新しい年が明けて、高市首相は5日に伊勢神宮を参拝した後、年頭の記者会見に臨んだのをはじめ、各党の代表や委員長もそれぞれの党で仕事始めや記者会見を行うなど新年の政治が本格的に動き出した。
こうした中で、高い支持率が続く高市首相が今年、衆議院の解散・総選挙に踏み切るかどうかが焦点の1つになっている。衆議院の解散・総選挙の可能性をどのようにみるか、探ってみたい。(★備考=読売新聞が10日「高市首相は通常国会冒頭解散を検討」と報道したことについて、ブログ文末に追記として、短いコメントをつけてあります)。
新年の解散・総選挙 4つのケース
高市首相は5日の記者会見で、今年の政権運営について「昨年中に政権として、一定の方向性を出すことはできたと考えているが、今後、さらに加速させていきたい。高市内閣は始動したばかりだが、自民党総裁選で掲げた政策や日本維新の会との連立合意に掲げた政策をどんどん具体化させ、実現していきたい」と表明した。
そのうえで、通常国会の会期中に衆院解散・総選挙があるかと問われたのに対し高市首相は「今年度の補正予算の早期執行を各大臣に指示している。国民に高市内閣の物価高対策や経済対策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべた。
こうした発言からすると高市首相は、物価高対策などの効果を実感してもらうことを解散・総選挙の前提条件にしていることから、通常国会冒頭の解散は想定していない。最も早い場合でも新年度予算が成立した以降になる公算が大きいとみられる。
具体的なケースとしては、◆①新年度予算成立の4月頃、◆②通常国会が閉会する6月下旬、◆③高市内閣発足1年の秋の臨時国会、◆④年内は見送りの4つが想定される。
国会会期末の6月、秋の可能性も
それでは衆院解散・総選挙の時期としては、具体的にいつ頃の公算が大きいのだろうか。まず、①新年度予算成立の4月頃については、国民生活に直結する新年度予算が成立することは、政治が取り組むべき前提条件の1つを達成したことにはなる。
ただ、4月といえば新年度。国民にとっては新しい年度が始まる重要な時期で、今の選挙制度になって以降、4月や5月に総選挙が行われたことはない。政治的にみてもこの時期の解散・総選挙は避けるとみた方がよさそうだ。
次に②通常国会が閉会する6月下旬についてはどうか。通常国会前半で新年度予算が成立すれば、後半国会では連立与党の日本維新の会が、先の臨時国会から先送りになった衆議院の議員定数削減法案と副首都構想を実現する法案の成立を強く求めている。
これに対し、野党第1党の立憲民主党などは、懸案の企業・団体献金の見直し法案の成立を迫ることから、こうした法案の扱いをめぐって与野党の攻防が予想される。
そして、会期末に立憲民主党などが高市内閣に対する不信任決議案を提出した場合、これに対抗することを大義名分に高市首相が衆院解散に打って出る可能性はある。
一方、通常国会での解散を見送りにした場合は、③高市内閣発足1年、秋の臨時国会での解散・総選挙を探ることになる。具体的には内閣改造を行った後、秋の臨時国会で国民に信を問うケースが想定される。
このように自民党内で早期解散論が強いのは、高市内閣の支持率が高い間に選挙をやれば、政権与党に有利に働くという思惑に基づくものだが、肝心の自民党の政党支持率は30%ギリギリの水準で低迷している。このため、自民党の支持率が上昇に転じない状況では、早期解散は行うべきでないという意見も根強い。
年内解散見送り・来年説も有力
衆院解散・総選挙は、最終的には首相が決断することになるので、高市首相がどのような政権戦略を描いているかにかかっているとも言える。
自民党の長老に聞くと「高市首相は、とにかく政策をやりたいというのは本音だと思うので、早期解散を首相自身はめざしていないのではないか。また、総裁選の任期は来年秋なので、総裁選とその前後に衆院解散・総選挙を断行し、両方をセットで乗り切ることをめざしているのではないか」との見方をしている。
こうした見方に立つと④年内見送り、来年・2027年秋以降の解散・総選挙ということになる。だが、高市内閣の支持率が今の高い水準が維持しているどうかはわからず、不確定要素があるのも事実だ。
このように4つのケースともそれぞれの可能性と同時に、困難な点も抱えている。そのうえで、個人的な見方を率直に言えば、4つ目の年内見送り説が有力、確率が高いのではないかとの見方をしている。
その理由の1つは新年の野党の動向を見ると、政権に協力しようとする野党の動きが出るなど衆院解散・総選挙に追い込んでいく迫力が感じられないことがある。
一方、高市政権にとっても物価高対策や経済政策の効果を実感してもらうには、それなりの時間がかかること。さらに、仮に衆院解散・総選挙で自民党が勝利したとしても参院の過半数割れは3年から6年は続く。衆院での大勝が見込めない限り、解散には慎重姿勢を続けるとみるからだ。
ただ、「政界、一寸先は闇」といわれる。政治は生き物、与野党双方とも思わぬ事態が起こり得るので、4つのケースのどの流れになるか見極めていく必要がある。
選挙の質、論点・争点設定がカギ
最後に衆院解散・総選挙については選挙の時期だけでなく、「選挙の質」、具体的には「選挙の論点・争点の設定」が重要だ。特にインターネットが解禁され、SNSが活用され、私たち国民もさまざまな情報を入手できるようになった。
その一方で、「選挙の論点・争点」がはっきりしないと感じることも多い。政党や候補者が論点を整理し、選挙の争点を明確にして有権者に判断を求める取り組みがSNS時代だからこそ、必要だ。
具体的には、国会で普段から与野党が議論を進め、選挙期間中はさらに具体策などを示すことによって、有権者が投票を通じて決着をつけられるようにする取り組みが重要だ。
報道各社の世論調査を基に考えると主要な論点としては、◆物価高を含む経済政策の柱と具体的な政策・方法、◆超少子・高齢化時代の社会保障の姿・あり方、◆外交と防衛力整備の進め方、◆子育て・教育、科学技術立国のあり方。国民の多くが明確に示して欲しいと考えている論点としては、こうした点ではないか。
内外ともに激動が続く時こそ、日本社会が必要とする政策、取り組み方について、政党や候補者が競い合い、議論を尽くしたうえで、有権者が選挙で判断する政治に近づけていく取り組みが求められていると考える。
★追記(1月10日午前9時)読売新聞は10日朝刊で「高市首相は、23日召集が予定される通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報道。「政府関係者が明らかにした」としているが、高市首相自身の意向を確認したのか、自民党内の主要幹部への根回しは終えているのかなど事実関係ではっきりしない点もある。また、高市首相は記者会見で、最優先で取り組んでいる物価高対策の効果を国民に実感してもらうのが先だとして、早期解散に慎重な姿勢を繰り返し表明してきた。それだけに今回の国会冒頭解散に、国民の理解は得られるのかどうか、大義名分はあるのか、高市首相の動向を注視したい。(了)
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