先の内閣改造と自民党役員人事を受けて、報道各社が行った世論調査の結果がまとまった。岸田内閣の支持率については、先月を上回った調査もあったが、前回と同じか、横ばいの水準に止まる結果の方が多かった。
また、人事全体の評価については、いずれの調査とも「評価しない」が「評価する」を大幅に上回った。
世論調査のデータからは、与党が期待していたような「政権浮揚効果」は見られず、岸田改造政権は厳しい出発になる。
また、秋の衆院解散・総選挙についてもハードルがさらに高くなったと言えそうだ。なぜ、こうした見方になるのか、以下、説明していきたい。
人事の評価は低調、支持率も低迷続く
さっそく、報道各社の世論調査から見ていきたい。まず、岸田内閣の支持率については、◇共同通信は39.8%で、先月の調査より6.2ポイント増、◇朝日新聞は37%で、4ポイント伸びて微増となった。
一方、◇読売新聞は35%、日経新聞は42%で、それぞれ先月と同じ水準だった。◇毎日新聞は25%で1ポイント減、ほぼ横ばいとなった。
一方、今回の内閣改造と自民党役員人事全体の評価については、◇読売の調査では「評価する」が27%に対し、「評価しない」が50%だった。◇朝日の調査は、改造内閣の評価を聞いており、「評価する」が25%に対し、「評価しない」が57%だった。
このほかの調査結果も「評価する」より「評価しない」方が大幅に上回り、同じ傾向を示している。
この2つのデータを基に判断すると、今回の内閣改造と自民党役員人事については、国民の評価は低く、政権与党が期待したような内閣支持率を大幅に引き上げる「政権浮揚効果」は見られなかったと言える。
内輪の人事、何をしたい人事か不明
それでは、なぜ、このように国民の評価が低いのか。岸田首相は、改造直後の記者会見で「変化を力に変える内閣」と位置づけ、「変化を力として、閉塞感を打破していく。強固な実行力を持った閣僚を起用した」と胸を張った。
国民からすると、内閣の要の官房長官や財務相、経産相などの主要閣僚と、党の副総裁、幹事長、政調会長は軒並み留任。変化と言えば、初入閣が11人、女性閣僚が過去最多と並ぶ5人となった点だが、刷新感はなく、強固な実行力も感じられないというのが率直な印象だろう。
また、2日後の副大臣と政務官合わせて54人の人事を見て驚いた国民も多かったのではないか。女性の起用はゼロ、全員男性だった。女性の閣僚を多数起用し、「女性活躍」を訴えた方針は、早くも看板倒れの形になった。
今回の人事をめぐっては与野党双方から、岸田首相が来年秋の総裁選での再選をねらった内向きの人事との声が聞かれる。自民党の長老に聞いても「初入閣が多いのはいいが、国民には何をやる内閣かさっぱり、伝わらないのではないか」と指摘する。
初入閣の中には、旧統一教会との接点があるとされる閣僚が4人含まれており、秋の臨時国会では、野党側から厳しい追及を受けることが予想される。
世論の評価や期待度が低いことは、政権の政策を後押しする力が弱いことにつながる。内外に数多くの懸案・課題を抱えている中で、政権が一丸となって、難局を乗り切っていく体制を整えられるのかどうか、早々に試される。
秋の衆院解散、困難との見方強まる
秋の政局の焦点になっている衆院解散・総選挙の時期について、影響はどうだろうか。まず、自民党の一部にあった秋の早期解散シナリオは、困難とみられる。
早期解散シナリオとは、内閣改造で支持率を回復させたうえで、大型の経済対策と補正予算案を編成し、臨時国会に提出して早期の解散に打って出るというものだ。しかし、前提となる政権の浮揚効果がみられず、構想の実現は困難だ。
それでも自民党内には、年を越えると「追い込まれ解散」の恐れがあるとして、年末の解散・総選挙に踏み切るべきだという意見もある。岸田首相は、こうした年内解散を含めて、解散の時期を探るものとみられる。
このため、10月中旬に召集される見通しの臨時国会の攻防が、焦点になる。岸田政権は、物価高騰対策を含めた経済対策をまとめ、その裏付けとなる補正予算案を提出し、支持率を回復させ、政局の主導権を確保したい考えだ。
これに対し、野党側は、旧統一教会との接点がある閣僚の適格性をはじめ、マイナンバーカードの総点検の状況と保険証の今後の扱い、物価高騰対策の遅れや、経済運営の基本方針が定まっていないとして、政府の姿勢を追及する構えだ。
一方、朝日の世論調査では、政党の支持率が自民党は28%で、3か月連続で30%を切ったほか、衆院選挙の比例代表の投票先も31%に止まっている。野党側の投票先では、維新が14%、立憲民主党が11%などとなっており、こうした選挙情勢も岸田首相の解散戦略に影響を及ぼすので、注意が必要だ。
以上みてきたように改造人事では、政権の浮揚効果が見られなかったことで、秋の政局は、臨時国会での与野党の攻防が焦点になる。
世論調査のほとんどで、岸田内閣の支持率は、支持より不支持率が上回る逆転状態が続いている。臨時国会で、岸田政権が主導権を確保し、内閣支持率も回復するのか、それとも野党攻勢の国会になるのか、大きなポイントになる。(了)
先の岸田政権における内閣改造と自民党役員人事について、
世論調査の数字を基に、わかり易く論理的に解説されており
大変よく理解できました。
貴殿の立場からは決してできないだろうと思いますが、
自分が岸田首相になりかわり、今回の件について
以下のように取りまとめてみました。
国民の皆様にご報告いたします。
①今回の内閣改造につきましては、来年秋の自民党総裁選で
自分が再選を果たすことを、最大の目的といたしました。
その為に、各派閥に最大限の配慮を行いました。
②次に、大臣待機組の諸氏に応えるべく、これらの諸氏を
抜擢し、(これまで旧統一教会との深い関係があろうとも)
重ねて現内閣で問題のある大臣を「罷免」の形を避けて退場
できるよう配慮いたしました。
③最大の特徴は、国民の目をあざむきやすいように11名もの
新閣僚と過去最大数となる5名もの女性閣僚を任命しました。
以上、いずれも賢明なる国民の皆様には、全てお見通しで、
私の目的とした「内閣支持率の向上」にはつながらなかった
ようです。
また、新内閣の特徴を、熟慮して「これはいける」と思った
キャッチコピー「変化を力に変える内閣」も、ものの見事に
芸能人の言うところの「スベッ」た結果となったようです。
したがって、今後とも今まで培ってきた「鈍感力」を最大の
武器として、国民の皆様の目先をあちこちに誘導していって
長期政権につなげていく所存です。
いかがでしょうか?
案外本質をついてるのではないかと「危惧?」しています。
文章について
最後から6行目
以上、みてきたように改造人事では、
→以上みてきたように改造人事では、
(原文の、があると微妙にニュアンスが違ってくると
感じます。)
9月19日 妹尾 博史