“自民苦戦、与党過半数割れ攻防続く”衆院選情勢

短期決戦となった衆院選挙は、いよいよ27日に投開票が行われる。終盤の選挙情勢は、自民党が単独で過半数を維持するのは難しい情勢で、苦戦が続いている。

一方、自民、公明両党で過半数を維持できるかどうかは微妙な情勢で、このまま27日の投開票まで与野党の激しい攻防が続く見通しだ。

有権者にとっては投票に当たって、与野党の選挙情勢も念頭に置いて投票したいという方もいるので、最終盤の選挙情勢を分析、評価してみたい。

 自民、単独過半数維持は困難か

まず、自民党の選挙情勢について、党の関係者に聞いてみると「九州、四国、九州など西日本地域は堅実な戦いができているが、北海道、東北、東海などは厳しい戦いを迫られている。現状では、小選挙区で30議席程度減る情勢ではないか」と厳しい状況であることを認める。

衆院の総定数は465議席なので、その過半数は233議席、公示前の自民党の勢力は247議席だ。15議席以上減らすと自民党は単独過半数割れに追い込まれることになる。

先の自民党関係者が触れたように小選挙区で30程度も議席を減らせば、自民党は単独で過半数を維持することは困難だ。

自民党は過去4回、衆院選挙で単独過半数を維持してきた。仮に単独過半数を割り込む場合は、2009年麻生政権下で政権を失って以来、15年ぶりになる。それだけ今回の総選挙では、自民党は苦境に立たされていることを示すものだ。

 与党過半数割れは微妙、攻防続く

次に選挙情勢の大きな判断基準として、与党で過半数を維持できるかどうかの目安がある。石破首相と公明党の石井代表がそろって勝敗ラインとして掲げている「自公で、過半数を確保すること」と同じ内容だ。

自公で過半数が維持できるかどうかをめぐっては、選挙関係者の間でも見方が分かれている。立憲民主党の野田代表など野党関係者は「裏金問題を徹底的に追及していけば、自公両党を過半数割れに追い込むことは可能だ」と強気の見通しを示している。

これに対して、自民党の選挙関係者は「政治とカネの問題をめぐって自民党は、厳しい情勢にあるが、都市部の選挙区では野党候補が乱立したことで助かっているところもある」として、過半数割れを回避できるという見方を示している。

報道各社の情勢調査をみても、与党で単独過半数割れになるかどうかはっきりしない。仮に自民党が議席を大幅に減らしても210議席程度に止まると、公明党が20議席後半を維持できれば「ギリギリ、過半数を超えることも可能だ」と見られるためだ。

つまり与党の獲得議席の「下限」、最も厳しい場合は「与党過半数割れ」となる。逆に「上限」、「与党が過半数を確保」できる場合もあり、どちらに転ぶかわからないというのが今の状態だ。

立民は議席増か、自民追加公認も焦点

一方、野党側のうち、立憲民主党は公示前の98議席から大幅に議席を増やす勢いがある。国民民主党も公示前の7から議席を増やす見通しのほか、共産党も公示前の10議席を上回る勢いがある。れいわも公示前の3議席から増やす見通しだ。

一方、日本維新の会は、このところ党勢に広がりがみられず、公示前の44議席を減らす可能性が大きいとみられる。

衆院選挙の場合、過去の選挙でも与野党激戦の選挙区が60程度は残り、最後まで激しい戦いが続く。最終的な議席数は、こうした激戦区の結果で決まることになる。

与党の議席数に話を戻すと、自民党は与党で過半数の勢力を維持するためにも、無所属の当選者から「追加公認」を行うことを検討している。与党が過半数を維持できるかどうかは、こうした追加公認の扱いによっても変わることになる。

いずれにしても自公で過半数を維持できるのか、それとも野党が大幅に議席を伸ばし、与党過半数割れに追い込むことになるのかどうかが最大の焦点だ。

政権・与党の巻き返し、野党の動向は

このように石破政権と自民党は、政治とカネの問題などで厳しい状況に立たされているが、投開票日まで挽回の手段、方法はあるのだろうか?

NHKの世論調査(10月18~20日、投票日前1週前)を見てみると石破内閣の支持率は41%、不支持率は35%だった。その1週間前の調査に比べると、支持率は3ポイント下がり、不支持率は3ポイント上昇したことになる。

一方、各党の支持率は、自民党が31.3%、公明党4.4%、立憲民主党9.2%、日本維新の会3.4%、共産党2.9%、国民民主党2.3%、れいわ1.9%、社民党0.6%、参政党1.1%、みんなでつくる党0.1%、無党派34.8%だった。

このうち、自民党の支持率は先週の調査35.1%から、3.8ポイントも下落した。この数値は、小選挙区の勝敗に直接影響するものではないが、この1週間で自民党の下落幅が大きかったことがわかる。

こうした石破政権と自民党の支持率低下は、選挙の大きな争点となっている「政治とカネの問題」の逆風が今も続いていること示すものだとみられる。このため、石破政権が政策面で巻き返しにつながるような決定打を放つのは難しいものとみられる。

各党の取り組みに勢いがあるかどうかは、最終的な議席数にも影響を及ぼすので、最後まで見届ける必要がある。石破政権が発足直後に踏み切った衆院解散・総選挙は、27日の有権者の審判がどのような形になって現れるか、選挙後の政局は激しく揺れ動く予感がする。(了)