衆院解散はいつか? 秋以降の公算

新年・2020年の政治の焦点は、衆議院の解散・総選挙がいつ、行われるかだ。
政界の情報を総合して判断すると東京オリンピック・パラリンピックが幕を閉じた後、「2020年秋以降」の公算が大きいと見ている。

その理由は、端的に言えば、次のようになる。
まず、「年明け解散」があるかどうかがポイントになっていたが、台風などの災害復旧に加えて、「桜を見る会」問題など一連の不祥事で、安倍内閣の支持率が大幅に低下、解散に打って出る状況にはなくなっている。

その後は東京オリンピック・パラリンピックという大きな行事があるため、結局、オリンピック・パラリンピックが幕を閉じた後「秋以降の公算」が大きい。

但し、オリンピック後の経済情勢が悪化したり、安倍政権の体力が低下したりした場合は、翌年へ持ち越される可能性もある。

さらに、安倍首相の総裁4選論や後継選びの調整が難航したりした場合は、ズルズルとずれ込み、来年秋の「追い込まれ解散」に近いケースもありうる。

このため、解散時期は「秋有力」とまでは限定できず、「秋以降の公算」という見方をしている。
それでは、こうした衆院解散・総選挙の見方・読み方を詳しく見ていきたい。

 新年の政治日程

最初に新年・2020年の主な政治日程について、確認しておきたい。
◆2020年
◇1月20日  通常国会召集
◇4月19日  立皇嗣の礼
◇4月26日     統一補欠選挙(衆院静岡4)
◇春    習近平国家主席が国賓として来日(調整中)
◇6月17日  通常国会会期末
◇7月  5日  東京都知事選挙(6月18日告示)
◇7月 24日 東京オリンピック開会式(~8月9日)
◇8月 24日 安倍首相 連続在職日数歴代1位へ
◇8月 25日 東京パラリンピック開幕(~9月6日)
◇12月     新年度予算編成

◆2021年
◇ 1月       通常国会召集
◇ 7月22日  東京都議会議員 任期満了
◇ 9月30日  安倍首相 自民党総裁任期満了
◇ 10月21日   衆議院議員 任期満了

駆け足で見ていくと次のようになる。
◇新年の1月20日に通常国会が召集され、安倍首相の施政方針などが行われる。その後、補正予算案や新年度予算案の審議が続き、国会会期は6月17日まで。

◇4月19日には、秋篠宮さまが皇位継承順位1位を意味する「皇嗣」になられたことを内外に伝える「立皇嗣の礼」。

◇半世紀ぶりの開催となる東京オリンピックは7月24日に開会式、パラリンピックは8月25日開幕、9月6日に幕を閉じる。

 衆院 解散の時期

予想される衆議院の解散・総選挙の時期としては、
(1)今年1月、通常国会冒頭。
(2)新年度予算案など成立後、7月東京都知事選とのダブル選挙。
(3)東京五輪・パラリンピック閉幕後、秋の臨時国会での解散。
(4)来年2021年1月 通常国会冒頭。
(5)来年秋の任期満了に近い秋の解散になる。

 ”年明け解散” 遠のく

以上5つのケースのうち、今年1月の通常国会冒頭解散。野党第1党の枝野代表など野党関係者や自民党の一部にある見方。安倍首相に近い自民党幹部は「台風19号や大雨の被害が大きく、とても年明けの選挙はできない」と否定的だ。

また、首相主催の「桜を見る会」の公私混同批判をはじめ、大学共通テストの記述式問題の導入取り消し、総務省の現職事務次官の更迭など相次ぐ不祥事、看板政策の取り止めなどで、内閣支持率大幅に低下している。

さらに年末、カジノを含むIR=統合型リゾート担当の元内閣府副大臣、秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕され、年明け解散は遠のいたとの見方が強い。

このほか、新年度予算案が成立した後も考えられるが、4月は秋篠宮様の立皇嗣の礼、中国の習近平国家主席の国賓としての来日が調整中で、難しい。
さらに7月5日の東京都知事選とのダブル選も想定されるが、オリンピック直前で実現可能性は低いとみられる。

