簗農相辞任”問われる首相の任命責任”

道路建設に関する発言などで批判が相次いだ簗農相は14日夜、首相官邸で高市首相と面会して辞表を提出した。事実上の更迭とみられる。

簗農相は衆院選挙で自身を支持しなかった首長の自治体の「道路予算を大幅にカットした」と発言し、批判が相次いだ。また、2024年と今年の衆院選挙では支持者を借り上げたバスで無料送迎した問題も明らかになった。

高市首相はこれまで簗農相を続投させる考えを示してきたが、新たにバスの無料送迎問題で公職選挙法違反の可能性も浮上したことから、続投は困難と判断し更迭に踏み切ったものとみられる。

高市政権が去年10月に発足して以降、閣僚が不祥事で辞任に追い込まれるのは初めてだ。また、先の内閣改造から1か月も立たない中での更迭となった。

簗農相の道路建設に関する発言は地域住民を事実上、恫喝する内容で国会議員として考えられない暴言だ。簗農相は問い合わせをしただけで、予算の削減は要請していないと釈明したが、その場合は虚偽の発言をしたことになる。いずれにしても農相としての適性を著しく欠く行為だ。

簗農相の辞任は自らの極めて不適切な発言が原因だが、単なる政治家個人の不祥事として片付ける問題ではない。なぜ、簗氏が農相に起用されたのか、人事のあり方や政権運営との関係などにも踏み込んで問題点を考えることが必要だ。

問われる首相の任命責任と信頼回復

今回のような閣僚の問題発言やスキャンダルなどが明らかになると歴代自民党政権はその日のうちか、数日中には閣僚を辞任させ、事態の収拾を図る事が多かった。最近では安倍政権当時、菅官房長官が水面下で”危機管理”に当たったことが知られている。

今回の高市政権の場合、簗農相の道路予算カット発言を最初に取り上げたのは先月30日、週刊新潮と文春のオンラインでの報道だった。ということは、農相辞任まで2週間もかかったことになる。なぜ、これほど時間がかかったのか。

この理由・背景としては、高市首相が先月17日に行った内閣改造が影響しているのではないか。高市首相は初の内閣改造を行うのにあたって、自民党の衆議院議員全員に異例の「希望役職アンケート」を行い、その提出文書を首相が独りで読み込み閣僚などの人事を決定した。

簗農相が発言を撤回して陳謝した際も、高市首相は「とにかく働いて仕事で返せと話した」と続投させる意向を明らかにした。つまり、内閣改造に対する高市首相の強い思い入れが、進退判断の遅れにつながったのではないか。

高市首相の人事の進め方について当時、自民党関係者は「閣僚や副大臣などの人事をさまざまな生の情報がないまま、”政治家の自己申告書”を基に決めてうまくいくはずがない。必ずどこかで失敗する」と懸念を示していた。

「安倍政権の時のように強力に首相を補佐する体制がないまま人事を行っているのではないか」との指摘と思われるが、そうした懸念が現実になったとも言える。

改造内閣では簗農相以外にも関文科相は、政治資金集めのパーテイーの開催が禁止されている衆議院議員会館内で、2020年と24年にパーテイーを開いていたことが明るみになった。

日本維新の会から入閣した中司行革担当相は、2007年大阪府の枚方市長時代、談合容疑で逮捕・起訴され、その後最高裁で有罪判決が確定した。野党側は、こうした閣僚の問題も順次取り上げる方針だ。

高市首相は、こうした一連の問題も含めて政治・行政に対する国民の不信感にどのように向き合い、信頼の回復を実現するのか。また、政権の体制をどのように整えて、政策課題を実行していくのか問われている。

世論の風向き 支持率50%ラインを注視

これからの政治の動きをみておくと高市首相は、後任の農相については15日に決めたいとの考えを示した。新農相は、農林水産政策と3兆円の予算管理を担当するほか、食料品の消費税減税の実施にあたっては、小規模農家を支援する制度設計にもあたる。有能で信頼感のある新農相を選べるかどうかが試される。

衆議院に続いて、参議院の予算委員会は16日と19日に高市首相をはじめ全ての閣僚が出席して基本的質疑が予定されている。食料品の消費税減税関連法案の審議入りがいつから始まるか調整が続く。

さらに、今回の農相辞任が政権にどのような影響を及ぼすだろうか。NHKの10月世論調査(10月10日から13日実施)によると、高市内閣の支持率は9月調査から2ポイント下がって51%で、政権発足以来、最も低くなった。不支持率は1ポイント上がって32%だった。

内閣支持率が先月から2ポイント下落したと言うことは、先月の内閣改造・自民党役員人事は、支持率の面では効果はなかったということになる。これに加えて、今回の農相の辞任に追い込まれたので、政権への影響は避けられないとみた方が自然だ。一定のマイナス効果が想定される。

高市内閣は発足時の支持率は66%に上っていたが、その後は下落傾向が続いており、今月調査で51%まで下がったことになる。今後どのようになるかは、農相辞任後の態勢の立て直しと、消費税減税法案の評価が影響するものとみられる。

世論の風向きはこれからどのように変化するのか。具体的な目安としては、高市内閣の支持率が50%ラインを維持していくのか、下回るのかがポイントになり、高市政権と今後の政治を左右することになるだろう。(了)

★追記(15日午前10時半)高市首相は、辞任した簗農相の後任に自民党の武部新氏を起用する方針を固めた。武部氏は衆院当選6回で初入閣。農林水産副大臣や党の農林部会長などを歴任。父親は、幹事長や農相を務めた武部勤氏。

★追記(15日午後10時)武部新氏は午後6時頃、皇居での認証式を経て農林水産大臣に就任した。

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消費税減税 議論深まらず、”簗農相に問責決議案” 野党検討

臨時国会は、高市首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が7日から9日までの日程で行われ、本格的な論戦が始まった。この国会は、来年4月から食料品の消費税の税率を1%に引き下げる法案や高市政権の経済・財政政策、さらに日中関係など国民にとって関心の高いテーマが多い。

だが、ここまでの国会冒頭の論戦では、焦点の食料品の消費税減税について高市首相は、消費税率引き下げの効果や、年間5兆円程度必要とされる財源を確保する方策などについて踏み込んだ答弁を避けている。

9日に閣議決定された食料品の消費減税関連法案でも、減税の財源や新たに導入される給付の対象なども示されていない。これでは国民や市場の納得を得るのは難しいのではないか。

一方、先の衆議院選挙で、自らを支持しなかった首長の自治体の道路予算を「大幅にカットした」などと発言した簗農相に対して、野党各党は問責決議案の提出を検討することで一致した。参議院では野党が多数を占めているため、問責決議案は可決される可能性もある。

国会冒頭の論戦を点検するとともに、”消費税減税国会”はどのような展開をたどるのか探ってみたい。

消費税減税法案、相次ぐ疑問・懸念

臨時国会で最大の焦点になっている食料品の消費税減税について、高市首相は所信表明演説で「暮らしに最も近い飲食料品の税負担を軽くし、あわせて、所得に応じた支援金を措置し、家計に少しでも『ゆとり』を生み出したい」と消費税減税関連法案の早期成立の必要性を訴えた。

これに対し、野党各党は「食料品だけでなく、さまざまな原材料などが値上がりしているため、食料品の消費税率を引き下げても、商品価格は期待するように下がらないのではないか。それより給付を急ぐべきだ」などと追及した。

また、減税に必要な財源をどのように確保するのか、非課税の農家や影響を受ける外食産業への支援をどのように行うのかといった指摘や、2年後に消費税率を元に戻せないのではないかといった影響を懸念する意見が相次いだ。

これに対して、高市首相は財源問題については「市場の信認を得られるよう、特例公債(赤字国債)に頼らずに確保する。ご心配には及びません」と強調したが、具体的な財源に言及することは避けた。

政府は9日の臨時閣議で、来年4月から2年間に限って食料品の消費税率を8%から1%に引き下げるとともに、2029年度からは働く中低所得者への給付(支援金)を創設する法案を決定し、国会に提出した。

ただ、この法案でも減税の財源をはじめ、支援金はどれくらいの年収の人が対象になり、どの程度の支援金になるのかなど具体的な制度設計は明らかにしていない。法案が成立後、政令で決めることにしている。野党側は強く反発しており、特に参議院は与党が過半数割れしているため、成立は見通せていない。

簗農相 続投表明も収束見通せず

各党の代表質問で、もう一つ大きな問題になったのが簗農相の問題だ。簗農相は先の衆院選で自らを支持しなかった首長の自治体の道路予算について「大幅にカットした」などと発言したとされる。

