国会は5日から衆議院予算委員会に舞台を移して、岸田首相と与野党の委員との間で、一問一答方式による本格的な論戦が始まった。
焦点になっている自民党の政治資金パーテイーの裏金問題について、岸田首相は、この国会で政治資金規正法の改正を実現すると強調したものの、実態調査の進め方をめぐって消極的な対応が目立ち、実態解明に真正面から取り組む姿勢や覚悟は見られなかった。
ここまでの論戦の特徴と、今後の与野党の攻防はどのような展開になるのか、探ってみたい。
自民全議員の調査、 質問わずか2問だけ
衆院予算委員会の質疑の中で野党各党は、自民党の裏金問題について「自民党が自ら事件の全容を明らかにすべきだ」と要求するとともに、自民党総裁の岸田首相や、派閥の幹部の政治責任を明らかにするよう迫った。
これに対し、岸田首相は「国民から厳しい批判を受けており、自民党は変わらなければならないという思いを持って、党の中間とりまとめを実行する。今の国会で政治資金規正法をはじめとする法改正を実現していく」と強調した。
そのうえで「自民党としても実態を把握しなければならない」として、派閥からキックバックを受けていた議員で政治資金収支報告書を修正した「議員リスト」91人分を提出した。
これに対し、野党側は「リストは過去3年分だけで、参議院選挙の年のデータが含まれないなど極めて不十分だ」として、過去5年分を出し直すよう求めている。
また、自民党は5日から党所属の全ての議員を対象にしたアンケート調査を始めたが、この設問内容をみると「収支報告書への記載漏れの有無」と「過去5年の不記載額」を尋ねる、わずか2問だけに止まっている。
野党側は、裏金をつくった経緯や、資金をどのように使っていたかなどについては聞いておらず、「実態を解明する気があるのか」と強く反発している。
これに対して、岸田首相は7日の答弁で「アンケートとは別に、外部の弁護士も参加して聴き取り調査を行っており、結果は第三者にとりまとめをお願いする。党として実態を把握し、説明責任、政治的な責任について適切に対応したい」と釈明した。
自民党の裏金事件は、去年11月から東京地検特捜部が5つの派閥の関係者から任意の事情聴取を始めるなど既にかなりの時間が経過している。それにもかかわらず、今月に入ってアンケート始めるのは余りにも対応が遅すぎる。
また、質問内容もわずか2問だけでは、実態解明に真正面から取り組む姿勢や覚悟がないと言わざるを得ない。
事実解明型の審議、政治のけじめが必要
それでは、国会の審議や与野党の攻防はどのような展開になるか。衆院予算委員は、9日に外交や農業などをテーマに集中審議を行った後、14日に政治資金問題の集中審議を行うことが決まっている。
自民党は、関係議員からの聴き取り調査と第三者によるとりまとめと、アンケート調査の結果を週明け13日以降にまとめる見通しだ。
これに対して、野党側は「調査結果が不十分であれば、予算審議にも影響が出てくる」とけん制しており、場合によっては、予算審議をストップさせる対応もありうるとの見方も出ている。
一方、自民党は、7日に行われた公明党との定期協議で、国会の政治倫理審査会で、不記載の関係議員が説明することを検討していることを伝えた。
こうしたことから、裏金問題は当面、14日の集中審議で、裏金問題の実態がどこまで明らかにされるかが焦点になる見通しだ。そして、野党側から、調査のやり直しや審議拒否なども予想され、与野党の駆け引きが激しくなりそうだ。
一方、野党側としても実態調査とは別に、政治倫理審査会の場で、裏金の関係議員の出席を求めて説明を求めるべきだという意見が出されている。
さらに与野党双方とも再発防止の対応策を協議する場を設けるべきだという意見もあることから、こうした点も含めて与野党の協議が行われる見通しだ。
国民からすると政治とカネの問題は、ロッキード事件やリクルート事件などを経て90年代はじめに、政治改革関連法が成立した。そして、国民の血税を政党に助成することまで踏み込んだのに、未だに違法行為を組織的、かつ長期に続けている議員に強い不信感と怒りを覚える人が多いように見える。
したがって、国会が取り組むべきことははっきりしている。まずは、政治腐敗、政治資金規正法に違反する行為はいつ頃から行われ、何に使っていたのか、実態を明らかにすることが必要だ。
そのためには、これまでのような事実関係を曖昧にしたまま、小手先の妥協策で終えるのではなく、「事実の解明型の審議」を行うことが不可欠だ。
具体的には、ロッキード事件を受けて昭和60年に国会議員自らが定めた「政治倫理綱領」と政治倫理審査会がある。「疑惑が持たれた場合には、自ら疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう務めなければならない」と定めている。
疑惑を指摘された議員は全員、自ら申し出て弁明してはどうか。また、疑惑の解明を進めるために必要であれば、派閥幹部を参考人として招致、あるいは証人喚問なども行い、国民の政治不信をなくす具体的な取り組みを取ってはどうか。
自民党は、実態調査などは小出しにする対応が目立つが、その理由は、新年度予算案を衆院通過させ、年度内に成立させるのが一番の目標で、そのための時間稼ぎをねらっているのではないかとの見方も聞く。
しかし、岸田内閣の支持率は急落したまま低迷しているほか、今度は、森山文科相と旧統一教会との関係が新たな問題として急浮上しており、裏金問題など相次ぐ不祥事に時間をかけて対応するような状況にはない。
今回の裏金問題は、自民党の派閥が起こした不祥事であり、岸田首相と自民党執行部は、実態解明に積極的に取り組む必要がある。
また、再発防止の政治改革案は、他の各党は既にとりまとめているので、自民党は、直ちに改革案をまとめて与野党協議に臨むことも必要だ。
裏金問題の実態解明と政治改革にできるだけ早くメドをつけ、政治が本来、取り組むべき、新年度予算案の内容や、内外の政治課題に取り組んでもらいたい。(了)
庶民感覚から大きくずれた巨額の裏金を手にしていながら
厚顔無恥な自民党議員は、何ら罪の意識を覚えることなく、
逮捕を逃れ、責任を逃れることに執着しています。
自民党総裁の岸田首相も、何とかごまかし切ろうとのらり
くらりの対応に徹しています。
貴殿が述べているように、「国会が取り組むべきことは
はっきりしている。まずは、政治腐敗、政治資金規正法に
違反する行為はいつ頃から行われ、何に使っていたのか、
実態を明らかにすることが必要だ。」につきます。
それにしても、自民党のなかから悪の根源を追及しようと
言う議員が立ち上がらないのも、国民にとっても救いよう
のない事態といえましょう。
「役職を降りること、そして政治資金報告書の訂正を行えば、
その責任が果たせた」となんというひとりよがりな理屈で
引き続き議員に止まることを、決してゆるしてはなりません!
貴殿には今後も、政治に引き続き厳しい目を向けもの申して
いっていただきたい。
文章について
「事実解明型の審議、政治のけじめが必要」の項
①5行目
アンケート調査の結果が週明け13日以降にまとまる
見通しだ。
→アンケート調査の結果を週明け13日以降にまとめる
見通しだ。
②31行目
「事実解明型の審議」を行うこと。
→「事実解明型の審議」を行うことが求められる。
もしくは「事実解明型の審議」を行うことが不可欠である。
(2件とも主語・述語の関係に違和感を感じます)
2月8日 妹尾 博史