 ”五輪・パラ後”の秋以降

結局、東京オリンピック・パラリンピックが幕を閉じる9月6日以降、秋の臨時国会が召集され、衆院解散の可能性が大きい。与党の主要幹部もこの見方が強い。

また、来年に持ち越した場合、来年夏は与党・公明党が重視する東京都議会議員選挙が控えている。この時期を避けると今度は、衆議院議員の任期満了に近づき「追い込まれ解散」の恐れが出てくる。このため、年内に総選挙を実施すべきだという圧力が増すのではないか。

 解散から解散 平均3年

ところで、衆議院の解散から、次の解散までの期間はどの程度か?
今の衆議院の選挙制度に変わった1996年の橋本政権以降から、2017年安倍政権の解散までの期間を計算すると「平均3年」だ。
安倍政権に限ってみると、政界の常識より早めに解散に打って出るケースが多く「2年5か月」とさらに短くなる。

平均3年とすると、今年10月、東京オリンピック・パラリンピックが閉幕した後にあたる。今年秋の解散は、過去のケースから見ても確率的に高いということが言える。

 誰の手で解散?五輪花道論も

ところが、今回の解散には、「難問」が残されている。何かと言えば、衆院の解散・総選挙、誰の手で解散するのか。安倍首相か、それともポスト安倍の新しいリーダーかという問題だ。この点は意外に難しい。

安倍首相の自民党総裁としての任期は、来年9月30日まで、2年を切っている。自民党内には党則を再び変えて、安倍首相の4選を求める意見がある。
これに対して、安倍首相は「その考えはない」と完全に否定しており、調整が残されている。

次に衆議院議員の任期は来年10月21日、自民党の総裁任期とほぼ同じ時期に任期が切れる。追い込まれ解散を避けようとすると、任期満了1年前くらいには解散時期の腹を固めておく必要がある。

このため、安倍首相は東京オリンピック・パラリンピック閉幕頃には、総裁4選論と、次の解散・総選挙は自ら断行するのか、それとも次のリーダーに委ねるのか、この「2つの根本問題」に結論を打す必要がある。

4選の考えがない場合、次の総理・総理が追い込まれ解散を避けるためにオリンピック終了を花道に退陣し、後継総裁選びを早めるのではないかとの見方もある。この「オリンピック花道論」も含めて、秋は政局の大きな山場になる。

 解散のタイミングずれ込みも

今年秋の政治の焦点になると見られる2つの問題、総裁4選論を含めた自民党の総裁選び、衆院解散・総選挙の時期の問題について、調整や決断が遅れる場合、あるいはオリンピック閉幕以降、経済情勢や海外情勢が大きく変動したりする場合、解散・総選挙が先送りになるケースも予想される。

来年に持ち越された場合、既に見たように公明党が重視する都議選がある。その時期を避けると解散時期がさらにずれ込むことになり、解散のタイミングは中々、難しい。

以上、見てきたように衆院解散の時期は、今年秋の可能性が大きいが、不確定要素が多く、したがって、有力とまでは言い切れない。ズルズルと調整、決断がすれ込み、来年秋の任期満了に近い時期の解散・総選挙もありうるのではないか。
そこで、今の段階では、「秋以降の公算」というやや幅の広い見方をしている。

 選挙で政治の歯車を回す

最後に次の衆院選挙は、いずれにしても2年以内には、確実に行われる。私たち国民の側にとって、政治に対する見方や心構えを整理しておくことが大事だ。

私たちが知りたいのは、端的に言えば次のような点ではないか。人口急減時代に入り、政治の側は、日本社会の将来設計をどのように考えているのか。そのために独自の重点政策は用意しているのか。国際社会との関係では、米中の覇権争いが激化している中で、日本の外交・安全保障をどう考えるのか。

要は、政権与党、野党側の双方が、日本の将来像の構想を打ち出し「競い合いの政治」を見せてもらいたい。国民の側は、こうした希望、注文を主張し続けると同時に、選挙の際に投票の基準にすることが大事ではないか。

また、技術革新が超スピードで進む時代、国民の側も、個人の力だけでは限界があり、協力・共生の社会を整える必要がある。特に子育て、教育、雇用、親の介護などの社会保障は、社会全体での取り組みが不可欠だ。そのためには、選挙を中心にした政治参加。選挙で政策を最終決定し、整備していく「政治の歯車を回すこと」が問われているのではないかと考える。