師走国会の焦点 党首対決の論戦   

先の衆院選挙後、初めて本格的な論戦の舞台となる臨時国会が6日召集され、岸田首相が衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、論戦の幕が開いた。

コロナ対策などで過去最大35兆9800億円余りの補正予算案も6日、国会に提出された。

師走に入っての臨時国会だが、ここまで振り返ってみると夏のコロナ感染第5波と医療危機などで菅政権が倒れ、岸田政権が発足。衆院解散・総選挙が行われ、与野党執行部の顔ぶれも大幅に入れ替わった。

野党第1党・立憲民主党は、若手の泉健太代表が就任した。岸田首相も10月に就任以降、2か月余りになるが、予算員会での本格的な論戦は今回が初めてになる。

「聞く力」を掲げる岸田首相と「批判ばかりからの脱却」をめざす泉代表との初めての論戦対決はどうなるか、師走国会の焦点を探ってみた。

 岸田首相 問われる「実行力」

まず、この国会論戦のベースになる、岸田首相の所信表明演説の内容から見ておきたい。

岸田首相は、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大に備え、細心かつ慎重に対応する考えを強調し、3回目のワクチン接種については「8か月から、できるかぎり前倒しする」考えを表明した。

外交・安全保障では、いわゆる「敵基地攻撃能力」も含め、現実的に検討する考えを示すとともに、新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を1年かけて策定する方針を明確にした。

一方、政権の看板政策である「新しい資本主義」の主役は地方だと強調したうえで、デジタルの力を活用することで、地方活性化を進め、地方から全体へボトムアップの成長を実現する考えを強調した。

この新しい資本主義については、具体的な政策をはじめ、いつまでに実現するのかが、わかりにくい。国会の論戦を通じて、構想をさらに具体化したり、肉付けしたりして、岸田カラーを鮮明に打ち出せるかが課題だ。

一方、メディアの世論調査で、岸田政権の支持率は高い水準を維持している。これは感染状況が落ち着いていることと、オミクロン株対応で水際対策を早めに打ち出したことが評価されているものとみられる。

但し、この高い支持率も岸田政権の具体的な実績が評価されたわけではない。オミクロン株対策も含めた感染第6波の抑え込みと、経済の立て直しを軌道に乗せることができるかどうか、これからの「実行力」にかかっているのではないか。

 野党 入国規制や10万円給付方法

野党側は、オミクロン株の水際対策の具体的な進め方や、国土交通省が国際線の予約を全面的に停止するよう要請した後、撤回した経緯などについて、岸田政権の対応を質す方針だ。

一方、生活支援の眼玉政策である18歳以下への10万円相当の給付については、現金とクーポンに分けることで事務的経費が900億円増える問題を追及する構えだ。

また、初当選した議員の提起で議論を呼んでいる、国会議員に毎月100万円支払われる「文書通信交通費」についても国民の理解は得られないとして、日割りでの支給に改めることに加え、使いみちの公開の義務付けを求めることにしている。

さらに、今回の補正予算案の規模は過去最大だが、生活に困っている人たちに給付金が届いているか、事業者への支援も事業の継続に役立つ制度設計にはなっていないのではないかとして、追及する方針だ。

このほか、今回の経済対策の効果について、政府は、今年度と来年度を中心にGDP=国民総生産を実質で5.6%程度押し上げる効果があると試算している。

これに対し、民間のエコノミストの間では、押し上げの効果は、来年度に限れば1%から2%程度という見方が示されており、こうした経済効果についても詰めた議論を要望しておきたい。

 党首対決の論戦 新たな議論の姿を

さて、国会の論戦は、岸田首相の所信表明演説を受けて、8日から3日間各党の代表質問に続いて、13日からは衆参の予算委員会に舞台を移して、1問1答形式の詰めた議論が戦わされる見通しだ。

一連の論戦では、野党第1党の立憲民主党は、泉代表や西村智奈美幹事長らの幹部をはじめ、第3極として躍進した日本維新の会も馬場共同代表らの新執行部、さらに各党幹部も岸田首相と論戦を挑むことにしている。

このうち、岸田首相と、立憲民主党の泉代表論戦は、初めての党首対決になる。岸田首相は「自らの特技は、人の話をよくきくことだ」と「聞く力」をアピールしてきた。対する泉代表は「批判ばかりからの脱却」を訴え、政策立案型の政党をめざしている。

岸田首相の演説を聞いた泉代表は記者団に「論戦しがいのある演説だったと思う」と感想をのべている。果たしてどんな論戦になるのか、個人的に大きな関心を持っている。

今年を締めくくる師走国会、会期は16日間と短いが、半年ぶりの本格的な論戦の舞台になる。コロナ感染第6波の備えをどうするか、コロナ後の経済・社会の構想と道筋をどのように描くか、国民が納得のいく新たな論戦の姿を、是非見せてもらいたい。                         (了)

 

 

 

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