自民党派閥の裏金問題を受けて、国会は衆院予算委員会を舞台に岸田首相と野党側との間で、論戦と攻防が激しさを増しているが、国民は今回の問題をどのようにみているのだろうか。
NHKの2月世論調査が公表されたので、そのデータを基に世論の受け止め方や、岸田政権に及ぼす影響などを考えてみたい。(2/10~12日実施)
まず、2月の世論調査をみて感じるのは、自民党や岸田政権に対する国民の視線が一段と厳しくなっていることだ。
世論調査は▲まず、自民党内では派閥から受け取った収入を収支報告書に記載していなかった議員が相次いでいるが、こうした議員が説明責任を果たしていると思うかどうかを聞いている。
回答は◆「果たしている」はわずか2%で、◆「果たしていない」が88%に上った。
▲次に、自民党「政治刷新本部」が中間とりまとめで、派閥をカネと人事から完全に決別させることなどを決めたことについては、◆「評価する」が36%に対し、◆「評価しない」が58%と上回った。
▲さらに、自民党の政治資金パーテイーの問題に対する岸田首相の対応については、◆「評価する」が23%に対し、「評価しない」が69%、7割に達した。
こうした厳しい評価となった背景としては、この問題が発覚したのは去年11月中旬で、岸田首相も先頭に立って取り組むと年末に表明しながら、実態把握の調査を始めたのは今月に入ってからと、あまりの対応の遅さに対する国民のいらだちや不信が影響しているものとみられる。
内閣支持率25%、不支持率最高の58%
一方、岸田内閣の支持率は、先月より1ポイント下がって25%だったのに対し、不支持率は2ポイント上がって58%、去年12月と並んで岸田内閣で最も高くなった。政治資金問題への対応の評価が影響しているものとみられる。
岸田内閣は、支持率より不支持率が上回る「逆転状態」が、去年7月以降8か月続いている。また、政権運営に当たって危険ラインとされる30%を下回るのは、4か月連続になる。
さらに、支持率の中身をみても、政権の基盤となる自民支持層のうち、岸田内閣を支持している割合は、5割に止まっている。安倍政権や、岸田政権の発足当初は、7割から8割に達していたので、政権の体力が低下していることが読み取れる。
政治倫理審査会が焦点、紆余曲折も
それでは、岸田政権のこれからの対応はどうなるか。自民党は13日、党所属のすべての議員を対象に行ったアンケート調査の結果を野党側に伝えた。現職の国会議員82人に不記載があったというもので、既に明らかにされていた内容だ。
野党側は、調査が極めて不十分だとして、衆議院の政治倫理審査会を開き、安倍派の幹部や二階元幹事長らが出席して説明するよう求めており、自民党が政治倫理審査会の開催に応じるかどうかが、焦点になっている。
今回の世論調査で明らかになったように、国民は関係議員の説明を強く求めており、岸田首相や自民党側も最終的には、政治倫理審査会の開催には応じるとの見方が与野党の関係者から聞かれる。
但し、政治倫理審査会は、関係議員の招致を決めても強制力はないため、何人の幹部が応じるかどうかなどは不明で、紆余曲折があるものとみられる。
野党側は、自民党側が十分な説明責任を果たさない場合は、新年度予算案の審議に影響が出ることもありうると強い構えをみせている。
以上、みてきたように当面、政治倫理審査会の開催と、岸田首相がどこまで指導力を発揮できるかどうかが焦点だ。(了)