新年度予算が参議院で再修正されて可決された後、衆議院に戻されて年度末の31日ぎりぎりの日程で、成立にこぎ着けた。
一方、与野党が3月末までに結論を出すことを申し合わせていた企業・団体献金の見直しについては与野党案の隔たりが大きく、決着は先送りになった。
新年度予算が成立したことで、石破政権は通常国会最初の難関を越えたが、予算成立のこの日、東京株式市場はトランプ政権の関税政策に対する懸念が強まり、日経平均株価は1500円以上値下がりし、今年最大の下落幅となった。
石破政権は、これから内政では重要法案をめぐる与野党の攻防が激化するのをはじめ、外交ではトランプ関税への対応を迫られ、内憂外患状態にある。石破政権と4月以降の政治はどのような展開をたどるのか探ってみた。
トランプ関税、自動車産業などを直撃へ
政府の当初予算が衆議院で修正されたのに続いて参議院でも再修正され、衆議院に戻されて成立するのは今の憲法の下で初めてのケースだ。少数与党の下で、高校授業料の無償化や高額療養費制度の見直しなどをめぐって、政権の対応が迷走したことの現れだ。
さて、これからの政治の動きで、新たな難題として浮上しているのがトランプ大統領が次々と打ち出している関税引き上げへの対応だ。トランプ政権は4月3日には、日本を含む全ての国からの輸入自動車に25%の追加関税を発動する予定だ。また、相手国と同率の関税まで引き上げる「相互関税」にも近く踏み切るものとみられている。
日本にとって自動車産業は基幹産業で、対米輸出額は年間6兆円に上るだけに追加関税が適用されると部品産業も含め、深刻な影響を受ける。石破首相は、関税引き上げの対象から日本を除外するようアメリカ側に引き続き要請するとともに、産業や雇用の影響を調査し、資金繰り対策などに全力を上げる方針だ。
これに対し、立憲民主党など野党側は「2019年の第1次トランプ政権と安倍政権の間で行われた貿易交渉で、日本の自動車への追加関税を断念させる代わりに日本は米国産の牛肉や豚肉などにかける関税をTPP加盟国並みに引き下げた。トランプ政権はこの約束を破っている」として、日米貿易協定をやり直すなど毅然とした対応を取るべきだと批判を強めている。
与党からも「日本政府として関税対策にどのような体制で臨むのか、対米交渉の中心になって担当する閣僚を決めるべきだ。官邸と省庁、民間、与党などオールジャパンで早急に対応していくことが必要だ」といった意見が聞かれる。
重要法案、政治資金の攻防も激化
内政面では、重要法案の審議が本格化する。衆議院で先月から審議が始まっているのがサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー制御」導入関連法案だ。憲法が保障する「通信の秘密」との関係をめぐって、野党側は国会の関与を強める修正案を提出する見通しで、激しい議論が予想される。
また、政府・与党で検討が進められているのが、年金制度改革関連法案だ。パートで働く人たちが厚生年金に加入できる企業要件を撤廃することなどが盛り込まれる見通しだ。
自民党内では厚生年金の適用拡大につながり、今の国会で成立をめざすべきだという意見がある一方、事業主の負担が増え参議院選挙に影響が懸念されるとして、法案提出に反対する意見があり、調整が続いている。与野党間では既に「重要広範議案」に指定されており、その扱いに注目が集まっている。
さらに、後半国会の大きな焦点になるのが選択的夫婦別姓制度の問題だ。野党第1党の立憲民主党は4月中に法案を提出する予定で、与党の公明党は賛成の立場だ。自民党は保守系議員が「旧姓の通称使用の拡大を実現すれば問題点を解決できる」として、選択的夫婦別姓制度に反対しており、党内の意見集約がどこまで進むか不透明な状況だ。
このほか、企業・団体献金の見直しをめぐっては、与野党が申し合わせた31日までに結論を出すことは困難になり、4月以降も協議が続く見通しだ。また、石破首相が10万円の商品券を自民党の衆議院議員に配付した問題については、野党側が政治倫理審査会で弁明するよう求めている。
さらに自民党派閥の裏金事件をめぐって、参議院予算委員会は旧安倍派幹部だった世耕弘成・元参院幹事長(現衆院議員)の参考人招致を議決したことから、衆議院でも旧安倍派幹部の参考人招致について、与野党の協議が行われる見通しだ。
このように内政でも重要法案や「政治とカネの問題」などの難題が山積しており、トランプ関税への対応と合わせて石破政権は、内憂外患状態にある。
問われる首相の指導力と対応能力
そこで、石破政権の政権運営はどのようになるのだろうか。ここまでみてきたように石破首相は、まずは重要法案やトランプ関税などについて、指導力を発揮し成果を上げることができるかどうかが問われている。
また、与党側からは「コメの価格の値上がりやガソリンの暫定税率廃止など物価高対策について思い切った具体策を打ち出さないと参議院選挙は戦えない」といった声が聞かれる。こうした声に応えて、新たな対応策を打ち出せるかも注目される。
自民党のベテラン議員の一人は「党内には、”石破降ろし”を主張する議員はいるが、本気で首相を代えようという議員は多くはないのではないか。ただ、石破首相に対して、白けた雰囲気が感じられるのは要注意だ」と語る。
石破首相が10万円の商品券を配ったことが表面化した3月中頃は、石破退陣の見方も強まったが、その後、トランプ政権への対応が問われている時に党内抗争とみられるような行動はとれないなどとして、こうした見方は後退しているようにみえる。
攻める側の立憲民主党の野田代表は商品券問題が表面化した際、石破首相の退陣を求めなかった。「夏の参院選は政権基盤が弱い石破首相との対決を望んでいる」ようにみえる。
報道各社の3月の世論調査をみると商品券問題などが影響して、石破内閣の支持率は大幅に下落し、政権発足半年で最も低い水準に下落している。一方、野党の多くの党の支持率も上昇しているわけではない。
有権者の多くは「石破政権と与党は内外の課題を解決できる能力を持っているのかどうか」、「野党側は、政権与党に代わる政策や人材を結集できるのかどうか」を見定めようとしているのではないか。
通常国会後半のこれから、6月の東京議選や夏の参議院選挙に向けて内外情勢は激しく揺れ動くことが予想される。私たち有権者は、内外の情勢と与野党の政策、対応などをじっくり見極め選挙に活かしたい。(了)
★(追記4月1日午後1時)新年度予算の成立を受けて、石破首相は1日午前11時から記者会見し、冒頭、商品券配付問題について陳謝した。◇新年度予算が衆参両院での修正を受けて成立したことについて「熟議の国会の成果だ」と評価した。◇物価高対策については、従来の方針の説明に止まった。◇トランプ関税については日本を対象から除外するよう強く求めるとともに、自動車などへの関税措置が発動された場合、全国におよそ1千か所の特別相談窓口を設け、中小企業などからの相談に対応していく考えを示した。全体として踏み込んだ発言はなかった。★(追記4月3日午後1時)トランプ大統領は日本時間の3日朝、「相互関税」の導入を発表し、日本には24%の関税を課すことを明らかにした。中国に34%、インドに26%、EUに20%などの関税を課すとしている。一方、アメリカに輸入される自動車に25%の追加関税を課す措置は、日本時間の3日午後1時過ぎに発動された。日本にとってアメリカは最大の貿易相手国で、日本の自動車産業や経済は大きな打撃を受けるのは避けられない。