”評価分かれる”菅政権 コロナ対応がカギ

菅内閣が発足して、まもなく2か月を迎えるが、世論の反応は、臨時国会で与野党の意見が対立している日本学術会議の任命拒否問題については「菅首相の説明は十分でない」と批判的な受け止め方が多い。

一方、新型コロナ・ウイルスをめぐる政府の対応は「評価する」との見方が増えて、菅内閣の高い支持率を支える形になっている。

また、菅首相の人柄をめぐって「信頼できると受け止める層」と「信頼できないとする層」とに二分される現象も起きている。

内閣支持率はこれまでのところ高い水準を維持しているが、今後、コロナ感染が急拡大すれば、政権の評価が一変することも予想される。

国民の側は、菅政権をどのように見ているか、11月のNHK世論調査を基に分析してみる。(調査は11月6日から8日、データは「NHK WEB NEWS」から)

 菅内閣支持率56% 横ばい

まず、11月の菅内閣の支持率は、◆「支持する」が56%、◆「支持しない」が19%で、前の月に比べると支持が1ポイント増え、不支持が1ポイント減少し、「横ばい状態」だ。

9月16日に発足した菅内閣の支持率は、直後の9月調査では62%と高い水準を記録したが、10月調査では、日本学術会議の問題が影響して55%、7ポイントも下落した。その後、召集された臨時国会で与野党の本格的な論戦が続いており、今回の調査結果が注目されていた。

 学術会議「首相の説明不十分」6割

そこで、具体的な問題を見ていく。まず、臨時国会の焦点になっている日本学術会議の問題について、「菅首相のこれまでの説明は十分だと思うか」。◆「十分だ」は17%に止まり、◆「十分ではない」が62%と多数を占めている。

一方、政府と自民党が、学術会議のあり方に問題があり、検証するとしていることについては、◆「適切だ」が45%、◆「適切ではない」が28%、◆「わからない」が27%と分かれた。

このように世論は、「菅首相の説明は十分ではない」として、批判的に受け止めていることがわかる。

但し、10月は、この問題が内閣支持率全体を大幅に引き下げたが、今回11月は、引き下げるような影響は出ていない。菅首相の姿勢は問題があるが、学術会議にも問題があれば、検証すればよいと冷めた受け止め方がうかがえる。

 コロナ対応、温室ガスゼロの評価

次に新型コロナウイルスをめぐる政府のこれまでの対応については、◆「評価する」が60%、◆「評価しない」が35%となった。

「評価する」は、9月調査では52%だったが、10月調査54%、11月調査60%と次第に増えている。これは、11月上旬までは、感染者が比較的落ち着いていたことが影響しているものとみられる。

また、菅首相が臨時国会の所信表明演説で「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明したことについて、◆「評価する」が62%、◆「評価しない」が29%となった。

菅政権は、学術会議問題での批判を、コロナ対応や温室効果ガス対策のアピール効果で打ち消し、内閣支持率を下支えする形に持ち込んでいるとみることができる。

 菅政権と世論、”様子見の期間”か

以上のデータを基に菅内閣に対する世論の反応を整理するとどうなるか。

菅政権発足から2か月、11月は3回目の世論調査になったが、内閣支持率は56%で過半数を保っており、高い水準にある。

一般的に新政権と世論は、”ご祝儀相場”と”ハネムーン”が数か月続く。世論も一定期間は、政権を激しく批判したり、厳しい評価を避けたりする傾向がある。このため、今は”様子見の期間”と言えるかもしれない。

但し、「支持の中身」を詳しく分析してみると幾つかの特徴がある。◆「与党支持層の支持」の割合は83%と高いが、◆最も多い「無党派層の支持」は41%に止まり、低い水準にある。

◆「男性の支持」は59%と高いが、「女性の支持」は52%とかなり下回る。

◆「支持する理由」としては、「菅首相の人柄が信頼できる」が25%で第2位を占める。これに対して「支持しない理由」としては、「菅首相の人柄が信頼できない」が32%、こちらも2番目に多い。

つまり、「菅首相の人柄」の評価をめぐって、「信頼する層」と「信頼しない層」とが、それぞれ一定割合を占める、珍しい構造になっている。

また、学術会議問題をはじめ、コロナ対策、温室効果ガスなどの問題によって、内閣の評価が大きく分かれている。

さらに、内閣支持率そのものについても「支持する」と「支持しない」の他、「どちらともいえない」などと答えた人が「25%」にも達している。第2次安倍内閣では発足後、半年間は14%から18%だったが、菅内閣はこれを11~7ポイントも上回り、全体の4分の1も占めるのも大きな特徴だ。

菅首相については、”たたき上げで親近感”が持てるという声がある一方、”学術会議人事に見られるような強権的な政権”との受け止め方も聞かれる。国民の側から見ると「菅内閣は、評価しにくい政権」と言えるかもしれない。

 コロナ感染拡大は?菅政権正念場

11月に入って、コロナ・ウイルスの感染拡大の傾向が続いている。冬の到来が早い北海道をはじめ、東京などの首都圏、愛知、大阪など全国各地で増加している。12日には、全国の感染者数がついに1635人、1日あたり過去最多を更新した。

菅内閣の支持率の高さは、コロナ感染抑制が前提条件になっている。携帯電話料金の値下げやデジタル庁新設などの内閣の評価は高いといわれるが、土台のコロナ対策がうまくいかなければ、直ちに政権の評価にも影響が出てくる。

政権発足後、GoToトラベルなどの経済対策は積極的に推進してきたが、肝心の検査体制の拡充をはじめ、病床の確保など医療提供体制の整備のスピードは遅い印象を受ける。

臨時国会は序盤戦が終わった段階だが、国民が不安に感じているコロナ対策の議論は不十分だ。政府の備えは十分なのか、コロナ対策の特別措置法の改正を早急に行う部分はないのか、議論を尽くしてもらいたい。

菅政権については、コロナ感染抑制と経済再生の両立を進めることができるのか正念場を迎えている。