自民総裁選 党員投票が焦点 ”コロナ対応”も影響

秋の政局の焦点になっている自民党の総裁選挙は、9月17日に告示、29日に投開票を行う日程が、正式に決まった。

一方、岸田前政務調査会長は26日午後、自民党総裁選に立候補する意向を表明し、総裁選挙は、再選をめざす菅首相を含め複数の候補者で争われることが確実になった。

これによって、秋の政治日程は、自民党総裁選が先行し、続いて衆院選挙が実施されることが固まった。一方、コロナ感染は収束のメドが立っておらず、総裁選や衆院選挙にも大きな影響を及ぼし、波乱含みの展開になりそうだ。

 自民総裁選 党員投票がカギ

さっそく、自民党総裁選挙から見ていきたい。岸田前政務調査会長は26日午後、国会内で記者会見し、「感染拡大が長期化する中で、国民の間では、自分たちの声が自民党に届いていないと感じている。自民党が国民の声を聞き、幅広い選択肢を持つ政党であることを示すため、総裁選に立候補する」とのべ、総裁選挙への立候補を正式に表明した。

そのうえで、新型コロナ対策については、人流の抑制をはじめ、重症者用の病床や医療人材の確保などに強力に取り組むとともに、感染収束後の社会経済活動のあり方を検討するため、幅広い分野の専門家で構成する新たな組織を立ち上げるなどの考えを示した。

このほか、高市早苗前総務相や、下村政務調査会長も立候補に意欲を示している。このうち、高市氏は立候補に必要な推薦人20人が集まるかどうか、下村氏に対しては党三役は立候補を自重すべきだといった声が出されている。

総裁選をめぐって、菅首相は既に「時期が来れば、出馬する考えに変わりはない」と再選をめざす考えを表明している。

岸田氏は46人の議員が所属する岸田派の会長で、去年の総裁選に続いて2回目の挑戦になる。今回の総裁選は、菅首相と岸田氏を軸にした戦いになるのではないかという見方が出ている。

菅首相が選出された去年の総裁選挙は、安倍前首相の突然の辞任表明を受けて行われたため、自民党所属の国会議員393人と47都道府県連の各代表3人(計141人)だけによる「簡易型」の方式で実施された。

今回は任期満了に伴う選挙で、全国一斉の党員・党友投票と、国会議員投票の両方を行う「完全実施型」で行われる。具体的には、国会議員の383票と、同じく383票が党員投票に配分されるため、党員票の比重が増すことになる。

立候補者の顔ぶれがまだ固まっていないことと、投票日まで4週間もあるため、選挙情勢を論評できる段階にないが、自民党関係者に聞くと次のような見方をしている。

「菅首相は、二階幹事長をはじめ、安倍前首相や麻生副総理ら幹部クラスの支持を得ているので、国会議員票では優勢ではないか。一方、党員の評価は国民世論に近いので、菅首相にはかなり厳しい判断が示され、若手議員にも影響する。いずれにしても情勢は流動的で、激しい選挙になりそうだ」と予想している。

 衆院選は10月以降の公算大

それでは、衆院解散・総選挙はどうなるだろうか。

最初に主な日程を確認しておくと、◆9月5日に東京パラリンピックが閉幕、◆12日に東京などに出されている緊急事態宣言の期限を迎える。◆17日に自民党総裁選が告示され、29日に投開票が行われる。◆10月21日が衆議院議員の任期満了日になる。

菅首相は当初、東京パラリンピック閉幕後、直ちに解散・総選挙を断行する考えだったとされるが、感染急拡大や、横浜市長選で支援候補が大敗したため、見送らざるを得ない情勢だ。

それでは、どうなるのか、自民党の長老に聞くと「菅首相は、新型コロナ対策を最優先すると繰り返している。具体的な目標として、9月末に6割近くが2回接種を終える。10月初旬にすべての対象者の8割に接種できるワクチンを配分すると約束している。そうすると9月解散は見送らざるを得ず、10月前半の解散を模索するのではないか」との見方をしている。

その場合、菅首相は総裁選挙に勝利して求心力を回復したうえで、10月前半に臨時国会を召集、衆院を解散・総選挙に臨むケースが想定される。

但し、コロナ感染拡大が収束していない場合は、解散できずに10月21日の任期満了による選挙になるケースもある。

さらに、総裁選で菅首相が敗れるケースもありうる。新しい総理・総裁が選ばれ、政治日程は大幅に変わる。臨時国会が召集され、首相指名選挙が行われ、新内閣が発足した後、各党代表質問も行われる可能性がある。

このケースでは、新内閣が解散に踏み切る場合と、10月21日の任期満了選挙になる場合とがあり、投票日は11月14日、21日、28日が想定される。

このように、総裁選の結果によって衆院選の時期は、大きく変わることになる。

 コロナ対応が選挙情勢を左右

総裁選と衆院選の選挙情勢を左右する、もう一つ大きな要素として、コロナ感染状況と政府対応の問題がある。

国民の最大の関心は、感染爆発の抑え込みと医療崩壊を防ぐことにある。このため、総裁選と衆院選の争点も、感染抑制や医療提供体制の問題になるのではないか。

具体的には「菅政権のコロナ対策の実績評価」に焦点が当たり、選挙結果に大きな影響を及ぼす。菅政権は、医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種という3つの柱からなる対策を着実に進めると強調している。

9月12日の緊急事態宣言の期限の時点で、感染や医療体制はどうなっているか。10月から11月にかけてのワクチン接種の進捗と感染減少効果は現われているか。コロナ感染と医療体制の状況によって、秋の政局は激しく揺れ動くことになりそうだ。