野党側は、行政の公正性を歪め閣僚としての資質にも欠けるとして、簗農相の政治責任を追及するとともに高市首相の任命責任を質した。

簗農相は当初、記者団の質問に「回答を控えたい」としていたが、その後自らの発言内容を認め、撤回して陳謝した。高市首相は「私も不適切だと考え、厳しく注意した。本人がしっかりと説明した上で、襟を正して職責を全うしてほしい。とにかく働いて仕事で返せと言っている」とのべ、続投させる考えを示した。

これに対し、国民民主党の玉木代表は、国土交通省以外でも同様な事案があるかどうか全省庁の調査を求めたが、高市首相は応じなかった。立憲民主党の斉藤国会対策委員長は「早期に大臣職を退かれることを強く求めたい」との考えを示しているほか、参議院農林水産委員会の開催に応じない考えだ。

さらに9日朝、自民党本部で開かれた農林関係の会合で簗農相が閣僚としてのあいさつしたところ、出席していた鈴木宗男参議院議員が「冒頭に『お騒がせしています』とか『説明責任を果たして参ります』というあいさつがあってしかるではないか。人として矜恃が問われている」と叱責する場面もあった。

高市首相は続投表明によって早期収束を図りたい考えだが、野党だけでなく世論、自民党内からも厳しい受け止め方が出ており、事態の収束は見通せない状態だ。

今回の背景としては、衆院選で自民党が歴史的な圧勝を収めてことで、党内の一部に気の緩みや驕りが現れるようになったとの指摘がある。自民党は過去にも新閣僚の問題で世論の反発を招き、内閣支持率が急落したケースもある。簗農相の問題は高市政権のリスク要因になっている。

簗農相へ問責決議案も、国会は波乱含み

それでは、これからの国会はどのような展開になるのだろうか。衆参両院で各党の代表質問が終わったのを受けて、13日と14日に衆院予算委員会、16日と19日に参院予算委員会に舞台を移して、高市首相と野党が一問一答方式で詰めた質疑が行われる。そして、消費税減税関連法案は今月20日以降に衆議院の委員会で実質審議が始まる見通しだ。

こうした中で、参院の立憲民主党や国民民主党、公明党など野党6党の国会対策委員長は9日、簗農相に対する問責決議案の提出を検討することで一致した。問責決議案は法的拘束力はないが、政治的な意味は大きく、可決された場合、これまで閣僚は辞任に追い込まれている。

参議院は野党の方が多数を占めており、野党が一致すれば、簗農相に対する問責決議案は可決される可能性がある。このため、高市首相は週明けの衆院予算委員会でどのような判断を示すかが注目される。

安倍政権の場合、不祥事が表面化した場合、菅官房長官を中心に閣僚を早期に辞任させるなどの対応をとってきたが、高市政権は危機管理面の対応が弱いのではないかとの指摘もあり、高市首相の判断が問われることになる。

一方、消費税減税をめぐっては、財源と新たな給付制度の制度設計が議論の焦点になる。高市首相は財源問題について「ご心配には及ばない」と繰り返すが、財源の内訳や規模のメドを示さないと野党が多数を占める参議院では、審議が止まる事態も予想される。

また、新たな給付制度についても、対象となる層の年収や給付の額が明らかにならなければ、野党側が強く反発することも予想される。こうした制度設計や基本データは、国民会議で議論された時から提示を求められてきた点だ。

週明けの衆院予算委員会では、簗農相の進退問題が大きな焦点として浮上することが予想される。

一方、消費税減税については、高市首相が法案の核心部分の考え方や制度設計のあり方を具体的に示したうえで、野党側とどこまで突っ込んだ議論ができるかどうか、臨時国会は波乱含みで展開することになる見通しだ。

★追記(13日23時)高市首相は13日の衆院予算委員会で、簗農相の道路予算に関する発言について「不適切であり、簗大臣が行政運営にあたるのがいいのかどうか考えさせてもらう」とのべた。野党議員が簗農相の交代を求めたのに対し答えた。この後、高市首相は記者団に「新たなシャトルバスの話(選挙期間中に支持者を無料で送迎したと報道された問題)の報告を電話で受けたい」とのべるともに14日の予算委員会終了後に簗農相と会談したいとの考えを示した。(了)

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”消費減税国会”開会へ 首相に鬼門 ”参院・市場・世論”

臨時国会が10月5日に召集され、当日衆参両院の本会議で高市首相が所信表明演説を行って開会した。これに対する各党の代表質問が7日から3日間の日程で行われ、与野党の論戦が本格化する。

今度の臨時国会は先の内閣改造後、初めての論戦の舞台になる。政府・与党は食料品の消費税減税の関連法案を最優先課題と位置づけ、臨時国会で早期成立を図りたい考えだ。

これに対して、野党側は「2年間限定の減税では、期待するような物価の値下げは無理だ」などとして、全ての野党が反対姿勢を示している。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案審議は難航が予想される。

一方、経済市場は、高市政権が消費税減税の財源を確保できるのかどうか、また財政の拡張政策にも疑念を抱いている。さらに国民は、減税を歓迎する声がある一方、日本経済や社会保障政策は大丈夫なのか懸念の声も聞かれる。

秋の臨時国会はどのような展開になるのか、どのような点がポイントになるのか探ってみた。

消費税減税、財源を明示できるか

臨時国会の会期は12月12日までの96日間で、政府・与党は消費税減税の関連法案や、イラン情勢悪化を受けて原油などの調達先を多角化するための法案など21本の提出を予定している。また、議員立法で継続審議になっている衆議院議員の定数削減法案の成立をめざしている。

このうち、最大の焦点は消費税減税の関連法案だ。食料品の消費税率を来年4月から2年間に限って8%から1%に引き下げ、1%相当分の給付を行うことで「実質ゼロ」を実現する。2029年度には新たな給付制度となる「就業者負担軽減支援金」を本格導入するというのが主な内容だ。

このうち、消費税減税と1%分(年6000億円程度)の給付には、年間5兆円程度が必要となる。この減税と給付をめぐっては多くの問題点を抱えているが、中でも財源をどのように確保するかが最大の論点になる見通しだ。

政府の税制大綱では「特例公債(赤字国債)に頼らない」としているが、具体案は示されていない。政府・与党は年末の予算編成過程で「結論」を得たいとしているが、野党側は財源の内容を明らかにするよう強く求める方針だ。

衆議院では与党が圧倒的多数を占めているため、法案審議を乗り切ることができるにしても、参議院は与党が過半数割れしているため、法案審議は難航することが必至の情勢だ。

このため、政府・与党としては財源について、どこまで具体的で説得力のある説明ができるかどうかが最大の焦点になる。

参院審議と市場・世論の反応がカギ

この財源問題については、経済市場も厳しい視線を向けている。また、市場は高市政権の「責任ある積極財政」についても財政の拡張政策ではないかとして厳しい見方をしている。

このため、政府は年内に財源の具体的な内容を示すことができるのかどうか問われる。また、高市首相肝いりの戦略分野への投資や防衛財源の確保も必要になる。仮に財政規律に不安があると見なされると円安・株安・債券安の「トリプル安」に見舞われるリスクも懸念される。

一方、国民の受け止め方はどうか。NHKの9月世論調査によると△消費減税については「賛成」が48%で、「反対」の37%を上回った。ただ、この減税がもたらす財政への影響については「懸念している」が57%に上った。△新たな給付制度は「賛成」が36%に対し、「反対」が47%で上回った。世論は減税に賛成ばかりではなく、慎重な見方や懸念を抱いている人が多いことが読み取れる。

このように食料品の消費税減税をめぐっては、特に参議院での与野党の法案審議に加えて、経済市場、それに世論の反応が影響する。こうした要素は相互に影響し合い、場合によっては連鎖反応を引き起こし、大きな動きになることもありうるので、注意してみていく必要がある。

政治とカネ、米中間選挙の影響も

衆議院議員の定数削減法案の扱いも与野党攻防の焦点になりそうだ。定数削減法案は、連立を組む日本維新の会が成立を強く求めてきたが、これまで2回の国会で先送りされてきた。

高市首相は維新の立場に理解を示しているが、自民党内には慎重論も根強くある。定数削減法案の成立を急ぐと、野党側が反発して消費減税法案の審議を遅らせることが予想され、この法案の扱いも難航する見通しだ。

また、臨時国会に先立って行われた内閣改造では、自民党の裏金問題に関連して政治資金収支報告書の不記載議員2人が初めて閣僚に起用された。簗農水相と関文科相で、両氏は党から役職停止や戒告の処分を受けていた。

