”逆風の岸田政権”臨時国会開会

夏の参議院選挙の後、初めての本格的な論戦の舞台となる臨時国会が3日召集され、岸田首相の所信表明演説が行われた。

臨時国会前半の最大の焦点は、旧統一教会と閣僚や自民党議員の関係をめぐる問題だ。野党側は、この問題を集中的に取り上げる構えなのに対し、岸田首相は踏み込んだ対応策を打ち出して、乗り切ることができるのかどうか大きな注目点だ。

続いて、10月中に物価高騰対策を盛り込んだ総合経済対策が取りまとめられ、11月には補正予算案が提出される。臨時国会の後半では、暮らしや今後の経済政策が論戦の中心になりそうだ。

岸田政権は4日に政権発足から1年になるが、安倍元首相の国葬と旧統一教会への対応をめぐって内閣支持率が急落している。果たして、この臨時国会を乗り切ることができるのかどうか、逆風が強まる岸田政権と臨時国会の見どころを探ってみる。

 旧統一教会問題、実態解明は進むか

まず、臨時国会の日程を確認しておくと、3日の岸田首相の所信表明演説を受けて、各党の代表質問が、5日から7日まで衆参両院の本会議で行われる。

通常はこの後、直ちに衆参両院の予算委員会の審議に入るが、今回は、G20財務相・中央銀行総裁会議に鈴木財務相が出席する関係で、予算委員会は17日からの週にずれ込む見通しだ。

こうした国会冒頭の論戦で、野党側は、国葬問題に加え、旧統一教会と閣僚や自民党議員の関係を集中的に取り上げ、岸田政権を追及する構えだ。

具体的には、安倍元首相は旧統一教会との関係で中心的な役割を果たしていたとして、実態を調べるよう求める方針だ。また、最大派閥・安倍派の前会長を務めていた細田衆院議長についても詳しい事実関係の説明を求めることにしている。

さらに山際経済再生担当相については、旧統一教会が主催して開いていた会合に出席し、教団トップの総裁と会っていたことが明らかになるなど関係が深いとして、更迭を求める方針だ。

これに対し、岸田首相は所信表明演説で「国民の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のための取り組みを進める」とのべ、いわゆる霊感商法はどの被害者救済へ法令などを見直す考えを明らかにした。

一方、安倍元首相の問題については「ご本人が亡くなっており、調べるのは限界がある」として、調査には応じない考えを示している。

但し、この問題をめぐっては、世論も政府・自民党の説明は不十分で、事実関係の調査などを求める意見が多数を占めている。これまでの対応では、内閣支持率の下落に歯止めがかからなくなる可能性もある。

このため、岸田首相としては、従来の方針を繰り返すのか、それとも世論の疑念を晴らすため、踏み込んだ考え方や対応策を明らかにするのか、大きなポイントになりそうだ。

 経済再生を最優先、国会日程はタイト

それでは、岸田首相は、この臨時国会をどのように乗り切ろうとしているのか。

岸田首相は、所信表明演説で「日本経済の再生が、最優先の課題だ」と位置づけ、大型の補正予算案を成立させ、物価高騰対策と経済再生で主導権を確保し、反転攻勢を図る考えだ。

具体的には、物価高騰対策として、今後さらなる価格上昇が予想される電力料金について、前例のない思い切った対策を講じる方針だ。また、構造的な賃上げに向け、人への投資策を5年間で1兆円に拡充するなどの考えを表明した。

問題は、電気、ガス料金の大幅な上昇に加えて、10月は食料品や飲料の値上げが最多となる中で、政府がどこまで有効な対策を打ち出せるかが、カギになる。

政府は10月中に総合経済対策を取りまとめ、第2次補正予算案の成立をめざしているが、予算案の提出は11月になる見通しだ。国民の側からは、もっと早く経済対策を実行に移せないのかといった声も出てきそうだ。

加えて、政府・与党にとって不安材料は、11月は外交日程が数多く入っており、岸田首相の海外出張で、審議日程がタイトなことだ。11月中旬以降、ASEAN関連首脳会議、G20首脳会議、APEC首脳会議が相次いで開かれる。

こうした外交日程が相次ぐ中で、衆議院の1票の格差是正のための10増10減法案や、コロナ感染危機に対応するための感染症改正案も提出される。

政府・与党は、臨時国会の召集時期と会期幅の調整が遅れるなどの連携不足が目立つ。それだけに重要法案の処理を順調に進められるかどうか、不安視する声が与党内から聞かれる。

以上の政治の動きを国民の側からみると、岸田政権は旧統一教会の問題では、実態を調べ、今後の対処方針を明確にして、ケジメをつけられるかどうか。

経済政策については、人気取りの予算のバラマキではなく、本当に必要とされる人たちへの支援になっているか。また、将来の経済社会の発展につながるのかを厳しく見極めていく必要がある。

臨時国会は、岸田政権のゆくえと同時に、安倍長期政権後の日本政治の方向を決める分岐点になるかもしれない。(了)