G7広島サミット”世論は冷静思考”

G7=主要7か国首脳会議が19日から3日間の日程で、広島市で開かれる。G7サミットが日本で開かれるのは7年ぶり、7回目になる。

アメリカのバイデン大統領をはじめとする主要国の要人が相次いで来日するので、開催地の広島だけでなく全国的に大規模な警備体制が敷かれる。

また、メデイアを通じて膨大なサミット情報が洪水のように出されることが予想されるが、国民は今回のサミットをどのようにみているか。

一方、政界の一部には、サミット終了後、岸田首相が衆議院の解散・総選挙に打って出るのではないかとして、サミットへの国民の反応を注視している動きもある。

そうした中で、NHKの世論調査が発表されたので、このデータをみながら広島サミットへの国民の見方や政治への影響を探ってみたい。

 ウクライナ情勢議論、世論の見方は

さっそく、今回のG7広島サミットを国民はどのように受け止めているのか、この点からみていきたい。

◆サミットでは、ウクライナ情勢が主要な議題になるものとみられている。NHKの世論調査(5月12日から14日実施)では「ロシアの侵攻を止めさせるための実効性がある議論が期待できると思うかどうか」について聞いている。

◇「大いに期待できる」は2%、◇「ある程度期待できる」が26%で、合わせて「期待できる」は28%。これに対して、◇「あまり期待できない」50%、◇「まったく期待できない」16%で、「期待できない」は合わせて66%となった。

◆今回のサミットは被爆地広島で開かれることから、「核兵器のない世界」の実現に向けた機運が高まることを期待できるかどうかについても尋ねている。

◇「大いに期待できる」は2%、◇「ある程度期待できる」27%で、「期待できる」は29%。◇「あまり期待できない」45%、◇「まったく期待できない」20%で、「期待できない」は65%となった。

ウクライナ情勢と、核廃絶の問題ともに目に見えるような成果を早期に求めるのは、難しいとの見方をしている。国民の多くは、サミットの主要課題について、冷静かつ客観的に見極めようとする姿勢・思考がうかがえる。

◆外交分野では、岸田首相と韓国のユン大統領が3月に続いて、今月も首脳会談を行い、対話を重ねていくことを確認したことについて、日韓関係が改善に向かうかどうかを聞いている。

◇「改善に向かうと思う」が53%で、「改善に向かうとは思わない」の32%を上回った。

このように日韓二国間の問題については、積極的に評価しようとする人が多いことも明らかになった。

広島サミットで議長を務める岸田首相はインタビューなどで「平和の象徴である広島にG7首脳が集う歴史的に大きな重みがある」「ロシアが行っているような核の威嚇を拒否していく強い意思を発信する」などの考えを強調している。

これに対して、国民世論はサミットの意義は評価しつつ、首脳会議の内容に実効性があるのかどうか、冷静に見極めて判断しようとしている。サミットを政治的なセレモニーではなく、外交・安全保障などの面で前進しているのかどうか、中身で評価しようとしており、大いに評価できる。

 サミットの年は解散のジンクス、今回は

さて、政界では「サミットの年には、衆議院の解散がある」とのジンクスがある。日本で開かれたサミット7回のうち、4回連続で同じ年内に衆議院が解散・総選挙が行われた歴史がある。

具体的には、1979年の大平元首相、86年の中曽根元首相の時には、衆参ダブル選挙だった。93年の宮沢元首相、2000年の森元首相の時もサミットが行われるとともに衆議院の解散・総選挙が行われた。

その後、2008年の福田元首相の時、および前回2016年安倍元首相の伊勢志摩サミットの時には、解散・総選挙は見送られた。

こうしたジンクスに加えて、政界の一部には、岸田首相は野党の選挙態勢が整っていないのを好機とらえ、広島サミットの勢いに乗って衆議院の解散に打って出るのではないかという見方が根強くある。

◆その岸田首相の5月の内閣支持率はどうか。支持率は46%で、前月より4ポイント上昇し、不支持率は31%で4ポイント減少した。

この結果、岸田内閣の支持率は1月の33%を底に4か月連続で上昇、支持が不支持を3か月連続で上回った。岸田内閣は最悪期を脱し、回復傾向にある。

こうした背景には、通常国会が与党ペースで進み、野党側が存在感を発揮できていないことがある。また、岸田首相が大型連休を利用してアフリカ5か国歴訪や韓国訪問などでメデイアの露出度を増したことも影響しているものとみられる。

但し、岸田内閣を支持する理由としては「他の内閣より良さそうだから」が45%で最も多く、相変わらず消極的支持が多い。支持しない理由としては「政策に期待が持てない」が50%、「実行力がない」が20%と多く、政権が力強さを発揮するような状況にまで至っていない。

 サミット後の早期解散説、世論は少数

◆それでは、国民は衆議院の解散・総選挙をいつ行うべきだと考えているか。◇「G7広島サミットの後すぐ」は8%、◇「夏以降の年内」18%、◇「来年」19%、◇「再来年10月の任期満了まで」41%となっている。

政界の一部にある「サミット終了後の早期解散説」については、世論の見方は1割にも達していない。任期4年のうち、まだ1年7か月しか経過していないので、国民が解散を急ぐ必要はないと考えるのは当然ともいえる。

このようにみてくると、広島サミットについては、ウクライナ侵攻の停戦に向けた糸口を見いだせるか。核廃絶や核軍縮が一歩でも前進するのか。ロシア、中国対日米欧の構図が続く中で、G7は中国との関係をどのように位置づけて対応していくのかなどが注目される。

一方、サミット後の終盤国会では、防衛費の大幅増に伴う財源確保の法案の審議と、異次元の少子化対策の財源をどのように確保していくのか、待ったなしの状態にある。

会期末に向けて、最終盤の国会では、野党側が内閣不信任決議案を提出するのかどうか。それを受けて、岸田首相が衆議院の解散・総選挙へ打って出るのかどうか、政局が緊迫する局面も予想される。

国民の側は、まずはG7広島サミットの協議の中身を冷静に評価するとともに、政治が今、為すべきことは何か、しっかり見ていく必要がありそうだ。(了)