日本維新の会から入閣した中司行革担当相は、2007年大阪府の枚方市長時代、清掃工場建設工事をめぐって大手ゼネコンが落札できるよう調整を図ったとして大阪地検側部に談合容疑で逮捕・起訴され、13年に最高裁で有罪判決が確定した。

野党側はこうした問題も取り上げて追及する構えで、「政治とカネの問題」も議論される見通しだ。

このほか、外交面では11月3日、アメリカの中間選挙の投開票日を迎える。現地の報道によるとトランプ政権を支える共和党は厳しい情勢が伝えられており、選挙結果によっては、世界経済に大きな影響を及ぼすことが予想される。

また、11月18日からAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で開かれる。高市首相の台湾有事発言を契機に日中関係は悪化の状態が続いている。こうした外交や国際経済の問題が国会論戦に浮上する可能性もある。

このように秋の臨時国会は、消費税減税の関連法案を軸に与野党の論戦と攻防が激化する見通しだ。消費税は、歴代政権にとって鬼門だった。消費税の導入や税率の引き上げに当たって、政権が倒れたり選挙で大敗したりするケースが相次いだ。

今回、高市政権は初めて消費税率を引き下げる法案を提出するが、この国会で法案を成立させることができるのかどうか。国会での与野党の攻防だけでなく、市場や国民を納得させることができるかが、大きなカギを握っているようにみえる。(了)

★追記(5日23時:高市首相は5日、衆参両院の本会議で所信表明演説を行った。この中で、焦点の食料品の消費減税については「食料品の税負担を軽くし、家計に少しでもゆとりを生み出したい」とのべ、法案の成立に理解を求めた。一方、財源については「特例公債(赤字国債)」に頼らずに確保することにしており、ご心配には及ばない」とのべたが、具体的な方策については言及しなかった。)

★追記(5日23時:高市首相の所信表明演説が終わったので、冒頭部分の文章は過去形に手直しをした。)

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高市改造内閣発足”継続重視の布陣と2つのリスク”

高市首相は政権発足から来月で1年を迎えることから、16日に自民党役員人事を行ったのに続いて、17日に内閣改造を行い、第2次高市改造内閣が発足した。

内閣改造では、内閣の要である木原官房長官をはじめ、片山さつき財務相、茂木外相や小泉防衛相らの主要閣僚がいずれも留任した。自民党役員人事でも麻生副総裁、鈴木幹事長、小林政調会長ら党役員のほとんどが留任した。

このように今回の人事では、高市政権がめざす重要政策を推進するため、主要閣僚や党役員のほとんどを留任させたのが大きな特徴だ。一方、去年総裁選を争った林総務相の再任は見送りにした。今回の内閣改造と自民党役員人事の全体をどのようにみたらいいのか探ってみたい。

主要閣僚8人が留任、林総務相は閣外へ

最初に内閣改造の主なポイントについて、整理しておきたい。第1の特徴は、冒頭で触れたように主要ポストで留任が目立ったことだ。内閣の要である木原官房長官をはじめ、財政を担当する片山さつき財務相、外交・安全保障のかじ取りにあたる茂木外相と小泉防衛相については、早い段階で留任が固まった。

また、赤沢経産相や城内・成長戦略担当相、小野田紀美・経済安全保障相、上野厚労相も留任となった。首相を除く18閣僚のうち、留任は合わせて8人だから、ざっと半数近くにのぼる。

次に連立を組む日本維新の会は政権発足時には閣僚を出さない「閣外協力」の形を取ってきたが、今回初めて閣僚を出すことになり、規制改革担当相に中司宏・前幹事長が就任した。維新から初めての入閣になった。

さらに、去年の自民党総裁選を高市首相と争った「ポスト高市」の4人の処遇も注目された。このうち小林政調会長も留任したことから、残る林総務相の処遇が焦点になっていたが、17日午後の閣僚名簿の発表で林氏の名前が読み上げられることはなかった。

林氏は旧宏池会の出身で、政治的な立ち位置が高市首相と異なることに加えて、去年の総裁選での議員票では高市首相を上回ったことから「高市首相は今回の人事で林氏を閣内に留めて封じ込める戦略だ」との見方と、逆に「林氏を起用せず、他の3人と分断を計るのではないか」との見方に分かれていた。

高市首相と林首相との間でさまざまなやり取りがあったとみられるが、結局、首相は林氏を起用しない決断をした。これに対し、林氏を支持する関係者の間では「林氏は総裁選に向けて自由に活動できる」と閣外に転じたことを歓迎する受け止め方もあり、高市首相にとって総裁再選のリスクになる可能性もある。これが1つ目のリスクだ。

このほか、今回の閣僚人事では自民党の派閥の裏金問題で、収支報告書に不記載があった議員が初めて入閣した。文部科学相に起用された関芳弘衆院議員は不記載額が836万円で、戒告処分を受けた。農水相に起用された簗和生衆院議員は不記載額が1746万円で、6か月の役職停止処分を受けた。

高市首相は記者会見で「それぞれの議員も真摯に説明を尽くし、これまで2回の選挙で審判を受けたてきた。いずれも内閣の一員として必要な能力を持つ方だ」と釈明した。

時事通信の世論調査では、裏金事件に関与した議員を閣僚や党役員に起用することについては反対が68.6%、自民支持層でも反対は53.6%に上ったことから、世論の批判が再燃することも予想される。

党役員人事、参院幹事長交代のリスクも

次に、16日に行われた自民党役員人事は、高市政権にどのような効果や影響を及ぼすだろうか。党役員人事では麻生副総裁をはじめ、鈴木幹事長、小林政調会長を留任させたほか、総務会長には梶山国対委員長を起用した。さらに萩生田幹事長代行も留任することになった。

当初、高市首相は鈴木幹事長の交代を求めるのではないかとの見方が党内にあったが、高市首相は8月下旬から麻生氏と2人だけで昼食をともにするなどその後も会談を続けた。そして早い段階で鈴木幹事長の留任が固まるなど今回は、麻生氏に配慮した人事であることがうかがえる。

自民党関係者よると高市首相は、当面の秋の臨時国会で食料品の消費税減税の関連法案の成立を図ることが政権の最優先事項であると同時に、来年秋の自民党総裁選挙もにらんで麻生氏の協力が不可欠だと判断しているとの見方をしている。

一方、党内で波紋が広がっているのが参議院自民党の石井前幹事長を交代させ、青木議運委員長を起用した人事だ。参議院自民党の人事は、党所属の参議院議員で選挙された参議院議員会長が決める規則になっており、松山参議院議員会長が決定したものだ。

だが、自民党関係者によると「高市首相と石井氏とは新年度予算案の国会対応をめぐって溝があり、首相の強い意向を松山議員会長が配慮して交代させたのが実態だ」との見方をしている。高市首相と松山議員会長はそろって否定しているが、額面通り受け止める議員は少ない。

自民党のベテランによると「石井氏は国対委員長を務め、与野党に太いパイプを持っており、彼を上回る能力を持った幹部は見あたらない」として、参議院での法案審議が行き詰まった場合、影響が出てくるとの見方をしている。端的に言えば、参院幹事長の交代は国会運営面のリスクになる公算が大きいというわけだ。

国会運営といえば、自民党の国会対策委員長に当選6回の村井英樹氏が起用された。村井氏は筆頭国対委員長などを務めてきたが、閣僚経験のない中堅を国対委員長に抜擢するのは異例で、これも高市首相の意向が働いているとされる。

衆議院は先の選挙で自民党が圧勝し、与党で4分の3の議席を占めるので、国会対策上の問題はほとんど生じないかもしれないが、参議院は与党が過半数割れして厳しい状況だけに、首相主導の国会運営を危ぶむ声は多い。これが2つ目のリスク。

国会乗り切りと柔軟な政権運営がカギ

それでは、今回の人事全体をどのようにみたらいいのか。高市政権にとって、内閣改造は初めての人事であると同時に、衆院選で圧勝した後の政権運営をどのように行うかという問題でもある。この両方を考えるうえで参考になるのが、高市首相が「政治の師」と仰ぐ安倍元首相のケースだ。

具体的には、安倍元首相が2012年12月の衆院選で圧勝して、政権復帰を果たした後、最初の内閣改造を行ったのは2014年9月だった。つまり政権発足後、最初の内閣改造に踏み切ったのは、2年近く経ってからだった。その間、実績を積むと同時に、改造の祭には、官房長官や財務、外務など主要閣僚6人を留任させた。

