政権の浮沈かかる”2月政局”

新型コロナ対策の緊急事態宣言が出される中で始まった通常国会は、28日に第3次補正予算が成立し、”第1ラウンド”が終了した。補正予算の規模は19兆円の大型だが、コロナ対策は4兆円余りに止まっている。

論戦では、各地で入院できないコロナ感染者が、自宅や搬送中に亡くなる深刻な事態が取りあげられたが、政府側から、病床の確保や医療危機回避に向けた新たな対応策は打ち出されず、大きな問題として残ったままだ。

さらに緊急事態宣言が続く中で、自民党と公明党の幹部が、深夜まで東京・銀座のクラブなどを訪れていたことが明らかになり、世論の厳しい批判を浴びている。

国会は例年であれば、直ちに新年度予算案の審議に入るところだが、今年はコロナ問題で例年とは異なった国会運営になりそうだ。そのコロナ対応と、新年度予算審議が重なる、2月の国会や政治の動きはどうなるのか。菅政権への影響も含めて「2月政局・政治の動向」を探ってみたい。

 法改正 「刑事罰」削除で合意

補正予算が成立した後、政府・与党は対策の効果を強めるため、コロナ対策の特別措置法や感染症法などの改正案を先行して審議、成立させる方針だ。このため、補正予算の審議と並行して、政党レベルの協議を進めてきたが、28日に自民党と立憲民主党の幹事長間で、法案を修正することで正式に合意した。

焦点になっていた入院を拒否した感染者に対する刑事罰について「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」としていたのを、懲役刑を削除するとともに、罰金を行政罰の過料に改め、金額も50万円以下に引き下げるとしている。

また、営業時間の短縮命令などに応じない事業者に対して、50万円以下の過料に科すとしていることについても金額30万以下に減額するとしている。

いずれも与党側が、譲歩する形で決着した。政府・与党は29日から審議に入り、2月3日にも成立する見通しだ。但し、この法改正は、周知期間を置くため、施行は2月中旬になるとみられている。

 緊急事態宣言 延長の公算

次に東京など11都府県に出されている緊急事態宣言の期限を延長するかどうかについても、2月第1週に判断することが迫られる。宣言の期限は2月7日だが、直前では事業者などへの影響が大きいので、週の半ばには方針を決めたい考えだ。

菅首相や西村担当相の国会答弁では、感染状況や医療のひっ迫状況などを総合的に判断するとしているが、現在の感染状況「ステージ4」から脱却できるメドはついていないため、緊急事態宣言は延長の公算が大きいとみられている。

問題は、延長の期間と感染抑止の取り組み方をどうするか。菅首相は1月7日に1都3県に緊急事態宣言を出した際の記者会見で「1か月後には、必ず、事態を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と強い決意を表明した。

それだけに宣言を延長する場合は、政治責任とともに、事態を改善できなかった原因と今後の対策をどうするか。それに延長期間をどのように設定するかが問題になる。

特に感染防止策について、菅首相は飲食店の時間短縮に重点を置いたが、そうした対策の是非。また、深刻さを増している病床不足などの医療提供体制をどのように改善していくのか、政府や自治体の具体策が厳しく問われることになる。

 新年度予算審議も綱渡り

通常国会前半の焦点である新年度予算案の審議は、2月に入ってからのスタートになる。一般会計の総額で106兆円、過去最大の規模で、コロナ対策のほか、デジタル化や脱炭素など「菅カラー」を重視した予算になっている。

政府・与党は2月4日にも審議入りしたい考えだ。そして、年度内に成立させるためには、衆議院では3月2日までに採決を行い、参議院に送る必要がある。しかし、審議入りが遅れたため、過去の平均的な審議日程で計算すると、1日でも審議が空転すると参院送付の日程が崩れることになる。

新年度予算案は去年の12月21日に閣議決定したが、その後、コロナ感染が急拡大し、感染拡大防止と経済再生の両立という「二兎を追う」戦略が行き詰まりをみせている。

さらに野党側は、これまで控えてきた吉川元農相の収賄事件や、安倍前首相の「桜を見る会」懇親会の会費補填など「政治とカネ」の問題で攻勢を強めていく構えだ。与野党間で激しい論戦がかわされ、菅政権にとっては予算の年度内成立が可能かどうか、”綱渡りの国会運営”を迫られることになりそうだ。

 ワクチン接種に期待と不安

逆風が続く菅首相にとって、「コロナウイルス克服の決め手」として大きな期待を寄せているのが、ワクチン接種だ。ワクチン担当相に、発信力の強い河野行革担当相を指名した。

ワクチン接種をめぐっては、アメリカの製薬大手「ファイザー」が承認申請したのを受けて、厚生労働省が審査をしているが、2月半ばに承認、2月下旬に医療従事者から接種を開始になるとみられている。

自民党にとっては、年内に実施される次の衆院選に向けて、菅内閣の支持率回復の数少ない武器として、期待が大きい。コロナ難局を一変させる「ゲームチェンジャー」との声も出るほどだ。

一方、「失敗すれば決定的な打撃を受ける」と不安視する声もある。ワクチンをめぐっては、不確定要素が多いからだ。

具体的には、ワクチンが安定して供給されるかどうか。接種体制の問題もある。実施主体は、市区町村だ。国民の大多数が対象の「前例のない接種大作戦」になる。大都市圏から、地方、過疎地、離島などで条件は異なる。医師や看護師などの態勢づくりもたいへんだ。

65歳以上の高齢者は3月下旬から始まる計画だったが、早くて4月1日以降にずれ込む見通しだ。ワクチン接種の準備体制づくりが順調に進むかどうか、政治・政権にも大きな影響を及ぼす。

 政権の浮沈かかる2月政局

菅首相にとって誤算の1つが、緊急事態宣言下の深夜に、自民党の松本純・国対副委員長と、公明党の遠山清彦・幹事長代理がそれぞれ東京・銀座のクラブなどを訪れていたことが明らかになり、世論の猛反発を受けていることだろう。

補正予算は成立したが、”予算成立効果は帳消し”と言えるのではないか。予算委員会では、コロナ対策をめぐって野党側から「菅総理の答弁では、国民に危機感が伝わらない。首相の自覚や責任感はあるのか」などと批判を浴びていたことに加えて、陳謝を重ねることにもなった。世の中に”菅政権への不信感”を増幅させた。

以上、見てきたように2月は、特別措置法などの法案の修正をはじめ、緊急事態宣言の扱いと今後の対策、さらに本予算の審議、ワクチン接種準備と節目の取り組みが集中しており、「綱渡りの国会、政局運営」が続くことになる。

内閣支持率の下落が続く菅政権が、こうした難局を乗り越えられるか、それとも足を踏み外すようなことはあるのか「政権の浮沈がかかる岐路」にさしかかっているようにみえる。

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