菅新政権が発足して16日で1か月が経過した。政権発足直後は高い支持率を記録、順調な滑り出しだったが、NHKの10月の世論調査によると内閣支持率が大幅に下落している。
この理由は、日本学術会議の新しい会員候補の一部について、菅首相が任命を拒否、その理由を説明していないことが影響していると見られる。
菅内閣を支持しない理由として「首相の人柄が信頼できない」が急増。「女性の支持率」が大幅ダウン。最も多い「無党派層」の不支持も増加している。
菅新政権の支持率下落の理由、背景を以下、詳しく分析してみる。
菅内閣支持率 7ポイント下落
NHKが10月9日から11日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は◆「支持する」が55%、◆「支持しない」が20%だった。
政権発足直後の9月の世論調査では◆支持が62%、◆不支持が13%だったので、支持率が7ポイント減少、逆に不支持が7ポイント増加したことになる。
政権発足直後は、いわゆる”ご祝儀相場”もあって高い支持率となり、その後、減少していくことが多いが、2回目の調査で大幅に下がるケースは少ない。◇菅直人内閣の22ポイント、◇小渕内閣14ポイントに次ぐ水準で、野田内閣と同じく大幅な下げ幅だ。
(備考:9月調査=21・22日、10月調査=9~11日実施。データは「NHK NEWS WEB」から)
支持率下落 与党、無党派、女性
支持率下落の中身をみると◆「与党支持層」が、9月の85%から10月の80%へ減少。◆最も多い「無党派層」が50%から43%へと下落している。
◆男女別では、特に「女性の支持」が、9月62%から10月51%に11ポイントと大幅な下落が目立つ。男性は9月63%から10月59%へとは対照的だ。
「首相の人柄信頼できない」倍増
次に菅内閣を支持する理由としては◆「他の内閣より良さそう」26%、◆「人柄が信頼できる」24%、◆「実行力がある」18%と続く。
これに対して、菅内閣を支持しない理由としては◆「人柄が信頼できない」32%、◆「政策に期待が持てない」31%、◆「他の内閣の方が良さそう」13%となっている。
つまり、菅内閣を支持する人の中で「人柄が信頼できる」と答えた人は、菅首相は世襲ではなく、秋田の農家出身の”たたき上げ”といった点を評価しているものとみられる。
一方、支持しないと人たちの中で「人柄が信頼できない」と答えた人は、日本学術会議の問題が影響しているものとみられる。9月は15%だったのが、10月は32%へと倍増、支持しない理由のトップに跳ね上がっているからだ。
学術会議任命拒否 ”納得できない”
その日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅首相が「法に基づいて適切に対応した結果だ」などと説明していることをどのように受け止めているかを聞いている。
◆「納得できる」は38%、◆「納得できない」は48%となっている。支持政党別にみてみると◇与党支持層でも「納得できる」は55%に止まっている。◇野党支持層と◇無党派層では「納得できる」は2割台後半で、「納得できない」は野党支持層の7割、無党派層の6割と多数を占めている。
年代別では、どの年代でも「納得できる」は3割から4割程度で、「納得できない」は、50代以降、60代、70歳以上でいずれも半数を上回っている。
女性は「納得できる」は33%に対し、「納得できない」が46%と大幅に上回っている。男性は、43%と48%で拮抗している。
新政権の信頼度、政権の行方に影響
学術会議の問題は、日本学術会議法で「会議側の推薦に基づいて首相が任命する」と規定されている。推薦制を導入した中曽根政権以降、歴代政権は学術会議の推薦を尊重してきた。菅政権では一部の任命を拒否したが、「誰が判断したのか、任命しなかった理由は何か」といった肝心な点を説明していない。
国民の側は、こうした政府の対応に疑念を抱いており、新政権の政治姿勢、政権の信頼度に関わる問題として受け止めていることがうかがえる。この問題は、10月26日から始まる秋の臨時国会でも与野党の攻防の焦点になる見通しだ。
菅政権は、デジタル庁の新設や携帯電話料金の引き下げなどを打ち出し、世論の高い支持を得たが、学術会議問題が思わぬ影響を与えている形だ。政府側が説得力のある説明を行えないと、さらなる支持率低下につながる可能性もある。
菅政権としては、学術会議問題にどのような方針で臨むのか、軌道修正を図る考えはないのかどうか。今後の政権運営や次の衆議院選挙の選挙情勢にも影響を及ぼすだけに注意して見ていく必要がある。