先の通常国会の最終盤では一時、岸田首相が衆議院の解散・総選挙に踏み切るのではないかとの情報が飛び交い緊迫した場面もみられたが、先送りとなった。政界は今、国会が閉会し一段落しているが、各党とも秋の解散に備えた準備に余念がない。
政治の焦点は、マイナンバーカードをめぐる混乱への対応と、秋の解散・総選挙のゆくえに移っている。こうした中で、NHKの7月の世論調査がまとまった。
それによると岸田内閣の支持率は2か月連続で下落し、5か月ぶりに支持率を不支持率が上回り、逆転したのが大きな特徴だ。
岸田内閣の支持率は、回復基調にあったが、世論の風向きが下降局面へと変わりつつある。こうした世論の変化の背景や、岸田政権が対応を迫られている課題などを分析してみたい。
回復基調から、不支持が増え逆転
さっそく、NHK世論調査(7月7日~9日)の7月のデータからみておきたい。岸田内閣の支持率は38%で、先月から5ポイント下落した。不支持率は41%で、先月から4ポイント増えた。
支持率の下落は2か月連続で、支持率を不支持率が上回って逆転するのは、今年の2月以来、5か月ぶりになる。
岸田内閣の支持率は、今年1月の33%を底に上昇が続き、5月の46%まで回復基調にあった。ところが、6月、7月と2か月連続で下落し、世論の風向きが変わりつつある。
岸田内閣の支持層をみると、与党支持層のうち、岸田内閣を支持する割合は、7割を下回った。無党派層の支持は18%で、岸田内閣発足以来、最も少ない状況だ。
政権を支える与党支持層と、最も大きな集団である無党派層の支持がいずれも低下しており、政権に勢いがみられない。
一方、岸田内閣を支持しない理由としては「政策に期待が持てないから」が46%で最も多く、次いで「実行力がない」が22%を占める。
このうち、「実行力がない」は先月より5ポイント増えた。これは、マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いでいることが影響しているためとみられる。
健康保険証の廃止方針、反対が7割も
そのマイナンバーカードをめぐる問題だが、相次ぐトラブルを受けて、政府は秋までに専用サイトで閲覧できるすべてのデータの総点検を行う方針を打ち出した。
こうした政府の対応について、世論調査の結果は「適切だと思う」が33%に対し、「適切だと思わない」が49%で上回った。
また、政府が、来年秋に今の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させるとしている方針については「予定通り廃止すべき」は22%。「廃止を延期すべき」が36%で、「廃止の方針を撤回すべき」が35%となった。
つまり、政府の廃止方針を支持している人は2割に止まり、健康保険証の廃止の延期や、撤回を求める人が合わせて7割を占める結果となった。
さらに、政府が今後3年をかけて年間3兆円台半ばの予算を確保して、児童手当の拡充などに集中的に取り組むとしている少子化対策についても「期待する」は33%に対し、「期待していない」が62%と倍近くに達している。
この理由についての質問項目はないが、少子化対策の具体的な財源確保について、政府は曖昧にしたまま、年末まで先送りしている。こうした政府の対応に対する国民の不信や不満が影響しているものとみられる。
このように岸田内閣の支持率低下は、第1にマイナンバーカードの問題に対する政府の対応策について、国民の多くが疑問や不安を抱いていることが大きく影響しているものとみられる。
もう1つは、少子化対策に代表されるように岸田政権は、大胆な歳出増を伴う政策を次々に打ち出すが、政策の裏付けとなる財源確保などの核心部分が曖昧で、説明も不十分だと受け止めていることが影響しているとみられる。
岸田政権は、こうした主要政策の内容を明確にするとともに、国民に対して説明を尽くす姿勢を打ち出さないと、国民の支持を回復することは難しいのではないかとみている。
政権の浮揚策、秋の解散も高いハードル
それでは、秋の政局の焦点になっている衆院解散・総選挙のゆくえはどのようになるだろうか。
政府・与党内では、岸田首相は外交日程などをこなした上で、9月中旬を軸に内閣改造・自民党役員人事を行うとの見方が示されている。そして、内閣支持率や選挙情勢などを見極めた上で、秋の解散・総選挙選挙も選択肢として検討しているのではないかとの観測もある。
その際、各党の支持率が問題になるが、7月の自民党の支持率は34.2%で、他の党に比べて優位にある。但し、今年に入って自民党の支持率は低下傾向が続いており、7月は岸田政権発足以来、最も低い水準だ。
また、自民、公明両党は東京の選挙区調整をめぐって対立が続いており、両党の選挙協力が完全に修復できるのかも不安材料として残されている。
一方、野党側では、次の衆議院選挙で野党第1党をめざしている日本維新の会の支持率が5.6%で、立憲民主党の5.1%を上回っている。維新の支持率が上回るのは3か月連続だが、その差は次第に縮小しており、野党間の戦いも激しさを増す見通しだ。
さらに、岸田首相が秋の解散・総選挙を断行する際には、内閣支持率の上昇が不可欠だが、政権浮揚の有力な材料を見いだせているわけではない。
むしろ、焦点のマイナンバー問題がどのような形で決着がつくのか。また、内閣改造と自民党の役員人事が国民からどのよう評価を受けるのか。さらには、与野党の選挙情勢がどのようになるのか不透明な要素が多く、秋の解散・総選挙のハードルはかなり高いとみている。(了)
今回の内閣支持率の結果をみて、岸田政権に対する国民の
まっとうな判断が行われていることにまずは、安堵しています。
マイナンバーカードに関する政府の当初方針が、如何に
でたらめであったかが鮮明になったにも関わらず、
問題点の修復に対する政策も、さらに「でたらめ」を
重ねているだけだと憤りすら感じています。
「当初方針ここにあり」でなぜ、不都合が多発している
方針を軌道修正しないのか、不思議でたまりません。
結局は国民が大きな不利益を得ることになることが
なぜ理解できないのか、信じられません!
9月に予定されていると見込まれる自民党の役員人事と
内閣改造では支持率の好転はできないと思います。
河野大臣が「いけにえ」にされるのが忍びないです。
引き続き監視の目を向けていきましょう。
文章について
最後から3~4行目
具体的には、マイナンバー問題がどのような形で決着がつくのか。内閣改造と自民党の役員人事が国民からどのよう評価を受けるのか。
→具体的には、マイナンバー問題がどのような形で決着がつくのか、また内閣改造と自民党の役員人事が国民からどのような評価を受けるのかにかかっている。
(原文では文章に違和感を感じます)
7月12日 妹尾 博史