野党合流 問題 ”選挙で勝てる野党は必要か?”

野党第1党の立憲民主党と第2党の国民民主党を軸にした合流問題が大きな山場を迎えている。この野党合流問題について、私たち国民の側から見るとどんな意味を持っているのか考えてみたい。

今回の野党の合流問題は、突き詰めていけば「選挙で勝てる野党は必要か?」ということになるのではないか。つまり、国民の側から見て、合流が「いいと思うか」、逆に「必要ない」と考えるかの評価の分かれ目になるからだ。

今の野党は「国政選挙で6連敗中」。今のままだと有権者は投票する前から選挙結果は明らかだとなりかねない。選挙に関心を持ち、投票所に足を運ぶ人を増やすためにも私は「選挙で勝てる野党」、「しっかりした野党」が必要と考える。
そこで、選挙で勝てる野党はなぜ必要なのか。果たして、そうした野党はできるのか、そのためにはどんな取り組みが必要なのか考えてみたい。

 共同会派から、政党の合流へ

最初に、これまでの野党の動きについて、手短に整理しておきたい。
10月4日に召集された臨時国会では、野党の立憲民主党、国民民主党、社民党、それに衆院の無所属議員でつくる「社会保障を立て直す国民会議」の4党派は「共同会派」を結成した。共同会派の規模は衆院で120人、参院で61人、第2次安倍政権発足以降、野党の会派としては最大になった。

当初、共同会派は足並みが乱れるのではないかといった冷ややかな見方もあったが、野党側は、2閣僚の連続辞任をはじめ、英語共通試験の延期、「桜を見る会」の公私混同といった問題を追及、一定の成果を上げたと言える。

こうした流れを受けて、立憲民主党の枝野代表は12月6日に国民民主党、社民党の党首らと会談し、野党勢力を結集し政権の奪取につなげたいとして、立憲民主党への合流に向けた協議を呼びかけた。

これに対して、国民民主党の玉木代表は、合流した場合の政策や党名などについて対等な立場で協議することなどを求めており、12月17日に枝野代表と党首会談を行う方向で調整が進められている。合流問題は山場を迎えつつある。

 基本的立ち場の違い、ハードルも

今後の見通しだが、両党の関係者を取材すると、双方とも「野党としての大きな塊をめざす」という方向では一致しているが、いざ、合流へ前に踏み出せるか、ハードルが多いのも事実だ。

第1は、「合流に向けた基本的な立ち場の違い」だ。立憲民主党側は、自らの野党第1党へ他の党派が合流してくることを基本にしている。これに対して、国民民主党側は対等な立場で協議して決定する考え方で、党名、政策、人事などを協議することを求めている。

また、両党とも衆議院側は次の衆院選を控えていることもあり、合流に前向きだ。一方、参院側は夏の参議院選挙で選挙区によっては、両党の候補者が”ガチンコ勝負”を繰り広げたこともあり、後遺症、遺恨が未だに強く残っている。このため、合同会派といっても参議院側では、先の国会では議員総会も別々に開いていた有様だ。

第2は、「理念・基本政策の違い」もある。具体的には原発問題の扱いだ。立憲民主党が原発ゼロの徹底をめざしているのに対し、国民民主党は電力関係労組を抱えていることもあり、原発ゼロは受け入れられない立ち場だ。憲法改正問題への対応や、国会運営の考え方についても違いがある。

第3は、「個別問題」もある。立憲民主党は、国民民主党に比べて支持率は高い。一方、国民民主党は民進党から引き継いだ、およそ90億円の政治資金を保有しているのが強みだ。こうした強みと弱みが双方で憶測を呼び、合流論議に影を落としている面もある。

 年末までに合流はできるか?

当面の注目点は、年末までに合流ができるかどうか。年末が1つの目標になっているのは、政党交付金の一定部分が1月1日時点での所属議員数で決まるという事情がある。大きな政党になれば、政党交付金も増えることになる。

また、年明けの通常国会で安倍政権と対峙していくためには、早期に合流を実現し、新体制で通常国会に臨みたいというねらいもある。

立憲民主党の幹部を取材すると「枝野代表は従来の独自路線から、野党共闘・合流路線へカジを切っており、次の衆院選は新体制で臨む腹を固めている」と早期合流は可能だとの見方を示す。

これに対して、国民民主党の幹部は「枝野代表が国民民主党への配慮を示すことが必要で、今の段階では、その点がはっきりしない。筋書きのないドラマのようなものだ」とけん制する。

このため、年内合流が実現するかどうか具体的な道筋はまだ描けていないと見ている。

 連戦連敗から脱却の責任

このように合流へのハードルは高いが、野党第1党の党首が合流を呼びかけた以上、結論が出ないままズルズルと先延ばしにしていては、合流の勢いが失われるのは明らかだ。

また、野党第1党としては、野党全体をとりまとめ政権交代につなげていく構想を打ち出していく役割も求められる。

こうした点の取り組みは弱かった。安倍政権は国政選挙6連勝中だが、野党の非力さがこうした結果を招いているとも言える。今の野党の状況が続けば、次の衆院選の結果も、戦う前から明らかだとなりかねない。野党第1党の責任は、少なくともこうした連戦連敗状態から脱却することが必要だ。

 選挙で勝てる野党づくり

野党の合流問題に決着をつける上でも「選挙で勝てる野党づくり」を目標に掲げないと、野党間の求心力は高まらず、合流までこぎ着けるのは難しいのではないかと考える。

これからの日本の将来は難問が多い。少子高齢化に伴う人口急減社会と社会保障制度をはじめ、子育て、教育、雇用の整備などについての取り組みが急務だ。そのためには、政治の側の対応も与野党がそれぞれ選択肢を準備し、議論を戦わせながら難問を解決していくことが必要だ。

野党側の対応を取材して感じるのは、”理念なき野合”などと批判されるのを恐れてか、選挙体制づくりが遅れ選挙の敗北を繰り返している。選挙で国民の選択肢を準備することを大義に掲げるとともに、特に次の衆院選挙での小選挙区について、野党側が候補者1本化に踏み込めるかどうかが大きなカギになるのではないかと見ている。

 立民、国民両党トップの決断は?

以上のような「選挙に勝てる野党の選挙体制づくり」を目標に設定し、当面の合流問題に決着をつけることができるかどうか。

また、「何を最重点にやる政党なのか」旗印を明確に打ち出すことができるかどうか。最終的には、両党の代表の決断が、合流問題を左右することになる。

この合流問題がどのような形で決着が着くか、次の衆議院解散・総選挙など新年の政治のゆくえにも影響を及ぼすことになる。