コロナ危機 新局面、医療崩壊を防げるか

新型コロナウイルスの急増に歯止めがかからない。東京や大阪などの都市部では、感染ルートが分からない人が増えている。また、新学期も高校、小中学校で休校が続く地域も出ている。

一方、政府の専門家会議は、集団感染への対応で「医療崩壊」が起こりうると懸念を表明するなど、新型コロナ危機は新たな局面を迎えつつある。

政府は来週、これまでに例を見ない大型の緊急経済対策を打ち出す方針だが、根源の感染拡大を押さえ込み、国民の不安感を払拭できないと景気対策も思ったほどの効果を発揮できないこともありうる。

政界では、大規模な経済対策や緊急事態宣言に関心が集まっているが、今、最優先で取り組まないといけないのは、感染拡大の抑制だ。具体的には「検査や治療などの医療体制の整備に予算と人材を大胆に集中投入」することだ。

コロナ危機が新局面を迎えている中で、医療崩壊を防ぐためにどんな取り組みが求められているのか考えてみたい。

 ”医療崩壊” に強い危機感

新しい年度がスタートした4月1日、政府の新型コロナウイルス対策を検討する専門家会議は、海外のような感染拡大の爆発的な急増は見られないものの、現状を考えると、今後、医療現場が機能不全に陥ることが予想されるとして、「医療崩壊を防ぐための対策」を早急に求める提言を発表した。

提言の中では、東京と大阪は感染者数の増加状況などから、最も厳しい対策が必要となる「感染拡大警戒地域」にあたるという認識が示された。専門家会議の強い危機感が読み取れる。

 乏しい政治の側の危機感

こうした専門家会議の強い危機感に対して、政治の側の受け止め方はどうか。
政府は、緊急の経済対策を取りまとめることにしており、与党の自民党や公明党はそれぞれ独自の提言や対策をとりまとめ、政府に申し入れを行った。

自民、公明の与党の提言を読むと、「リーマンショック時を上回る財政措置20兆円、事業規模60兆円規模の対策」、「1人あたり10万円の給付」などの大盤振る舞いを求める政策が並んでいる。

一方、感染症を抑制するため、治療薬やワクチンの開発、PCR検査体制の確保、感染者を隔離する施設の確保などの対策も掲げてはいるが、他の経済対策のような具体的な予算規模には言及していない。景気優先で、医療現場は持ちこたえられるのかといった危機感は伝わってこない。

 医療崩壊防止へ予算・人材集中投入

それでは、政府が問われている点は何か。端的に言えば、感染拡大を抑制することであり、そのために医療分野に予算・人材を集中的に投入することだ。

具体的には、PCR検査の拡充。重症者を隔離・入院させ、死亡者を可能な限り減らす治療体制を早急に整備すること。

コロナウイルスに対する検査能力は、1日あたり7500件と当初の2倍以上に増えたが、実際に行われた検査件数は2000件にも満たず、思ったほど増えていない。今後、感染者がさらに増えることを想定すると検査件数の拡充は欠かせない。

一方、感染抑制には重症者を早期に発見、入院・治療、死亡者を最小限に止める重要性が指摘してされてきた。ところが、入院ベッドをどのように整備していくのか、政府や自治体側から、整備の進み具合や予算投入額などの説明は極めて少なかったのが実状だ。

東京都の場合、700床を確保したとされるが、入院患者が増え既にひっ迫していると言われる。最終的には4,000床を確保する目標にしているが、患者が急増した場合、対応できるのか難しいとの見方は根強い。

このため、重症者と軽症者の振り分け、軽症者は自宅療養だけでなく、ホテルや旅館を借りあげ入ってもらうことなどが検討されているが、実現までこぎつけられるかどうか。

また、国民個人や企業などが、国や自治体の外出自粛などの要請を受け入れ、協力するとともに、企業や社会活動も続けていきながら集団感染を抑えていく日本方式が通用するかも大きなカギを握っている。

 感染抑制、政治の最優先課題!

政府は、来週、緊急の経済対策を取りまとめることにしている。国民に安心感を与えるために大きな予算規模。収入の大幅な減少に見舞われた個人や中小事業者に対する生活保障措置は、必要だ。

同時に必要不可欠なのは、感染拡大の抑制を政治の最優先課題に位置づけること。具体的には、医療提供体制の整備と予算がどこまで盛り込まれているか、政府の緊急対策を評価する上での大きなポイントになる。

また、日本は、1970年代以降、エボラ出血熱や鳥インフルエンザなど地球規模の感染症の当事者にならなかったこともあって、ウイルスとの戦いに無防備状態だった。それだけに感染症にどのように備えるのか。総理官邸内部の体制、各省庁や、地方自治体、感染症や衛生研究所などとの連携、危機管理の体制づくりも大きな課題として残されている。

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