ウイルス対策、ワクチン接種の推進、医療提供体制の充実などだ。
こうした対策はいずれも必要だが、菅政権の問題点は対策を打ち出しても、どこまで改善が進んでいるのか、停滞しているのか、実態がよくわからないことが多い。総理官邸が中心になって、対策を打ち出すだけでなく、進捗状況を点検し、目詰まりがあれば調整・是正していく「政権の司令塔機能」が弱い。
例えば、今回の対策でも打ち出された高齢者施設のPCR検査の拡充、無症状の感染者を洗い出すため繁華街などでの大規模なPCR検査、病症確保のための病院間の調整などはいずれも去年の段階から、必要性が指摘されてきた内容ばかりだ。
菅首相は官房長官時代、危機対応に手腕を発揮してきたと評価されてきたが、自らの政権では、対策の目詰まりが目立つ。各省庁を動かし、自治体や医療機関などとの連携・調整していく機能を強化、そのための政権の体制の立て直しが必要だ。
感染収束へ道筋の提示を
今回の総合対策に関連して、もう1つの注文は、こうした対策が進んだ場合、コロナ感染の収束の見通しはどうなるのか、道筋を示してもらいたい。国民にとって、”コロナ対応生活”は既に1年2か月、これからの生活はどうなるのか。事業者にとっては、今後の事業継続のためにも判断材料が欲しい。
一方、今月25日には、東京オリンピック・パラリンピック大会の聖火リレーが始まる予定だ。政府は、コロナ感染に対する安全対策を徹底させて開催する方針だが、世論調査によると国民の間では、開催に慎重・反対論も多い。それだけに大会の意義や安全対策を議論していく上でも感染収束の見通しなどが必要だ。
コロナ感染の収束には、ワクチン接種が決め手になる。政府のコロナ対策分科会の尾身会長は、先の参議院予算委員会で、正確な見通しは誰もできないと断った上で、次のような見通しを示している。
今の医療従事者に続いて、高齢者の接種が5月以降本格化し7月に終わると仮定するとその後、一般国民の接種が進む。その結果、今年暮れまでには、今よりも感染レベルが下がることが期待される。但し、12月頃もゼロにはならないので、収束は来年以降になるという見通しを示している。
こうした専門家の見通しなどを踏まえて、政府はどのような道筋を描くのか。正確な予測は困難だが、オリパラ大会前後の感染状況はどの程度を想定して準備を進めるか。社会・経済活動再開の条件や時期をどのように設定するのかといった見通しが欲しい。
アメリカのバイデン大統領は、7月4日の独立記念日までに生活の正常化に道筋をつける考えを表明した。菅首相も政権発足から半年が過ぎた。ワクチン接種を含めて感染収束への道筋や目標を示してもらいたい。
その上で、政権与党と野党が今後の感染対策の重点をどこに置くのか。また、社会・経済の立て直しをどのように進めていくのか、突っ込んだ議論をみせてもらいたい。