株価乱高下、岸田首相の再選戦略に影響も

自民党の総裁選挙は、今月20日に開かれる総裁選管理委員会の会合で、来月の選挙日程が決定されることになった。9月20日投票か、27日投票を軸に選挙日程の調整が進む見通しだ。

こうした中で、NHKの8月の世論調査が5日にまとまり、岸田内閣の支持率と自民党の支持率は低い水準に止まっていることが明らかになった。

加えて、5日の東京株式市場で日経平均株価の終値が、4451円と過去最大の下落幅を記録した。翌6日は、一転して買い戻しの動きが広がり、終値で3217円値上がりし、終値として過去最大の上げ幅になった。

こうした株価の大きな乱高下は、経済政策を強くアピールしてきた岸田政権を直撃する形になった。総裁選での再選をめざす岸田首相にとって、大幅賃上げと株高は政権の大きな成果としてきただけに、今回の株価の異常な乱高下は再選戦略に影響を及ぼすことになりそうだ。

 内閣、自民支持率ともに低迷続く

まず、NHKの今月の世論調査(2日から4日実施)は、自民党総裁選を1か月後に控えた調査になるので、内閣支持率と自民党支持率がどの程度の水準になるのか、注目していた。

岸田内閣の支持率は25%で、先月と同じ水準に止まった。一方、不支持率は55%で先月より2ポイント減少したものの、依然として高い水準だ。岸田内閣の支持率は、10か月連続で20%台という低迷状態が続いている。

一方、自民党の政党支持率は今月は1.5ポイント伸ばして29.9%となったが、6か月連続で30%割れとなった。自民党政権下で30%ラインを割り込むのは、2009年の麻生政権以来となる。

岸田政権は通常国会閉会を契機に、定額減税の実施や電気ガス料金の補助金支給、それに得意の外交活動を展開して、総裁選前の政権の浮揚をめざしてきた。ところが、内閣支持率、自民党支持率ともに改善はみられず、厳しい状況に追い込まれている。

株価乱高下、首相の再選戦略に影響も

こうした中で東京株式市場は5日、取引開始直後から全面安の展開となり、日経平均株価の終値は4451円安い3万1458円、過去最大の下落幅を記録した。アメリカの景気減速の懸念が強まったことや、円高が急速に進んだことが影響したものとみられる。

翌6日は一転して買い戻しが広がり、株価は一時、3400円以上値上がりし、上げ幅は取引時間中としては過去最大となった。株価大暴落に歯止めがかかったことで市場は警戒感が和らいでいるが、当面不安定な値動きがつづきそうだ。

岸田政権は支持率低迷が続く中で、高い賃上げの実現や、NISA(少額投資非課税制度)の拡充など「貯蓄から投資へ」などの経済政策を強くアピールしてきた。それだけに今回の株価大暴落は、政権にとって大きな痛手だ。

また、自民党総裁選に向けても外交と並んで、経済に強い政権を訴えて再選を図る戦略を描いてきただけに、再選戦略に影響が出ることは避けられそうにない。

株価乱高下について、岸田首相は6日広島市の記者会見で「引き続き緊張感を持って注視するとともに、日銀と密接に連携しつつ、経済運営を進めていきたい」とのべるに止まった。

日銀は、先に政策金利を0.25%程度引き上げる追加乗り上げを決めるとともに、植田総裁はさらなる金利の引き上げもありうるとの考えを示した。岸田首相としてはどのような金融・経済政策を行っていくのか説得力のある説明が必要だ。首相の対応は、内閣の支持率にも跳ね返ってくる。

 自民総裁選、岸田首相の去就が焦点

さて、自民党総裁選挙をめぐっては、未だに誰も立候補の名乗りを上げていない。今月20日に総裁選の日程が正式に決まるのを待って、一気に動き出すものとみられている。

総裁選の動きが本格化しないのは、現職の岸田首相が自らの去就について、態度を表明しないことが影響している。首相周辺は「首相が再選を断念することはない」との見方を示す。これに対し、自民党内には「次の衆院選を戦う顔としては適任ではない」と交代を求める声も根強い。

自民党内では「岸田首相は9日から12日までの日程で、中央アジア・モンゴルを歴訪する。その区切りがつけば、最終的な判断をするのではないか」との見方もある。

岸田首相は今月、鈴木財務相、麻生副総裁、林官房長官、森山総務会長らと相次いで、個別に会談を続けている。総裁選の情勢をめぐって、さまざまなケースを想定して意見を交わしているものとみられる。

現職の首相が総裁選に立候補して敗北したのは、73年に当時の福田赳夫元首相が、大平幹事長に敗れた一度だけだ。一方で、現職の首相・総裁が立候補を断念したケースもある。最近では菅元首相、谷垣総裁、河野洋平総裁らだ。

岸田首相はどちらの道を選択するのだろうか。現職の首相が去就を明らかにしないと総裁選の構図は固まらない。今月中旬以降、来月初めにかけてさまざまな動きが表面化してくる見通しだ。(了)

“株価乱高下、岸田首相の再選戦略に影響も” への1件の返信

  1. 今回の株価の過去最大規模の乱高下は、まさに経済政策を
    その柱としてきた岸田政権に大打撃を与えたといえます。
    乱高下そのものは、大した要因もなく、マネーゲームの
    様相を呈していると言えます。
    岸田首相は明らかに再選を目指しているものの、あらゆる
    状況がそれを阻止し続けているように思われます。
    というのも、これまですべての案件において「無為無策」
    の対応しかしなかったことからすれば、当然の結果といえ
    ます。
    判断ができない、しても極めて遅い、また効果的な施策が
    提示できない等等、評価に値するものは何もないです。
    まあ、国民からすれば岸田首相に選挙の顔となってもらう
    のが、いい結果につながるのかも知れないですが……。
    ただ選挙民の愚かさも無視しえないところが泣き所ですが!
    (各選挙区で、ぞろぞろおらが先生の自民党議員が当選する
     ことが恐ろしいです。)
    文章について
    「内閣、自民支持率ともに低迷続く」の項
    下から5行目
     割り込むのは、2009年の麻生政権以降初めてだ。
    →割り込むのは、2009年の麻生政権以降となる。
    (全く初めてならば、麻生政権はいらないし、2回目ならば
     以降2度目であるとなります)

     8月7日 妹尾 博史

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