“小泉・高市両氏先行、波乱はあるか”自民総裁選

石破首相の後任を選ぶ自民党総裁選挙は22日告示され、10月4日の投開票に向けて選挙戦が繰り広げられる。22日午前自民党本部で立候補の受け付けが行われ、茂木前幹事長(69)、小林元経済安全保障相(50)、林官房長官(64)、高市元経済安全保障相(64)、小泉農水相(44)の5人の戦いになる見通しだ。

総裁選の主な日程は◇22日午後に各候補の所見発表演説会が行われた後、◇23日に共同記者会見、◇24日に日本記者クラブ主催の候補者討論などのほか、◇東京、名古屋、大阪の3か所で地方演説会が行われる。◇党員・党友の投票は10月3日に締め切られた後、◇4日に国会議員の投票結果と合わせて開票される。

石破首相の退陣表明から既に2週間が経過し、ようやく選挙戦が始まるが、選挙情勢はどのようになっているのか。また、今回の選挙では何が問われているのか、探ってみたい。

選挙情勢、高市・小泉両氏先行の展開か

さっそく、選挙情勢から見ていきたい。メデイアの報道では世論調査を基にさまざまな見方が示されている。共同通信の世論調査(9月11、12両日)によると「次の総裁にふさわしい人」として、高市氏28.0%、小泉氏22.5%、林氏11.4%、茂木氏6.1%、小林氏3.6%などと報じられている。

読売新聞の世論調査(9月13、14両日)では、高市氏が29%がトップで、小泉氏25%、茂木氏7%、林氏6%、小林氏3%。自民党支持層に限ると小泉氏が33%とトップで、続いて高市氏28%、林氏8%、茂木氏6%、小林氏5%と続く。

こうした世論調査は全国の国民が対象で、自民党員(今回は91万人)とは異なるので、当然のことながら自民党員の投票予測とはならない。正確な調査となると党員対象の調査が必要で、今後メデイアの中で党員調査が実施されれば有力な判断材料になる。

党員調査のデータがないので、自民党の議員や関係者の取材にならざるをえないが、国会議員の動向についても麻生派を除いて派閥が解散されているので、従来のような派閥を通じた情勢把握は困難だ。さまざまな選挙結果の見方が飛び交っているが、選挙の予測は何が根拠になっているかの見極めが重要だ。

選挙情勢は自民党議員や党員の話を集めて判断するのが基本になる。ここまでの情報を総合すると「小泉氏と高市氏の2人が先行、これをベテランの林氏と茂木氏、中堅の小林氏が追う展開」との見方が有力だ。

小泉氏と高市氏を上位に予測するのは、第1回投票では党員票の比重が大きいため、人気の高い両氏が優位に立つとみるからだ。また、議員票については各候補とも去年の総裁選に立候補しており、ある程度の予測が可能だからだ。

但し、去年の総裁選では当初、「党員投票では上位間違いなし」とみられた小泉氏がふたを開けると3位に沈んだ。高市氏も党員投票ではトップに立ったが、議員票では小泉氏を下回り、決選投票では石破氏の逆転を許す結果になった。

今回も第1回投票で過半数を得た候補がおらず、決選投票になった場合、2位までに入るのが重要なポイントになる。「小泉氏と高市氏」との見方と、「ベテランの林氏が2位に食い込み、勝者が変わる波乱も起きうる」との見方をする党関係者もいる。

選挙情勢については、態度を決めていないという議員や党員もおり、流動的な要素が残っている。波乱が起きるケースとしては、候補者同士の討論やテレビ出演などでの失言をはじめ、個別の政策をめぐって失速することもある。このため、まずは各候補の主張や論戦の模様を注意深く見ていく必要がある。

 中長期の目標・進路を示せるか

今回の総裁選挙の特徴は「自民党が結党以来初めて衆参両院ともに過半数割れ」という危機的状況の中で行われる点にある。ここで国民の信頼を失えば、政権政党の座から転落する可能性があり、再生の道を見いだせるかが問われている。

立候補を表明した5人は既に記者会見で、自ら訴える主要政策を明らかにしている。主な内容を見てみると◇茂木前幹事長「地方自治体が自由に使える数兆円規模の交付金」、◇小林元経済安保相「期限や所得制限を設けた定率減税」。

◇林官房長官「1%程度の実質賃金上昇の定着」、◇高市元経済安保相「大胆な危機管理投資と成長投資」、◇小泉農水相「2030年までに平均賃金100万円増」などを打ち出した。

各候補とも当面の物価高対策や、国民受けのする分配政策が中心だ。当面の物価高対策は必要だが、同時に国民の多くは、内外情勢が激動する中で、将来社会の姿や目標を明確に打ち出すことを期待しているのではないか。

そうした観点からすると各候補の政策は目先の対応が目立ち、中長期の展望に基づいた政策は極めて乏しい。これから始まる候補者間の議論では、次のような点を明らかにしてもらいたい。

第1は「将来社会の目標と構想」で、何を最優先に取り組むのか。超少子高齢化時代への対応をはじめ、厳しい財政状況の中で、社会保障制度をどのように維持していくのか。

第2は経済政策について、分配に必要な「経済成長はどのような方法で、いつまでを目標に実現をめざすのか」を明らかにしてもらいたい。2000年以降、これまで日本の実質経済成長率は0.7%で、1%にも達していない。

第3は、「外交・安全保障の進路」をどのように考えているのか。「防衛力整備」について、重点を置く分野と必要な財源をどのよう考えているのか。また、トランプ大統領との間で「日米関係」をどのように運営していくのか、外交・安全保障戦略を語ってもらいたい。

第4は「政治とカネの問題」だ。衆院に続いて参院でも大敗した背景には、旧派閥の裏金問題が底流にあるとの指摘は多い。「解党的出直し」を掲げるが、「政治とカネの問題」に決着をつける覚悟はあるのかどうか。

このほか、「野党との連携」も問題になるが、衆参両院で自民党は過半数を割り込んでおり、主導権は野党の方にある。自民党は、まずは自らの基本方針と政策を明確にし、国民の信頼と共感を得られるかが問われていると考える。

今回の自民党総裁選挙は、新総裁に誰が選出されるのかいう点と、長期政権を担ってきた自民党が再生の手掛かりをつかむのか、それとも政権から遠ざかることになるのかが焦点だ。自民党はどこに向かうのか、総裁選での議論のゆくえを注視したい。(了)

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