同時に安倍首相は、経済政策アベノミクスの具体化を進めるとともに、新たに「地方創生」などのテーマを打ち出し、その担当相に総裁選でライバル関係にあった石破氏起用した。また、幹事長にはハト派の谷垣氏(自民党総裁経験者)を説得して就任してもらうなど懐の深い布陣を敷いた。さらに女性閣僚を過去最多の5人起用するなど具体的な取り組みを展開したのが思い出される。

今回、高市首相の人事は、閣僚の留任の多さでは、安倍元首相の改造人事を上回る8人にのぼる。また、衆議院議員全員に希望ポストのアンケートを行い、それを基にに閣僚を起用したとアピールするが、安倍政権と比べると具体的な目標設定や多様な人材を配置する戦略性などが見あたらない。

高市政権は、衆院選挙の公約として打ち出した食料品の消費税減税も、税制改正大綱が決まった段階で、法案化はこれからだ。秋の臨時国会で成立しても実際に税率引き下げが実現するのは来年の4月になる。

秋の臨時国会で法案審議が順調に進むのかどうか、特に参議院の審議は難航が予想される。先の特別国会では新年度予算案の審議を圧縮したり、改正皇室典範の審議は衆参両院でわずか1日で、世論の批判を浴びた。首相主導の強引な国会運営は生産的でなく、改めた方がいい。

外交・安全保障分野でも安倍政権の発足当初は、中国との関係が悪化していたが、APECが中国で開催されるタイミングをとらえて自ら訪中し習近平国家主席と日中首脳会談を行った。そして、戦略的互恵関係を確認するなどして事態の打開を図った。

高市首相も、安倍元首相が行ったように内外情勢を冷静に分析しながら、柔軟で安定した政権運営を実現できるかどうか、今回の人事の結果がさっそく試されることになる。(了)

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高市首相”政権の骨格維持へ”内閣改造・党役員人事

高市首相は7日、首相官邸で自民党の鈴木幹事長と会談し、内閣改造と自民党役員人事について意見を交わした。その結果、自民党役員人事の後に内閣改造を行い、10月上旬にも臨時国会を召集する日程を確認した。

これを受けて高市首相は8日午前に開かれた自民党の役員会で、党役員人事について総裁である自らに一任するよう求め、役員会として一任することを決めた。

高市首相は、食料品の消費税減税を実施するための税制大綱を15日に閣議決定できれば、翌16日に自民党役員人事、17日に内閣改造を行う日程を検討している。

高市政権発足からまもなく1年を迎えるのを前に行われる内閣改造と自民党役員人事について、これまでの経緯と人事の焦点などを探ってみたい。

麻生・鈴木両氏は続投、協力関係維持へ

高市首相が初めて手がける内閣改造と自民党役員人事をめぐっては当初、鈴木幹事長の交代を望んでいるのではないかとの見方があったことから、幹事長人事が最大の焦点になるのではないかとみていた。

鈴木氏は、麻生氏の義弟で麻生派に所属していることから、鈴木幹事長の処遇は、高市首相が麻生氏との関係をどのように考えているかを占う人事として、党内外の注目を集めていた。

そして一部には、高市首相は、鈴木氏に代えて、旧安倍派の萩生田幹事長代行を起用するのではないかとの見方も出ていた。

こうした中で高市首相は先月25日、首相官邸で麻生副総裁の二人だけで昼食をともにするなど人事の調整を進めてきた。官邸や自民党関係者の情報を総合すると高市首相は、麻生氏の副総裁留任を求めるとともに鈴木幹事長の続投を認めたものとみられる。

高市首相としては、当面の最大の懸案である食料品の消費税減税を実現させることと、来年秋の自民党総裁選で自らの再選を果たすためには、唯一の派閥である麻生派を率いる麻生氏の協力が不可欠だと判断したためとみられる。

一方、党内には高市首相は、鈴木氏交代を模索したが、その後任として適任者を見いだすことができなかったため、鈴木氏交代を断念したとの見方も聞く。

小泉・茂木・小林各氏留任へ、林氏が焦点

内閣改造をめぐって高市首相は、早い段階から内閣の要である内閣官房長官には木原稔氏の留任を決めていたほか、片山財務相の留任も固めたとされる。

一方、去年の総裁選を争った小泉防衛相、林総務相、茂木外相、それに自民党の小林政調会長の処遇も焦点になっている。このうち、小泉防衛相と茂木外相については留任が固まったのに続いて、小林政調会長についても留任で調整が進められている。

一方、林総務相の処遇について、高市首相の意向は明らかになっていない。林総務相自身も「次の総裁選をにらんで内閣を離れたい意向」との見方もあり、改造人事の焦点になっている。

林氏は旧宏池会出身で穏健リベラル派で、保守色の濃い高市首相とは違いがある。内閣や党の要職に止まれば、来年の総裁選への挑戦が制約されるとの見方もあり、林総務相と高市首相がそれぞれどのように最終判断するか注目される。

維新 初入閣、参院自民党人事も注目

今回の内閣改造では、連立を組む日本維新の会が初めて閣僚を出すことになる。去年の高市政権発足にあたって維新は、高市首相から入閣を求められたが応じず、閣外協力の立場を続けてきた。

今回、初めて閣僚や副大臣などの政務三役を出す運びになっている。維新関係者によると入閣候補として馬場元代表や、藤田共同代表、中司幹事長らの名前が上がっており、最終的には馬場氏の可能性が大きいとの見方もある。

その場合、規制改革担当相のポストが取り沙汰されているが、未だ流動的だ。維新が閣内に入った場合、自民と維新の連携が強化されるのか、逆に不協和音が増すことになるのかも注目点だ。

このほか、高市首相と参議院自民党との関係、具体的には石井参院自民党幹事長が再任されるのかも関心を集めている。高市首相は先の特別国会の運営をめぐって石井幹事長との関係がギクシャクしたことから、石井氏の交代を求めているとの見方もある。

一方、参院自民党は独自性が認められており、参院自民党の議員会長が参院の人事権を持っている。つまり、総裁といえども参院の人事権を直接行使できないのがルールで、歴代総裁も尊重してきた。高市首相も総裁選への影響も考慮して、人事の介入は避けるのではないかとの見方が強いが、なお警戒する声も聞く。

消費減税実現と総裁選再選がねらいか

ここまでみてきたように自民党執行部は、麻生副総裁を筆頭に鈴木幹事長、萩生田幹事長代行、それに小林政調会長も留任する方向で最終調整が進んでいる。一方、内閣は、木原官房長官と片山財務相に続いて、茂木外相、小泉防衛相の留任が固まるなど政権の骨格は変えずに維持する見通しだ。

これは高市首相としては、衆院選の公約に掲げた食料品の消費税減税を秋の臨時国会で実現するために、政府と党で制度設計などにあたってきた当事者をそのまま充てることで、法案の成立を確実にしたいためとみられる。

また、去年の総裁選を争った小泉、小林、茂木の各氏を内閣と党に事実上、封じ込めるとともに、党内の影響力が大きい麻生副総裁の協力を得ることで政権を安定させ、来年秋の総裁選で自らの再選を図りたいとのねらいがあるものとみられる。

一方、高市政権の骨格が変わらないということは、国民からみると「変わり映えがせず、物価高対策をはじめとする国民生活の安定に向けた大胆な取り組みも期待薄」との見方が強まることも予想される。

また、先の特別国会で高市政権は強引な政権運営が批判を浴びたように政権運営の危うさを指摘する声は多い。内外に数多くの難問を抱えている中で、重要政策で成果を上げることができるのか、さらに安定した政権運営ができるのか、新たな体制の力量が秋の臨時国会でさっそく問われることになる。(了)

★追記(9月14日午前10時)高市首相は、自民党の国会対策委員長に村井英樹・元官房副長官を起用する意向を固めた。村井氏は当選6回、閣僚経験はなく、異例の抜擢となる。従来の国会運営を変えたい高市首相の強い意向が働いているものとみられる。▲連立政権を組んでいる日本維新の会からは、中塚幹事長を入閣させる方向で調整が進んでいる。▲去年の総裁選で高市首相と争った4人のうち、小泉、小林、茂木3氏は留任の方向で、残る林総務相の処遇が焦点になっている。

★追記(9月15日午後9時)高市首相は15日午前の自民党役員会で、16日に自民党役員人事、17日に内閣改造をそれぞれ行う方針を表明した。▲自民党役員人事では麻生副総裁、鈴木幹事長、小林政調会長、西村選対委員長の留任が固まった。総務会長には梶山国対委員長、国対委員長には村井元官房副長官の起用が固まった。萩生田幹事長代行も留任の見通し。▲参議院自民党人事では、石井幹事長を交代させ、後任に青木参議院議運委員長を充てる方向で調整が進められている。

