総選挙は秋の公算 ”コロナ波乱政局”の始まり

通常国会は、野党4党が提出した菅内閣に対する不信任決議案が、与党などの反対多数で否決され、16日に閉会した。

焦点の衆議院解散・総選挙について、菅首相は夏の東京オリンピック・パラリンピック閉会後に断行する方針を固めており、総選挙は秋に行われる公算が大きくなっている。

与野党双方とも国会閉会後、直ちに衆院選に向けた体制づくりを加速させているが、これからの政治はどんな展開になるのか。

コロナ感染を抑え込めるかどうかということだけでなく、衆院選挙の結果がどうなるかまでを展望すると”波乱要因の多い政局”になる可能性が大きい。

9月5日のパラリンピック閉会後、菅首相が早期に解散に踏み切るケースをはじめ、ワクチン効果をねらった任期満了選挙、さらには菅首相退陣のケースなども予想される。”コロナ波乱政局”のゆくえを探ってみる。

 オリパラ後の総選挙へまい進 菅首相

次の衆議院解散・総選挙はいつになるか。解散権を握る菅首相の考えがベースになる。菅首相はコロナ対策を優先し、早期の解散には慎重な姿勢を示してきた。

菅首相の考えは、ワクチン接種を加速させて感染拡大を抑え込むとともに、東京五輪・パラリンピックを成功させた後、秋に衆院を解散・総選挙を断行して勝利し、再選を果たすのが基本的な戦略だ。

このため、通常国会閉会後は、20日に期限を迎える東京などの緊急事態宣言を解除し、まん延防止等重点措置に切り替える方針だ。同時にワクチン接種をさらに加速させるとともに東京五輪・パラリンピックについては、感染対策を徹底して予定通り、開催する方針だ。

衆院解散・総選挙については、9月5日にパラリンピックが閉幕した後、臨時国会を召集して衆院解散に踏み切り、10月に総選挙を断行する方向で調整が進められている。投票日としては、10月3日、10日、17日を軸に検討している。これが、第1のケースだ。

自民党長老に聞くと「9月解散・10月総選挙の可能性が最も高い。今の自民党には、菅首相や二階幹事長らに対抗して、政局を変えることができる実力者はいない。これからの政局は自民党内より、コロナ感染の状況や世論の動向がカギを握っている。例えば、五輪開催後に感染爆発が起きたら、自民党は選挙でぼろ負けするだろう。油断できない」と語る。

 ワクチン効果期待 選挙後ろ倒しも

菅首相がめざす9月解散・10月総選挙は、感染が収束に向かい、ワクチン接種も順調に進み、五輪・パラリンピックも開催され盛り上がった場合が前提だ。

政府・自民党内には、こうした考え方とは別にワクチン接種効果を重視して、衆院解散を急がず、任期満了などによる選挙の後ろ倒しを選択した方がいいという考え方もある。

ワクチン接種は高齢者接種が本格化するとともに、一部の地域では一般国民の接種が始まった地域もある。10月から11月ころまでに、国民の半数以上に2回接種が完了すれば、感染の減少効果が期待できる。このため、選挙を遅らせれば、与党にとって有利に働くとの思惑がある。

具体的には、今の衆議院議員の任期は10月21日までだが、臨時国会の会期を任期満了ギリギリまで引き延ばして、大型補正予算案を成立させた後、国会を閉会すると11月14日投票が可能になる。

あるいは、任期満了ギリギリで解散すれば、11月28日投票も可能になる。任期満了に伴う選挙を後ろ倒しする案も取りざたされている。これが第2のケースだ。

 波乱要因 五輪開催と感染急拡大

以上は、いずれも感染抑制や、ワクチン接種が順調に運むことが前提だ。逆に波乱要因として、変異株の広がりなどで感染拡大が抑え込めない事態もありうる。

例えば、7月23日の五輪開会式までに感染を抑え込めないような場合。あるいは、大会期間中、さらには9月5日のパラリンピックが閉会式後に感染爆発が起きた場合どうなるか、危惧する与党関係者は少なくない。

こうした場合、菅首相の政治責任を問う声は、自民党内からも高まるだろう。衆院選挙を控え、自らの当落に直結するからだ。菅首相の退陣・総裁選立候補辞退もありうるとの見方もある。その場合、後継の新しい総裁を選んだあと、衆院解散・総選挙というケースも想定される。これが、第3のケースだ。

 衆院選の獲得議席幅 政局を左右

ここまでみてきた3つのケースは、いずれも衆院選挙にこぎつけるまでの道筋の予測だ。最大の難関は、衆院選の政治決戦で、菅政権は勝てるかどうかだ。

選挙の専門家に聞くと、国政選挙で連勝を続けた安倍政権に比べると、菅政権は議席を減らすのは避けられないとの見方が強い。一けた台の減少で済むのか、50議席程度の大幅減もあるのか、減少幅がどの程度になるかが一番のポイントだ。

減少幅によっては、菅首相の政治責任が問われ、政局のゆくえを左右することもありうる。来年夏には、参議院選挙も行われる。衆院選挙後は、コロナ激変時代の政治のリーダーのあり方なども改めて問われることになりそうだ。

以上みてきたように、コロナ禍の政治は、不確定要素が多い。変異株の広がりなど感染状況がどうなるのか、ワクチン接種の進展で感染抑え込みの効果が出てくるのか。そうした動きによって、3つの政局のどのケースに収れんしていくのか注視していく必要がある。

同時に、私たち国民の側は、これまでの政権の実績評価や、これからの社会や暮らしのあり方をどのように考えていくのか。そして、どんな政治家や、政党に政権をゆだねていくのか答えを出す時期が近づいている。

 

 

 

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