★追記(9月16日午後11時)高市首相は16日、自民党役員人事を行った。このうち、参議院自民党の石井幹事長は交代し、青木参議院議運委員長が起用された。

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3党の合流断念 ”野党 多弱化と険しい再建の道”

中道改革連合、立憲民主党、公明党の3党党首が31日夕方、国会内で会談し、これまで進めてきた3党の合流を断念することを確認した。

これを受けて、衆議院議員で構成する中道改革連合は、立憲民主党系と公明系に分裂する見通しで、分党など具体的な方法の検討に入った。

中道の小川代表は会談後の記者会見で「中道勢力の拡大と政権交代に向けて党に集まった仲間が再軌道していくための新たな形態を見いだしたい」として、衆議院での統一会派の結成をめざすを示した。

秋の臨時国会を前に衆議院の野党第1党である中道が分裂すると、野党の多党化と弱体化がさらに進む。私たち国民は、こうした野党の現状と政治のあり方をどのようにみたらいいのか考えてみたい。

衆院選1千万票の重みと政党の責任

中道、立憲民主、公明の3党代表は党首会談終了後に記者会見に応じたが、3党の代表の発言内容に納得した国民は少なかったのではないか。

中道の小川代表は、その後の会見も含めて記者団から「これからめざす新たな形態とは何か」「衆院の統一会派は実現可能か」などの質問に対して、「今の体制のままではない。具体的なことは申し上げられない」との説明を繰り返した。

立憲民主党の水岡代表は「3党の協力・連携のスタートにしたい」とのべたほか、公明党の竹谷代表は「中道の対応を見守りたい」などとのべるに止まった。3党合流が頓挫した後、それぞれの党がどのような方向に踏み出すのかを聞きたかったが、3党の代表からは踏み込んだ言及はなかった。

中道改革連合は、中道勢力の結集と政権交代を掲げて先の衆院選に挑戦したが、選挙前の172議席から49議席へ激減・惨敗した。だが、比例代表選挙でみると1043万票を獲得した。自民党の2102万票次いで、2番目に多い得票だ。中道に1票を投じた有権者の思いにどのように応えるのか政治家の責任は極めて重い。

また、新党結成から衆院選を経てわずか7か月で瓦解することになったことは、政党として国民の期待に応えることができず、国民の政治に対する不信感を一段と強めたことも重く受け止める必要がある。

少数野党分立と野党弱体化の加速

それでは野党の陣営は今後、どのようになるのだろうか。まず、今の衆議院の勢力は野党第1党が中道で49人、次いで国民民主28人、参政15人、みらい11人、共産4人などとなっている。

中道が分かれると公明系が28人、立憲民主党系11人となる。野党第1党は、国民民主と公明となるが、いずれも30人を下回る小規模野党第1党だ。これまで想定していなかったような少数野党の分立国会となる。

自民党は316議席、単独で衆議院の3分の2を上回り、戦後最も多くの議席を獲得した。連立を組む維新は36人で、与党の自民・維新で352人と全体の4分の3を占める。衆議院は「自民1強・弱小野党」の構図が一段と進むことになる。

中道の小川代表は、将来の中道勢力の結集と衆院で野党第1会派をめざして、公明系などと合わせて統一会派の結成をめざしている。公明党は参議院では立憲民主党との統一会派の結成に応じなかったが、衆議院ではどのような方針で臨むか、注目される。

参議院は衆議院と異なり、自民党は101人で、維新の19人を合わせても120人に止まり、総定数248の過半数に達しない。これに対して、野党は立憲民主が40人、国民民主25人、公明21人、参政15人、共産7人、いのち5人、保守2人、みらい2人などと続く。

衆院は巨大与党、参議院は与党過半数割れで、「衆参ねじれ国会」となっているが、3党合流断念をとらえて自民党が今後、参院で多数派工作などを強めることが予想される。

政権監視の”しっかりした野党”が必要

これからの政権と野党はどのような役割が求められるのだろうか。国民の考え方も、強い政権が思い切った政策を次々に断行する政治を期待する人もいるだろうし、支持する野党を中心に政権交代を望む人もいるだろう。

ただ、国民の考え方は多様化していることと、どの政党が政権を握るようになっても公正な政治を進めるためには、政権を監視し政策をチェックする野党が必要だ。そうした野党がいない場合、強力な政権ができたとしても次第に緩みが生じて、国民の期待に反するような政治に逸脱するおそれもある。

今回は中道勢力を結集する試みは失敗したが、政権や政策をチェックする野党の必要性とは別の問題だ。政権監視などができる、しっかりした野党の存在は必要だ。そして政権交代可能な政治体制についても必要と考える国民は多いのではないか。そのための野党勢力の結集が問われているということだろう。

さて、衆議院では中道が分裂した場合、公明系の議員は公明党に復党する可能性が大きいとみられる。その場合、公明党が与野党のどの政党と連携を深めていくのか、今後のカギを握る。

一方、中道の立憲民主系の議員は、新党を結成することになるのか、あるいは離党する議員が出てくるのかどうか、さらには落選中の議員がどの程度参加するかも問われる。

野党の陣営は、中道や国民民主、公明、参政、共産など各党が乱立し、それぞれ党の理念と独自の政策を主張し合う中で、野党の勢力が小異を残して大同につくことができるのか、野党勢力の結集や再建は険しい道が予想される。

一方、高市政権にとっては、中道の分裂は野党勢力に楔を打ち込むことができ、有利に働くものとみられる。高市首相は秋の臨時国会で、悲願の食料品の消費税率を1%に引き下げる法案を成立させるとともに、「責任ある積極財政」などを掲げて、高市カラーの濃い政策を強力に展開していくものとみられる。

これに対して野党陣営は、消費減税などに対案をまとめて対峙していくことになるのか、それとも野党陣営が切り崩されて守勢に回ることになるのか。秋の政治は、経済・財政の動向とも絡んで、複雑で波乱含み展開になるのではないかと予想している。(了)

★追記(3日13時)内閣改造と自民党役員人事は今月中旬にも行われるとの見方が自民党内で強まっている。政府・与党は食料品の消費税率を1%に引き下げる制度設計を進めているが、これを実施するための税制改正大綱が15日までに閣議決定されれば、高市首相は直後に内閣改造と自民党役人事を行うとの見方。このうち、党役員人事では麻生副総裁と鈴木幹事長を続投させるかどうかが焦点。内閣改造では、維新から新たに閣僚を起用するものとみられている。

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秋の政局 “消費減税法案がカギ 高市政権”

高市政権は今年2月の衆院選挙で圧勝し、長丁場の特別国会を終えたが、報道各社の世論調査によると7月半ばに内閣支持率が急落した。8月に入っても横ばいか、低下が続いており、支持率の下落傾向に歯止めがかかっていない。

高市政権は去年秋の発足から間もなく1年を迎えることから、高市首相は9月中旬以降にも初めての内閣改造・自民党役員人事を行う見通しだ。秋の政治はどこかポイントになり、どのような展開になるのか、探ってみたい。

秋の日程、臨時国会と外交・安保2本柱

まず、秋の政治日程から見ていきたい。2つ大きな柱があり、1つは臨時国会の召集だ。その臨時国会への対応と来年秋の自民党総裁選挙をにらんで、高市首相は9月に内閣改造・自民党役員人事に踏み切る見通しだ。また、衆院選挙の公約に掲げた食料品の消費減税の関連法案を国会に提出し、成立をめざす方針だ。

2つ目は外交で、9月22日から秋の国連総会がニューヨークで開幕し、各国首脳の演説が行われる。11月にはAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で、12月にはG20サミットがアメリカのマイアミでそれぞれ開かれる。

11月3日はアメリカの中間選挙の投開票日で、結果はトランプ政権の命運を左右するだけでなく、日本を含む世界の経済・外交関係に大きな影響を及ぼす。一連の外交日程の中で米中首脳会談が行われるほか、高市首相にとっても緊張関係が続く中国の習近平主席との首脳会談が行われるかどうかなど注目点は多い。さらに年末には日本の安全保障三文書の改定と防衛力整備の問題が控えている。

臨時国会の具体的な召集日などは調整中だが、高市首相は9月22日開会の国連総会に出席するとみられることから、内閣改造などの人事は出発前の9月中旬以降、臨時国会は帰国後の9月下旬以降に召集する方向で検討しているものとみられる。

内閣改造、自民党の幹事長人事が焦点

さて、高市首相は内閣改造と自民党役員人事について、具体的な人事構想を周辺にも明らかにしていないが、与党の関係者は「自民党の党運営の要である鈴木幹事長を続投させるのかどうかが最大の焦点」との見方をしている。

また、内閣改造では閣外協力の日本維新の会から閣僚を起用するほか、去年の自民党総裁選を争った小泉、林、小林、茂木の各氏を引き続き閣内や党役員として処遇するのか否かも焦点だ。

このうち、自民党役員人事をめぐって高市首相は、麻生副総裁の義理の弟である鈴木幹事長を交代させ、旧安倍派の萩生田幹事長代行を据えたいとの見方が取り沙汰されている。

これに対して麻生副総裁は、鈴木幹事長の続投を強く求めているとされる。政府や自民党関係者の間では「幹事長を交代させた場合、高市・麻生関係に亀裂が入り、政権運営にも支障が出てくる」として鈴木氏続投の見方が強い一方、「高市首相は自らの考えを貫くのではないか」との見方もある。

自民党長老は「今の党内をみていると肝心なことは高市総理・総裁が独りで決めており、周囲があれこれ言っても意味がない」と語る。高市首相は25日、麻生副総裁と首相官邸で昼食をともにしたが、こうした会談以外の人事情報は、ほとんどが憶測の域を出ないとみてよさそうだ。

消費減税法案がカギ、財源含め論戦へ

それでは、秋以降の政治に大きな影響を及ぼすのは何かと言えば、食料品の消費減税法案の扱いだろう。

政府や8月5日の臨時閣議で、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げるなどした基本方針を決定した。これに合わせて、中低所得層に1%相当分を給付することで、実質ゼロを実現するとしている。

政府は、与党で食料品の消費減税を盛り込んだ税制改正大綱をまとめるのを受けて、必要な法案を秋の臨時国会に提出し、早期の成立をめざす方針だ。

この消費減税法案に対して野党側は「食料品に限定した減税の効果には疑問があるほか、農家や外食産業に多大な負担が生じる」として反対する姿勢を変えていない。自民党内にも「財源のめどがついていない」として慎重論も依然として残っている。

このため、秋の臨時国会では消費減税法案をめぐって与野党の意見が真っ向から対立する見通しだ。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案が成立するのかどうか見通しは立っていない。仮に参議院で法案が否決されたりした場合、衆議院に回付して3分の2以上の賛成多数で再可決することもありうるとの見方もある。

政府が、社会保障の財源となっている消費税率を引き下げるのは今回が初めてで、5兆円程度の財源をどのように確保するのかはっきりしない。新年度予算の財源としては、高市首相が重視する危機管理投資や成長戦略投資、さらには防衛力強化のための財源と合わせて、どのように確保するかは難題だ。

一方、秋に向けて石油由来の化学製品の値上げや、円安に伴う輸入物価の値上がりにどのような対策をとるのか、高市政権の経済・財政運営の在り方を含めて激しい論戦が交わされる見通しだ。国会審議を通じて、政府が説得力のある説明をできるかどうか、法案の成否を左右することになりそうだ。

税は鬼門、試される首相の政権運営能力

2月の衆院選挙で自民党は戦後最も多い316議席を獲得し、歴史的圧勝を収めたが、税制は政権にとって鬼門だ。これまでも衆院選挙で圧勝したケースとして、中曽根、小泉、鳩山、第2次安倍の各政権と高市政権がある。

圧勝した政権は、選挙後の政権運営も順調に運んだケースもあるが、失敗に終わったケースもある。高市政権のケースを考える際、参考になるのは中曽根政権のケースだ。

中曽根政権は昭和61年、衆参ダブル選挙で300議席を獲得し、その功績で自民党の総裁任期が1年延長となり、絶頂期を迎えた。政権後半の政治目標に売上税導入を打ち出し、法案を閣議決定、国会提出へと突き進んだ。

ところが、野党の反対に加えて、足元の自民党内、小売店などの関係団体にも反対が広がり、内閣支持率は急落、統一地方選にも敗北、ついに法案は廃案に追い込まれ失敗した。

高市政権とは法案の内容も異なるし、中曽根政権は増税に対し、高市政権は減税という違いもある。だが、税制は影響を受ける様々な業界・団体の利害調整、自らの党内はもちろん、野党への働きかけ、国民への説明や説得など地道な努力を幅広く展開する必要がある。政権全体の総合的な調整力や実行力が必要だ。

中曽根首相は元々、派手な雄弁で鳴らし、サミットなどの国際舞台で存在感をアピールするタイプの政治家だ。税制など地味な仕事は不得手だったことも影響したのではないか。

さて、高市首相はどのように対応するだろうか。これまでの活動をみると選挙の街頭演説などは得意のようだが、国会での質疑や国民に向けた記者会見などは好きではないように見える。

また、税制や財政も得意分野とは言えないようだ。首相はすべての分野に精通している必要はない。政権の最高責任者として、それぞれの分野に優秀な人材を配置し、指揮・調整していけばよい。それだけに9月に行われる予定の内閣改造と自民党役員人事でどのような布陣にするかが大きなポイントだ。

内閣と与党の人事から、臨時国会へと首相の政権運営能力が試されることになる。具体的には、首相官邸と自民・維新の与党側との調整、次に参院自民党との連携、それに霞ヶ関の官僚とも連携を図り、法案や政策が実行できるかが問われている。

先の特別国会での高市首相の言動を見る限り、高市首相が自ら調整力を発揮するのは相当、困難とみているが、政治家は大変身することもある。秋の臨時国会での首相の答弁内容や対応を注視したい。(了)

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高市内閣支持率 発足以降最低 “無党派層の支持離れ”

先の衆院選で自民党が歴史的圧勝を収めたのを受けて召集された特別国会は、先月25日に閉会した。また、焦点の食料品の消費減税について高市政権は5日、来年4月から2年間に限って消費税率を1%にまで引き下げる方針を閣議決定した。

一方、報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は先月半ば以降、急落しているが、8月に入って歯止めがかかるのかどうか。また、食料品の消費減税について国民はどのようにみているのか。NHKの8月の世論調査がまとまったので、そのデータを基に分析してみたい。

結論を先に言えば、高市内閣の支持率は53%で先月調査から5ポイント下がり、去年10月に発足して以降、最も低い水準となった。これは最も多い無党派層の支持離れが進んだためだ。

また、特別国会で成立した皇室典範の改正については国民の理解が得られていないほか、消費減税についても支持に広がりがみられないことが影響しているものとみられる。

特に消費減税をめぐっては秋の臨時国会で本格的な議論が行われることから、高市政権は厳しい政権運営を迫られる公算が大きい。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的にみていきたい。

 無党派層・女性・高齢層の支持離れ

NHKの世論調査(8月7~9日実施)によると、高市内閣の支持率は53%で、7月調査から5ポイント下落した。一方、不支持率は33%で、6ポイント増えた。高市内閣の支持率は衆院選が実施された2月は65%と高かったが、それ以降は下降傾向が続いている。8月の53%は去年10月の政権発足以降、最も低い水準になった。

報道各社の世論調査では7月半ば以降、内閣支持率が急落している。NHKの8月の調査でも下落傾向が続いていることから、支持率下落の流れには歯止めがかかっていないと言える。

次に高市内閣の支持層を党派別にみると自民支持層では85%、横ばい状態で変わっていない。一方、有権者全体の4割を占めて最も多い無党派層では36%で、先月に比べて8ポイントも減少した。ここが大きく影響しているものとみられる。

男女別では男性が6ポイント下がって56%、女性は2ポイント下がって48%だった。女性の支持が半数を割り込んだのは、今回が初めてだ。

年代別では、18歳から20代・30代では62%、30代で65%が支持しているほか、50代でも59%と高い水準を保っている。これに対し、60代と70代、それに80歳以上では4割台に止まっている。特に60代は支持が14ポイントも減っており、50代を境に高齢層の支持離れも目立っているのが特徴だ。

皇室典範改正、消費減税の政策も影響

高市内閣の支持率が発足以降、最低水準に落ち込んだ背景としては、どのような背景があるのだろうか。

まず、高市内閣を支持する理由と、支持しない理由からみておきたい。支持する理由としては、①「実行力があるから」が33%、②「他の内閣より良さそうだから」が31%、③「政策に期待が持てるから」17%で、順位は7月調査と変わっていない。

一方、支持しない理由は、①「政策に期待が持てないから」が43%、②「人柄が信頼できないから」が23%、③「支持する政党の内閣でないから」11%となっている。

先月は「人柄が信頼できないから」が35%で最も多かったが、今回は「政策に期待が持てないから」が最多で入れ替わった。人柄というやや漠然とした理由から、支持しないのは政策だと理由を明確にしている点がこれまでと異なる点だ。

そこで、国会終盤で大きな争点になり、成立した改正皇室典範についてみると「国民の理解を得られていると思うか」という問いに対し、「得られている」は29%に止まった。「得られていない」は64%に上り、大幅に上回った。

皇室典範改正の審議時間は衆参両院を合わせても6時間余りと極めて短かった。また、政府案は皇位継承は男系・男子の皇族に限定し、女系・女性天皇を認めない点などに問題があると感じた国民が多かったことも影響したのではないか。

また、政府が来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、中低所得層に1%相当分を給付するとした方針を閣議決定したことへの賛否を聞いたところ、「賛成」は49%、「反対」は39%、「わからない・無回答」は12%だった。

さらに、この減税がもたらす国の財政への影響について聞いたところ「大いに懸念している」は30%、「ある程度懸念している」は37%の合わせて67%に上った。これに対して「あまり懸念していない」は19%、「まったく懸念していない」は9%の合わせて28%だった。

物価高が続く中での減税には、国民の多くが歓迎するのではないかとの見方がある中で、「賛成」が半数程度に止まったことは、減税の是非を慎重に考えようとする国民が多いことをうかせる。

また、減税に伴う国の財政への影響を懸念する人が67%、3人に2人の割合にも上ったことは減税に必要な財源をどのように確保するのか、高市政権の取り組みを見極めようとする国民の慎重な姿勢も読み取れる。

経済のかじ取り・無党派層の動向がカギ

さて、高市政権の今後の政権運営と秋の政治の展開はどのようになるだろうか。今回の世論調査で、熊本地震への政府に対応について、「評価する」は「大いに評価」と「ある程度」を合わせて67%に上り、「評価しない」の27%を大きく上回った。

大きな震災や事故などが起きた場合、危機管理に当たる政府の評価が高くなる傾向がある。逆に言えば、この震災対応がなければ、高市内閣の支持率は5ポイント減に止まらず、大幅に下落したのではないかと推測している。

一方、無党派層について、高市内閣を支持する割合などを詳しくみてみると「支持」は36%に対し、「不支持」は42%に達し、不支持が支持を上回った。これは石破政権末期とほぼ同じ水準にあたる。つまり、無党派層については、不支持が多数を占めて、政権にとっては危険水域に達しているとみることができる。

こうした無党派層に大きな影響を及ぼすのは、暮らしや経済政策だ。消費税減税をめぐって無党派層をはじめとする国民は、財源の確保は本当にできるのか、財政に対する市場の信認は得られるのか、歴史的な円安への対応はどうするのかといった点を見極めようとしている。

したがって、秋の臨時国会で高市首相は、消費税減税をはじめとする経済・財政政策全体のかじ取りについて、説得力のある方針と具体策を打ち出せるのかが問われている。

説得力のある方針が示されない場合、無党派層の支持離れはさらに進み、高市首相は一段と厳しい状況に立たされることが予想される。高市首相の経済運営のかじ取りと無党派層の動向、この2つが秋の政治の大きなカギを握っている。(了)

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消費減税の基本方針 閣議決定”秋の臨時国会で徹底審議を”

消費減税をめぐって、政府は5日午後に臨時閣議を開き、来年4月から2年間に限って食料品の消費税を1%に引き下げるなどとした基本方針を正式に決定した。政府は具体的な制度設計を進め、9月に税制改正大綱を決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。

閣議決定された基本方針によると食料品の消費税について、来年4月から2年間税率を1%に引き下げるとともに、中低所得の人に1%相当分を給付することで実質ゼロを実現するとしている。

財源は、市場の信認を損なうことがないよう赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、それに税外収入などを通じて確保するとし、来年度の予算編成プロセスで結論を得るとしている。

こうした2年間の減税を経たうえで、2029年度には「所得に連動したきめ細かな給付」を毎年度、継続的に実施する新たな制度として導入するとしている。

1989年に消費税が導入されてから37年になるが、政府が消費税率引き下げの方針を決定したのは、今回が初めてだ。政府の方針をどのようにみたらいいのか、また政治の対応として何が必要なのか考えてみたい。

多くの疑問・懸念は残されたまま

さっそく政府の基本方針の内容からみていきたい。まず、食料品に課税される消費税率が8%から1%に引き下げられるが、専門家は「国民が期待するほどの引き下げ効果はないのではないか」との見方を多く聞く。

イラン情勢悪化に伴う原材料や包装の価格上昇、それに輸送費、人件費も上がっていることから、減税分がそのまま価格に反映されるとは限らない。消費減税の効果は、思ったほどないのではないかというわけだ。

次に減税などを実施するためには1年で5兆円程度の財源を必要とするが、基本方針では財源の具体的な内訳は示されておらず、来年度予算編成の中で検討していくことになる。

税制に詳しい議員に聞くと「1年に5兆円程度は赤字国債に頼らずに何とかかき集められるが、他にも首相肝いりの危機管理投資や防衛力強化の予算にも必要だ」として、財源確保の難しさを認めている。

高市政権の下で財政拡張がさらに進むとみられると市場の信認を失い、円安・債券安が一段と進むリスクを抱えている。

さらに懸念されるのは、2年後に食料品の消費税率を元の8%に戻せるかだ。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説する。

だが、どうだろうか。消費税率引き上げの時期は2029年4月。その前年・2028年夏には参議院選挙が実施される。選挙を間近に控えた政権は、選挙への影響を恐れて引き上げを先送りすることはありうるのではないか。安倍政権も2回にわたって引き上げを延期したことがある。

このほか、食料品の消費税が実質ゼロになると、利用客の減少が予想される外食産業や免税農家に対する支援策の検討もこれからだ。このように食料品の消費減税には数多くの疑問や懸念が出されたが、ほとんど手つかずで残されたままだ。

首相 ”力で押し通す政治”の危うさ

今回の消費減税にあたって危惧されるのが、高市首相が進める政治手法だ。高市首相は衆院選での自民圧勝後、超党派の「国民会議」で給付付き税額控除の検討を進めたが、食料品の消費減税については与野党の合意を取りつけることに失敗し、結局、自民党の方針をそのまま政府方針として決定した。

また、政権与党・自民党の最終的な意見集約も、首相の方針を最初に党役員に提示して賛同を得た後、党所属議員の意見を聞いて集約する手法を採った。党所属議員の意見集約もわずか2日間だった。

従来の自民党であれば、党税調の意見を踏まえて方針のとりまめに活かしたり、”平場の議論”は当事者が疲れ果てるまで続けたりしたが、今やトップダウンの上意下達、”力で押し通す政治”の党に変わったように見える。

特別国会閉会後の記者会見で高市首相は「316議席、衆院選挙で国民の皆さまから頂戴した大きな、大きな負託。その責任の重さを毎日噛みしめながら公務に向き合っています」「何かを成し遂げようとすれば大きな抵抗もあるでしょうが、『公約実現』への私の思いは決して揺らぐことはありません」と強調した。

選挙公約を何としても実現したいとの首相の思いは理解できる。他方で、政治家、特に首相は選挙後に起きた内外情勢の変化、今年で言えば米・イスラエルによるイラン攻撃などの影響なども勘案し、大局的で現実的な政権運営が必要だ。

また、”力で押し通す政治”が前面に出すぎると大きな政治目標を達成することは難しくなる。首相は政治姿勢や手法を再考することが必要ではないかと考える。

消費減税を含む基本政策 徹底論戦を

消費減税の問題は、今回の閣議決定によって政府・与党の基本方針が決まったことになる。今後は秋の臨時国会で、関連法案の審議に焦点が移る。

そこで、消費税の意義と経緯をみておくと消費税は、急速な人口減少と超高齢化社会が進行する中で、社会保障を整備する新たな税制として導入された。若い世代だけでなく、高齢者も消費を通じて税を負担して社会保障を支える税制であることから、その意義を認める国民は多いとみていいのではないか。

こうした観点に立って今回の政府の基本方針をみると2年間に限定された「つなぎ」の措置のために基幹税である消費税の税率を引き下げることには疑問を抱かざるを得ない。別に財源を求めるか、給付に切り替える方策も考えられる。

秋の臨時国会では法案の成否の駆け引きでなく、人口急減時代の税と社会保障の整備について与野党が掘り下げた議論を行ってもらいたい。

また、今の日本が直面している政治課題も待ったなしだ。物価高騰対策をはじめ、日米が28年ぶりに円買いの協調介入を行った円安への対応、さらに市場が懸念を抱いているとされる政府の財政政策など取り組むべき課題は多い。

さらに今回の消費減税に必要な5兆円の財源確保をはじめ、首相が強い意欲を示す危機管理投資と防衛力の抜本強化を図るための防衛財源について、全体像を明らかにする必要がある。

秋の臨時国会は、こうした日本が直面している金融・財政、防衛力整備と社会保障などの基本政策について、政府・与党と野党側が真正面から徹底して議論を深めることが必要だ。

一方、国会の運営面では、高市政権は衆院では圧倒的多数の勢力を確保しているが、参議院では過半数割れしている。このため、先の特別国会で明らかになったように力で押し切るような国会運営は困難だ。加えて足元の自民党内では、消費税減税には慎重・反対論が根強く、高市政権の政治基盤は万全とは言えない。

一方、野党陣営は少数政党に分かれたままで、高市政権に対して本格的な論戦も挑めない状態で、国民の失望を買っている。

こうした状況から、高市政権と与野党がやるべきことは明らかだ。消費減税を含む基本政策について真正面から議論を戦わせて、結論を出していくことだ。私たち国民も高市政権と与野党がどこまで役割を果たせるか、秋の国会をしっかり見届けていく必要がある。(了)

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食料品消費税1%方針 ”前途多難な高市政権”

長丁場の特別国会を終えた高市首相は30日、自民党の臨時役員会に出席し、食料品の消費税率を来年4月から2年間、1%に引き下げる方針を正式に表明した。そのうえで、この方針で党内の意見を集約するよう指示した。

これを受けて自民党執行部は31日、党の税制調査会や全ての議員が参加できる会議を開いて意見集約を始めたが、異論が噴出したため、引き続き意見を聞くなどの調整を進めることになった。

自民党執行部は首相の方針通り党内の意見を取りまとめ、これを受けて政府は8月上旬に消費税率引き下げ方針を閣議決定する公算が大きい。

ただ、今回の消費減税をめぐっては、政策面で数多くの問題点を抱えているほか、高市首相の政権運営面でもさまざまな影響が出てくることが予想される。

端的に言えば、高市政権は政策と政権運営の両面で、前途多難な情勢にある。なぜ、こうした見方をしているのか以下、具体的に説明したい。

食品消費税1%、財源確保 説明できず

食料品の消費税減税をめぐって、高市首相は30日記者団に対し、来年4月から2年間、税率を1%に引き下げ、合わせて中低所得の人への給付を行い、実質ゼロとする方針について説明するとともに「衆院選挙で掲げた公約の実現を重視し、最善の方法を選択した」として、国民の理解を得ていく考えを強調した。

この方針については、既に超党派の「国民会議」で野党や有識者から、さまざまな疑問や懸念が示されたほか、自民党内の意見集約でも多くの慎重論や反対意見が出された。

国民にとっては物価高騰の中で、消費減税はありがたいのだが、一方で経済が混乱したり、社会保障に穴が開いたりするのではないかと懸念している人は多いのではないか。具体的な疑問点や懸念を挙げると次のような点だ。

まず、食料品の消費税率を8%から1%へ引き下げた場合、本当に食料品の価格が期待したほど下がるのかは疑問だ。イラン情勢を経て、石油由来の包装や材料が値上げされており、業者が税率の引き下げ分をそのまま価格に反映させるかどうかわからないからだ。インフレ時に食料品に限定した減税には限界がある。

また、肝心の財源をどのように確保するのか、高市首相の説明でも具体策を示すことはできなかった。食料品の実質ゼロを実現するためには、年間5兆円の財源が必要になるが、税収の上振れや税外収入が見込めるといっても高市首相が力を入れる投資や防衛力の抜本強化の予算とも重なり、調整のめどはついていない。

さらに「2年後に消費税率を元に戻すのは無理だ」との見方が自民党内でも聞かれる。高市首相は「2年後には私が責任を持って、確実に税率を元に戻す」と力説するが、2年後には参議院選挙が予定されており、実質増税を実施できるかと言えば難しいのではないか。

振り返ると消費税は社会保障を支える主要な税として、1989年に初めて税率3%で導入され、10%に引き上げるまで30年を要し現在に至る。この間、幾つもの政権が倒れながらも社会保障と税制の安定に尽力してきた歴史を思い起こす必要がある。

消費税率の引き下げは今回初めてになるが、疑問や問題点が多すぎる。社会保障の安定という観点からも再考した方が賢明だと考える。早期に物価高対策を行うのであれば、中低所得層に絞って大胆な給付を行う方がはるかに効果があると考える。

衆院選公約との関係どう考えるか

消費減税の是非を考える際、「衆院選挙の公約」として掲げていたこととの関係をどう考えるかという問題がある。

確かに高市首相と自民党は、消費税減税を衆院選の公約として掲げ、「検討を加速する」としてきた。選挙の公約として掲げた以上、選挙後、実現をめざすのは当然で、その責任がある。有権者が、政策の実行を期待するのも当然だ。

一方、選挙後に予測していなかった事態が起きた場合、公約の内容を見直すことはありうるのではないか。現実の政治では公約の修正もありうるし、その場合、政権・政党が説明し納得してもらうことが必要不可欠だ。

先の衆院選を思い起こすと、高市首相は今年1月、突然の衆院解散を表明した記者会見で食料品の消費税ゼロは「私の悲願だ」と強調し、党の公約に盛り込んだ。だが、党内でこの問題をめぐり突っ込んだ議論を行うことはなかった。

また、選挙戦で高市首相が消費減税を取り上げ、自らの考えを訴える場面はほとんどなかったと記憶している。選挙で公約が取り上げられ、争点になったのかどうか実態も踏まえて考える必要があるのではないか。

政権の安定度や政治の展開を左右

さて、食料品の消費税減税が政権与党内でどのような形で決着がつくかは、高市政権の安定度や今後の政権運営、秋の政治動向に大きな影響を及ぼす。

自民党は3日も党の税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、議員の意見を聞くなどの調整を行うが、麻生副総裁や鈴木幹事長ら党執行部は高市首相の方針を了承するものとみられる。

これを受けて政府は、8月上旬には閣議決定する公算が大きい。その場合、秋の臨時国会に食料品の消費税率を1%に引き下げる関連法案を提出することになる。

今後の政権運営を考えると高市内閣の支持率が7月半ば以降、急落していることをどのように考えるかが問題になる。この背景には、皇室典範の改正も影響しているとみられるが、高市政権の物価高対策などの経済政策が十分ではないという不満があるのではないか。

今月の飲食料品の値上げは2311品目で、去年8月と比べると8割も増えている。9月は4531品目とさらに値上げラッシュが続く(帝国データバンク調査)。イラン情勢悪化に伴う包装や資材価格上昇が影響しているためだ。

高市首相が消費減税の決定にこぎ着けても実施は来年4月からで、かなり先の話だ。今回の方針決定が支持率回復につながるとは限らない。高市政権は内閣支持率が高いことが政権運営の原動力になっていたが、その力が揺らぐ可能性がある。

高市政権として対応が迫られているのは、当面の物価高対策と経済運営の基本方針を明らかにすることだろう。為替水準は1ドル=164円に迫る歴史的円安で、日米通貨当局が円買いの協調介入を行った。物価高対策には、歴史的円安に歯止めをかけられるか、経済運営全体の方針を明らかにする必要がある。

次に秋の臨時国会で食料品の消費減税法案をめぐっては、日本保守党を除いて全ての野党が反対の立場だ。与党が過半数割れしている参議院では、法案審議は難航必至で、高市政権は膨大なエネルギーを費やすことになる。先の衆院選で得た膨大な政治資産を消費減税に投入するのが賢明な選択かという問題でもある。

先の特別国会で、高市政権の国会運営は、政権与党内の連携がうまく機能しなかった。その対策は手つかずのままなので、次の内閣改造・自民党の役員人事で体制が強化されない限り、不安定な国会運営が続くことになる。

さらに年末には、国家安全保障3文書の改定と、防衛力の抜本強化に向けた防衛財源確保の具体的な方策が問われる。

このように高市政権の政権運営は、最優先で取り組む必要がある経済政策をはじめ、重要政策の具体化、秋の臨時国会に向けた体制強化など課題は多いが、いずれも難題で前途多難な情勢にある。(了)

★追記(8月3日20時)自民党は3日、税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、高市首相が表明した食料品の消費減税の方針について、今後の対応を小野寺税制調査会長に一任した。党執行部は5日の総務会で了承を取りつけ、党内手続きを終えたい考え。これを受けて政府は5日の閣議決定をめざしている。

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